サンサーラ速報❗️

【時をかける少女を超えた!!】【青春】両親に預けられた車が一台も走っていない田舎にある叔父さん家での夏の日の出来事が…

4: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 17:43:42.33 ID:/YDuLUAZ0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第一話

 

七月末。

 

僕は電車に揺られながら、叔父さんの家に向かっていた。

 

( ^ω^)「海がきれいだお!」

 

都会では中々見られなかった海を見て気分が高揚する。

 

夏の日差しを受けて、海面がきらりと輝いている。

 

僕――――内藤ホライゾンは今年高校を中退した。

 

無理をして地元有数の進学校に進んだが、馴染むことが出来なかった。

 

次第に学校に行くことも少なくなり、ひきこもりがちになっていった。

 

そして……2度目の一学期が終わる前に僕は高校を辞めた。

 

6: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 17:46:09.48 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「おー……ようやく到着だお」

 

長い旅路の末、目的地に着き電車を降りる。

 

ここは都会の騒々しさから隔離された田舎の町だ。

 

目の前に広がる緑が眩しい。

 

( ^ω^)「今日から、この自然が僕の新しい日々を見守ってくれるお!

 

僕の現状を心配した両親は、僕を田舎の叔父さんの家に預けることにした。

 

「大自然に囲まれて、リフレッシュしてこい」との事だそうだ。

 

最初は反対した。

 

でも、次第に僕はこう考えるようになった。

 

都会では味わえない、自然の中での暮らしもいいんじゃないかって。

 

7: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 17:47:59.64 ID:/YDuLUAZ0

 

(;^ω^)「叔父さんの家まで遠いZEEEEEEEEE!!!!!」

 

叔父さん一家は山の辺りに住んでいるそうだ。

 

駅からの道のりは遠い。

 

ただ、決してつまらない歩き道じゃなかった。

 

僕のいた街では見られなかった、青く澄んだ空。

 

爽やかな木々の緑は絵のように美しかった。

 

海から吹いてくる風が心地よい。

 

( ^ω^)「車が一台も見えないお……」

 

舗装されていない、元の姿のままの道をひたすら歩き続けた。

 

8: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 17:50:17.53 ID:/YDuLUAZ0

 

(´・ω・`)「やあ、ようこそ僕の城へ」

 

家に着くなり叔父さんが出迎えてくれた。

 

この人の名前は、ショボン。

 

歳は40歳前後だったと記憶している。落ち着いた雰囲気の人だ。

 

( ^ω^)「叔父さん、お久しぶりですお!」

 

(´・ω・`)「しばらく見ない間にブーン君も大きくなったね」

 

「ブーン」というのは僕のあだ名だ。

 

もう10年近く会っていないのに、その呼び名を覚えてくれていたことに嬉し

 

くなる。

 

( ^ω^)「えと……今日から、お世話になりますお」

 

(´・ω・`)「はは、そんなに緊張しないでおくれよ。夏の間楽しんでいっ

 

てね」

 

( ^ω^)「はいですお!」

 

9: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 17:52:28.40 ID:/YDuLUAZ0

 

叔父さんに案内されて家の中に入って行った。

 

家の縁側から海が一望できる。

 

山々の木々達が日差しを浴びてざわめいた。

 

(‘、`*川「あらブーン君、いらっしゃい」

 

( ^ω^)「叔母さん、こんにちはですおー」

 

この人は叔母さんのペニサス。軽い挨拶をした。

 

(‘、`*川「ちょっと待っててね、今子どもたちも呼んでくるから」

 

そう言い残して叔母さんは二階に上がっていった。

 

「あんた達ー、ブーン君が来たわよー」

 

「えっ!お兄ちゃんが来たのー!?」

 

「ほらほら、あなたも恥ずかしがってないで下りなさい」

 

「べ、別に恥ずかしいわけじゃないんだからねっ!」

 

(;^ω^)「……上が騒がしいお」

 

10: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 17:53:27

 

.90 ID:LSIOgkWq0

 

支援

 

11: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 17:54:36.01 ID:/YDuLUAZ0

 

叔母さんが子どもを連れて下りてきたのは、それから数分が経ってからだ。

 

(‘、`*川「さ、あんた達挨拶しなさい」

 

(*゚ー゚)「お兄ちゃんこんにちは」

 

( ・∀・)「こんにちはー!」

 

先に挨拶をした女の子はしぃ、元気に挨拶をした男の子はモララーと言う。

 

記憶の中ではあんなに小さかったのに、二人とも大きくなったものだ。

 

そして、叔母さんの隣でつっけんどんな態度を取っているのは――――――

 

―。

 

(‘、`*川「ほら、あなたも挨拶しなさい」

 

ξ゚⊿゚)ξ「……うるさいわね。別にそんなのする必要ないじゃない」

 

(‘、`*川「まったくこの子は……」

 

( ^ω^)「(お?この子は確か……?)」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

13: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 17:57:05.27 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「ツン、かお?」

 

叔父さんの家でこの子――――――ツンとよく遊んでいたのを覚えている。

 

 

ξ゚⊿゚)ξ「っ!き、気安く名前を呼ばないでよねっ!!」

 

(;^ω^)「…………」

 

なぜかは知らないが怒られてしまった。

 

昔はあんなに素直で可愛い女の子だったはずなのに……。

 

(*^ω^)「(というか今でも可愛いお!)」

 

ξ゚⊿゚)ξ「……ちょっと、その目は何よ」

 

(;^ω^)「い、いえ!何でもないですお!」

 

14: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 17:59:08.02 ID:/YDuLUAZ0

 

ξ゚⊿゚)ξ「……ふん、まあいいわ。しばらく一緒に暮らすんだし……」

 

ξ゚⊿゚)ξ「一応挨拶しておくわ。よろしくね、ブーン」

 

(*^ω^)「よろしくだお!」

 

やっぱり、昔から変わってないな。

 

僕はそう思った。

 

16: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:01:16.59 ID:/YDuLUAZ0

 

(´・ω・`)「さてブーン君、君は昼食がまだだろう」

 

(;^ω^)「お、すっかり忘れていたお。腹ペコですお」

 

(´・ω・`)「ははは、それじゃみんなで昼食にしようか」

 

そう言うと、台所から叔母さんがお昼ごはんを運んできた

 

大皿に並べられた、身の大きなお刺身。

 

ワカメとタコのぶつ切りの酢の物。

 

そしてポテトサラダ。

 

どれもこれもが大きな食器に盛られていた。

 

(´・ω・`)「今日はいいカンパチが手に入ったから、刺身にしたよ」

 

(*^ω^)「おいしそうですお!お刺身は大好物ですお!」

 

(´・ω・`)「それは良かった。それじゃみんな手を合わそうか」

 

17: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:03:27.63 ID:/YDuLUAZ0

 

(*゚ー゚)「いただきます」

 

( ・∀・)「いただきまーす!」

 

(*^ω^)「いただきますお!」

 

食前の儀式を済ませると、すぐに目の前の料理にかじりついた。

 

養殖物とは違う、すっきりした脂の乗ったカンパチの身。

 

その食感は水っぽさなどなく、実に歯触りがよくて何枚でも食べられそうだ

 

酢の物にも手を付ける。

 

ポン酢で和えただけの物だが、具材が新鮮なだけあってこれまた趣深い。

 

コリコリとしたタコの歯ごたえとワカメの磯の香りが心地よい。

 

キンキンに冷やされたポテトサラダは最高の箸休めだ。

 

19: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 18:04:46

 

.47 ID:AlsWoLIr0

 

>>17

 

よだれが出てきた

 

20: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:05:36.91 ID:/YDuLUAZ0

 

(*^ω^)「ハムッ!ハフハフ、ハフッ!!」

 

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとあんた、私の分のお刺身残しなさいよ!」

 

( ・∀・)「兄ちゃんずるいよ!僕にも!」

 

(*゚ー゚)「みんな食べすぎだよー」

 

(‘、`*川「あらあら、そんなに急がなくても十分ありますよ」

 

大盛によそわれた茶碗を片手に夢中でおかずに箸を伸ばす。

 

横からツンにぐいぐいと押されるが気にしない。

 

こんなに美味しい料理は僕の街では味わえなかった。

 

22: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:07:44.71 ID:/YDuLUAZ0

 

(*^ω^)「ごちそうさまですお!」

 

あっという間に並べられた皿は空になり、みんなで食後の儀式を済ませた。

 

 

(´・ω・`)「ブーン君、よく食べるんだね」

 

( ^ω^)「いつもはこんなに食べませんお。でも、おいしくて止まりま

 

せんでしたお!」

 

(´・ω・`)「嬉しいこと言ってくれるね。あとで漁師に伝えておくよ」

 

そう言うと叔父さんは僕に何かを渡した。

 

(´・ω・`)「こんなもので悪いけど、食後のデザートだよ」

 

渡されたものを見ると、それは小ぶりの夏みかんだった。

 

叔父さんはみかん農家をやっていたのを思い出した。

 

( ^ω^)「ありがとうございますお!」

 

皮をむいてひとかけらを口に入れる。

 

爽やかな酸味が口の中を潤してくれる。これまたいくらでも食べられそうだ

 

23: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:10:09.43 ID:/YDuLUAZ0

 

(´・ω・`)「それじゃブーン君、午後からは君の自由時間だ

 

(´・ω・`)「散歩に行くなり、昼寝するなり自由にしておくれ」

 

( ^ω^)「分かりましたお!」

 

叔父さんに言われたとおり、僕は山道を散歩することにした。

 

新緑に囲まれて清々しい気分になる。

 

じぃじぃ、という蝉の声が山全体に響き渡る。

 

この大自然の中で、今年の夏を過ごす。

 

今年は最高の夏になるだろう。

 

僕はそう思いながら、暑い夏の道を自分のペースで歩き続けた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

24: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:12:13.76 ID:/YDuLUAZ0

 

以上で一話は終わりです。引き続き二話を

 

27: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 18:16:40

 

.22 ID:+LN4aos2O

 

ものすごく支援

 

25: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:14:34.49 ID:/YDuLUAZ0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第二話

 

窓からさんさんと朝日が差し込んでくる。

 

陽光に目覚めさせられた僕は、うろうろと階段を下りて行った。

 

(‘、`*川「あら、おはようブーン君」

 

( ^ω^)「おはようございますお」

 

(‘、`*川「朝ごはんは出来てるから、早く顔を洗ってらっしゃい」

 

( ^ω^)「了解ですおー……」

 

寝ぼけた自分を叩き起すために、冷水で思いっきり顔を洗う。

 

微熱が冷めていく感覚が気持ちよかった。

 

( ^ω^)「いただきますお!」

 

今日の朝ごはんは卵焼きとあさりの味噌汁、キャベツの浅漬け。

 

甘辛い卵焼きは絶妙の味付けだった。

 

味噌汁をすする。あさりの出汁が口に広がった。

 

ごはんがおいしい。今日もいい一日になりそうだ。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

31: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 18:24:11

 

.19 ID:AlsWoLIr0

 

むう…この作者の食事描写はなかなか食欲をそそるな!

 

28: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:16:57.15 ID:/YDuLUAZ0

 

叔父さんの家に来てから3日経ち、ここでの生活にも慣れてきた。

 

大自然に囲まれた暮らしは居心地よく、爽快な気分にしてくれる。

 

( ・∀・)「ねえ兄ちゃん!今日も宿題手伝ってよ!」

 

(*゚ー゚)「私も教えてほしいことがあるんだ」

 

そして何より、この子たちとのふれあいが楽しくて仕方ない。

 

モララーもしぃも、すっかり僕に懐いてくれている。

 

(‘、`*川「こらこら、あんまり迷惑かけるんじゃないですよ」

 

( ^ω^)「かまいませんお。二人とも、ごはんの後で部屋に来るお」

 

( ・∀・)「やったー!」

 

こう見えても勉強は得意だ。

 

そのおかげで進学校に行けたのだけれど、今ではもう関係ない。

 

だから、自分にできることなら、何でも二人にしてあげたかった。

 

29: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:19:27.13 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「ここがこうなって……」

 

( ・∀・)「あっ、そっか!」

 

モララーの「夏休みの友」を一緒に考える。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

分数の計算は誰もが通る最初の難所だ。

 

僕も分子分母を理解するのに時間がかかったものだ――――――。

 

それにしても、毎度思うがどこが夏休みの「友」なのだろうか……。

 

「強敵」と書いて「とも」と読む、昔の少年漫画を思い出した。

 

( ^ω^)「あとは自分でやるんだお」

 

( ・∀・)「うん、分かったよ!兄ちゃんありがとー!」

 

30: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:22:07.16 ID:/YDuLUAZ0

 

モララーの先生を終えたら、今度はしぃの先生だ。

 

しぃは読書感想文の書き方に困っているようだ。

 

(*゚ー゚)「『走れメロス』で書こうと思ってるんだけど……」

 

( ^ω^)「おー、僕も昔課題作文で書いたことあるお」

 

感想文を書くコツは、疑問提起だ。

 

なぜ主人公はこんな行動をとったのか、こんな事を言ったのか。

 

その疑問を最初に投げかける。

 

あとは解決の手掛かりとなる文章を抽出し、答えを導いていく。

 

そして最後に自分なりの解釈を加え、文を締める。これが僕なりの定石だ。

 

 

( ^ω^)「この作品の場合、主人公の心情変化がポイントだお」

 

(*゚ー゚)「じゃあ、そこに注目して書いてみるね!」

 

33: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:24:41.74 ID:/YDuLUAZ0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

しぃにポイントを教えたところで一息つく。

 

この子たちは本当に素直でいい子だ。

 

こんなに純粋な子たちは、僕のいた街にはいないだろう。

 

( ・∀・)「兄ちゃんのおかげで、今年の宿題はすぐ終わりそうだよ!」

 

(*゚ー゚)「いつもは最後の日までかかってるのにね」

 

( ・∀・)「うるさいなー!」

 

(*゚ー゚)「ふふっ♪」

 

( ^ω^)「おっおっ」

 

こうして見ているだけで、元気をもらえるような気がした。

 

34: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:27:06.08 ID:/YDuLUAZ0

 

二人の宿題を見てあげたところで、僕は散歩に行くことにした。

 

(´・ω・`)「ブーン君、今日も散歩に行くのかい」

 

( ^ω^)「はいですお。それじゃ、いってきますお!」

 

(´・ω・`)「ちゃんと虫よけを塗っておくんだよ」

 

農作業に向かおうとしていた叔父さんに挨拶をして、僕は家を飛び出した。

 

 

今日行こうと思う場所は、川だ。

 

昨日、ツンに「山を下りたところにきれいな川があるわ」と教えてもらった

 

のだ。

 

( ^ω^)「きれいな川なんて都会じゃ見られないお!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕が見たことがある川は、コンクリートで囲まれていて少しもきれいじゃな

 

かった。

 

だから僕は「きれいな川」を見ることにわくわくしていた。

 

熱い日差しが僕を照らす。まるで僕の心を焦がすようだった。

 

35: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:29:51.66 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「あったお!」

 

山を下り、小道を抜け、ようやく川に辿り着いた。

 

( ^ω^)「……本当にきれいだお」

 

流れる水は澄み渡り、ゆるやかに流れていく。

 

川のせせらぎが心地よい。

 

苔石の辺りには小さな川魚がいた。

 

( ^ω^)「少しここで休むお」

 

冷たい川の水で手を洗い、川岸の石に腰掛けた。

 

青空の下、光を反射して輝く水面に足をつける。

 

ひんやりとして気持ちよかった。

 

( ^ω^)「(はぁ……落ち着くお……)」

 

遠くで蝉が鳴いている。

 

蝉の声に耳を傾け、川の流れを感じながら目を閉じる。

 

ここは桃源郷だろうか。

 

だとしたら、実に素朴な桃源郷だな、と僕は思った。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

36: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:32:32.83 ID:/YDuLUAZ0

 

何分、何時間が経っただろうか。

 

僕はずっとこうして川辺で休んでいた。

 

もう時間を忘れかけたころ、後ろで僕を呼ぶ声がした。

 

ξ゚⊿゚)ξ「やっぱりここにいたのね」

 

(;^ω^)「おっ!?」

 

振り返るとそこにはツンがいた。

 

白いワンピース姿が眩しい。

 

ξ゚⊿゚)ξ「お昼の時間になっても帰らないから、探してたのよ」

 

(;^ω^)「お、それはごめんだお」

 

38: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:35:09.41 ID:/YDuLUAZ0

 

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、これ」

 

そう言ってツンは僕に弁当箱を渡した。

 

ξ゚⊿゚)ξ「お昼ごはん、一緒に食べるわよ」

 

ツンは僕の隣に座り、川の水に足をつけた。

 

ξ゚⊿゚)ξ「きゃっ、冷たーい♪」

 

( ^ω^)「ツン――――――」

 

ξ゚⊿゚)ξ「か、勘違いしないでよ!私も外で食べたかっただけなんだから

 

っ!」

 

( ^ω^)「……ありがとうだお」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

39: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:37:39.56 ID:/YDuLUAZ0

 

二人並んでおにぎりを食べた。

 

具は梅干し、たらこ、昆布、ちりめん山椒。

 

どこか懐かしい味がした。

 

こうしてツンと並んでいることも、どこか懐かしかった。

 

( ^ω^)「ツン、今日はありがとうだお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「あー、いいわよ。あんたが迷子になってのたれ死なれたら困る

 

からね」

 

(;^ω^)「ちょwwwwwwwwwww」

 

昼食後、しばらく二人で話をした。

 

楽しかった。こうして、ツンといることが。

 

僕らの喋り声以外の音は、かすかな蝉の声と、優しい川のせせらぎだけだっ

 

た。

 

40: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:40:14.03 ID:/YDuLUAZ0

 

ξ゚⊿゚)ξ「さっ、そろそろ帰るわよ」

 

( ^ω^)「お?もう帰るのかお?」

 

ξ゚⊿゚)ξ「……あんたねえ、もう夕方よ?」

 

(;^ω^)「おぉっ!?」

 

時計を見ると、いつの間にか5時を過ぎていた。

 

まだ明るかったから気付かなかったのかもしれない。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

本当に時間を忘れてしまっていた。

 

42: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:42:45.42 ID:/YDuLUAZ0

 

(;^ω^)「もう7時間近くもここにいたのかお……」

 

ξ゚⊿゚)ξ「全く、付き合わされる身にもなってよね!」

 

(;^ω^)「本当にごめんだお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、行くわよ」

 

先に歩きだしたツンの後ろを、僕は小走りで追いかけていった。

 

43: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:44:42.11 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「でも、なんでもっと早く言わなかったんだお?」

 

ξ゚⊿゚)ξ「それはっ……もう!そんなのどうでもいいじゃない!」

 

(;^ω^)「あ、待ってほしいお!」

 

元来た道を帰っていく。

 

来た時と違うのは、一人じゃなくて横にツンがいること。

 

たわいもない話をしながら僕たちは歩いていった。

 

沈んでいく赤い夕日。

 

二人の長い影は、僕たちが歩くずっと先で交わった。

 

44: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:46:49.83 ID:/YDuLUAZ0

 

以上で二話は終わりです。ここまでは一度単発投下したものです

 

では今から、三話を投下します

 

45: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 18:48:10

 

 

 

↓次ページへつづく↓

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wktk

 

46: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:49:37.84 ID:/YDuLUAZ0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第三話

 

照りつける太陽が僕の体温を上げる。

 

(;^ω^)「暑いお……」

 

昼食のそうめんを食べ終えた後、僕は畳の上に横たわっていた。

 

ちりんちりん、と風鈴の涼しげな音色が聴こえてくる。

 

今日から八月。

 

新しい月は、新しい日々の到来を期待させる。

 

今日からは、どんな毎日が待っているのだろう―――――――。

 

48: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:51:59.58 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘、`*川「あらあら、だらしのないこと」

 

寝転がっていると、叔母さんが麦茶を持ってきてくれた。

 

(‘、`*川「はい、冷たいお茶。これでも飲んでしゃんとしなさい」

 

(;^ω^)「ありがとうございますお……」

 

麦茶を受け取り、すぐさま口にする。

 

よく冷えた麦茶が熱っぽさを下げてくれた。

 

よし、これで今日も頑張れる。

 

49: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:54:16.80 ID:/YDuLUAZ0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「お?」

 

居間を出ると、玄関で叔父さんが誰かと話しているのに気がついた。

 

(´・ω・`)「やあ、今日はどうだったんだい?」

 

(‘A`)「駄目だな……売り分しか漁れなかった」

 

見ると、玄関先には頭にタオルを巻いた無精髭の男がいた。

 

男らしくて、「格好いい」雰囲気の人だな、と思った。

 

51: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:56:32.56 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘A`)「悪いが、こいつで勘弁してくんな」

 

(´・ω・`)「これは……ハマチかい」

 

(‘A`)「養殖組合から頂いてきた。養殖とはいえ上物だぜ」

 

(´・ω・`)「なるほど、確かにいいものだね」

 

(‘A`)「ま、ハマチ養殖はここの名物だからな」

 

男はそう言ってクーラーボックスを閉じた。

 

ぱちんと閉まる音が、妙に大きく響いた。

 

53: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 18:59:30.77 ID:/YDuLUAZ0

 

(´・ω・`)「おや?ブーン君、いたのかい」

 

叔父さんが僕に気づいたようだ。

 

僕の方を振り返り、手招きした。

 

( ^ω^)「えっ……と……、この人は、誰ですかお?」

 

(´・ω・`)「ああ、彼は地元の漁師だよ」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(‘A`)「おっ、お前がショボンさんが言ってた奴か!確か……」

 

( ^ω^)「内藤ホライゾンですお!ブーンって呼んでほしいお!」

 

(‘A`)「おお、そうだったブーンだったな!俺はドクオってんだ。よろしく

 

な」

 

( ^ω^)「よろしくですお、ドクオおじさん」

 

(‘A`)「おいおい、おじさんって歳でもないぜ?」

 

見た目は怖そうだったが、話してみるときさくでいい人だった。

 

何より僕を子ども扱いせず、同じ目線で話してくれる。

 

本当に「格好いい」と思った。

 

55: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 19:00:45

 

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(‘A`)カコイイ

 

56: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:02:21.57 ID:/YDuLUAZ0

 

ξ゚⊿゚)ξ「あら?ドクオさん来てたんだ」

 

階段からツンが下りてきた。

 

今日はすらっとしたパンツルック。

 

夏らしい、淡い色使いのキャミソールがよく似合っていた。

 

58: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:04:47.49 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘A`)「おう、ツンちゃんじゃねぇか。久々だな」

 

ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと前に会ったばかりじゃないですか」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(‘A`)「はっはっはっ!……ところでよ、いい加減男は出来たのかい?」

 

ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっ、な、何言ってるんですかっ!」

 

ツンが顔を赤らめる。

 

ツンに彼氏――――――――そんなこと、考えたこともなかった。

 

(‘A`)「へへへ、その様子じゃまだのようだな。どうだい、ここは俺の――

 

――――」

 

川 ゚ -゚)「『俺の』、何なんだ?」

 

(;’A`)「げぇっっ!?」

 

