【男のロマン】【最高すぎる】幼馴染「……童貞、なの?」 男「 」 ⇒ 結果:お察しの通りだww

物語, 話題, 面白, 驚き, , 男のロマン

 

 

6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/07/23(土) 22:38:05.60 ID:yBf3Hcveo

 

 

 

家を出ると夏の太陽が俺を苛んだ。

 

ちょっといい感じの言い方をしてみても、暑いものには変わりない。

 

 

「コンクリートジャングル!」

 

 

テンションをあげようとして思わず叫んだ。

 

 

どちらかというと気が沈んだ。

 

 

「ヒートアイランド現象……」

 

 

一学生には重過ぎる言葉だ。

 

 

「何やってるの?」

 

 

声に振り返ると妹が呆れながらこちらを見ていた。なんだかすさまじく冷たい視線。

 

 

「夏だなぁって思ったら生きてるのがつらくなってきた」

 

 

「毎年大変だね」

 

 

大変なのだ。

 

 

「最近、馬鹿さが加速度的にあがってきてるよね」

 

 

「マジで?」

 

 

「このままいくと世界一も夢じゃないかもね」

 

 

「まじでか!」

 

 

世界一。素敵な響きだった。思わず言葉に酔いしれて白昼夢を見た。

 

 

表彰台の上で「THE BAKA」と刻まれたトロフィーを抱え、首に金色のメダルをかけられる。

 

美女に月桂冠をつけてもらう。そのとき頭を前のめりになる。でっかいお○ぱいが目の前で揺れた。

 

童貞には強すぎる刺激だが目をそらせない。馬鹿の証明とも言えた。

 

涙ながらに「うれしいです!」とインタビューに答え、ぱしゃぱしゃというフラッシュの音を一身に浴びる。

 

良かった。努力してきた甲斐があった。ようやく俺は世界一になれたんだ……。

 

 

――そんなわけがなかった。ギャグにしても寒い。

 

 

 

 

7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/07/23(土) 22:39:00.48 ID:yBf3Hcveo

 

 

 

「ちょっと前はもう少しマシだったのに」

 

 

妹さまは不服そうだった。

 

 

「お姉ちゃんがきてた頃はマシだったのに」

 

 

お姉ちゃん。

 

妹がいう「お姉ちゃん」は俺から見ると同い年だ。

 

俺と妹には幼馴染がいた。

 

 

美少女だ。料理も上手い。朝起こしにきたりもした。「将来は結婚しようね」と砂場で約束した仲だ。たまに弁当を作ってくれる。

 

家事が趣味でほんわりとした穏やかな性格が持ち味。からかわれると「むぅ~」と言いながらぷっくりと頬を膨らませる。

 

クラスメイトに「夫婦喧嘩か?」とか「夫婦漫才か?」とかからかわれるたびに、「ち、ちがうよっ!」と真っ赤になって否定していた。

 

サッカー部のマネージャーをしている。犬好きで、暇な休日はペットショップを覗きに行き、「かわいい……」とか言ってる。

 

 

そんな好みが分かれそうなハイスペック幼馴染なのだが、つい先日サッカー部の先輩と交際を始めた。

 

 

そのことから照れ隠しかと思われた「ち、ちがうよっ!」という発言が本当だったことが判明し、クラスメイトは今でも俺に哀れみの視線を寄せる。

 

 

 

 

8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/07/23(土) 22:39:27.28 ID:yBf3Hcveo

 

 

 

ぶっちゃけ一番ショックを受けたのは俺だった。クリティカルダメージ。オーバーキル。

 

昔からの知り合いに恋人ができるというのは、なぜだかひどく寂しかった。

 

数日生と死の狭間をさまよった。

 

嘘だ。

 

 

嘘だが、寝取られという言葉がなぜか頭を過ぎった。

 

付き合ってなかったからショックを受ける理由なんてないはずなのだが、なんかすごいショックだった。

 

なんかすごいショック。技名みたいで少しかっこいい。

 

 

ちょっと前から幼馴染は俺に話しかけたり朝起こしにきたりしなくなった。

 