59: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:07:22.63 ID:/YDuLUAZ0

 

知らぬ間に、ドクオさんの後ろに一人の女性が立っていた。

 

吸い込まれそうなほど黒いロングヘアーが映える、きれいな女性だった。

 

川 ゚ -゚)「帰りが遅いと思ったら……そういうことだったのか」

 

(;’A`)「ちっ、違うんだクー!これはほんの冗談で……!」

 

川 ゚ -゚)「問答無用っ!」

 

(;’A`)「うぼあぁっっ!?」

 

クーと呼ばれた女性の強烈な裏拳が、ドクオさんの顔面にクリーンヒットす

 

る。

 

その場にうずくまったドクオさんはまだ弁解の言葉を述べていた。

 

「格好いい」、なんて思うんじゃなかったな――――――僕はしみじみとそ

 

う思った。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

60: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 19:07:43

 

.69 ID:pW3TnjPuO

 

爽やか作品支援

 

61: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:10:12.63 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘A`)「―――――というわけで、誤解なんだ」

 

川 ゚ -゚)「むぅ、冗談なら冗談と最初に言えばいいものを……」

 

(;’A`)「いや、言ったじゃねぇか……」

 

二人は叔父さんの家に上がり、お茶を飲んでいた。

 

女性の名前はクーさんと言って、ドクオさんの奥さんらしい。

 

「海の男のドクオさんも、尻に敷かれているんだな」と思うと、少しおかし

 

かった。

 

(´・ω・`)「まあまあ二人とも、今日はゆっくりしていってよ」

 

(‘、`*川「せっかくですし、いただいたお魚で晩ごはん御馳走しますよ」

 

川 ゚ -゚)「それは嬉しいな。ありがたく頂戴しよう」

 

叔父さん夫婦と、ドクオさん夫婦が仲良く談笑する。

 

僕とツンもその輪に加わらせてもらった。

 

ドクオさんの漁の話、クーさんの苦労話。

 

二人の話は尽きることなく、僕も飽きることはなかった。

 

62: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:12:48.34 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘、`*川「さっ、そろそろごはんにしましょうか」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

話し込んでいるうちに、すっかり日が暮れてしまっていた。

 

空高くで輝いていた太陽は、もう海へと沈んでいっていた。

 

川 ゚ -゚)「手伝おう、魚をさばくのには自信がある」

 

(‘、`*川「あらあら、それじゃお願いしましょうかね」

 

叔母さんとクーさんが台所へ向かった。

 

その瞬間を見計らって、ドクオさんはニヤけながらクーラーボックスを開け

 

た。

 

63: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:14:40.58 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘A`)「さっさっショボンさん、飲みましょうぜ」

 

(´・ω・`)「さすがだね。僕のビールの好みを熟知してる」

 

開けられたクーラーボックスの中には大量のビール瓶が入っていた。

 

キンキンに冷やされたビールを、ドクオさんは嬉しそうにグラスに注いだ。

 

 

(*’A`)「くっー!うめえっ!」

 

(*´・ω・`)「ああ、このために生きてるって気がするね!」

 

二人揃ってグラスを一気に飲み干した。

 

ほのかな苦みとアルコールの心地よさに恍惚の表情を浮かべている。

 

64: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:17:09.09 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘A`)「ほれっ、お前らも飲め」

 

ドクオさんが僕とツンにもグラスを渡した。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(;^ω^)「ちょwwwww未成年だおwwwwwwww」

 

ξ゚⊿゚)ξ「まったく、大人ってサイテーね」

 

(´・ω・`)「ははは、まあビールは大人の味だからね」

 

そう言って叔父さんは二杯目を注いだ。

 

大人の味。

 

いつか僕にもわかる日が来るのだろうか。

 

僕が大人になるまでに、どんなことがあるんだろう。

 

嬉しそうにお酒を飲む二人を見て、僕はそう思った。

 

66: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:19:38.92 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘、`*川「まったく、この男どもは」

 

叔母さんが大皿を持ってやってきた。

 

すっかり出来上がった叔父さんとドクオさんを見て、呆れ顔を作る。

 

川 ゚ -゚)「ほら、酔っ払いども。つまみだぞ」

 

後からクーさんが枝豆と唐揚げを持ってきた。

 

この展開を読んでいたのだろうか、ちゃんとおつまみを用意していた。

 

なんだかんだいって、ドクオさんのことをよく分かっているんだろう。

 

理解者って言葉の意味が、分かった気がした。

 

( ・∀・)「わー!今日はおじさんたちとご飯だー!」

 

(*゚ー゚)「おじさん、こんにちは」

 

ごはんの匂いを嗅ぎつけて、二階からしぃとモララーが下りてきた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(‘A`)「おじさんじゃねぇっての」

 

川 ゚ -゚)「そうして顔を赤くしていては、何の説得力もないな」

 

( ^ω^)「早く食べるお!」

 

67: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:21:37.01 ID:/YDuLUAZ0

 

いつもより大人数で「いただきます」を言った。

 

まずは大皿のハマチのお刺身からいただくことにする。

 

養殖物らしいが、脂っこくなく食べやすい。

 

醤油に浮いた脂の少なさがそれを物語っている。

 

この土地の名産品なだけはある。うまい。

 

69: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 19:23:06

 

.52 ID:xxixVcmN0

 

腹減ってきた…

 

70: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 19:24:06

 

.99 ID:6Dh6eZdh0

 

魚肉ソーセージで我慢してる俺

 

71: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:24:16.51 ID:/YDuLUAZ0

 

(*’A`)「ほれほれブーン、刺身だけじゃつまらんだろ?」

 

酔っ払ったドクオさんが無理やり僕にビールを勧めてきた。

 

(;^ω^)「いやいや、丁重にお断りしておきますお」

 

(*’A`)「遠慮すんな、ほれっ」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(;^ω^)「むぐぅっ!?」

 

口を開けたところに、無理矢理ビールを流し込まれる。

 

(;^ω^)「(うぇぇぇ……)」

 

――――――何と言ってよいのやら、変な感覚に襲われる。

 

(;^ω^)「全然おいしくないお!」

 

(*’A`)「はっはっはっ!まだ早かったな!」

 

ドクオさんが満足そうに自分のグラスを傾ける。

 

なぜこんなものが美味しいと感じるんだろう。僕は改めて疑問に思った。

 

72: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:26:43.63 ID:/YDuLUAZ0

 

(;^ω^)「お~……」

 

酔いが回ったのか、頭がくらくらする。

 

僕は馬鹿騒ぎする大人を残して、縁側に腰かけた。

 

あのあと、どうやらツンも飲まされたらしい。こちらは平気だったようだ。

 

 

……情けないな、僕は。

 

(;^ω^)「はー、夜風が気持ちいいお」

 

冷たい夜風が火照った体を冷ましてくれる。

 

まだふらふらするが、だいぶ意識ははっきりしてきた。

 

ふと空を見上げると、星がきらめいていた。

 

こんなに美しい夜空は、ここでしか見られないだろうな、と思った。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

73: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:29:21.87 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘A`)「よおブーン、大丈夫か?」

 

ドクオさんが水を持って隣に座った。

 

(;^ω^)「酷いですお……ふらふらしますお」

 

(‘A`)「あー、すまねぇな。ほら、水飲め水」

 

(;^ω^)「いただきますお……」

 

渡された水を一気に飲む。

 

冷たい水が渇いた喉をすーっと潤した。

 

74: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:31:58.79 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「少しだけ、すっきりしましたお」

 

(‘A`)「そいつはよかったぜ」

 

ドクオさんと一緒に夜風に当たる。

 

風に乗って海の香りがしたような気がした。

 

(‘A`)「お前よぉ、気分を変えたくてこっちに来たんだって」

 

( ^ω^)「そうですお」

 

(‘A`)「ふーん、そうかい―――――――」

 

少しの沈黙の後、ドクオさんが僕の目を見て言った。

 

(‘A`)「でもよ、ブーン。お前が本当に変えるべきなのは『自分』自身なん

 

じゃねぇか?」

 

(;^ω^)「おっ!?」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

突然のことに驚きを覚えた。

 

ドクオさんは続けた。

 

76: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:34:33.67 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘A`)「いやよ、今日会ったばかりの俺が言うのもなんだが……」

 

(‘A`)「お前は、ただここでうだうだと暮らすだけでいいのか、ってことだ

 

 

(;^ω^)「どういう、ことですかお?」

 

(‘A`)「……ショボンさんに聞いたぜ。お前、高校辞めたんだろ?」

 

(‘A`)「―――――――俺なんか高校行ってねぇんだよ、漁師を継ぐために

 

な」

 

遠くを見つめながらドクオさんが語りかけてくる。

 

(‘A`)「俺さ、本当は漁師なんかやりたくなかったんだよ」

 

(‘A`)「高校行って、立派な大学行って、都会に出たかったんだ」

 

(;^ω^)「…………」

 

78: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:37:05.18 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘A`)「でもよ、無理だった」

 

(‘A`)「結局さ、俺は自分の未来を変えられなかったんだよ」

 

ドクオさんは、少しだけ声に力を込めて言った。

 

(‘A`)「だけどお前はよぉ、俺と違って、いくらでもチャンスがあるじゃね

 

ぇか!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(‘A`)「そのチャンスをよ、無駄にするんじゃねぇ」

 

(;^ω^)「ドクオさん……」

 

言われてから気が付いた。

 

僕は、ここに来てから何も変わっていなかった。

 

ここでの生活で気分が晴れたとしても、家に帰ればまたこれまでの生活に戻

 

るだけだ。

 

自分が変わらなければ、何も変わらない。

 

それに気が付けなかった。

 

両親は、きっとそれが本当の目的だっただろうに。

 

80: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:40:39.91 ID:/YDuLUAZ0

 

暗闇の中で、ぽつんと浮かんでいる月。

 

僕たちはそれをただ黙って眺めていた。

 

(‘A`)「さてと……ブーン。クーがうるさいだろうから、そろそろ俺は帰る

 

わ」

 

そう言うとドクオさんは立ち上がり、居間に戻ろうとした。

 

( ^ω^)「ドクオさん……今日は、ありがとうございましたお」

 

(‘A`)「ああ、気にするな。それより、偉そうに喋ってすまなかったな」

 

最後まで、僕と同じ目線で話してくれる。

 

川 ゚ -゚)「ドクオ、そろそろ帰るぞ」

 

玄関にはクーさんがいた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕たちの話が終わるまで待ってくれていたようだ。

 

本当にいい奥さんだな、と思った。

 

83: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:42:56.10 ID:/YDuLUAZ0

 

(‘A`)「じゃあな、ブーン」

 

( ^ω^)「バイバイですお」

 

(‘A`)「お前が大人になったら、一杯やろうや」

 

( ^ω^)「お供しますお!」

 

帰っていくドクオさんとクーさんの後姿を見送った。

 

並んで歩く姿が見えなくなるまで、僕は見送り続けた。

 

僕はいつの間にかドクオさんに尊敬の念を抱いていた。

 

本当に、「格好いい」と思った。

 

84: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 19:44:53.58 ID:/YDuLUAZ0

 

これで第三話はおわりです

 

申し訳ありませんが、飯を食ってきますので第四話以降は後で投下します

 

八時~九時には投下できると思います

 

それでは、読んでいただいてありがとうございました

 

85: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 19:45:20

 

.48 ID:w7z9eN7Q0

 

乙。以降期待してるぜ

 

97: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 20:35:20.16 ID:/YDuLUAZ0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

お待たせしました

 

それでは4話以降を投下します

 

99: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 20:38:17.79 ID:/YDuLUAZ0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第四話

 

(;^ω^)「おー……」

 

朝を過ぎたというのに、外は灰色に染まっていた。

 

今日は生憎の雨模様。

 

こちらに来てから初めての雨。僕は少し憂鬱な気分になった。

 

日課の散歩に行くことができないからだ。

 

( ^ω^)「今日は家でじっとしておくお」

 

窓を閉じて机に向かい、デジタルカメラを手に取った。

 

最近、散歩にはこのカメラを持っていくようになった。

 

――――――この大自然を、余すことなくレンズに収めたい。

 

そう思ったのがきっかけだった。

 

( ^ω^)「この写真はよく撮れてるお」

 

メモリーに記録された、山のふもとから見た海の写真を眺める。

 

空の青が海の青を際立たせている。

 

僕のあいまいな記憶が、記録によって蘇ってきた。

 

102: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 20:40:58.97 ID:/YDuLUAZ0

 

しばらく写真を眺めていると、しぃとモララーがやってきた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ・∀・)「兄ちゃん、お出かけしようよ!」

 

( ^ω^)「お?雨が降ってるから今日はやめた方がいいお」

 

( ・∀・)「大丈夫。雨ぐらいへっちゃらだよ!」

 

(*゚ー゚)「ねえ、行こうよ」

 

二人が強引にねだってくる。

 

僕は誘いを断れなかった。

 

104: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 20:43:44.66 ID:/YDuLUAZ0

 

(;^ω^)「分かった、分かったお。でもなんでよりによって今日なんだ

 

お?」

 

(*゚ー゚)「実はね、自由研究をするために行くの」

 

( ・∀・)「やっと雨が降ったんだ!夏休みの間降らなかったらどうしよう

 

かと思ったよ」

 

( ^ω^)「自由研究?」

 

(*゚ー゚)「私たちね、雲の形の観察をしてるの」

 

( ・∀・)「晴れの時と雨の時の雲って違うでしょ?それをスケッチしてる

 

んだ」

 

( ^ω^)「おー、そういうことかお」

 

よく見ると、二人は手に画材の入った鞄を提げていた。

 

107: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 20:46:37.81 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「そういうことなら、喜んで付き合うお」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ・∀・)「やった!じゃあ早く準備してきてね!」

 

そう言い残すと、モララーは階段を駆け下りていった。

 

(*゚ー゚)「じゃあお兄ちゃん、下で待ってるね」

 

しぃも続いて階段を下りて行った。

 

外を見てみると、雨足はさらに強くなっていた。

 

僕は着替えを済ませ、カメラを持って一階へ急いだ。

 

108: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 20:49:46.08 ID:/YDuLUAZ0

 

叔母さんにお弁当を作ってもらい、僕たちは空がよく見える場所を目指した

 

 

目に鮮やかなしぃとモララーの黄色い傘が、雨の中で一際目立っている。

 

( ・∀・)「もう少し上に行けばよく見えるよ!」

 

(;^ω^)「相変わらずモララーは元気がよすぎるお」

 

先を行くモララーの背中を僕としぃが追いかけていく。

 

水たまりを長靴で踏みつけながら、モララーは大はしゃぎで歩いていた。

 

(*゚ー゚)「お兄ちゃん、無理言っちゃってごめんね」

 

( ^ω^)「おっおっ、気にすることないお。僕もいい気分転換になるお

 

 

今日は蝉の声が聴こえず、代わりにしとしとと雨音が響いている。

 

木々の葉っぱは宝石のような雫で濡れていた。

 

見るもの全てが新鮮で、雨の日にしか堪能できないことだった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕は、雨の中の散歩も悪くないなと思った。

 

109: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 20:52:33.38 ID:/YDuLUAZ0

 

モララーの後を付いていくと、視界の開けた場所に出た。

 

そこには古びた家が建っていて、雨宿りもできそうだ。

 

海が見える。いつもよりも波が激しかった。

 

( ^ω^)「ここなら雲もよく見えるお」

 

( ・∀・)「でしょ?さあ書くぞー!」

 

(*゚ー゚)「その前にお昼にしない?もう午後を回ったよ」

 

張り切るモララーをしぃが制止した。

 

( ^ω^)「賛成だお!」

 

廃屋の縁側に座り、お弁当を広げた。

 

二人の好みに合わせたのか、エビフライや粉ふきいも、プチトマト等が入っ

 

ていた。

 

ご飯には鶏、卵、ほうれん草の三色そぼろが乗せられている。

 

僕も小さい頃大好きだったおかずばかりだった。

 

113: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 20:55:56.60 ID:/YDuLUAZ0

 

( ・∀・)「ごちそうさま!よーし、がんばるぞー」

 

お弁当を食べ終わるなり、モララーは手提げ鞄からスケッチブックを取り出

 

した。

 

雲の様子を観察しながら、集中して鉛筆を走らせる。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(*゚ー゚)「私も始めよっと」

 

しぃも自由研究に取り掛かった。

 

しぃの描く絵はモララーよりも繊細で、雲の特徴も詳しく書き込まれていた

 

 

雨雲は空全体に広がっていた。

 

何層にも積み重なったその姿はどこか気持ちを不安にさせる。

 

僕はカメラを構え、雲に覆われた空と、二人の様子を撮影した。

 

115: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 20:58:12.70 ID:/YDuLUAZ0

 

(;・∀・)「うーん、うーん」

 

ふと目をやると、モララーの手が止まっていた。

 

( ^ω^)「どうしたんだお?」

 

(;・∀・)「雲の色が決まらないんだよー」

 

スケッチを見せてもらうと、なるほど絵はよく描けている。

 

晴れの日の雲との違いも十分に説明されている。

 

ただその雲には色がなかった。

 

116: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 20:58:3

 

4.49 ID:pW3TnjPuO

 

良作支援

 

117: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 20:59:1

 

2.93 ID:3Jn8lU6J0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

なごむな

 

119: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 21:01:00.56 ID:/YDuLUAZ0

 

モララーが悩む。

 

自分の中の雲のイメージが表現できなくて、もどかしく感じているようだ。

 

 

(*゚ー゚)「私は黒を使って塗ってるよ」

 

しぃの絵は、黒の濃淡を使って巧く雲の様子が表現されていた。

 

(;・∀・)「お姉ちゃんは絵がうまいからいいなー」

 

困り果てたモララーは、仕方ないなというような顔をして色鉛筆を漁った。

 

 

120: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 21:03:36.83 ID:/YDuLUAZ0

 

(;・∀・)「もう適当に塗ろっかな……」

 

( ^ω^)「モララーには、雲が何色に見えるのかお?」

 

( ・∀・)「うーん、灰色っぽいけど、ちょっと違うかなって……」

 

( ^ω^)「それじゃあ、ちゃんと自分の感じた通りに塗るんだお」

 

(;・∀・)「でも……いい色がないよ……」

 

モララーはそう言って13色の色鉛筆のケースに目を落とす。

 

( ^ω^)「目に映るものの色なんて、最初から用意されてないお」

 

僕はモララーの顔を見つめて言った。

 

( ^ω^)「この世界には完璧に絵にできる景色なんか一つもないお」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「僕はカメラを通してそのことに気付いたんだお」

 

( ^ω^)「だから、完璧じゃなくてもいいから、自分が感じたままに表

 

現するんだお」

 

121: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 21:06:36.73 ID:/YDuLUAZ0

 

( ・∀・)「……うん、そうだね。僕の感覚で塗るよ!」

 

そう言ってモララーは紙一面を水色で塗った。

 

( ^ω^)「お?」

 

( ・∀・)「僕には、こう見えたんだ!」

 

水色がかった雲に黒の色鉛筆を薄く広げるように塗っていく。

 

それはまるで空を覆っていくようだった。

 

立ち上る煙のような雲ではなく、恵みの雨を降らせる雲を、モララーは描い

 

た。

 

( ^ω^)「たった2色でこれだけ表現できるなんて凄いお!」

 

(*・∀・)「え……そっ、そうかな」

 

(*゚ー゚)「うん、よくできてるよ!」

 

本来は観察のスケッチなのだから、ここまでこだわる必要はないのかもしれ

 

ない。

 

だけども、僕は二人にこの風景を忘れてほしくなかった。

 

僕たちの夏の思い出として。

 

123: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 21:08:4

 

 

 

↓次ページへつづく↓

4.75 ID:khovJ1lF0

 

モララー良い感性してるな・・・

 

色塗りが下手な俺にはとてもうらやましい

 

124: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 21:08:59.22 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「おっ?」

 

空を見上げると、雲の切れ間から日が差し込んできた。

 

気が付くと、もう雨はだいぶ収まっていた。

 

(;・∀・)「あっ、まだ全部出来てないのに!」

 

( ^ω^)「カメラに撮ってあるから大丈夫だお」

 

( ・∀・)「さすが兄ちゃんだ!」

 

(*^ω^)「おっおっおっ」

 

125: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 21:09:5

 

5.03 ID:9gOpcAET0

 

モララーをかわいいと思ったのは初めてかもしれないwwwwww

 

支援

 

126: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 21:11:01.78 ID:/YDuLUAZ0

 

雲が晴れると空に虹がかかった。

 

どんな筆でも表現できないだろう、幻想的な七色の橋。

 

僕はすぐにカメラを構えて、その姿をレンズに収めた。

 

淡い色をした虹は、ピントがずれて少しぼやけた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

127: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 21:12:3

 

7.66 ID:pW3TnjPuO

 

モララーの才能にsit

 

128: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 21:13:31.66 ID:/YDuLUAZ0

 

第四話は以上です。ありがとうございました

 

今日はもう1,2話ほど投下しようと思います

 

少しの間、批評や質問などがあれば答えます

 

>>105

 

そうしていただけると有難いです

 

お手数ですが、よろしくお願いします

 

131: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 21:15:2

 

6.80 ID:pW3TnjPuO

 

作者の文才にsit

 

137: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 21:41:3

 

4.96 ID:FTN69fyE0

 

wktk保守

 

142: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:01:10.83 ID:/YDuLUAZ0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第五話

 

雲ひとつない晴れ空。

 

今日は一段と太陽がぎらついている。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「今日も暑くなりそうだお!」

 

朝食を済ませた後、僕は部屋の窓を開けて空気の入れ替えをしていた。

 

爽やかな夏風が、僕の頬に吹きかかった。

 

僕は、今日はいつもと違うことをしてみようと考えた。

 

先日ドクオさんに言われた「自分を変えろ」という言葉を思い出す。

 

僕に足りなかったのは積極性だ。

 

受動的な僕は、見ず知らずの人ばかりの高校では友達ができずに浮いてしま

 

った。

 

だけどこっちに来てからは、だいぶマシになってきたと思う。

 

今日は、もっと積極的になってみよう。そう決意して、僕は部屋を後にした

 

 

143: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:03:52.63 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「ツン、ちょっといいかお?」

 

ツンの部屋の前にやってきて、扉をノックする。

 

ξ゚⊿゚)ξ「なによ」

 

( ^ω^)「今日は、一緒に散歩に行かないかお?」

 

ξ;゚⊿゚)ξ「……は?」

 

ツンは呆気に取られたような顔をした。

 

僕は女の子に対しては特に受け身だ。

 

今までは声をかけることすらままならなかった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

だから、今日はツンを誘ってみることにした。

 

――――――デートのお誘いってわけじゃないけど。

 

145: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:06:22.17 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「だめかお?」

 

ξ゚⊿゚)ξ「いや、ダメって言うか……大体、私が散歩なんかしても仕方な

 

いじゃない」

 

( ^ω^)「ふふふ、実は昨日とっておきの場所を見つけたんだお!」

 

ξ゚⊿゚)ξ「とっておきの場所?」

 

( ^ω^)「知りたかったら一緒に来るお」

 

僕は焦らすように言ってみた。

 

ξ゚⊿゚)ξ「……いいわ、暇だし。付いていってあげる」

 

(*^ω^)「やっただお!それじゃ、今日の夜出発だお!」

 

ξ;゚⊿゚)ξ「……え、夜!?」

 

147: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:08:31.93 ID:/YDuLUAZ0

 

ツンとの約束を取り付けた僕は、上機嫌で一階に下りていった。

 

今日のお昼ご飯は冷やしうどん。

 

ネギとしょうがをつゆに入れ、割り箸をうどんへと伸ばす。

 

コシのある麺に歯を入れて、もちもちとした感触を楽しむ。

 

つるつるとしたのどごしがたまらない。あっという間に食べ終えてしまった

 

 

 

 

↓次ページへつづく↓

148: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:11:02.58 ID:/YDuLUAZ0

 

(´・ω・`)「ブーン君、ちょっといいかい」

 

食後しばらくして、叔父さんに声をかけられた。

 

( ^ω^)「なんですかお?」

 

(´・ω・`)「実はね、手伝ってほしいことがあるんだ」

 

見ると、叔父さんの手元にはノートが数冊並べられていた。

 

(´・ω・`)「先月の出荷分の売上を計算してたんだ。悪いけど手を貸して

 

くれないかな」

 

( ^ω^)「お安いご用ですお」

 

(´・ω・`)「すまないね。じゃあハウス栽培の分の計算を頼むよ」

 

( ^ω^)「任せてくださいお!」

 

149: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:14:06.72 ID:/YDuLUAZ0

 

渡されたノートにはキロ単位の果実の価格や、出荷量などが事細かく記され

 

ていた。

 

電卓を使って一つ一つ計算し、記帳していく。

 

単純作業だが中々に疲れる仕事だった。

 

(;^ω^)「終わらNEEEEEEEEEE!!!!」

 

(´・ω・`)「ははは、意外と面倒な仕事だろう?」

 

(;^ω^)「なめてましたお。簡単なことだと思ってましたお」

 

(´・ω・`)「確かに一見すると簡単そうに見えるかもね」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

叔父さんは机の上のお茶を飲みながら言った。

 

(´・ω・`)「だけどね、やってみると大変なんだよ」

 

(;^ω^)「分かりますお……」

 

叔父さんの言葉が身にしみて分かる。

 

早くも根をあげている自分をよそに、叔父さんはてきぱきと作業を済ませて

 

いく。

 

自分の不甲斐なさに腹が立った。

 

151: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:16:17.01 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「僕も頑張るお……」

 

(´・ω・`)「ブーン君、この作業は単純で、地味で、つまらない仕事だ」

 

(´・ω・`)「だけどね、どんなに苦しくてもやらなくちゃいけないことな

 

んだ」

 

(´・ω・`)「世の中に出たら、もっと多くの苦しいことがある」

 

(´・ω・`)「でも、諦めちゃだめだよ。さぁ、作業に戻ろうか」

 

叔父さんはそう言って、またノートに目を移した。

 

( ^ω^)「(よし……!)」

 

叔父さんに諭されて、僕は再び作業を始めた。

 

面倒でも、がんばろう。

 

そう心を入れ替えて、電卓をさっきまでより強く叩いた。

 

153: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:19:44.70 ID:/YDuLUAZ0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

計算が終わるころにはもう夕食の時間になっていた。

 

あんなにぎらついていた太陽も、すっかりいなくなってしまった。

 

日が落ちて月が空を支配し始める頃、僕たちは出発した。

 

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇブーン、一体どこに行くって言うのよ」

 

( ^ω^)「それは着いてからのお楽しみだお」

 

懐中電灯を片手に山道を歩いて行く。

 

(;^ω^)「それにしても蒸し暑いお」

 

ξ;゚⊿゚)ξ「ホントね……夏はこれがなければいいのに……」

 

日が落ちても暑さは変わらなかった。ツンがじっとりと汗ばんでいる。

 

ツンの芳しい汗の匂いが、風に乗って流れてくる。

 

僕は少しだけ、変な気持ちになってしまった。

 

ξ゚⊿゚)ξ「……ちょっと、なんか目つきがやらしいわよ」

 

(;^ω^)「あうあう」

 

154: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 22:20:0

 

3.56 ID:uLgBBMr4O

 

支援

 

156: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:23:07.24 ID:/YDuLUAZ0

 

家を出てから30分ほど経っただろうか。

 

僕たちはまだ長い道を歩き続けていた。

 

まだ辺りはそれほど暗くなっていない。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

懐中電灯も、今は必要なかった。

 

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、まだなの?」

 

( ^ω^)「もう少しだお。あと10分ほどで着くはずだお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「もしかして、誰もいないところに連れ込んで襲うとか……」

 

(;^ω^)「そ、そんなことしないおっ!!」

 

ξ゚⊿゚)ξ「あははっ、冗談よ♪あんたにそんな勇気もないだろうしね」

 

(;^ω^)「お……」

 

僕たちは目的地へと急いだ。

 

もうすぐ月が高くまで上り、暗闇が訪れるだろう。

 

それまでに、着かなくては。

 

157: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:26:06.57 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「おっ!着いたお!」

 

ようやく、とっておきの場所に到着した。

 

そこは大きな溜め池。

 

何か特徴があるわけでもなく、よくある池といった感じだった。

 

( ^ω^)「ここがその場所だお。もう少し待つととっておきが見られる

 

お!」

 

ξ゚⊿゚)ξ「……あのねぇ、ブーン。言いにくい事なんだけど……」

 

( ^ω^)「お?」

 

158: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:28:25.75 ID:/YDuLUAZ0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ゚⊿゚)ξ「あんたが見せたいものって、ホタルの事でしょ?」

 

ツンが僕の顔を見て、申し訳なさそうに口を開いた。

 

ξ゚⊿゚)ξ「だって……夜、水辺で見られるものなんて、ホタルぐらいじゃ

 

ない」

 

ξ゚⊿゚)ξ「ホタルなら、あの川でも見られるし……ここではそんなに珍し

 

くないの」

 

ξ゚⊿゚)ξ「せっかく連れてきてもらって悪いけど……」

 

( ^ω^)「違うお、ぜんぜん違うお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「……えっ?」

 

( ^ω^)「ホタルみたいかもしれないけど、もっと素敵なものだお」

 

161: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:31:08.74 ID:/YDuLUAZ0

 

僕たちは岸辺に座り込んで、その時を待った。

 

ツンが不思議そうな顔でこちらを見てくる。

 

ξ゚⊿゚)ξ「ねぇ、ホタルみたいなものって……」

 

( ^ω^)「もうすぐ見られるお、もうすぐ……」

 

時計に目をやると、もう夜の8時になろうとしていた。

 

辺りはすっかり暗くなってきた。

 

もう少し――――――――。

 

163: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:33:52.96 ID:/YDuLUAZ0

 

ξ゚⊿゚)ξ「あ、星が出てきたわね……」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

空を見上げていたツンが呟いた。

 

( ^ω^)「今だお!ツン、池を見てみるお!」

 

ξ゚⊿゚)ξ「?池なんか見ても……っ!?」

 

ツンが夜空から目を落とすと、そこにはまた夜空が広がっていた。

 

星がきらきらと、そしてゆらゆらと池の上で輝いている。

 

それはまるで、ホタルの光のようだった。

 

ξ゚⊿゚)ξ「……ブーン、これって……」

 

( ^ω^)「これが、僕が見せたかったものだお!」

 

165: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:36:11.51 ID:/YDuLUAZ0

 

池に映った星が、水面の揺らぎに合わせてゆらめく。

 

視線を上げると、そこは満点の夜空。

 

上を見ても下を見ても、星がきらめいている。

 

その光景は幻想的で、言葉に出来ないほど美しかった。

 

166: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:38:22.64 ID:/YDuLUAZ0

 

( ^ω^)「僕はこの池を見つけたとき、凄く光を反射する池だと思った

 

んだお」

 

( ^ω^)「それはまるで鏡を見ているかのようだったお」

 

( ^ω^)「だから、きっと星空も映してくれると思ったんだお!」

 

僕とツンは、一緒に目の前に広がる光景を眺めた。

 

ξ゚⊿゚)ξ「きれいね……」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「気に入ってもらえて良かったお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「本当に、きれい……」

 

周りが暗くなるにつれ、星はますます輝きを増していった。

 

168: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:41:06.76 ID:/YDuLUAZ0

 

ξ゚⊿゚)ξ「あっ!」

 

星のホタルが、すーっと水面を滑っていった。

 

ξ゚⊿゚)ξ「流れ星、だったのね……」

 

ツンが空を見上げてため息をついた。

 

( ^ω^)「何かお願いするんだったお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、損しちゃったわ」

 

ξ゚⊿゚)ξ「でも、それ以上に得しちゃった。こんなにきれいな景色を見ら

 

れるなんて」

 

170: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:43:15.98 ID:/YDuLUAZ0

 

ξ゚⊿゚)ξ「……ブーン、今日はありがとうね」

 

帰り道の途中で、ツンは突然そう言った。

 

( ^ω^)「お?」

 

ξ゚⊿゚)ξ「また、一緒に見に行くわよ。これは命令だからね!」

 

(;^ω^)「おっおっ、分かったお」

 

今日ツンを誘って本当に良かった。

 

僕も少しは積極的になれたかな。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

そう思いながら、懐中電灯で目の前の道を照らした。

 

172: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:46:36.37 ID:/YDuLUAZ0

 

一つの星が夜空を駆けた。

 

ξ゚⊿゚)ξ「あっ、また流れ星!」

 

( ^ω^)「(おっ!願い事するお!)」

 

( ^ω^)「(自分を変えられますように……自分を変えられますように

 

……自分(ry)」

 

ξ゚⊿゚)ξ「ねえ、何をお願いしたのよ」

 

( ^ω^)「……大したことじゃないお。それより、ツンは何をお願いし

 

たのかお?」

 

ξ;゚⊿゚)ξ「え、それは……ひっ、秘密よっ!」

 

(;^ω^)「ちょwwwwwww走らないでほしいおwwwwwww」

 

二つの懐中電灯の光が辺りを照らす。

 

柔らかな月明かりが、そっと二人に降り注いだ。

 

173: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 22:48:06.33 ID:/YDuLUAZ0

 

これで第5話は終わり

 

今日の投下分は以上です。ありがとうございました

 

174: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 22:48:3

 

9.68 ID:uWUcEXvk0

 

 

 

 

↓次ページへつづく↓

175: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 22:48:4

 

2.58 ID:w7z9eN7Q0

 

超乙

 

181: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 22:51:0

 

0.88 ID:nEMe9Hoy0

 

長いあいだ乙

 

次も楽しみにしてる

 

182: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 22:51:0

 

1.09 ID:9gOpcAET0

 

 

何てうらやましい夏休みなんだ……

 

190: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 23:13:3

 

2.07 ID:SGSCpwhPO

 

ツンとかモラとかしぃとかは何歳の設定?

 

191: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/08(日) 23:21:04.12 ID:/YDuLUAZ0

 

>>190

 

一応設定は

 

ξ゚⊿゚)ξ  16歳

 

(*゚ー゚)  12歳

 

( ・∀・)  10歳

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ですが基本的に見る方の自由です

 

193: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 23:25:5

 

9.71 ID:rXImDD4j0

 

乙 テラ和んだ

 

194: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/08(日) 23:28:4

 

4.95 ID:6Dh6eZdh0

 

 

今年はいい夏になるといいなー

 

5: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 21:47:15.00 ID:uJ7PyqMC0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第六話

 

朝の日差しが、カーテンの隙間から漏れてくる。

 

( ´ω`)「あと5分……いや10分ぐらい……」

 

もう少しだけ寝ていようと思い、タオルケットを掛け直す。

 

―――――すると、耳元で誰かの声がした。

 

ξ#゚⊿゚)ξ「さっさと起きなさい!!」

 

(;゚ω゚)「アッ―――!!」

 

ツンに思いっきり水をぶっかけられた。

 

うとうととした意識が一気に現実に引き戻される。

 

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、もう朝ごはんよ。あんたが来ないと私たちが食べられな

 

いんだからね!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(;^ω^)「分かったお。今すぐ起きるお」

 

目を覚ますと、びっしょりと寝汗をかいていることに気が付いた。

 

僕はそそくさと服を着替え、みんなの待つ一階へと下りて行った。

 

※前スレ→( ^ω^)と夏の日のようです

 

8: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 21:49:44.81 ID:uJ7PyqMC0

 

朝食を済ませて縁側で涼んでいると、戸を叩く音が聴こえた。

 

(‘A`)「ういーす。ブーンいるかー?」

 

玄関に行ってみると、そこにはドクオさんが立っていた。

 

( ^ω^)「ドクオさん、おはようございますおー」

 

(‘A`)「おう、おはようさん」

 

玄関先で軽い雑談をする。

 

どこまでも青い空を、二匹のシオカラトンボが駆けているのが見えた。

 

(‘A`)「ところでよ、お前、釣りに興味はあるか?」

 

( ^ω^)「お?」

 

話の途中でドクオさんが突然切り出した。

 

( ^ω^)「興味も何も、やったこともありませんお」

 

9: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 21:51:48.29 ID:uJ7PyqMC0

 

(‘A`)「そうか、そいつぁ丁度いいな」

 

ドクオさんは煙草を一本取り出し、火を点けながら言った。

 

(‘A`)「どうせ今日も暇だろ? 今から釣りに行かねぇか」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「本当ですかお! ぜひ行きたいですお!」

 

(‘A`)「よっしゃ、そうと決まったらさっさと行くぜ」

 

ドクオさんが「何も持ってこなくていい」と言うので、手ぶらで家を出た。

 

 

釣りなんてしたこともなかったけど、海に出てみたいという気持ちはあった

 

 

照りつける太陽の下、海沿いの道を歩いていく。

 

潮の香りが風に乗って運ばれてきた。

 

10: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 21:54:17.83 ID:uJ7PyqMC0

 

船着場に着くと、ドクオさんが誰かに声をかけた。

 

(‘A`)「よぉジョルジュ、アジ釣りに行くから船出してくれや」

 

( ゚∀゚)「あ゛ーっ!? ふざけてんじゃねぇ、おめーが船出しゃあえぇや

 

ろが!」

 

いかにも漁師、といった感じの男の人がドクオさんに文句を言う。

 

タンクトップから日焼けした肌を覗かせている。

 

(‘A`)「ばっきゃろい、俺の船は聖域だ。そんな簡単に人を乗せられるかよ

 

 

( ゚∀゚)「ほれやったら俺の船は何なんや!?」

 

(‘A`)「気にするな。実はよ、こいつを海に連れて行きたいんでな」

 

そう言って、ドクオさんが僕を前に出した。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

男の人が僕を訝しげにじろじろと見てくる。

 

12: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 21:57:08.70 ID:uJ7PyqMC0

 

しばらく睨み続けた後、男の人は口を開いた。

 

( ゚∀゚)「おい、おめー名前は何て言うがか?」

 

(;^ω^)「お、内藤といいますお。ブーンと呼んでくださいお」

 

( ゚∀゚)「おめーが海に行きたいっていうんか?」

 

(;^ω^)「そ、そうですお。初めて釣りをしに来たんですお」

 

( ゚∀゚)「なんな、ほんなことなら最初っから言わんけ!」

 

不満そうな顔がいきなり笑顔に変わった。

 

( ゚∀゚)「ほーかほーか! ほしたら船出したるけんのぉ! 若ぇもんに海

 

見せたるわ!!」

 

男はそう言って船のロープを外す。どうやら許可を頂けたようだ。

 

13: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/14(土) 21:58:03

 

.52 ID:Xqk4xbFn0

 

支援

 

14: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 21:59:38.86 ID:uJ7PyqMC0

 

船着き場を後にし、沖へと向かった。

 

きらきら光る海面を、僕たちを乗せた船が滑走していく。

 

( ゚∀゚)「海はええぞー! 海には浪漫があるけんのー!」

 

舵を取る男の人の名前はジョルジュと言うらしい。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ドクオさんと同じでこの辺りで漁師をやっているそうだ。

 

(‘A`)「あいつ頭おかしいからな。あんまり関わるんじゃねぇぞ」

 

(;^ω^)「……というか何を喋っているのか分かりませんお」

 

(‘A`)「あいつの方言はきついからな……あんな古い言葉使ってんのあいつ

 

ぐらいだぜ」

 

ドクオさんが呆れ顔を作りつつも、最後にこう付け加えた。

 

(‘A`)「でもよ、あいつの海に対する情熱だけは、本物だぜ」

 

17: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:02:29.22 ID:uJ7PyqMC0

 

1時間ほどの船旅の末、船は目的の沖に到着した。

 

日差しはきつく、潮風が肌に染みる。

 

( ゚∀゚)「よっしゃ、ほしたら始めよか!」

 

開口一番、ジョルジュさんは用意した仕掛けを海に落とした。

 

( ゚∀゚)「――――ほれ来た!」

 

勢いよく竿を引くと、仕掛けには二匹のアジがかかっていた。

 

ジョルジュさんは針を手際よく外していく。

 

( ^ω^)「凄いお! 僕もやるお!」

 

僕は竿を構え、釣り糸をたらした。

 

頭の上を飛ぶウミネコの鳴き声が、潮騒に混じってこだまする。

 

心地よい船の揺れを感じながら、魚がかかるのを待ち続けた。

 

19: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:05:13.21 ID:uJ7PyqMC0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(‘A`)「よーし喰った」

 

ドクオさんがリールを巻き、アジを釣り上げる。

 

(‘A`)「うし、今日の海はご機嫌だな」

 

そう言ってクーラーボックスにアジを放り込む。

 

その中には、既にたくさんのアジが入っていた。

 

(;^ω^)「……全然釣れないお……」

 

一方僕はと言うと、未だに一匹も釣れてなかった。

 

巻いては投げ、巻いては投げを繰り返すだけだった。

 

20: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:07:34.27 ID:uJ7PyqMC0

 

( ゚∀゚)「あ゛―ちげぇちげぇ! サビキはそうやってやるんじゃねぇが!

 

 

見かねたジョルジュさんが僕の元にやってきた。

 

( ゚∀゚)「ええか? サビキってのは仕掛けを落としたらそこで止めるんよ

 

 

僕の竿を使って釣りをする。

 

( ゚∀゚)「んでカゴの餌をまいたら、後は竿に集中せぇ」

 

サビキ釣りというのは枝分かれした釣り針を使う釣り方のことだ。

 

そこにサビキカゴという撒き餌入れを繋げて、餌をばらまいて魚を呼び寄せ

 

る。

 

そして、魚が針にかかるのをひたすら待つ。これがポイントらしい。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ゚∀゚)「ほぅれ、かかったぞー!」

 

手に伝わる引きを感じ取り、ジョルジュさんは釣り糸を勢いよく巻き上げる

 

 

数匹のアジが海からあがり、空中でぴちぴちと跳ねた。

 

21: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:10:07.62 ID:uJ7PyqMC0

 

( ゚∀゚)「ほれ、やってみんか!」

 

ジョルジュさんは僕に竿を渡し、「おっしゃー引いとるわ!」と叫びながら

 

戻っていった。

 

( ^ω^)「……よし」

 

僕は竿を握り、波立つ海に仕掛けを落とした。

 

波に揺られ、カゴの中の撒き餌が広がっていく。

 

教えてもらった通り、アジがかかるまで竿に集中した。

 

( ^ω^)「……お?」

 

しばらくの間じっと待ち続けていると、釣り竿が、くんっ、と反応する。

 

握りしめた手に、確かな引きを感じた。

 

23: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:12:51.29 ID:uJ7PyqMC0

 

(‘A`)「おいっ、ぼさっとするな! 引いてるぞ!」

 

(;^ω^)「おおおおおおっ!?」

 

ドクオさんの声を聞いて急いで糸を巻き上げる。

 

重い手ごたえが伝わる。間違いない、仕掛けに魚がかかった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(‘A`)「よし、あげるぞ!」

 

ドクオさんが網を用意し、海面に浮いてきたアジをすくいあげた。

 

(*^ω^)「やったお! 初めて釣れたお!」

 

(‘A`)「見てみろよ、5匹も釣れてやがるぜ」

 

見ると、仕掛けに付けられた5本の針全部にアジがかかっていた。

 

(‘A`)「すげーじゃねぇか。いきなり5匹とはな」

 

( ゚∀゚)「おぉーやるのう! 才能あるんじゃねぇか!?」

 

(*^ω^)「ふふふだお」

 

僕は、素直に嬉しかった。

 

24: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:15:11.60 ID:uJ7PyqMC0

 

一度コツを攫んでからは、入れ食い状態だった。

 

仕掛けを落とすたびにアジが釣れる。

 

いつの間にか、僕のクーラーボックスはアジで溢れかえっていた。

 

( ゚∀゚)「おーし、そろそろ飯にするけ!」

 

1時を過ぎたところで、ジョルジュさんが声を上げた。

 

(‘A`)「お前に海の男の料理、食わせてやるよ」

 

(*^ω^)「楽しみだお!」

 

26: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:18:01.58 ID:uJ7PyqMC0

 

釣り上げたアジを、ジョルジュさんが華麗な手つきでさばいていく。

 

厚めに切られたアジの身を、大皿に豪快に並べた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

まずは一品目、アジの刺身。

 

さらにジョルジュさんは、「これがうめーんだ」と言いながら残ったアジの

 

身をタタキにした。

 

それを熱々のご飯にのせ、ネギとしょうがをのせたら醤油をぶっかけて食ら

 

いつく。

 

漁師めし、ってやつらしい。

 

(*^ω^)「やべぇwwwwww超うめぇwwwwwwww」

 

( ゚∀゚)「ほぉやろが! かーっ、たまんねぇなこいつぁ!」

 

僕は夢中でがっついた。

 

口いっぱいに新鮮なアジの甘味が広がる。

 

とれたてのアジの身は風味もよく、脂の乗りも抜群だった。

 

27: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:20:53.09 ID:uJ7PyqMC0

 

(‘A`)「ほれ、こっちもできたぞ」

 

僕たちが先に食べていると、ドクオさんが鍋を運んできた。

 

(‘A`)「つみれ汁だ。遠慮せずに食ってくれ」

 

(*^ω^)「ありがたくいただきますお!」

 

蓋を開けると、美味しそうな匂いの湯気が立ち上った。

 

味噌ベースのだしにアジの旨みがじんわりと溶け込んでいる。

 

つみれに歯を入れると、ほんのりとしょうがの香りがした。

 

(*^ω^)「UMEEEEEEEEEEEE!!!!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ゚∀゚)「ええ食べっぷりやのぉ! ばんばん食えや!」

 

(*^ω^)「もちろんですお!」

 

僕たちは少し遅い昼食を夢中になってがっついた。

 

海の上での食事は初めてで、ちょっとだけ興奮した。

 

29: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/14(土) 22:21:51

 

.78 ID:2I3CqvEv0

 

つみれって、あのザラザラした舌触りがうまいよな支援

 

30: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:24:00.58 ID:uJ7PyqMC0

 