もう弁当を作ってくれることもないだろう。恋は人を盲目にさせる。

 

勝手に傷ついた友人(しかも男)の心境など、あの美少女が気にかけるわけもなかった。

 

 

「死にたい……」

 

 

「悪かったわよ……」

 

 

妹もなんとなく俺の気持ちを察してくれているらしい。

 

が、察されるのもなんだか悲しいところだ。

 

 

「もう学校に行こう」

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

素直に謝れるのが妹のいいところだが、あと一年もすればこいつも彼氏をつくってきゃっきゃうふふとしゃれ込むのだろう。

 

 

暗澹とした気持ちのまま妹と別れて学校に向かった。

 

 

 

 

9:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/07/23(土) 22:40:10.63 ID:yBf3Hcveo

 

 

 

教室につくと、目の前にサラマンダーが現れた。

 

 

当然、人で、あだ名だった。

 

 

名前の由来を語ると長くなる。

 

ある休日、友人たちで家に集まっていたときのこと。

 

彼は昼食に「激辛キムチ鍋! ~辛さ億倍~」という名前のカップラーメンを買ってきて食べた(鍋なのにラーメン)。

 

グロテスクですらある見た目に警戒した俺たちはサラマンダーに忠告した。

 

 

「やめとけ、それは魔の食い物だ。人の食うものじゃない」

 

 

でも奴は食った。向こう見ずだった。青春っぽい。当然、あまりの辛さに顔を真っ赤にして噴き出した。

 

 

案外、由来を語っても短かった。それ以来彼はサラマンダーと呼ばれている。

 

 

サラマンダーは長いし、ドラゴンでよくね?という俺の意見は却下された。面白くないかららしい。

 

みんなサラマンダーと呼ぶ。いつのまにかクラス中に移った。正直呼びづらい。長いし。

 

 

余談になるが「激辛キムチ鍋! ~辛さ億倍~」は生産中止になった。ありふれた話だ。

 

 

サラマンダーは俺を見て不愉快そうに眉を寄せた。

 

別に嫌われているわけではない。こういう顔をしているときは、サラマンダーが何かを話し始めるときだ。

 

 

「聞いてくれよ」

 

 

始まった。と同時に騒がしいはずの教室が鎮まりかえる。彼は期待を一身に受けて口を開いた。

 

 

「俺は今日、なんかすげーえろい夢をみたんだ」

 

 

「……あ、そう」

 

 

どこかで何かがリンクしているようだった。静寂が途切れて、教室にざわつきが戻る。いつも通りか、と誰かが呟いた。

 

 

 

 

10:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/07/23(土) 22:40:44.52 ID:yBf3Hcveo

 

 

 

「テニス部のプレハブに忍び込んで持ち物をあさってると、あっさり女子に見つかって罵倒されまくるような夢だった」

 

 

「……」

 

 

なぜだか背筋が寒くなった。そんな夢を見た気がするが、覚えてないので仕方ない。

 

 

「さいてー」

 

「いやー」

 

「きもちわるーい」

 

 

女子から声があがった。でもこういうときに積極的に声をあげるのは、あまり容姿がよろしくない人たちだ。

 

ごくまれに美少女もいた。歯に衣着せぬ物言いでちょっとした人気があるが、とにかく近寄りがたい。

 

 

「すげーえろい夢だったんだが、内容を思い出せない。この気持ち、分かるか?」

 

 

「悪いが分からない」

 

 

名誉のためにそういうしかなかった。

 

 

サラマンダーは肩を落として「そうか」と呟き、教室から出て行った。廊下を覗くと、幽鬼のようにふらふらと歩く後姿が見える。

 

くだらないことで落ち込む奴だ。が、実際俺も似たようなものだった。

 

 

 

 

11:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします:2011/07/23(土) 22:41:48.71 ID:yBf3Hcveo

 

 

 

自分の席まで行くと今度はマエストロが我が物顔で座っていた。

 

 

体格のいい大男だが、運動部には所属していない。

 

 

 

 

 

↓次ページへつづく↓