昼食を終えて、僕たちは釣りを再開した。

 

空が赤く染まる頃、僕の隣にジョルジュさんがやってきた。

 

( ゚∀゚)「よぉ釣るのー。どや、漁師にならんか?」

 

(;^ω^)「さすがにそれは難しいですお」

 

( ゚∀゚)「かーっ! そんだけ釣っといてよぉ言うわい!」

 

ジョルジュさんが肩をばんばんと叩く。

 

僕たちは大声で笑いあった。

 

( ^ω^)「でも、海は楽しいですお! 浪漫がありますお!」

 

( ゚∀゚)「おっ、俺の言葉じゃねぇか」

 

そう言うと、豪快に笑っていたジョルジュさんは少し複雑そうな顔をした。

 

 

( ゚∀゚)「でもよぉ、本当のこと言うとよぉ、俺の海には浪漫なんかねぇん

 

 

 

↓次ページへつづく↓

だわ」

 

( ^ω^)「お?」

 

32: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/14(土) 22:25:10

 

.83 ID:6lpEPZFE0

 

みんな書き込まないのはきっと邪魔がしたくないからだ

 

がんがん書いてくれ

 

支援

 

33: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:26:37.29 ID:uJ7PyqMC0

 

それまでとは違う雰囲気で、ジョルジュさんは語りだした。

 

( ゚∀゚)「浪漫なんてのぉ、結局は失敗した時の都合のいい言い訳なんだわ

 

 

( ゚∀゚)「俺の海にはよ、『成功』しかねぇ」

 

( ゚∀゚)「最初っから『失敗』なんて考えねぇ……ほぉやろが?」

 

僕はジョルジュさんの言葉を噛みしめる。

 

最初から、『失敗』なんて考えない。

 

ただひたすらに『成功』を追い求める。

 

僕にはそれがとても大切なことのように思えた。

 

( ^ω^)「僕も、その通りだと思いますお」

 

( ゚∀゚)「はっはっはっ! ほーかほーか!」

 

さっきまでのように、ジョルジュさんは陽気な声を上げた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕たちは沈んでいく夕日を眺めながら、しばらくの間船に揺られていた。

 

35: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:28:55.81 ID:uJ7PyqMC0

 

( ^ω^)「今日は、ありがとうございましたお!」

 

岸に戻った後、僕はドクオさんとジョルジュさんに感謝の言葉を述べた。

 

(‘A`)「喜んでもらえてよかったぜ」

 

( ゚∀゚)「また来ーや! いつでも連れてっちゃるけんのー!」

 

( ^ω^)「楽しみにしてますお!」

 

二人に見送られながら、クーラーボックスを担いで家路についた。

 

辺りは薄暗くなってきている。

 

船の上から見た夕日は、もう思い出になってしまった。

 

思い出の中の夕日はどこか切なくて、僕の心をきゅっと締め付けた。

 

37: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:30:00.42 ID:uJ7PyqMC0

 

以上で6話はおわりです

 

10分後に7話を投下します

 

38: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/14(土) 22:32:00

 

.55 ID:/Jp7gIHM0

 

海の男に惚れた支援

 

40: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:39:18.31 ID:uJ7PyqMC0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第七話

 

今日の太陽はまた一段とご機嫌だ。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

朝のニュースによると、この夏一番の暑さらしい。

 

地面から立ち上る熱気を感じながら、僕たちは川を目指して歩いていた。

 

(;゚ー゚)「今日は暑いねー」

 

(;^ω^)「全くだお」

 

ξ;゚⊿゚)ξ「あ゛ー、もうだめ……」

 

あまりの灼熱に、三人そろって顔を歪める。

 

( ・∀・)「姉ちゃんたち情けないなー!」

 

ただ一人、モララーだけはうきうきとした顔をしていた。

 

この子はいつだって元気だ。この元気を分けてもらいたいな、と思った。

 

41: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:41:44.78 ID:uJ7PyqMC0

 

僕たち4人は、暑さにやられて部屋でへばっているのも良くないだろうと考

 

えた。

 

そこで「川に泳ぎに行こう!」というモララーの提案を受けて、川に行くこ

 

とに決めた。

 

川に着くまでに、僕はシャワーで濡れたように汗をかいていた。

 

肌にぺたりと張り付くシャツが気持ち悪い。

 

(;^ω^)「ようやく到着だお」

 

この美しい川にやってくるのはもう4回目だ。

 

ツンに教えてもらって以来、ここは僕にとって特別な避暑地になった。

 

川の清流はどこまでも透き通った音色を奏でている。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕たちは川沿いを歩き、下流を目指した。

 

44: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:44:12.85 ID:uJ7PyqMC0

 

何匹もの蝉の声が響き渡る。

 

石の足場は不安定で、照り返しがきつかった。

 

( ・∀・)「兄ちゃんは25m泳げる?」

 

( ^ω^)「もちろんだお。100mぐらいまでなら泳げるお」

 

( ・∀・)「うわー凄いなぁ! 僕なんか50mも泳げないのに」

 

(*゚ー゚)「息継ぎが下手だもんね」

 

( ・∀・)「うん……」

 

( ^ω^)「努力すればきっと出来るようになるお! 神様は見てくれて

 

いるお!」

 

僕は励ましの言葉をかけた。

 

いつも元気をもらっている分、少しでもモララーを元気づけたかった。

 

ξ゚⊿゚)ξ「……へぇ、たまにはいい事言うじゃない」

 

( ^ω^)「おっおっおっ」

 

47: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:46:55.85 ID:uJ7PyqMC0

 

ξ゚⊿゚)ξ「この辺りなんかいいんじゃない?」

 

歩いていくうちに、流れの緩やかな場所に辿り着いた。

 

川幅も水深もちょうどよく、ここなら泳ぐのにうってつけだろう。

 

( ・∀・)「よーし。じゃあ、さっそく泳ごうよ!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

言うが早いか、モララーが服を脱ぎ捨てて川に飛び込む。

 

弾けた水が僕にかかり、その冷たさが気持ち良かった。

 

(*゚ー゚)「ちゃんと準備運動しないとダメでしょ!」

 

( ・∀・)「だって我慢できなかったんだもん! すぐ泳げるよう水着も穿

 

いてきたし!」

 

水の中からモララーが大声を出す。

 

その顔は、いつにもまして晴れやかな笑顔だった。

 

48: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/14(土) 22:47:30

 

.65 ID:Y4wuD2e4O

 

キャラ全員に魅力あるよなぁ

 

支援

 

49: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:49:21.56 ID:uJ7PyqMC0

 

(*゚ー゚)「じゃあ、私たちも着替えようか」

 

ξ゚⊿゚)ξ「そうね……いい加減暑いし」

 

気持ち良さそうに泳ぐモララーを見て、女子組は木々の間に入っていった。

 

 

ξ゚⊿゚)ξ「そこの茂みで着替えてくるから」

 

ξ゚⊿゚)ξ「――――――覗いたら、殺す、わよ」

 

(;^ω^)「め、滅相もございませんおっ」

 

ツンに凄まれ、覗く気もないのにうろたえてしまう。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ただ一人残された僕は、そそくさと木の影で着替えを済ませた。

 

52: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:52:08.73 ID:uJ7PyqMC0

 

( ^ω^)「おー! 気持ちいいお!」

 

十分に準備運動を行って、僕は川に飛び込んだ。

 

深さは腰のあたりまであったが、川底が驚くほどくっきりと見えた。

 

ひんやりとした水に頭をつけると、体全身に溜まった熱がさっと逃げて行っ

 

た。

 

(*゚ー゚)「二人ともお待たせー♪」

 

( ^ω^)「おっ?」

 

しぃの声を聞いて、僕は振り返った。

 

(*^ω^)「(おおっ! スク水おにゃのこktkr!!)」

 

そこにいたのは、スクール水着姿のしぃ。

 

今じゃ滅多に見られなくなった旧型のスク水を着た少女に目を奪われる。

 

ああ、これが「ときめき」ってやつか。僕は心の中で神様に感謝した。

 

(;゚ー゚)「お、お兄ちゃんなんか変……」

 

53: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:54:21.73 ID:uJ7PyqMC0

 

ξ゚⊿゚)ξ「――――変っていうか、変態じゃないの?」

 

真っ白なビキニにパレオを巻いたツンが呆れた様子で僕を見ている。

 

素朴な情景には不似合いなほど、洒落た格好だった。

 

( ・∀・)「あれ? なんでツン姉ちゃん、今日は学校の水着じゃないの?

 

 

 

↓次ページへつづく↓

 

ξ;゚⊿゚)ξ「なっ!? こっ、この馬鹿、馬鹿!!」

 

(;・∀・)「痛いっ! 痛いって!」

 

(;^ω^)「…………」

 

55: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:56:13.90 ID:uJ7PyqMC0

 

水上にぷかぷか浮かんでいると、しぃが川底を見つめているのに気がついた

 

 

( ^ω^)「しぃ、何やってるんだお」

 

(*゚ー゚)「あっ、お兄ちゃん。あのね、あそこにお魚さんがいるの」

 

しぃの視線の先を見てみると、確かに川魚が数匹石影で休んでいた。

 

( ^ω^)「よし、捕まえてくるお!」

 

(*゚ー゚)「えー大丈夫かなぁ」

 

( ^ω^)「任せるお!」

 

水の中に入り、魚が逃げないように近づいていく。

 

距離を詰めたら、そこから一気に―――――。

 

(;^ω^)「おぉっ!?」

 

―――――手を伸ばそうとしたら、苔石に足を取られて転んでしまった。

 

頭から水に突っ込んで、一瞬何が起こったのかと思った。

 

(*゚ー゚)「あははー♪ お兄ちゃんおかしぃー♪」

 

情けない僕の姿を見て、しぃは無邪気に笑った。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

56: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/14(土) 22:58:25

 

.16 ID:Xqk4xbFn0

 

支援

 

57: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 22:59:37.49 ID:uJ7PyqMC0

 

精根尽きた僕は水から上がり、しばらく休むことにした。

 

肌に付いた水滴は、あっという間に乾いていった。

 

( ・∀・)「兄ちゃん、兄ちゃん」

 

川辺で休む僕の所に、モララーが平たい小石を持って近寄ってきた。

 

( ・∀・)「水切りで勝負しようよ!」

 

( ^ω^)「いいお。ただし、勝ったらお弁当のウィンナーいただくお!

 

 

( ・∀・)「望むところだ!」

 

モララーの挑戦を受けて僕は川辺の石を拾う。

 

なるべく平たく、そして程よい大きさのものをじっくり吟味した。

 

選んだ石は日に焼けていて、握る手に熱を感じた。

 

58: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:01:36.02 ID:uJ7PyqMC0

 

( ・∀・)「よーし、いくぞー!」

 

先にモララーが川に向けて石を投げた。

 

放たれた石は水面を滑るように跳ねていく。

 

石は飛沫を散らし、勢いがなくなったところで、静かに沈んだ。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ・∀・)「うーん、16回かぁ」

 

モララーが残念そうに呟く。

 

( ^ω^)「今度は僕の番だお!」

 

僕は右手に石を構え、左足を前へ踏み出す。

 

低い弾道で飛ばすことを意識して、肘を引き手首のスナップを利かせる。

 

往年の名投手山田○志のイメージを持って、僕は石を力強く投じた。

 

59: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:03:51.65 ID:uJ7PyqMC0

 

1……2……3…4…5、6、7、8。

 

僕の投げた石は真っすぐに進んでいく。

 

9、10、11…12…13……。

 

13回を過ぎたところで勢いが弱まってきた。

 

( ^ω^)「あと少し、がんばるお!」

 

14……15……。

 

石はそこで沈んだ。

 

最後に上がった水しぶきは、ろうそくの炎のように、ぽんと跳ねてすぐに消

 

えた。

 

(;^ω^)「負けたお……なんという僅差…… 」

 

( ・∀・)「やたっ! ウィンナー、ウィンナー♪」

 

僕に勝利したモララーがはしゃぐ。

 

負けたことは悔しかったが、不思議といやな気はしなかった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

60: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:06:15.81 ID:uJ7PyqMC0

 

12時を過ぎたころ、僕たちは川辺に腰掛けてお弁当を食べた。

 

今日の主食はサンドイッチ。

 

ハムやレタス、瑞々しいトマトが一度に味わえる。

 

(*゚ー゚)「今日はね、私たちもお弁当作り手伝ったんだよ!」

 

( ^ω^)「おっ、そうなのかお?」

 

(*゚ー゚)「うん。お姉ちゃんは不器用だから包丁握らせてもらえなかったけ

 

ど……」

 

ξ;゚⊿゚)ξ「だーっ! よしなさいっ!」

 

談笑しながら、4人でランチボックスを囲む。

 

外でみんなと食べるごはんは、いつもよりも美味しく感じた。

 

もちろん、モララーにウィンナーをあげるのも忘れなかった。

 

62: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:09:02.34 ID:uJ7PyqMC0

 

( ^ω^)「いやー楽しかったお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、でもちょっと日焼けしちゃった」

 

少しだけ赤くなった肌を見て、ツンは呟いた。

 

( ^ω^)「でも意外だったお。ツンが不器用だったなんて……」

 

ξ#゚⊿゚)ξ「がーっ、うるさいわねっ! 生まれつきなのよ!」

 

(;^ω^)「怒ることはないでしょうお」

 

63: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:11:05.30 ID:uJ7PyqMC0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

昼食を済ませ、少しの間泳いでから帰ることにした。

 

しぃとモララーがじゃれあっているのを、僕とツンは川岸で見ていた。

 

( ^ω^)「いやー楽しかったお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「そうね、でもちょっと日焼けしちゃった」

 

少しだけ赤くなった肌を見て、ツンは呟いた。

 

( ^ω^)「でも意外だったお。ツンが不器用だったなんて……」

 

ξ#゚⊿゚)ξ「がーっ、うるさいわねっ! 生まれつきなのよ!」

 

(;^ω^)「怒ることはないでしょうお」

 

64: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:13:23.76 ID:uJ7PyqMC0

 

ξ゚⊿゚)ξ「……でもね、いつかはちゃんと出来るようになりたいの」

 

ツンが、ぽつりと漏らす。

 

ξ゚⊿゚)ξ「女の子なんだし、料理ぐらい出来ないとね……」

 

( ^ω^)「ツンならきっと上手くなれるお!」

 

ξ*゚⊿゚)ξ「そっ、そうかな」

 

( ^ω^)「神様は、見てくれているお」

 

ツンと二人、空を見上げる。

 

太陽はてっぺんで輝き続けている。

 

あんなに聴こえた蝉の声も、今の僕たちの耳には届かなかった。

 

65: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:14:09.16 ID:uJ7PyqMC0

 

以上で7話は終了です

 

 

 

↓次ページへつづく↓

またちょっと間を空けて8話を投下します

 

68: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/14(土) 23:20:21

 

.06 ID:vnWtONbqO

 

一旦乙

 

八話頑張れ

 

69: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:21:00.61 ID:uJ7PyqMC0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第八話

 

穏やかな風薫る昼下がり。

 

僕とツンは、まどろみながら縁側から海を眺めていた。

 

ξ゚⊿゚)ξ「……暇ね」

 

( ^ω^)「……暇だお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「……何か面白いことないの」

 

( ^ω^)「……ないお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「……眠い」

 

( ^ω^)「……同意だお」

 

叔父さんと叔母さんは、今朝から隣町まで買い物に行っていた。

 

しぃとモララーは二階で夏休みの宿題をしている。

 

残された僕たちは、二人、夢と現実の間を漂っていた。

 

71: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:23:31.94 ID:uJ7PyqMC0

 

( ^ω^)「……お?」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ-⊿-)ξ「すー……すー……」

 

気がつくと、ツンは横で寝息を立てていた。

 

安らかな寝顔に胸がどきどきしてしまう。

 

生温い風が、そっとツンの髪をなでた。

 

( ^ω^)「僕も寝るかお……」

 

僕はツンの隣に寝転がった。

 

目を閉じると、今すぐにも眠れそうだった。

 

眠気に身を任せていると、戸を叩く音が聴こえた。

 

こつん、という小さな音。

 

僕はその音に目覚めさせられ、玄関へと向かった。

 

73: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:26:08.83 ID:uJ7PyqMC0

 

/ ,’ 3「ごめんくださいな」

 

―――――戸を開けると、見知らぬ老人が立っていた。

 

( ^ω^)「あの……どなたですかお?」

 

/ ,’ 3「むぅ、見ない顔じゃの。あんたこそ誰なのかね」

 

( ^ω^)「僕は内藤と言いますお。ブーンと呼んでほしいお!」

 

/ ,’ 3「そうかそうか、ブーンと言うのか」

 

老人は、「ほぉほぉ」と頷きながら僕の顔をまじまじと見た。

 

( ^ω^)「……で、あなたは誰なんですかお?」

 

/ ,’ 3「おお、すまなんだの」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

老人が思い出したように手を叩く。

 

どこか掴みどころがなく、飄々とした雰囲気を醸し出していた。

 

75: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:29:14.56 ID:uJ7PyqMC0

 

/ ,’ 3「わしは、荒巻スカルチノフ。この辺りを回っとる薬売りじゃよ」

 

( ^ω^)「荒巻さんですかお」

 

/ ,’ 3「皆からは荒巻の爺さんと呼ばれとる。あんたもそう呼んでくれんか

 

ね」

 

( ^ω^)「分かりましたお、荒巻のお爺さん」

 

/ ,’ 3「ほっほっ、それじゃ薬箱を持ってきてくれんかね」

 

どうやらこの老人―――――荒巻のお爺さんは薬の補充に来たらしい。

 

薬箱を持ってくると、背中にしょった葛籠を下ろし不足している薬を詰め込

 

む。

 

僕は代金を支払った後、少し話をすることにした。

 

( ^ω^)「この辺りって、どのぐらいの範囲なんですかお?」

 

/ ,’ 3「そうじゃのう、この町一帯はわしが回っとるの」

 

(;^ω^)「全部ですかおっ!? もうお歳なのに大変ですお」

 

/ ,’ 3「ほっほっ、わしはまだまだ若いつもりじゃよ」

 

お爺さんはそう言っておどけてみせた。

 

履いている靴はぼろぼろで、皺の刻まれた顔は真っ黒に日焼けしている。

 

この仕事の大変さが、少しだけ垣間見えた気がした。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

76: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:31:16.71 ID:uJ7PyqMC0

 

/ ,’ 3「さて、そろそろ行こうかの」

 

( ^ω^)「次はどこに行くんですかお?」

 

/ ,’ 3「山の家は全て回ったから、次は海沿いを回ろうかの」

 

重い葛籠を背負い、麦わら帽をかぶりながら、言葉を続けた。

 

/ ,’ 3「まずはドクオのところに行こうかのぉ」

 

( ^ω^)「おっ、ドクオさんの家ですかお」

 

/ ,’ 3「なんじゃ、知り合いか」

 

( ^ω^)「僕の人生の先輩ですお」

 

僕はそこで言葉を切り、すぐさま続けた。

 

( ^ω^)「あの……付いていってもいいですかお?」

 

/ ,’ 3「ほっほっほっ、構わんよ」

 

退屈だった僕はお爺さんに付いていくことにした。

 

家を出ると、すぐに太陽がまばゆい光線を浴びせた。

 

77: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:33:24.30 ID:uJ7PyqMC0

 

ドクオさんの家を目指して、僕たちは山を下りていく。

 

木々の緑は、今日も鮮やかで美しかった。

 

( ^ω^)「荷物、僕が持ちますお」

 

/ ,’ 3「重いぞ、大丈夫かの」

 

( ^ω^)「このぐらい余裕ですお!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕は背中の葛籠を受け取り、肩に紐を掛けた。

 

(;^ω^)「お、思ったよりも重いお」

 

/ ,’ 3「ほっほっ、若いのに情けないのう」

 

背負った葛籠は見た目よりもずっと重かった。

 

こんなものを持って、一日中山道を歩き続ける姿を想像して嫌になった。

 

……僕は、お爺さんのことを素直に凄いと思った。

 

79: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:35:37.88 ID:uJ7PyqMC0

 

(;^ω^)「ひぃ、ひぃ……」

 

炎天下の中、背中に葛籠を担いで歩く。

 

僕は堪らず息を上げた。

 

/ ,’ 3「なんじゃなんじゃ、もう疲れたんか」

 

(;^ω^)「お爺さんは平気なんですかお?」

 

/ ,’ 3「わしは長くやっとるからの。要は慣れじゃよ慣れ」

 

(;^ω^)「そういうものですかお……」

 

/ ,’ 3「ほっほっ、そういうものじゃよ」

 

足元の土から熱気が立ち上る。

 

遠くの景色が、少し揺らめいて見えた。

 

80: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/14(土) 23:36:26

 

.90 ID:Xqk4xbFn0

 

支援

 

 

 

↓次ページへつづく↓

81: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:37:56.58 ID:uJ7PyqMC0

 

( ^ω^)「……ところで、なんでお爺さんはこの仕事を始めたんですか

 

お?」

 

/ ,’ 3「そうじゃのぅ……そもそも、わしは元々町で薬屋をやっておっての

 

 

僕の質問に、お爺さんがしゃがれた声で答える。

 

/ ,’ 3「その薬屋を閉めて、こうして歩いて売っとるんじゃよ」

 

( ^ω^)「……でもなんでお店を辞めちゃったんですかお?」

 

僕は足で転がしていた石を蹴飛ばし、疑問を口にしてみた。

 

( ^ω^)「こうして歩きまわるより、お店で薬を売った方が儲かりそう

 

なものですお」

 

/ ,’ 3「ふむ、そうかも知れんのぉ」

 

お爺さんは少し顔を険しくした。

 

/ ,’ 3「……じゃがの、わしはお金なんてどうでもいいんじゃよ」

 

( ^ω^)「おっ?」

 

82: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:40:36.52 ID:uJ7PyqMC0

 

/ ,’ 3「確かに、薬屋をやっていた時はそこそこ儲かっとった」

 

/ ,’ 3「じゃがの、薬というのは人を助けるものじゃ。決して金儲けの道具

 

じゃない」

 

( ^ω^)「…………」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕は黙って、お爺さんの言葉を聞いていた。

 

/ ,’ 3「この町には薬屋はないじゃろう。それで困っとる人もたくさんおる

 

 

/ ,’ 3「そこでな、この辺りで薬を売り歩こうと思ったんじゃよ」

 

僕にはまだ理解できなかった。

 

( ^ω^)「だけど、割に合わないですお」

 

/ ,’ 3「お金なんかどうでもええ。ただのお人好しでやっとるんでの」

 

お爺さんは微笑みながら、僕に語りかけてくる。

 

( ^ω^)「でも……なんでそこまでするんですかお?」

 

/ ,’ 3「ほっほっ、理由は簡単じゃよ」

 

/ ,’ 3「そこに、わしの薬を待っとる人がおるからの」

 

84: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:42:55.53 ID:uJ7PyqMC0

 

僕たちは歩き続けた。

 

山を下りると、もう夕方が近づいてきていた。

 

かなかなと鳴くヒグラシの声が、辺りに響き始めた。

 

( ^ω^)「もうこんな時間ですお」

 

/ ,’ 3「そうじゃの。夜道を歩くのも疲れるわい」

 

(;^ω^)「夜も歩くつもりですかお……」

 

/ ,’ 3「ほっほっ、もちろんじゃよ」

 

お爺さんの活気に、僕はただただ感服するだけだった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕はお爺さんの言葉を思い出す。

 

――――――そこに、薬を待っている人がいるから。

 

その言葉を、そっと心の中にしまった。

 

85: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:44:55.80 ID:uJ7PyqMC0

 

(‘A`)「おっ、荒巻の爺さんじゃねぇか」

 

ドクオさんの家についた頃には、もう日が暮れてしまっていた。

 

/ ,’ 3「ほっほっ、何か足りないもんはあるかのぉ?」

 

(‘A`)「あぁ、たった今バカにつける薬を探してたところだ」

 

( ゚∀゚)「おー! ブーンに爺さんじゃねぇかや!」

 

ドクオさんの後ろから、ジョルジュさんとクーさんが現れた。

 

どうやら今夜、ドクオさんの家で飲み会をやるらしい。

 

川 ゚ -゚)「で、薬と言うのは、こいつにつける薬の事なんだが」

 

/ ,’ 3「ほっほっほっ、馬鹿につける薬はないとはよく言ったもんじゃの」

 

 

( ゚∀゚)「んあ? 誰がバカだって?」

 

(;^ω^)「おっおっ……」

 

86: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:47:10.54 ID:uJ7PyqMC0

 

/ ,’ 3「さて、わしはそろそろ次の家に行こうかの」

 

(‘A`)「ん、もう行っちまうのか」

 

背を向けようとしたお爺さんを、ドクオさんが呼び止めた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(‘A`)「どうだ、うちで飯でも食ってかないか?」

 

/ ,’ 3「うぅむ、わしはまだ仕事があるのでのぉ」

 

川 ゚ -゚)「なら泊まっていけばいい。明日の朝からやればよかろう」

 

/ ,’ 3「ほっほっほっ。それじゃ、お言葉に甘えさせてもらおうかの」

 

(‘A`)「ほれ、お前も食ってけ」

 

(;^ω^)「えっ、僕もですかお!?」

 

( ゚∀゚)「ほぉせぇ、ほぉせぇ! 今日はええ鯖が漁れたけんのー!」

 

(‘A`)「俺の家だ」

 

87: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:49:49.50 ID:uJ7PyqMC0

 

僕はお誘いを受けて、ドクオさんの家で御馳走になることにした。

 

今日の料理はさばしゃぶ。

 

鍋に昆布でとっただしを張り、そこに鯖の切り身をさっとくぐらせる。

 

2,3回しゃぶしゃぶしたら食べごろだ。

 

半生状態の鯖の身を、ポン酢につけて口に入れる。

 

熱で少しだけ引き締まった身は、ぷりぷりとして美味しかった。

 

少し旬から外れていたが、脂の乗りは十分で、舌の上でとろけた。

 

88: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:51:36.18 ID:uJ7PyqMC0

 

お酒の入ったドクオさんとジョルジュさんが騒ぐ。

 

それをクーさんが、いつものように冷静にたしなめる。

 

/ ,’ 3「ほっほっほっ、若いもんは元気があってええのぉ」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

その様子を、お爺さんは楽しそうに眺めていた。

 

僕は立ち上がり、窓から海を見てみる。

 

昼間の荒々しい海の姿はそこにはない。

 

真っ黒に染まった海は、静かで、穏やかだった。

 

90: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/14(土) 23:52:25.20 ID:uJ7PyqMC0

 

以上で8話おわり

 

一旦休憩してから9話を投下します

 

92: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/14(土) 23:56:38

 

.61 ID:qs2CUQzUO

 

この作品大好き支援

 

93: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/14(土) 23:58:17

 

.04 ID:Xqk4xbFn0

 

飯描写だけやけに気合が入ってるのは

 

気のせいなのだろうか

 

支援

 

95: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:05:03.67 ID:isTVpX110

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第九話

 

夏。

 

青い空、青い海、そよぐ風。

 

僕は今、軽トラの荷台の上で揺られていた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(;^ω^)「おぉっ!?」

 

山の道は悪路だ。

 

がたん、と大きな震動が来るたびに僕は心臓が止まりそうになる。

 

ξ#゚⊿゚)ξ「あ゛ー、いちいちうるさいっ!」

 

(*゚ー゚)「お兄ちゃんびっくりしすぎだよー」

 

(;^ω^)「……ごめんだお」

 

96: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:06:43.13 ID:isTVpX110

 

そもそも、こういうことになったのは昨日の叔父さんの言葉が原因だった。

 

 

(´・ω・`)「明日、丘の上でバーベキューをしよう」

 

(;^ω^)「おぉっ、突然ですお」

 

(´・ω・`)「大丈夫、用意はすべて出来てるから」

 

先日隣町まで買い物に行ったのは、材料を買いに行くためだったらしい。

 

もちろん、僕は手放しで賛成した。

 

バーベキューなんか、やったことない。

 

期待に胸躍らせて、今日という日を待った。

 

98: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:09:08.00 ID:isTVpX110

 

そして今日の午後4時。僕たちは出発の時を迎えた。

 

(´・ω・`)「よし、それじゃ行こうか」

 

(;^ω^)「あの、車はどこですかお」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(´・ω・`)「何を言ってるんだ、そこにあるじゃないか」

 

(;^ω^)「でもこれ……軽トラックですお」

 

(´・ω・`)「そうだよ。ほらほら、早く荷台に乗って!」

 

用意されたのはファミリーワゴンではなく、農業用の軽トラだった。

 

叔父さん曰く、「荷物を運ぶのにはこっちの方がいい」とのこと。

 

荷台に材料や道具を積み込み、僕たち子どもは荷台に乗りこんだ。

 

( ・∀・)「アトラクションみたいで楽しいよ!」

 

(;^ω^)「そういうものかお……」

 

99: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:11:41.36 ID:isTVpX110

 

――――――そんなわけで、僕は今荷台の上にいる。

 

目に映るものすべてが飛んでいく。

 

夏の風を切りながら、軽トラは進んでいった。

 

( ^ω^)「おー、海が見えるお」

 

車の揺れに慣れてきた僕は、遠くを眺めていた。

 

海は決して視界から消えていかない。

 

少しだけほっとする自分がそこにいた。

 

ξ゚⊿゚)ξ「それにしても、バーベキューなんて久しぶりね」

 

( ^ω^)「おっ? 前はいつやったのかお?」

 

ξ゚⊿゚)ξ「えーと、確か私が小学生のころかな……」

 

( ・∀・)「僕、あんまり覚えてないや」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

……僕は考えた。

 

叔父さんは、僕のためにバーベキューをしようと計画したんじゃないかと。

 

 

( ^ω^)「(だとしたら、後でお礼を言わなくちゃいけないお)」

 

心の中で呟きながら、変わらずにそこに在り続ける海を眺めていた。

 

100: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:14:03.82 ID:isTVpX110

 

(´・ω・`)「さあ、到着だ」

 

叔父さんが軽トラのエンジンを止める。

 

小高い丘の上に着き、僕たちは荷物を下ろした。

 

海から吹いてくる風は心地よく、緑に囲まれた景色は爽快だった。

 

(‘、`*川「さっ、準備に取り掛かりましょう」

 

そう言って叔母さんは僕たち一人一人に指示を出した。

 

叔父さんとモララーは器具とライトの設置。

 

叔母さんとしぃは材料の切り分け。

 

そして、僕とツンは飯盒炊爨を任された。

 

どうやらツンは、また包丁を握らせてもらえなかったことが不満らしい。

 

102: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:16:54.21 ID:isTVpX110

 

(;^ω^)「ちょっ、僕やったことないおwwwwwww」

 

初めて見る飯盒。

 

僕は使い方も分からず、ただ弄っているだけだった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ#゚⊿゚)ξ「あ゛ーいらいらするっ! 貸しなさいっ!」

 

(;^ω^)「おっおっ」

 

僕から飯盒を奪い取ったツンは、てきぱきとそこに研いだ米と水を入れてい

 

く。

 

ξ゚⊿゚)ξ「ほらっ、あんたは吊るすための木の枝でも拾ってきなさい!」

 

(;^ω^)「了解ですお」

 

言われるままに林の中に入っていき木の枝を探す。

 

ざわざわと木の葉の揺れる音が鳴る中、僕は何本かの枝を拾い、ツンの元へ

 

急いだ。

 

103: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:19:14.53 ID:isTVpX110

 

( ^ω^)「ふぅ……、ツン、拾ってきたお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「ご苦労さま。それじゃ、地面にY字型の枝を刺して」

 

( ^ω^)「おっおっ、分かったお」

 

Y字型の木の枝を地面に突き立て、飯盒を吊るした鉄棒をセットする。

 

そこに余った棒を組み上げ、燃やした紙を放り込み火をつける。

 

立ち上る火が飯盒の底を焦がし、辺りは煙に包まれた。

 

( ^ω^)「これ、いつになったら炊きあがりなんだお?」

 

ξ゚⊿゚)ξ「蓋がね、ぐらぐらしなくなったら出来上がりよ」

 

ツンが水蒸気でぐらつく蓋を木の枝で抑えながら答える。

 

( ^ω^)「ツンは凄いお。僕の知らないことをたくさん知ってるお」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ*゚⊿゚)ξ「そっ、そんな褒められても嬉しくないんだからねっ!」

 

( ^ω^)「いやいや、凄いお。普通の料理はからっきしなのに……」

 

ξ#゚⊿゚)ξ「…………!」

 

(;^ω^)「ごめんお! 痛いお! だからその棒で叩くのはやめるおっ

 

!」

 

105: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:21:58.89 ID:isTVpX110

 

他のみんなの準備は終わり、後はお米が炊けるのを待つだけだった。

 

( ^ω^)「長いお……」

 

ξ゚⊿゚)ξ「んー、もうちょっとね……」

 

僕たちは数十分の間、飯盒を見守っていた。

 

だいぶ蓋のぐらつきは納まり、溢れる泡も少なくなってきた。

 

僕とツンは炊きあがりをひたすら待った。

 

辺りは夕暮れに染まってきている。

 

107: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:24:06.41 ID:isTVpX110

 

( ^ω^)「(そう言えば、ツンと一緒に何か作業をするのは初めてだお

 

……)」

 

ξ゚⊿゚)ξ「あっ、もうそろそろいいんじゃない?」

 

( ^ω^)「おっ?」

 

ツンはそう言って飯盒を下ろし、ひっくり返してお米を蒸らした。

 

底はススで汚れている。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ゚⊿゚)ξ「うまく炊けてるかしらね……」

 

( ^ω^)「きっとおいしく炊けてるお!」

 

蓋を開けると、炊きあがりの匂いと共に湯気が上った。

 

少しお焦げが出来ていたが、一粒一粒がつややかに光っていた。

 

108: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:26:23.03 ID:isTVpX110

 

(´・ω・`)「よし、それじゃ始めようか」

 

叔父さんは掛け声とともに炭に火を点けた。

 

黒は赤に変わり、白い灰がこぼれる。

 

( ・∀・)「よーし!焼くぞー!」

 

タレに漬けた肉を網の上に乗せる。

 

脂が滴り落ち、炭に当たって辺りに香ばしい匂いが漂った。

 

(´・ω・`)「ほら、肉だけじゃなく野菜も焼くんだ」

 

(‘、`*川「イカや海老もあるわよ」

 

(*゚ー゚)「うわぁ、食べきれるかなぁ」

 

( ^ω^)「僕も焼くお!」

 

割り箸を右手に、紙皿を左手に構え、バーベキューの準備は万端。

 

僕は空腹を堪え切れなかった。

 

110: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:29:02.76 ID:isTVpX110

 

肉、魚介、野菜を次々に網に乗せていく。

 

炭からは煙が立ち上り、空めがけて昇っていった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

牛肉は中まで火が通るようにじっくり焼いていく。

 

口に入れると、香ばしさと肉汁で口の中が満たされた。

 

鶏肉はピリ辛に味付けされ、ジューシーな皮が特にうまい。

 

魚介類もどんどん焼いた。

 

新鮮なイカ、ホタテ、海老。

 

火を通すことで甘味が増し、噛めば噛むほど旨みが広がっていく。

 

もちろん野菜も忘れちゃいけない。

 

とうもろこしはほんのり甘く、ピーマンはほろ苦い。

 

脂のきつい肉の箸休めに食べると、一際美味しい。

 

そして、ご飯。

 

肉を乗せ、タレが染みたお米は絶品。

 

自分が炊いたご飯は、より一層おいしく感じた。

 

111: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 00:31:0

 

6.29 ID:cqh+0SvC0

 

この時間に料理の話をwwwww

 

腹が減るwwwww 支援

 

113: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:31:50.74 ID:isTVpX110

 

―――――夢中で食べ続けていると、いつの間にか夜になっていた。

 

叔父さんはライトを点け、なおもバーベキューは続いている。

 

満腹になってきた僕は一旦席を外し、少し離れた所で星を眺めていた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

都会の夜景なんかより、ずっと素敵な星空。

 

(‘、`*川「ブーン君、星に興味があるの?」

 

( ^ω^)「いや……そういうわけじゃないですお」

 

後ろから叔母さんが話しかけてきた。

 

( ^ω^)「ただ、きれいだなって思って見てたんですお」

 

(‘、`*川「ふふ、確かにきれいな星空ね」

 

僕と叔母さんは星に見とれていた。

 

星座なんて全く分からないけど、そんなことはどうでもいい。

 

ただ、星が輝いているから。

 

それだけで惹きつけられる理由としては十分だった。

 

114: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:34:36.29 ID:isTVpX110

 

( ^ω^)「――――叔母さん、相談がありますお」

 

(‘、`*川「あらあら、突然何かしら」

 

( ^ω^)「僕は……自分を変えたいんですお」

 

僕は、思い切って叔母さんに悩みを打ち明けてみた。

 

外で気分が昂ぶっていたからだろうか、よく分からないけど、そんな気持ち

 

になった。

 

( ^ω^)「自分なりに、変わろうとはしていますお」

 

( ^ω^)「――――でも、変われたかどうかなんて、自分では分かりま

 

せんお」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(‘、`*川「……そうね」

 

叔母さんはまだ星を見つめている。

 

(‘、`*川「ブーン君、あの星が見える?」

 

(;^ω^)「おっ?」

 

予想外の答え。

 

叔母さんは一つの星を指差し、話を続けた。

 

115: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:36:57.27 ID:isTVpX110

 

(‘、`*川「あの星って、今も光り続けていると思う?」

 

( ^ω^)「……分かりませんお」

 

(‘、`*川「あら、どうして?」

 

( ^ω^)「星は、凄く遠くにありますお」

 

(‘、`*川「そうね」

 

( ^ω^)「だから、今見えている光は、何万年も昔の光ですお。だから

 

……」

 

(‘、`*川「今も存在しているかどうかは分からない、ってこと?」

 

( ^ω^)「……その通りですお」

 

後ろから、モララーとしぃの笑い声が聞こえてくる。

 

叔母さんはまだ空を見ていた。

 

117: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:41:01.49 ID:isTVpX110

 

(‘、`*川「ブーン君の言う通り、星が今どうしているか、どうなったかなん

 

 

 

↓次ページへつづく↓

て分からないわ」

 

(‘、`*川「私たちに分かるのは、今そこに光があるという事実だけ」

 

( ^ω^)「どういう意味ですかお?」

 

(‘、`*川「……人もね、星と同じなのよ」

 

(‘、`*川「人の心がどうなったかなんて、目で見ても分からない」

 

(‘、`*川「分かるものは、目に映るものだけ」

 

(‘、`*川「あなたが変わったかどうかなんて、目に見えなくちゃ分からない

 

わ」

 

( ^ω^)「…………」

 

(‘、`*川「いい? ブーン君」

 

叔母さんは、星から僕へゆっくりと視線を移した。

 

(‘、`*川「あなたの『変わりたい!』って気持ち、ちゃんと見せることよ」

 

 

118: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:43:20.51 ID:isTVpX110

 

僕は以前、ツンを連れて出掛けたことを思い出した。

 

あの時、僕は自分を変えようと思ってツンを誘った。

 

あの時の気持ちは、ツンに伝わったのだろうか――――。

 

(‘、`*川「ブーン君、今度はあの星を見てみて」

 

( ^ω^)「おっ?」

 

叔母さんが、今度は違う星を指差した。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(‘、`*川「あの星はね、『デネブ』っていうの」

 

( ^ω^)「おー、すごく明るい星ですお」

 

(‘、`*川「でもね、余りに明るすぎて、いつかはブラックホールになるって

 

言われているの」

 

(;^ω^)「そうなんですかお」

 

さらっとした夜風が僕の隣を通り過ぎて行く。

 

(‘、`*川「だから、あの星はね」

 

(‘、`*川「自分が消えちゃう前に、精一杯、精一杯輝き続けるの」

 

120: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:45:47.20 ID:isTVpX110

 

( ・∀・)「兄ちゃん、花火やろうよー!」

 

( ^ω^)「おっおっ、花火も久しぶりだお」

 

バーベキューを堪能した後、僕たちは花火をすることにした。

 

色彩豊かな閃光が暗闇を明るくする。

 

( ^ω^)「叔父さん、今日はありがとうですお」

 

(´・ω・`)「いやあ、楽しんでもらえて何よりだよ」

 

(;^ω^)「……やっぱり、僕のためにしてくれたんですかお?」

 

(´・ω・`)「どうしてだい?」

 

( ^ω^)「だって、バーベキューをやるのは久しぶりって聞きましたお

 

 

(´・ω・`)「まあ、多少はそんな意味もあるかもね」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

121: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 00:46:4

 

1.70 ID:Z4S/vt8J0

 

現行の中でこれが一番好きです支援

 

122: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:48:09.09 ID:isTVpX110

 

僕の持った花火は、まだ青々とした火を吹きあげている。

 

(;^ω^)「……だとしたら、わざわざすみませんお」

 

(´・ω・`)「謝る必要はないよ。これはね、僕のためでもあるんだ」

 

( ^ω^)「お?」

 

(´・ω・`)「確かに、これは君の思い出作りとしての意味もある」

 

(´・ω・`)「だけど君の思い出は、君と過ごした僕たちの思い出でもある

 

からね」

 

花火はそこで、燃え尽きるように消えた。

 

辺りを青く照らした火は、もう過去の記憶になってしまった。

 

124: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 00:50:44.46 ID:isTVpX110

 

ξ゚⊿゚)ξ「やっぱり、締めは線香花火よねー♪」

 

( ^ω^)「おっおっおっ」

 

僕たちは最後に線香花火に火を点けた。

 

ぱちぱちと燃える火が、ぼんやりと深い闇を照らした。

 

(*゚ー゚)「ねぇ、誰が一番長く持てるか競争しようよ」

 

( ^ω^)「それは名案だお」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ・∀・)「僕が勝つんだもんねー!」

 

ξ゚⊿゚)ξ「負けないんだからっ!」

 

127: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:05:14.31 ID:isTVpX110

 

僕たちはそれぞれ、自分の花火に集中する。

 

最初にモララーの灯が、次いでしぃの灯がぽとりと落ちた。

 

後は、僕とツンの一騎打ち。

 

(;^ω^)「むむ、なかなかしぶといお」

 

ξ;゚⊿゚)ξ「あんたにだけは……って、あぁっ!?」

 

(;^ω^)「おぉっ!?」

 

二つの線香花火の灯は、ほぼ同時に地に着いた。

 

辺りは暗くなり、そこには月明かりだけ。

 

残された僕とツンは、少し照れながら、二人顔を見合わせた。

 

129: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:07:17.25 ID:isTVpX110

 

以上で9話はおわり。

 

休憩後10話を投下します

 

131: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 01:10:1

 

2.87 ID:Z4S/vt8J0

 

こういうところで夏を過ごしたいもんだねぇ

 

133: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 01:14:5

 

1.91 ID:cbN9f0gE0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

支援です。

 

これ大好きです。

 

136: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 01:20:2

 

3.04 ID:TzgzAYjjO

 

俺にとっては名作

 

137: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:23:51.31 ID:isTVpX110

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第十話

 

ちょっと背伸びして買ったジーンズ。

 

いつもより大人っぽいシャツ。

 

滅多につけない整髪料。

 

出来る限りのお洒落をして、僕は家を出る。

 

その隣に、ツンを連れて。

 

ξ゚⊿゚)ξ「まさか、あんたからデートに誘われるとはね……」

 

(;^ω^)「僕もOKしてもらえるとは思わなかったお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「ひ、暇だっただけなんだからねっ! 別に変な意味なんかない

 

んだから!」

 

今朝、僕は思い切ってツンをデートに誘ってみた。

 

色々と理由を付けたけれど、どの理由も嘘だった。

 

僕が変わろうとしていることを、ツンに分かってもらえたくて。

 

そして――――自分の気持ちに、素直になりたくて。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

142: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:26:37.46 ID:isTVpX110

 

僕たちは山を下り、停留所でバスを待っていた。

 

ツンは真っ白な帽子とワンピースに身を包んでいる。

 

涼しげな白が空の青に映えて、僕は目を奪われた。

 

( ^ω^)「……遅いお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「あら、この辺りのバスなんて一時間に一本あるかどうかよ」

 

(;^ω^)「それは不便だお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「そうね……こればっかりは仕方ないわね」

 

ツンは溜息をついた。

 

( ^ω^)「……でも、ツンと一緒なら嫌じゃないお」

 

ξ;゚⊿゚)ξ「えっ……あっ、な、何言ってんのよっ!」

 

(;^ω^)「いっ、いや、変な意味じゃないお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「……ばか」

 

ツンの帽子が風でそよそよと揺れる。

 

夏の香りを乗せた風は、僕たちを包んで、どこかへ行ってしまった。

 

146: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:29:08.68 ID:isTVpX110

 

数十分待って、ようやくバスが来た。

 

僕たちはバスに乗り込んで、後ろの方の席に座った。

 

ξ゚⊿゚)ξ「ふぅ、クーラーが効いてて涼しー♪」

 

( ^ω^)「あー、生き返るお……」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕たちを乗せたバスは、隣町を目指して進んでいく。

 

その速度はゆっくりで、だけど確実に目的地まで近づいていった。

 

( ^ω^)「おー、この道は僕が来た道だお」

 

今走っているのは、僕が駅から歩いてきた道だ。

 

来た時と少しも変わっていないのどかな風景。

 

きっとこの風景は、僕が子どもの頃初めて見た時から変わっていないんだろ

 

う。

 

そんなことを思いながら、バスの心地よい揺れに身を任せていた。

 

151: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:31:32.91 ID:isTVpX110

 

くだらない話をしているうちに、バスは隣町の停留所に到着した。

 

開かれたドアが外の景色を直に伝えてくれている。

 

( ^ω^)「おっおっ、やっと着いたお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「あー、お腹すいちゃった。早くお昼食べましょ」

 

(;^ω^)「それはまたいきなりだお……」

 

ξ゚⊿゚)ξ「いいじゃない。ほら、行くわよ」

 

ツンの希望通り、僕たちは最初に昼食をとることにした。

 

町と言っても、僕がいた街のような都会ではない。

 

店舗だって商店街まで行かないと見つからなかった。

 

セピア色に彩られた町を、二人並んで歩いていった。

 

155: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:34:57.62 ID:isTVpX110

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ゚⊿゚)ξ「うーん、どこで食べようかしら……」

 

( ^ω^)「どうせなら、普段食べられないものにするお!」

 

僕たちはお店を探すため、商店街を歩き回った。

 

レトロな雰囲気漂うその空間は、どこか懐かしく感じた。

 

( ^ω^)「――――おっ、ここにパスタのお店があるお」

 

しばらくして、小さな店が目に止まった。

 

看板には「Buona Fortuna」と、何やら難しそうな字体で書かれている。

 

何の言葉かは分からなかったが、下にある「Pasta」の文字でパスタのお店

 

だと分かった。

 

ξ゚⊿゚)ξ「いいわね、ここにしない?」

 

( ^ω^)「賛成だお」

 

僕たちはこの店に決め、緊張しつつ中へと入っていった。

 

158: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:37:29.74 ID:isTVpX110

 

店内はやはり小さく、テーブルもたったの二つしかなかった。

 

だけども、内装やインテリアは洒落ていて、いい雰囲気だった。

 

(,,゚Д゚)「お客様、ご注文はお決まりでしょうか」

 

店の雰囲気を楽しんでいると、コック帽をかぶった男の人がやってきた。

 

( ^ω^)「おっ? このお店はウェイターさんはいないんですかお?」

 

 

(,,゚Д゚)「この店は、私一人でやっていますもので。それでは、ご注文を」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

 

( ^ω^)「えーと、僕はこの『海鮮と青のペペロンチーノ』をお願いし

 

ますお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「私は『アスパラとベーコンのアルフレッド』にするわ」

 

(,,゚Д゚)「かしこまりました。すぐにお持ちいたします」

 

注文を聞き終わると、早々とオーナーは厨房へ駆け込んだ。

 

160: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:41:08.76 ID:isTVpX110

 

ξ゚⊿゚)ξ「……ところで『ぺぺろんちーの』とか『あるふれっど』とかっ

 

て何?」

 

( ^ω^)「まったく分からないお」

 

こうした小洒落たお店に来るのは初めてだった。

 

適当に頼んでみたはいいものの、一体どんなものが運ばれてくるのだろう。

 

 

僕はそう思いながら料理を待った。

 

十数分の後、オーナーがパスタを両手に僕たちのテーブルまでやってきた。

 

 

(,,゚Д゚)「お待たせいたしました。『アスパラとベーコンのアルフレッド』

 

でございます」

 

ξ゚⊿゚)ξ「あら、どうも」

 

(,,゚Д゚)「そしてこちらが、『海鮮と青のペペロンチーノ』になります」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「おー、おいしそうですお」

 

(,,゚Д゚)「それでは、ごゆっくりお召し上がりくださいませ」

 

そう言ってオーナーは厨房に戻っていった。

 

机の上に置かれたパスタは、見た目も美しく、運ばれてくる匂いはたまらな

 

かった。

 

163: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 01:43:2

 

4.67 ID:xkE0boxN0

 

支援

 

164: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:44:03.88 ID:isTVpX110

 

(*^ω^)「ハムッ ハフハフ、ハフッ!!」

 

僕は溢れてくる食欲のままにパスタを口に運んだ。

 

麺は少し細めで、程よい固さ。

 

具はざく切りの海老とブロッコリー、そして酒蒸しされたムール貝。

 

全てがにんにくと唐辛子の香りのオイルにまとわれ、僕の味覚を刺激する。

 

 

ξ*゚ー゚)ξ「あら、これおいしー!」

 

ツンの料理はクリームソースのパスタだった。

 

パスタと言っても、僕が食べているような麺状ではなく、短い棒状の形をし

 

ている。

 

一つ一つをじっくり味わいながら、ツンは満面の笑みを浮かべて頬張った。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

 

165: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:46:27.10 ID:isTVpX110

 

(,,゚Д゚)「お会計、2700円になります」

 

ξ゚⊿゚)ξ「あ、私出すわね」

 

( ^ω^)「いやいや、ここは僕が出すお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「どうぞどうぞ」

 

(;^ω^)「…………」

 

結局僕が全額支払うことに。

 

でも、最初からそのつもりだった。

 

ちょっとだけ、ツンにいいところを見せたかった。

 

( ^ω^)「ところで、お店の名前……あれはどういう意味なんですかお

 

?」

 

(,,゚Д゚)「ああ、『Buona Fortuna』はですね」

 

(,,゚Д゚)「日本語で、『幸運』という意味でございます」

 

166: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:49:14.67 ID:isTVpX110

 

僕たちは店を出た後、商店街の中をぶらぶらと歩いた。

 

並んで歩くツンの横顔を、嫌でも意識してしまう。

 

ξ*゚⊿゚)ξ「あっ、これかわいー♪」

 

( ^ω^)「おっ?」

 

突然、ツンが装飾品店の前で立ち止まった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

視線の先には、ハート形の銀のペンダント。

 

ツンはそれを手に取り、しばらく眺めていた。

 

ξ゚ー゚)ξ「ねぇ。これ、どうかな?」

 

ツンはペンダントを首に当て、僕に感想を求める。

 

( ^ω^)「よく似合ってると思うお」

 

僕はその言葉を、嘘偽りなく述べた。

 

本当に、ツンにぴったりだと思ったから。

 

169: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:52:15.46 ID:isTVpX110

 

数分間悩んだ末、ツンが答えを出した。

 

ξ゚⊿゚)ξ「―――よし、買っちゃおっと」

 

( ^ω^)「おっおっ、思い切りがいいお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「……そうだ、あんたもこれ買いなさいよ」

 

( ^ω^)「へっ?」

 

ξ゚⊿゚)ξ「ほら、この星のデザインのやつ」

 

(;^ω^)「ちょwwwwwwなんで僕までwwwwwwww」

 

ξ゚⊿゚)ξ「思い出よ、思い出」

 

173: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:54:49.17 ID:isTVpX110

 

ツンに強引に渡されたペンダントを手に、店内のレジに向かった。

 

僕はレジの前で、ちょっとした冒険をしてみた。

 

( ^ω^)「そうだお。お互いが相手の物を買って、プレゼントしあうの

 

 

 

↓次ページへつづく↓

はどうかお?」

 

ξ゚⊿゚)ξ「えー、めんどくさい……」

 

(;^ω^)「(今、結構勇気を出してみたお! めんどくさいとか言わな

 

いでくれお……)」

 

ξ゚⊿゚)ξ「まあいいわ。あんたのペンダントの方が安いし」

 

(;^ω^)「結局、そんな理由かお……」

 

僕たちはペンダントを買い、その場でお互いにプレゼントをした。

 

あまり高価なものじゃないけれど、僕にとって、とても貴重な物になった。

 

 

175: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 01:57:50.57 ID:isTVpX110

 

当てもなく彷徨いながら商店街を巡っていると、もう夕刻を過ぎていた。

 

( ^ω^)「……遅いお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「だから、この辺りのバスなんて一時間に一本あるかどうかだっ

 

て」

 

僕たちは停留所で帰りのバスを待っていた。

 

季節外れのアキアカネが、赤い体を翻し、赤く染まった空を飛んでいる。

 

(*^ω^)「そうだお! ツン、写真を撮ってあげるお!」

 

僕は懐からカメラを取り出して、ツンにそう提案する。

 

ξ*゚⊿゚)ξ「なっ、何よ、いきなり」

 

( ^ω^)「今日の思い出だお」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

カメラを構え、夕暮れを背景にツンの姿をレンズに収める。

 

色褪せてしまう思い出は、こうして永遠の形になる。

 

茜空の中のツンは、胸が締め付けられるほど綺麗だった。

 

176: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 02:00:30.87 ID:isTVpX110

 

帰りのバスの中には、僕たち以外に乗客はいなかった。

 

ξ-⊿-)ξ「すぅ……ん……」

 

(;^ω^)「…………」

 

ツンは疲れていたのか、僕の肩に頭を乗せて眠りこけていた。

 

僕は細心の注意を払った。

 

ツンを起こさないように。

 

そして、高鳴る鼓動が聴こえないように。

 

ξ-⊿-)ξ「すぅ……むにゃ……」

 

安らかな顔で眠るツン。

 

胸元には、きらりと光るハートのペンダント。

 

窓からは夕焼けの明かりが差し込んでくる。

 

バスの中には、僕と、ツンの二人だけ。

 

177: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 02:02:33.60 ID:isTVpX110

 

( ^ω^)「(僕の、気持ちは―――――)」

 

自分を変えるには、変えたいという気持ちを伝えなくちゃいけない。

 

僕は、自分に素直になろう。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ツン、だめだ。

 

やっぱり、僕は。

 

君のことが、好きみたいだ。

 

僕は心の中でそう呟きながら、窓の向こうに広がる景色を見ていた。

 

僕たちを乗せたバスは、長い凸凹道をゆっくりと進んでいった。

 

179: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 02:04:03.83 ID:isTVpX110

 

以上で10話おわり。今日はここまで

 

読んでくれた方ありがとうございました

 

批評質問とか受け付けます

 

180: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 02:07:5

 

9.20 ID:xkE0boxN0

 

乙~

 

181: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 02:08:1

 

8.69 ID:7tgcu8Pu0

 

どうやったらそんなに美味しそうな料理の表現が出来るの?おかげで腹減っ

 

たんだけど

 

182: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 02:12:24.48 ID:isTVpX110

 

>>181

 

作者がいいもん食べてない分、その反動で

 

実体験も含まれてます

 

 

 

↓次ページへつづく↓

183: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 02:14:3

 

8.98 ID:7tgcu8Pu0

 

そんじゃもう一つ。この話の舞台として参考にしているところある?

 

185: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 02:16:10.57 ID:isTVpX110

 

>>183

 

一応、作者のばっちゃの住んでた町がモデル

 

そこに多少脚色を加えて、みたいな感じです

 

188: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/15(日) 02:46:53.07 ID:isTVpX110

 

あ、最後に

 

続きは来週の土日のどちらかにでも投下します

 

それでは、ありがとうございました

 

184: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 02:16:0

 

8.37 ID:d71LpwOR0

 

きたい支援

 

187: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/15(日) 02:21:4

 

8.18 ID:oJhczI6gO

 

乙!

 

作者のせいで今焼きそば食うはめになってんだけど

 

最近腹出てきてやばいっていうのにどうしてくれんの?

 

5: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:15:33.20 ID:i1nggAI80

 

 

 

↓次ページへつづく↓

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第十一話

 

月が一際明るい夜。

 

僕は今、ドクオさんの家にお邪魔している。

 

(;^ω^)「…………」

 

突然ドクオさんに呼ばれたので、僕は戸惑っていた。

 

目の前にはお酒と、豊富なおつまみが並べられている。

 

( ゚∀゚)「……うむ、まあ飲まんか」

 

(;^ω^)「だから未成年ですお」

 

この場に集まったのは、僕を除いて4人。

 

ショボン叔父さん、ドクオさん、ジョルジュさん、荒巻のお爺さん。

 

本来この家の一員であるはずのクーさんは、叔父さんの家に一晩泊まりに行

 

っていた。

 

ドクオさん曰く、「女は邪魔だから追い出した」とのこと。

 

※( ^ω^)と夏の日のようです

 

※( ^ω^)と夏の日のようです 2

 

8: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:18:07.57 ID:i1nggAI80

 

この集会は、一体何なんだろう。

 

なぜかは知らないが、ドクオさんとジョルジュさんは僕を見てにやにやして

 

いる。

 

僕は痺れを切らし、質問することにした。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(;^ω^)「あの……この集まりは一体何ですかお……?」

 

(‘A`)「うむ、お前がそう聞くのももっともだ」

 

( ゚∀゚)「実はよ、この集まりはな……」

 

(‘A`)「『ブーン君、童貞卒業おめでとう!』の会だ」

 

(;´・3・`)「ブ―――っ!」

 

とんでもない発言に、叔父さんが盛大に吹き出した。

 

(;´・ω・`)「や、やっぱりなのか! ブーン君、そうなのかっ!!」

 

(;^ω^)「ちょwwwww落ち着いてくださいおwwwwwww」

 

錯乱状態の叔父さんに思いっきり首を掴まれた。

 

その光景を、お爺さんは「ほっほっ」と笑いながら見ていた。

 

9: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:20:31.26 ID:i1nggAI80

 

(;^ω^)「というか、何を言ってるんですかお!?」

 

(‘A`)「いやよ、お前がツンちゃんとデートに行ったっつーからな」

 

( ゚∀゚)「いやー最近の若ぇもんは盛んやのー!」

 

二人はグラスを傾けながら、どういう訳か嬉しそうな顔をしている。

 

(;^ω^)「な、何を勘違いしてるんですかお。ただ遊びに行ってただけ

 

ですお!」

 

(‘A`)「ん? でも帰りが遅かったそうじゃねぇか」

 

(;^ω^)「いやいや、7時前には帰りましたお!」

 

( ゚∀゚)「……はぁ? 7時?」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ジョルジュさんが気の抜けた声を出した。

 

(‘A`)「……ショボンさんよ、全然健全じゃないすか」

 

(´・ω・`)「何言ってるんだ! 未成年がそんな時間まで出掛けるなんて

 

!」

 

(‘A`)「……あんた過保護すぎるぜ」

 

10: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:23:02.56 ID:i1nggAI80

 

どうやら、叔父さんの「帰りが遅かった」をいう話を受けてドクオさんが早

 

とちりしたらしい。

 

僕は一部始終を説明して、身の潔白を証明した。

 

(´・ω・`)「じゃあ、何もなかったということなんだね?」

 

(;^ω^)「そうですお。考え過ぎですお」

 

(;´・ω・`)「ああ、よかった……すまないね、勘違いしちゃって」

 

叔父さんが心底安心した様子で、自分のグラスにビールを注ぐ。

 

浮かんでくる泡が少しだけこぼれた。

 

( ゚∀゚)「まったくよぉ、頼んますぜ」

 

(´・ω・`)「いや、すまない。どうも娘のことになると視界が狭くなって

 

ね……」

 

僕としては迷惑な話だったけど、叔父さんがツンを心配する気持ちはよく分

 

かった。

 

僕は机上の冷奴に手を伸ばす。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

きんと冷えた豆腐は、少し噛むだけで舌の上で崩れた。

 

11: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:25:07.38 ID:i1nggAI80

 

(‘A`)「しかしまぁ、用意したもんが無駄になっちまったな」

 

( ゚∀゚)「無駄じゃねーやろが! 宴会に変更すりゃええ!」

 

/ ,’ 3「ほっほっ、それは名案じゃの」

 

(‘A`)「……つーか、飲めりゃなんでもいいんだな、お前ら」

 

ドクオさんはそう愚痴りながらも、お爺さんのグラスに日本酒を注いで上げ

 

た。

 

お酒の飲めない僕はお茶をもらい、並べられたおつまみに舌鼓を打った。

 

今夜は本当に月が明るい。

 

外を見ると、海に映った月がゆらめいている。

 

13: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:27:23.32 ID:i1nggAI80

 

お酒が入ったところで、ドクオさんがくだけた調子で話しかけてきた。

 

(‘A`)「でもよ、お前がデートに誘うとはな。そんな奴には見えなかったん

 

だが……」

 

( ^ω^)「ドクオさんのおかげですお」

 

(‘A`)「ん?」

 

( ^ω^)「あの時言われた『自分を変えろ』って言葉、覚えていますお

 

 

( ^ω^)「……だからちょっとだけ、積極的になってみましたお」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ゚∀゚)「なんでぇ、ちゅーことはおめー、ツンちゃんが好きってことか?

 

 

( ^ω^)「……まあ、そういうことですお」

 

( ゚∀゚)「かーっ! 言うようになったのー!」

 

(‘A`)「……しかしまあ、お前もショボンさんの前でよく言えるな……」

 

(;^ω^)「おっ!?」

 

14: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:29:34.60 ID:i1nggAI80

 

(´・ω・`)「…………」

 

ショボンさんは黙ってビールを飲んでいた。

 

僕は少しバツの悪そうな顔を作る。

 

/ ,’ 3「ほっほっ、ブーンもなかなか難儀だの」

 

(‘A`)「ああ、さっきの取り乱しようを見たら……恐ろしや恐ろしや」

 

(;^ω^)「あうあう」

 

ドクオさんとお爺さんは「御愁傷さま」といった感じで僕を見る。

 

ジョルジュさんはまだにやついていた。

 

(´・ω・`)「何言ってるんだい。僕が言うことなんて何もないよ」

 

沈黙が辺りを支配する中、叔父さんは何の前触れもなく口を開いた。

 

(;^ω^)「――――へっ?」

 

(´・ω・`)「……それに、もう分かっていたことだしね」

 

15: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:31:35.14 ID:i1nggAI80

 

 

 

↓次ページへつづく↓

叔父さんの話は続く。

 

その声は穏やかで、遠い昔を振り返るように語った。

 

(´・ω・`)「君がまだ小さかった頃、ツンと一緒によく家の庭先で遊んで

 

いたよ」

 

(´・ω・`)「それはそれは楽しそうにね」

 

( ^ω^)「……覚えていますお」

 

(´・ω・`)「あの頃の君は、本当に元気で、太陽のように明るかった」

 

/ ,’ 3「ほう」

 

(´・ω・`)「そして何より、ツンを喜ばせてくれた」

 

( ^ω^)「…………」

 

(´・ω・`)「二人は時々喧嘩もしていたけど、毎日のように笑っていた」

 

(´・ω・`)「……きっと、昔の君とツンはお互いに惹かれあっていたんだ

 

と思う」

 

(´・ω・`)「恋心とかとは、違うんだろうけどもね」

 

(´・ω・`)「そして再開を果たした今、君がツンを好きだと思うのも不思

 

議じゃない」

 

16: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:34:00.48 ID:i1nggAI80

 

叔父さんはそこで少し話を区切り、グラスに残ったビールを一気に流し込ん

 

だ。

 

(´・ω・`)「大体、ここ最近の君の態度を見ていたら、ね」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「おっ?」

 

(´・ω・`)「君がツンのことをどう思ってるかなんて、分かるに決まって

 

るじゃないか」

 

(;^ω^)「そんなにバレバレでしたかお……」

 

(´・ω・`)「まあね。君は意識してなかったのかも知れないけど」

 

叔父さんが僕の目を見る。

 

その目は優しくて、僕の気持ちを落ち着かせてくれた。

 

( ゚∀゚)「なんな、ハナっからお見通しかい」

 

(‘A`)「……だったら、さっきあそこまで必死にならなくても」

 

(#´・ω・`)「それとこれとは話が別だ!」

 

/ ,’ 3「ほっほっほっ、複雑な父親心じゃの」

 

17: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:36:07.08 ID:i1nggAI80

 

その後、宴会は夜遅くまで続いた。

 

用意された一升瓶はあっという間に空になり、ビールの缶が乱れ飛んだ。

 

枝豆のさやは皿に山のように盛られ、じゃこの天ぷらはどんどん胃袋の中に

 

消えていった。

 

(*’A`)「おーし! お前も飲んどけ!」

 

酔っ払ったドクオさんがお酒を勧めてくる。

 

( ^ω^)「……お受けしますお!」

 

/ ,’ 3「ん? ブーンは飲まないんじゃなかったんか」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「まあ、ちょっとぐらいなら」

 

 _

 

(*゚∀゚)「おっしゃ、ええ心がけじゃの! 一気にいかんか一気に!」

 

そう言ってジョルジュさんが僕のグラスにビールをなみなみと注いだ。

 

ぎりぎりにまで注がれたグラスを、僕は高々と持ち上げた。

 

( ^ω^)「それでは、いただきますお!」

 

18: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:38:13.36 ID:i1nggAI80

 

僕はそれを一気に飲み干した。

 

独特の苦味のある液体が僕の喉を通り過ぎていく。

 

(*^ω^)「ぷはー!」

 

前に飲んでいたおかげで免疫が出来たのか、不思議と気分は悪くならなかっ

 

た。

 

頭は少しくらくらするけども、以前よりはずっと意識ははっきりしていた。

 

 

/ ,’ 3「ほっほっ、ええ飲みっぷりじゃの」

 

(*’A`)「これで、お前も俺達の仲間入りだな!」

 

(*^ω^)「おっおっ」

 

上機嫌でみんなの言葉を受ける。

 

酔いが回ったのかもしれないな……。

 

ふらつく頭の中で、僕はそう思った。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

 _

 

(*゚∀゚)「よーし、もう一杯いっとけぇ!」

 

(;^ω^)「ちょwwwwwさすがに二杯目は無理wwwwwww」

 

19: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:40:58.07 ID:i1nggAI80

 

結局、四杯も飲まされ酔い潰れてしまった。

 

僕は赤い顔をして、畳の上に突っ伏していた。

 

(;^ω^)「これはひどい……うぇ……」

 

(*’A`)「はっはっはっ! ちょっとやりすぎたかな!」

 

 _

 

(*゚∀゚)「しばらく休んどけ! 俺らはまだ飲んどるけぇの!」

 

薄れゆく意識の中で、みんなの笑い声が聞こえた。

 

少し休んで酔いを醒ました後、再び宴の席に加わる。

 

いつまでも続く居心地のいい時間。

 

ショボンさんの楽しそうな顔が印象的だった。

 

外を見るときらめく星と月が夜を彩っていた。

 

僕たちの宴会は、その夜空を肴にして、馬鹿みたいに盛り上がった。

 

20: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:42:04.10 ID:i1nggAI80

 

以上で11話はおわり

 

少し休んでから12話を投下します

 

21: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 19:43:44

 

 

 

↓次ページへつづく↓

.31 ID:qwfRpb8F0

 

乙そしてwktk

 

いいなあ、これ

 

23: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:51:17.59 ID:i1nggAI80

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第十二話

 

その日は特に何もなく、ただ時間が過ぎていくだけだった。

 

朝の散歩を終え、昼食を取り、しぃとモララーの宿題を見てあげる。

 

その後は一日中、くだらないテレビ番組を見て過ごした。

 

夕食は天麩羅だった。

 

さくさくの衣に包まれた海老のぷりっとした身が堪らない。

 

キスのほどけるような身と、イカの小気味よい歯応えも楽しめる。

 

揚げられた茄子は旨味が増し、独特の食感も相まって最高だった。

 

夕食を済ませた後は、お風呂に入り、縁側で涼む。

 

平凡で、だけど穏やかな日。

 

僕は、このまま今日という日が終わるものだと思っていた。

 

24: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:53:17.78 ID:i1nggAI80

 

(´・ω・`)「ブーン君、ちょっと来てくれないか」

 

闇夜に鳴くみみずくの声に耳を傾けていると、背後から叔父さんの呼び声が

 

した。

 

僕は声に反応し、体ごと振り返った。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「なんですかお?」

 

(´・ω・`)「いや、悪いんだけどね、また仕事の手伝いをしてほしいんだ

 

 

( ^ω^)「おー、全然構わないですお」

 

(´・ω・`)「それは良かった。それじゃ、裏の倉庫まで付いてきてくれる

 

かな」

 

( ^ω^)「了解ですお」

 

僕は日頃の恩返しと思って、快く頼みを引き受けた。

 

僕は叔父さんの後ろを付いていき、家の裏にある倉庫に入る。

 

倉庫の中は、蓄えられた柑橘類の甘酸っぱい香りが充満していた。

 

25: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:56:28.40 ID:i1nggAI80

 

(´・ω・`)「よし、早速始めようか」

 

( ^ω^)「何をすればいいんですかお?」

 

(´・ω・`)「ここにある果実を、出荷分だけ箱詰めしてほしいんだ」

 

( ^ω^)「任せてくださいお!」

 

(´・ω・`)「じゃあ、よろしくお願いするよ」

 

僕たちは作業に取り掛かった。

 

ダンボール箱に5kgずつ、みかんやら八朔やらを放り込む。

 

時々重さを計りながら、微調節しつつ詰めていく。

 

(;^ω^)「これはきつい」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

4箱ほど箱詰めしたところで、腰が悲鳴を上げた。

 

何せ前屈運動が多いので、腰にかかる負担は相当なものだ。

 

慣れているはずの叔父さんも額から汗を垂らしている。

 

26: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 19:59:29.21 ID:i1nggAI80

 

僕たちは休むことなく箱詰めの作業を続けた。

 

滴り落ちる汗を首にかけたタオルで拭う。

 

風のない閉鎖された空間の中で、ただひたすらに作業に集中した。

 

(;´・ω・`)「ふぅ……、ちょっと休憩にしようか」

 

(;^ω^)「そうしますお」

 

僕たちは先程まで果実が入っていたプラスチックの箱に腰かけ、一息ついた

 

 

ひどく汗をかいている。

 

もう一度お風呂に入らなきゃな、と思った。

 

(´・ω・`)「ありがとうね、泣き言一つ言わずに手伝ってくれて」

 

( ^ω^)「いえいえ、このぐらい何ともないですお」

 

僕は以前、叔父さんの帳簿を手伝ったことを覚えている。

 

その時の自分は情けなくて、すぐに音を上げていた。

 

そんな僕に叔父さんは教えてくれた。「苦しくてもやらなくてはいけない」

 

ということを。

 

だから、今回は弱音なんか吐いたりせず、無心で作業に打ち込んだ。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

手うちわで顔を扇ぐ。

 

気休め程度にしかならないけど、少しだけ安らげた。

 

30: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 20:05:14

 

.84 ID:PbrxSOZjO

 

ミカンの箱詰め作業の労働風景思い出して泣いたw

 

28: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:02:53.94 ID:i1nggAI80

 

(´・ω・`)「……ブーン君、ちょっといいかい」

 

( ^ω^)「おっ?」

 

突然、叔父さんが話を切り出してきた。

 

(´・ω・`)「この数年の間に何があったのか、聞かせてくれないかな」

 

(;^ω^)「っ!?」

 

一瞬、心臓が止まりそうになった。

 

(´・ω・`)「昔の君はあんなに明るかったし、今の君は明るさを取り戻し

 

つつある」

 

(´・ω・`)「……なのにどうして、高校中退なんかしてしまったんだい?

 

 

(;^ω^)「…………」

 

僕は答えなかった。

 

答えるのが怖かった。

 

(´・ω・`)「ブーン君……答えて、くれるかな」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

29: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:05:14.15 ID:i1nggAI80

 

僕は、怖くて、口を閉ざしたままでいた。

 

……ずっと、こうして押し黙っていたい。

 

(´・ω・`)「……辛いことかもしれないけど、教えてほしいんだ」

 

叔父さんが優しい目をして諭す。

 

――――僕は決心して、重い口を開いた。

 

( ^ω^)「……僕も、中学校までは毎日が楽しかったんですお」

 

心の奥に押し込んだ記憶を思い出す。

 

たどたどしい言葉遣いで、昔話を続けた。

 

( ^ω^)「気の合う友達と一緒に、毎日のようにふざけあっていました

 

お」

 

( ^ω^)「いつもいつも、皆は僕のそばにいてくれましたお」

 

( ^ω^)「いつしか、それが当たり前の事に思うようになったんですお

 

 

31: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:07:40.07 ID:i1nggAI80

 

( ^ω^)「……卒業後、僕は両親の薦めで、私立の進学校に通うことに

 

したんですお」

 

( ^ω^)「いつもいた友達はそこにはいなくて、周りは知らない人ばか

 

りでしたお」

 

( ^ω^)「その時初めて、『ああ、あの時間はあんなに貴重なものだっ

 

 

 

↓次ページへつづく↓

たんだ』って気付きましたお」

 

(´・ω・`)「…………」

 

ショボンさんは黙って僕の話を聞いていた。

 

一時も、僕から目を逸らすことなく。

 

( -ω-)「――――そして、もう一つのことに気が付いたんですお」

 

( -ω-)「……僕は、こんなにも消極的な人間だったんだって」

 

32: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:10:08.79 ID:i1nggAI80

 

そこで一瞬だけ言葉に詰まってしまった。

 

……それでも、僕は続けた。

 

すべてを吐き出してしまいたかった。

 

( -ω-)「ある日、勇気を出して隣の子に話しかけてみましたお」

 

( -ω-)「……でもその時、僕は冷たくあしらわれましたお」

 

思い出す。

 

あの日々の記憶を。

 

( -ω-)「クラスメイトの頭の中は、みんな勉強のことばかりでしたお」

 

 

( -ω-)「授業中も、休み時間も会話はないまま、半年が過ぎていきまし

 

たお」

 

33: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:12:27.10 ID:i1nggAI80

 

僕は記憶を掘り起こし、話し続ける。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( -ω-)「半年もすると、少しずつクラスの中でグループが出来ていまし

 

たお」

 

( -ω-)「でも、最初みたいにあしらわれるのが怖くて、僕はその輪に入

 

れませんでしたお」

 

( -ω-)「僕は誰とも打ち解けることなく、一人教室の隅にいましたお」

 

 

( -ω-)「……その時、僕は自分が嫌になったんですお」

 

( ;ω;)「友達が欲しいのに、自分からは何もできなくて……!」

 

僕は溢れる涙を堪えられなかった。

 

こぼれ落ちた涙がダンボール箱に落ち、染みになってしまった。

 

出来た染みは、だんだんと広がっていった。

 

35: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:15:09.44 ID:i1nggAI80

 

( ;ω;)「……それ以来僕は、ますます消極的になっていきましたお」

 

 

( ;ω;)「誰かと目を合わせるのも怖くて……、孤独でしたお」

 

( ;ω;)「……次第に高校も休みがちになって……」

 

( ;ω;)「……気が付くと、僕は引きこもるようになってましたお」

 

静寂が僕の周りの世界を覆う。

 

とめどなく流れる涙が、また一つ、ダンボール箱に染みを作った。

 

(´・ω・`)「……すまなかったね、辛い事を思い出させちゃって」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

泣き続ける僕に、叔父さんは優しい言葉をかける。

 

僕にはそれが嬉しかった。

 

( うω;)「……でも、今はもう気づいているんですお」

 

( -ω-)「……あの時の僕は、本当に情けなかったって」

 

右手で涙を拭い、一旦気持ちを落ちつけてから、再び話を始めた。

 

36: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:18:17.52 ID:i1nggAI80

 

( -ω-)「あの時は、周囲の人を恨みましたお」

 

( -ω-)「だけど本当に恨むべきは、僕の弱い心でしたお」

 

( -ω-)「……こっちに来る時だって、最初は反対したんですお」

 

( -ω-)「何年も会っていない人と、暮らせるわけないと思ったから……

 

 

僕はそこで目を開いた。

 

真っ赤になった目で、叔父さんの顔を見た。

 

( ^ω^)「……でも、叔父さんたちはこんな僕を優しく迎えてくれまし

 

たお」

 

( ^ω^)「僕は安心しましたお」

 

( ^ω^)「その日からは、毎日が楽しかったですお」

 

( ^ω^)「……そのおかげで、僕は少しだけ昔の自分を取り戻せたよう

 

な気がしますお」

 

( ^ω^)「だから、叔父さんには、とても感謝していますお!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

38: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:20:58.88 ID:i1nggAI80

 

――――僕はそこで話を切った。

 

(´・ω・`)「……君は、強い子だね」

 

それに合わせるように、叔父さんが口を開いた。

 

(´・ω・`)「辛い過去を受け止めて、それでなお自分を変えようとしてい

 

る」

 

( ^ω^)「そんなことありませんお……。弱いからこそ、変わろうとし

 

ているんですお」

 

(´・ω・`)「うん、君は本当に立派だ」

 

叔父さんは僕の目を見続けて、そう言った。

 

僕は何だか照れくさくなった。

 

40: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 20:22:26

 

.98 ID:ppcpqMkx0

 

風呂上り追いついた支援

 

42: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:23:15.83 ID:i1nggAI80

 

少し間をあけて、叔父さんがまた話を切り出してきた。

 

(´・ω・`)「もしかしたら、君は変わろうとしているんじゃないのかも知

 

れない」

 

( ^ω^)「おっ?」

 

(´・ω・`)「……君は取り戻そうとしているんだ、昔の君らしさを」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(´・ω・`)「あの明るくて、希望に満ちた君の姿を」

 

( ^ω^)「……そうかもしれませんお」

 

……なんとなく、思い出してきた。

 

昔の自分を。

 

あの頃の、純粋で、真っすぐな自分を。

 

44: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:26:02.59 ID:i1nggAI80

 

僕は、変わろうとしているんじゃない。

 

変わってしまった自分を、取り戻そうとしているんだ。

 

僕が目指す自分は、失ってしまった、あの頃の自分なんだ。

 

叔父さんの言葉で、はっきりとそう気付けた。

 

(;^ω^)「でも、女の子に対して消極的なのは昔も同じですお」

 

(´・ω・`)「ははは、本当にそうかな」

 

叔父さんは朗らかに笑う。

 

(´・ω・`)「昔の君とツンを見ていたら、そうは思えないけどね」

 

(;^ω^)「……本当ですかお」

 

(´・ω・`)「間違いないよ。昔の君たちは、本当に楽しそうだった」

 

僕はなぜか恥ずかしくなってしまった。

 

(´・ω・`)「さて、と……」

 

叔父さんはそう言って、箱の中から二つの夏みかんを取り出す。

 

そのうちの一つを僕に放り投げた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

46: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:29:13.55 ID:i1nggAI80

 

(´・ω・`)「のどが渇いただろう? これでも食べて、また作業に戻ろう

 

 

(;^ω^)「ちょ、これ売り物じゃないんですかお?」

 

(´・ω・`)「構わないよ、このぐらいならね」

 

( ^ω^)「……ありがとうございますお」

 

僕は叔父さんに、たくさんの意味を込めて感謝の言葉を述べた。

 

あれほど流れていた涙は、もう乾いてしまった。

 

ゆっくりと皮を剥いて、一かけらを口に放り込む。

 

袋が破れ、果汁が口の中に溢れる。

 

甘酸っぱいその味は、今の僕の心境に似ていた。

 

48: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:31:50.67 ID:i1nggAI80

 

以上で12話は終わりです

 

しばらく間をあけてから13話を投下します

 

ここまで読んでくれた方㌧

 

50: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 20:33:11

 

.58 ID:qwfRpb8F0

 

おお、まだあるのか

 

wktk

 

51: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 20:39:16

 

 

 

↓次ページへつづく↓

.63 ID:PbrxSOZjO

 

この作者には毎度感嘆とさせられる

 

区切り乙&続きwktk

 

52: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 20:41:18

 

.47 ID:Hacm1s5jO

 

感動した支援

 

超wktk

 

54: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:53:47.56 ID:i1nggAI80

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第十三話

 

今日はじめじめとした蒸し暑さとは無縁の、からっとした陽気な気候。

 

もちろん暑いことに変わりはないが、これまでよりはずっと快適だった。

 

そんな日の昼下がりのこと。

 

僕はモララーと一緒に縁側に腰掛け、ラムネを飲んでいた。

 

からん、と涼しげに鳴るビー玉の音色。

 

爽やかな炭酸が僕の心を弾ませる。

 

喉を通る冷たい感覚が、真夏の熱気を逆説的に伝えてくれる。

 

夏の日にしか味わえない快感。

 

そんな「らしさ」を感じつつ、太陽の下に広がる大洋を眺めた。

 

55: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:56:16.29 ID:i1nggAI80

 

空いた瓶の中でビー玉をからからと鳴らせていると、モララーが話しかけて

 

 

 

↓次ページへつづく↓

きた。

 

( ・∀・)「兄ちゃん、今日は虫取りに行こうよ!」

 

( ^ω^)「おっ、虫取りにかお?」

 

( ・∀・)「そうだよ。僕、いい場所を知ってるんだ!」

 

( ^ω^)「んー、どうしようかお……」

 

最後に虫取りをしたのはずっと前だし、そもそも虫自体何年も間近で見てい

 

ない。

 

興味をそそられつつも、少し敬遠してしまう自分がいた。

 

( ・∀・)「楽しいよー!」

 

モララーが瞳を爛々と輝かせて僕を見てくる。

 

本当に純真で、正直で、憎めない子だなと思った。

 

57: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 20:59:49.30 ID:i1nggAI80

 

( ^ω^)「……よし、分かったお! 一緒に行くお」

 

( ・∀・)「やった!」

 

そんなモララーのお願いを、僕が断れるはずがなかった。

 

空を見上げると、ギンヤンマが飛んでいた。

 

郷愁を誘うその姿に僕は見とれた。

 

木々の葉は、今もなお青々としている。

 

目の前に広がる夏景色は、ますます鮮やかに広がっていった。

 

59: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:02:07.96 ID:i1nggAI80

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕は部屋に戻り、服を着替え、カメラを入れたリュックサックを背負った。

 

 

首にかけたペンダントは、そのままに。

 

……僕はあの日以来、肌身離さずこのペンダントを身に付けている。

 

これを付けているだけで、ツンと繋がっているような気がするからだ。

 

準備を済ませ、いざ部屋を出ようとすると、しぃが部屋に入ってきた。

 

(*゚ー゚)「あれ、お兄ちゃんどこかに出掛けるの?」

 

( ^ω^)「おっおっ、モララーと虫取りに行くんだお」

 

(*゚ー゚)「そっか……」

 

( ^ω^)「何か、僕に用事があったのかお?」

 

(*゚ー゚)「うん、宿題を見てもらおうと思って……」

 

(;^ω^)「それはごめんだお。でも、モララーとの約束も……」

 

(*゚ー゚)「……ううん、いいよ。いってらっしゃい」

 

僕の言葉を遮って、しぃは部屋を出ていった。

 

笑顔の中に隠していた寂しげな瞳が見えて、僕は心にちくっとした痛みを覚

 

えた。

 

61: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:03:51.03 ID:i1nggAI80

 

( ・∀・)「兄ちゃん遅いよー!」

 

(;^ω^)「おー、すまんお」

 

早々と準備を済ませていたモララーが玄関先で僕を待っていた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

右手に二つの虫取り網を持ち、虫カゴを肩からさげている。

 

深めにかぶった大きめの麦わら帽子が、底抜けに明るい少年によく似合って

 

いた。

 

( ・∀・)「さっ、早く行こっ!」

 

( ^ω^)「ちょい待つお。ちゃんと虫よけを噴いておかないとダメだお

 

 

( ・∀・)「うひゃっ、冷たいよー」

 

( ^ω^)「我慢するお」

 

モララーの露出している肌に虫よけスプレーを噴きかけた。

 

独特の匂いが辺りに漂う。

 

僕は自分の肌にもスプレーを噴き、きっちり予防をしたところでようやく出

 

発した。

 

63: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:06:13.05 ID:i1nggAI80

 

山道に響く蝉の声は、より一層大きくなっていた。

 

僕たちはそんなけたたましい音を聴きつつ、目的地に向けて歩いていた。

 

夏の小道は芳しい匂いに満ち、僕の気分を昂らせる。

 

(;^ω^)「うひぃ、やっぱり暑いお」

 

いくら過ごしやすい気候とはいえ、夏は夏。

 

流れる汗は首筋を伝わり、足下に滴り落ちた。

 

( ・∀・)「もうすぐ着くから、我慢してよー」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(;^ω^)「はーいだお」

 

この暑さでもモララーは相変わらずだ。

 

身を焼くような太陽の光が僕に降り注ぐ。

 

堪らず、木陰を見つけては涼んだ。

 

その度にモララーに急かされ、僕はますます汗をかくことになった。

 

65: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:08:23.56 ID:i1nggAI80

 

やがて、ある林の中へ入っていった。

 

どこまでも続く木々の回廊は、僕の感覚を狂わせる。

 

僕たちは歩き続け、モララーの指す場所に向かった。

 

( ・∀・)「よし! 到着だよ!」

 

( ^ω^)「うはwwwww蝉うるせぇwwwwwwww」

 

辿り着いた場所は、林の奥の奥。

 

蝉の声はこれまで以上に響き渡り、聴覚までもが麻痺させられる。

 

視覚、聴覚、嗅覚。

 

ほとんどの感覚が魅了され、林の中は幻想と化し、僕は夢を見ているように

 

思った。

 

( ・∀・)「――――兄ちゃん、ぼーっとしてないで虫取りしようよぉ」

 

( ^ω^)「おっおっ、ごめんだお」

 

モララーの一言で僕は現実に返る。

 

気がつくと、虫よけを噴いていたにも関わらず、腕を蚊に噛まれていた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕は腫れあがった部分に爪で十字を作り、気を紛らわせる。

 

僕はモララーと一緒に、虫取りを開始した。

 

67: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:10:50.52 ID:i1nggAI80

 

( ^ω^)「ほいさっ!」

 

じぃじぃと鳴くアブラゼミに向かって、虫取り網を振り落とす。

 

網の中をそっと見ると、じたばたと暴れるアブラゼミがいた。

 

( ^ω^)「なんだ、意外と簡単だお」

 

網の中に手を入れアブラゼミを掴みとり、優しく虫カゴに入れてやる。

 

これで捕まえた蝉は3匹目。

 

宙を飛ぶトンボは難しいが、木に止まった蝉を捕まえるのは思ったより容易

 

だった。

 

(;^ω^)「それにしても凄い樹木の数だお」

 

僕は辺りに目をやった。

 

見渡す限り、木また木が視界を覆っている。

 

木の葉の影が降りてきて、僕をからかうように細かく揺れた。

 

立ち並ぶ木々からは、大自然の生命力が溢れ出している。

 

僕はカメラを構え、大地に根ざした樹木をレンズの中に収めた。

 

68: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:12:53.44 ID:i1nggAI80

 

( ・∀・)「えいっ! とぉっ!」

 

モララーも順調に虫を捕まえている。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

さげられた虫カゴには、もう既にたくさんの虫が入っていた。

 

(*・∀・)「やった! 兄ちゃん見て見て!」

 

遠くでモララーが大声を上げた。

 

興奮した様子で僕の名を呼び、網の中の獲物を見せる。

 

( ^ω^)「どうかしたのかお?」

 

( ・∀・)「ほらほら、カブトムシだよ!」

 

(*^ω^)「うおー、凄いお! 久しぶりに見たお!」

 

網の中にいたのは、立派な角を持ったカブトムシ。

 

大きさもまずまずで、厚い装甲のような皮膚が重戦車のようで格好いい。

 

僕はそれを見て、年甲斐もなく興奮してしまった。

 

それと同時に、僕にも少年の心が残っているということに気が付いた。

 

僕は少しだけ、童心に帰れたような気がした。

 

69: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 21:13:39

 

.53 ID:2OO+wuWR0

 

しえん

 

70: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:15:15.31 ID:i1nggAI80

 

( ・∀・)「えへへー、もっといっぱい捕まえるもんね!」

 

( ^ω^)「おっおっ、僕もがんばるお!」

 

モララーが捕まえたカブトムシに刺激され、僕は網を今まで以上に振り回し

 

た。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

アブラゼミ、クマゼミ、オニヤンマ、ギンヤンマ。

 

いろんな虫を捕まえたが、カブトムシやクワガタは見つからない。

 

(;^ω^)「(落ち着くお。やみくもに振り回しても無理だお)」

 

ここで僕は思い出す。

 

甲虫を捕まえるには、木を蹴って落とすのが手っ取り早いことを。

 

早速、僕は実行に移すことにした。

 

(#^ω^)「トェェェェェェイ!!」

 

僕は全身の力を込め、そびえ立つ大樹を思いっきり蹴りつける。

 

……ただ足が痛むだけで、虫は一匹も落ちてこなかった。

 

その代わりに、何枚かの新葉が、僕を慰めるようにはらはらと降ってきた。

 

 

72: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:17:33.84 ID:i1nggAI80

 

脱力した僕は木陰で休むことにした。

 

モララーはまだ元気に走り回って、虫取りに励んでいる。

 

太陽の日差しを浴びて、ますますモララーは活気づいていた。

 

飛び散る汗を気にすることもなく、目を輝かせてトンボの尾を追いかけてい

 

る。

 

夏色に染まった少年の姿は、太陽よりも眩しかった。

 

( ^ω^)「うーむ、あの元気は一体どこから来るんだお……」

 

僕は走り回るモララーを見る。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ずり落ちそうな麦わら帽子が、足取りに合わせて上下に揺れた。

 

74: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:19:56.27 ID:i1nggAI80

 

木にもたれて座っている僕の元に、モララーが駆け寄ってきた。

 

天真爛漫なその顔が、僕の心を和ませる。

 

( ・∀・)「兄ちゃん、どうだった?」

 

(;^ω^)「うーん、カブトムシとかは無理だったお」

 

( ・∀・)「僕も、結局クワガタは無理だったな……カブトムシは2匹見つ

 

けたけど」

 

( ^ω^)「でも、蝉やトンボは結構捕まえたお!」

 

( ・∀・)「僕だって……ほら、こんなに!」

 

(;^ω^)「SUGEEEEEEEEEE!!!!」

 

僕たちはお互いの成果を見せあった。

 

どこか懐かしい感覚に襲われる。

 

カゴから取り出した蝉は、今にも羽ばたき出しそうに羽を鳴らした。

 

77: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:22:11.18 ID:i1nggAI80

 

( ・∀・)「ねぇ兄ちゃん、知ってる?」

 

さっきまで蝉を弄っていたモララーが、急に話を振ってきた。

 

( ^ω^)「何をだお?」

 

( ・∀・)「蝉ってね、土の中に何年もいて、外に出られるのは数週間だけ

 

なんだって」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「おー、聞いたことはあるお」

 

蝉という生き物は、実は虫の中でも長寿な方らしい。

 

とはいえ、その生涯のほとんどを幼虫として土の中で過ごしている。

 

成虫になって空を自由に飛び回れるのは、一生のうちのほんの一瞬だけ。

 

昔読んだ図鑑からの知識が、僕の記憶の片隅に残っていた。

 

( ^ω^)「……だから、蝉は儚い生き物って言われているお」

 

( ・∀・)「うん……」

 

80: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:24:37.05 ID:i1nggAI80

 

( ・∀・)「……でも、僕はそうは思わないんだ」

 

( ^ω^)「おっ?」

 

モララーが言葉を紡いでいく。

 

明るい声のトーンはそのままに、だけどどこか意志が込もっていたように感

 

じた。

 

( ・∀・)「みんなね、蝉のことをかわいそう、かわいそうって言うんだ」

 

 

( ・∀・)「……だけど、蝉はそんな生き物じゃないよ!」

 

( ・∀・)「幼虫でいる間、いつか空を飛ぶことを夢見ながら……」

 

( ・∀・)「ずっと、ずーっと土の中でがんばり続けてるんだよ」

 

そこでモララーは、蝉を手から解き放った。

 

蝉は羽を広げ、大空へと飛び上がった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ・∀・)「……そして願いを叶えて、空を飛び回る成虫になる……」

 

( ・∀・)「僕は、そんな蝉のことを『すごいなぁ』って思うんだ」

 

( ・∀・)「僕たちだって、今をがんばらないと立派な大人になれないでし

 

ょ?」

 

82: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:27:17.37 ID:i1nggAI80

 

モララーの真っすぐな言葉が僕の心に響いた。

 

一瞬だけでも、輝くために、一生懸命に土の中で努力し続けている。

 

――――今の僕はまだ幼虫だ。

 

いつか大空に羽ばたくために、がんばらないといけない時期。

 

本当に大事な時期は、とっくに来ていて、もう終わりかけていた。

 

(;・∀・)「うーん、あまり上手く言えないけど……」

 

( ^ω^)「モララーの言いたいこと、凄くよく伝わったお」

 

( ・∀・)「えっ?」

 

( ^ω^)「……本当に、蝉は立派な生き物だと思うお」

 

僕はモララーの顔を見る。

 

その純真な瞳の奥には、こんなに深くて、こんなに素敵な感性が潜んでいた

 

のか。

 

僕はそう思いながら、ありったけの笑顔をモララーに向けた。

 

( ^ω^)「それに、そんな風に考えられるモララーも立派だと思うお!

 

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(*・∀・)「えへへ……なんか褒められちゃった」

 

86: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:30:09.71 ID:i1nggAI80

 

すっかり日は落ちて、夕日が辺りを紅で照らしていた。

 

僕たちはこの辺で虫取りを止め、暗くなる前に帰ることにした。

 

( ^ω^)「今日は楽しかったお」

 

( ・∀・)「僕も!」

 

( ^ω^)「……それに、ありがとうだお」

 

( ・∀・)「えっ? ……僕、兄ちゃんに何かしたっけ?」

 

僕は独り言のように呟き、モララーが不思議そうな顔をする。

 

( ^ω^)「モララーのおかげで、気付くことができたお」

 

( ・∀・)「うーん、よく分かんないや!」

 

僕たちは帰る前に、捕まえた虫たちを自然の中に逃がしてあげた。

 

自由になった虫たちは、遥か彼方の夕焼け空に向かって飛んでいった。

 

87: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:31:06.39 ID:i1nggAI80

 

以上で13話おわり

 

続いて14話を休憩の後で投下します

 

88: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 21:37:08

 

.97 ID:ppcpqMkx0

 

支援

 

89: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:43:02.03 ID:i1nggAI80

 

 

 

↓次ページへつづく↓

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第十四話

 

( ^ω^)「いふあいくっ、ふぁーいんでゅーなーう♪」

 

僕はお気に入りの歌を口ずさみながら、海岸沿いの道を歩いていた。

 

陽光を浴びた海面が、宝石のようにきらめいている。

 

目指すのは、ドクオさんの家。

 

――――夏ももう後半。

 

僕は一つの決意をしていた。

 

その気持ちを隠しているのが苦しくて、誰かに聞いてもらいたかった。

 

そこで僕は、ドクオさんに打ち明けようと思ったのだ。

 

ドクオさんは、いつだって弱い僕を導いてくれる。

 

頭の中で鳴るメロディーに合わせて、僕は歌詞をなぞっていく。

 

明るいのに、どこか切ない、そんな歌だった。

 

90: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:45:00.16 ID:i1nggAI80

 

( ^ω^)「ごめんくださいおー」

 

ドクオさんの家に着き、玄関の戸をこんこんと叩く。

 

川 ゚ -゚)「すまない、待たせた……って、ブーンじゃないか」

 

中から出てきたのは奥さんのクーさんだった。

 

ラフな格好なのに、美しさは微塵も損なわれていなかった。

 

( ^ω^)「クーさん、おはようございますお」

 

川 ゚ -゚)「おはようなのかこんにちはなのか微妙な時間帯だが……。今日は

 

 

 

↓次ページへつづく↓

どうしたんだ?」

 

( ^ω^)「ちょっと、ドクオさんに話したいことがあって……」

 

川 ゚ -゚)「残念だが、まだドクオは漁から帰ってきてないぞ」

 

( ^ω^)「おっ? いつ頃帰ってくるか分かりますかお?」

 

川 ゚ -゚)「ううむ……そればっかりは海次第だからな、何とも言えんよ」

 

(;^ω^)「なんてこったい」

 

92: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:47:24.25 ID:i1nggAI80

 

僕はクーさんと一緒に、この家の主の帰りを待つことにした。

 

お日様を浴びて少しだけ黄ばんだ畳。

 

潮風が運んでくる海の気配。

 

まるで遠い日の記憶のように、その空間は居心地が良かった。

 

( ^ω^)「クーさんも大変ですお。朝も早いでしょうし……」

 

川 ゚ -゚)「大変なことは大変だが、私の選んだ道だからな。不満なんかない

 

ぞ」

 

クーさんはそう言って、目を海の方に向ける。

 

海上に漂う幾隻もの船を眺めながら、珍しく微笑んだ。

 

川 ゚ー゚)「それに、あいつの夢を支えてやるのが、私の夢だったからな」

 

( ^ω^)「それを聞いたら、ドクオさんも大喜びしますおwwwww」

 

 

僕もつられて、輝く海を見る。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

あの広い海の上で、ドクオさんは夢を追いかけているんだ。

 

94: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:50:10.12 ID:i1nggAI80

 

川 ゚ -゚)「……そんな訳でな、私とドクオは20年以上の付き合いになるんだ

 

 

( ^ω^)「おー、それで結婚までいくとは凄いですお」

 

一時間弱の間、僕はクーさんの昔話を聞いていた。

 

曰く、ドクオさんとは幼馴染で子供の頃からずっと一緒にいるらしい。

 

川 ゚ -゚)「ここまで来たら、もう後は同じような日々が続くだけだがな」

 

( ^ω^)「でも、それはそれで悪いことじゃないと思いますお」

 

川 ゚ -゚)「そうだな、幸せなことだと思うよ」

 

クーさんの言葉の一つ一つが、僕を穏やかな気持ちにさせてくれる。

 

そうしているうちに、玄関からドクオさんの声が聴こえた。

 

それとほぼ同時に、クーさんは出迎えに行っていた。

 

96: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:52:36.33 ID:i1nggAI80

 

(‘A`)「うぃっす、ブーン。来てたんだな」

 

いつものようにタオルを頭に巻いた姿のままで、ドクオさんは僕の対面に座

 

った。

 

( ^ω^)「ちょっと、聞いてもらいたいことがあるんですお」

 

(‘A`)「ほう……、が、それは後回しだな。飯食ってから聞くぜ」

 

ドクオさんが時計を指差す。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

その短針は数字の12を差していた。

 

(;^ω^)「おっ、すっかりお昼のことを忘れてましたお」

 

(‘A`)「あー、昼飯食ってきてないのか? ……だったらお前も食っていき

 

な」

 

( ^ω^)「おっ? いいんですかお?」

 

(‘A`)「俺よりクーに聞いたほうがいいぜ」

 

( ^ω^)「クーさん……」

 

川 ゚ -゚)「構わんぞ。今から作るから簡単なものしかできないがな」

 

( ^ω^)「ありがとうございますお!」

 

98: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:55:05.37 ID:i1nggAI80

 

クーさんが「簡単なもの」と言って作ったのは、ぶっかけうどんだった。

 

熱々のうどんにネギと天かすをたっぷりと入れ、きんきんに冷やしただしを

 

かける。

 

そして大根おろしをのせ、好みでおろし生姜を加えたら、後はずるずると頂

 

くだけ。

 

熱いままのうどんは冷たくしたものとは違って、独特のもちもち感が楽しめ

 

る。

 

そこに冷たいだしを注ぐことで、きゅっと引き締まった味になる。

 

クーさんイチオシの、「あつひや」という食べ方らしい。

 

ネギと大根おろしのおかげで、濃厚なだしなのに後味はさっぱりとしている

 

 

 

↓次ページへつづく↓

 

さらにすだちを絞ると、ぐんと爽やかさが増した。

 

箸は休まることなく、するするとうどんが胃の中に入っていく。

 

僕は二玉はあろうかという量を、あっという間に平らげた。

 

100: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 21:58:1

 

9.19 ID:h83WoXzA0

 

ドクオとクー30代くらいだと思ったのにまだ20半ばだったのか・・・

 

101: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 21:58:22.17 ID:i1nggAI80

 

(‘A`)「……で、話ってのは何なんだ?」

 

食後、僕はドクオさんと縁側に座った。

 

クーさんは後片付けをしている。

 

ドクオさんが咥えている爪楊枝が、口の動きに合わせて上下に揺れた。

 

( ^ω^)「……もう、夏も残りちょっとですお」

 

僕は遠くを見つめながら、これまでのことを思い出す。

 

思えばいろいろなことがあった。

 

そのすべてが、懐かしくて、優しかった。

 

(‘A`)「あぁ、盆も過ぎたしな。それがどうかしたのか?」

 

( ^ω^)「僕は、決めたんですお」

 

( ^ω^)「――――この夏が終わる前に、ツンに告白しようって」

 

102: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 22:00:2

 

 

 

↓次ページへつづく↓

2.28 ID:PbrxSOZjO

 

夏の夜に爽やかな風が吹いてくる

 

作者最高だべ

 

104: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:01:27.16 ID:i1nggAI80

 

僕は、決意を口にした。

 

口にすることで、曖昧な予定がこれから起こる事実に変わったような気がし

 

た。

 

(‘A`)「ほぉ……」

 

ドクオさんがにやつく。

 

(;^ω^)「ちょっ、本気ですお!」

 

(‘A`)「分かってる、分かってるってwwwwww」

 

(;^ω^)「じゃあ何で笑ってるんですかお!」

 

(‘A`)「いやいやいやwwwwwそりゃあなwwwwwww」

 

僕は慌てながらドクオさんに言い寄った。

 

きっと今、僕の顔は真っ赤になっているだろう。

 

108: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:03:23.81 ID:i1nggAI80

 

ようやく笑う事を止めたドクオさんは、真剣な顔つきに戻った。

 

(‘A`)「……まっ、お前がマジだってことは顔見りゃよく分かるぜ」

 

(;^ω^)「おー……」

 

僕はちょっとだけ、からかわれたような気持ちになった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

だけどドクオさんは、ちゃんと僕の言葉を真正面から受け止めてくれていた

 

 

正午を過ぎて、ますます暑さは増していく。

 

僕は話を続けた。

 

( ^ω^)「それで、ドクオさんの意見を聞きたくて……」

 

(‘A`)「俺から言うことなんてねぇよ。全部お前次第だ」

 

(‘A`)「お前の気持ちを伝えられるのは、お前だけだからな」

 

110: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:06:13.18 ID:i1nggAI80

 

( ^ω^)「それじゃ、お邪魔しましたお」

 

話を聞いてもらった僕は、すっきりとした面持ちでさよならを言うことにし

 

た。

 

ドクオさんの家を一歩出ると、蒸し暑くてすぐに汗が噴き出した。

 

( ^ω^)「お昼まで頂いて、本当にありがとうございましたお」

 

川 ゚ -゚)「礼には及ばんぞ。飯ぐらいいつでも御馳走してやる」

 

( ^ω^)「ドクオさんも、僕の話を聞いてくれてありがとうございまし

 

たお」

 

(‘A`)「おぅ、がんばれよ」

 

川 ゚ -゚)「何があったかは知らんが……またあとで教えてもらうぞ、ドクオ

 

 

(‘A`)「へいへい、一から十まで喋りますよ」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(;^ω^)「できれば秘密にしておいてほしいお……」

 

112: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:08:25.97 ID:i1nggAI80

 

( ^ω^)「それじゃ、バイバイですおー!」

 

僕は手を振り、二人に別れを告げる。

 

二人が小さく手を振り返しているのが見えた。

 

僕はまた、海沿いの道を歩いていった。

 

行きと同じように、お気に入りの歌を口ずさみながら。

 

( ^ω^)「いふあいくっ、ふぁーいんでゅーなーう♪」

 

開放感溢れるサビのメロディー。

 

青い海と太陽にぴったりの曲調だ。

 

僕は、歌詞の意味を思い出す。

 

113: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:11:01.11 ID:i1nggAI80

 

If I could find you now, things would get better.

 

(もし今君を見つけられたら、何もかも良くなっていくのに)

 

We could leave this town, and run forever.

 

(この町を離れても、僕たちはいつまでも走り続けられた)

 

I know somewhere, somehow, we’ll be together.

 

(どこかで一緒になることは、なんとか分かっている)

 

Let your waves crash down on me, and take me away, yeah.

 

(君の波を思いっきり浴びせて、僕を連れて行っておくれよ)

 

 

 

↓次ページへつづく↓

115: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:12:18.33 ID:i1nggAI80

 

14話おわり。疲れた・・・

 

最後に15話を投下して終わりにしたいと思います

 

116: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 22:19:5

 

4.72 ID:ppcpqMkx0

 

支援

 

117: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:25:57.12 ID:i1nggAI80

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第十五話

 

その日も、太陽はぎらぎらとした光を降り注いでいた。

 

青い空が、どこかくすんで見える。

 

その空の色が、晩夏特有の寂しげな雰囲気を感じさせる。

 

涼やかな風が吹いてきて、僕の火照った顔を撫でた。

 

僕は今、あの美しい川に向かっている。

 

高鳴る鼓動は静まる気配すらなく、僕の呼吸を苦しくする。

 

それは、ばくばくという心音が聴こえてきそうなほど。

 

緊張と、照れが入り混じったような気持ち。

 

そんな微妙な気持ちを抱えて、僕は川を目指して歩いた。

 

その隣に、想いを伝える相手である、ツンを連れて。

 

119: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:28:09.04 ID:i1nggAI80

 

僕たちは川に到着し、冷たい水の中に足をつけて岸辺に座った。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

時計に目をやると、2時を過ぎているのが分かった。

 

空を見上げると、今にも泣き出しそうに見えた。

 

僕はまず、世間話をすることから始めた。

 

つまらない話だったかもしれないな、と思いながらも、なんとか話を繋いで

 

いく。

 

僕の話に、ツンは時折愛想笑いを浮かべながら耳を傾けていた。

 

僕はひたすら喋り続けた。

 

言葉が途切れるのが、怖かったから。

 

二人の間に沈黙が訪れるのが、怖くて仕方なかったから。

 

話すことがなくなり、少し間が開くだけで、胸が締め付けられそうになる。

 

 

早く本題を伝えなくちゃいけないのに、僕はただ言葉を探すだけだった。

 

121: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:30:35.15 ID:i1nggAI80

 

……あまり時間を取り過ぎると、ツンが不審に思うかも知れない。

 

僕はそう思い、一旦気持ちを落ち着かせる。

 

早く伝えてしまおう。

 

そうすれば、この苦しみからも解放される。

 

受け取ってもらえなくても、後悔なんてしない。

 

僕はこれまで、逃げてばかりだった。

 

高校を辞めたのだって、孤独から逃げ出したからだ。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

孤独になった原因も、僕が人間関係の構築から逃げ出したからだ。

 

この町に来たのだって、都会の喧騒から逃げたかったからだ。

 

最初は反対していたのも、何年も会っていない親戚との関わりから逃げたか

 

ったからだ。

 

もう、逃げ出したりしない。

 

僕はそう決意し直して、ツンの顔をじっと見た。

 

124: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:33:18.78 ID:i1nggAI80

 

――――ツン。

 

えぇと……あまり見ないでほしいお……。

 

……実は、今日、告白したいことがあるんだお。

 

真剣に、聞いてほしいんだお。

 

……僕は……。

 

……君の事を、好きになってしまったお。

 

だから……、ツンの気持ちも聞かせてほしいお。

 

どんな答えでも、僕は嬉しいお。

 

126: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:36:14.90 ID:i1nggAI80

 

ツンの目に、僕はどんな風に映っただろう。

 

告白している時の僕は、心拍数は上がりっぱなしで、自分でも動揺している

 

のが分かった。

 

……きっと、ツンは僕以上に動揺してるだろうな。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

突然、こんなことを告げられて、迷惑かも知れない。

 

熱くなった顔を、川の水で冷やした手でおさえる。

 

こんな風に、自分の気持ちを単刀直入に伝えたことは、生まれて初めてだっ

 

た。

 

静けさが僕たちの間に流れた。

 

川の流れは、いつもどおり、ゆるやかだった。

 

僕はツンの顔を見る。

 

その顔は、意外なほど落ち着いていて、表情からは気持ちが読み取れなかっ

 

た。

 

128: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:38:34.08 ID:i1nggAI80

 

僕は今、持てるすべての勇気を振り絞った。

 

僕は逃げ出すことを棄てて、ツンに恋心を告げた。

 

もし想いが届かなくても、絶対に後悔なんかしないと誓える。

 

こうして伝えられただけでも、僕は満足だった。

 

この夏、一番の思い出はツンのことばかりだった。

 

……もしかしたら、本当に自分は幼い頃からツンのことを好きだったのかも

 

しれない。

 

すっかり色褪せてしまった少年時代の記憶。

 

思い出そうにも、頭の中の情景は霞みがかっていた。

 

ちらりと腕時計を見ると、告白してから数分が経っている。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

二人は黙りあったままだ。

 

僕はただ、返事を待つだけだった。

 

131: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:40:37.48 ID:i1nggAI80

 

僕は待ち続ける。

 

待ち続けて、何分が経っただろう。

 

この川は時間を忘れさせてくれる。

 

そんな場所でも、僕は時の流れを感じていた。

 

僕は耐え切れず、口を開きそうになる。

 

その気持ちを、ぐっと我慢した。

 

まるで催促しているようで、ツンに悪いと思ったからだ。

 

人の気持ちを強制させてはいけない。

 

中学の頃、担任の先生にくどくどと言われた言葉だ。

 

僕はこの言葉の意味を、今になって理解できたような気がした。

 

ツンの気持ちが聞きたい。

 

ただそのことだけを考えながら、黙って待ち続けた。

 

135: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 22:43:1

 

0.39 ID:PbrxSOZjO

 

青春

 

134: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 22:42:4

 

5.25 ID:9/OYaciI0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ヘタしたら時かけよりよっぽど青春色強いよな支援

 

136: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:43:41.24 ID:i1nggAI80

 

ようやく、ツンが動きを見せた。

 

……でも、唇は少しも動くことはなかった。

 

ツンは全く表情を変えずに立ち上がった。

 

僕はツンの顔を見た。

 

ツンは僕の顔を見ることはなく、目を伏せていた。

 

ξ゚-゚)ξ「――――――――」

 

この時僕は、やっと答えが聞けるのかなと思っていた。

 

期待と不安が、僕の心の中で交差した。

 

139: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:46:32.57 ID:i1nggAI80

 

でも実際に起きたことは、僕の予想を超えたことだった。

 

僕から目を逸らしたまま。

 

ツンは何も言わずに。

 

僕の目の前から、消えた。

 

141: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 22:47:4

 

9.05 ID:h83WoXzA0

 

消失!?

 

142: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 22:48:1

 

4.92 ID:PbrxSOZjO

 

 

 

↓次ページへつづく↓

予想GUY

 

144: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:48:44.30 ID:i1nggAI80

 

ツンは無言のまま走り去っていった。

 

僕は茫然として、しばらく動けなかった。

 

気付いた時には、もう横にツンはいなかった。

 

僕はただ一人、川辺に取り残された。

 

川のせせらぎが聴こえる。

 

まるで、僕を労うように。

 

だけどそれは、自分に都合のいい解釈だった。

 

(  ω )「――――――――」

 

残された僕は、何も考えられなくなって、ただ川を見つめていた。

 

悲しみも喜びも怒りも何も感じない。

 

僕は何もかもから取り残された気分になった。

 

145: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 22:49:1

 

1.32 ID:ppcpqMkx0

 

ナンテコッタイ

 

148: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:51:05.38 ID:i1nggAI80

 

川の水面を見つめ続けて、何分、何十分かが過ぎたころ。

 

ようやく僕は冷静さを取り戻して、頭の中を整理する。

 

……そして、一つの結論を下した。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕はきっと、ふられたんだろうなって。

 

あれほど後悔しないと決めたのに、目からは自然と涙が零れた。

 

想いが伝わらなかったことが悲しかったんじゃない。

 

ツンの答えをちゃんと聞けなかったことが、悲しかったから。

 

打ちひしがれる僕の頭に、雨粒がぽつりと落ちてきた。

 

今にも泣き出しそうだった空は、堰を切ったかのように大粒の涙を流してい

 

た。

 

151: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 22:53:50.20 ID:i1nggAI80

 

以上で15話はおわりです

 

これで今日の分は終了したいと思います。やっと栄冠ナインができるZE!

 

恐らくですが、来週が最終話を含む最後の投下になると思います

 

それでは、長い間ありがとうございました

 

↓以下、聞きたいことがあればなんでも答えます

 

154: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 22:54:4

 

9.65 ID:ykE0Uo5S0

 

登場キャラのスペックよろしく

 

167: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 23:16:28.22 ID:i1nggAI80

 

登場キャラまとめ

 

( ^ω^) 内藤ホライゾン(17)

 

今年高校を中退した少年。愛称はブーン。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

この夏ショボンの住む町にやってきて、自然の中での生活を満喫している。

 

 

目標は「自分を変える」こと。気弱だけど、根は明るい子。

 

ξ゚⊿゚)ξ ツン(16)

 

ショボン家の長女。現在地元の高校に通う学生。

 

性格は若干きついがホントは優しい、はず。

 

不器用でまともに料理が出来ない。

 

(*゚ー゚) しぃ(12)

 

ショボン家の次女。小学生。

 

真面目で素直、でもちょっといじわる。

 

スク水を着こなす。ファンタジーですね。

 

168: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 23:17:26.34 ID:i1nggAI80

 

( ・∀・) モララー(10)

 

ショボン家の長男。小学生。

 

活発で底抜けに明るい。情感豊かな少年。

 

ブーンによく懐いている。

 

(´・ω・`) ショボン(38)

 

ブーンの父親の弟。ブーンから見た叔父さん。

 

みかん農業を営んでいる。

 

若干親バカ気味だが、いい人。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(‘、`*川 ペニサス(35)

 

ショボンの妻。高校卒業後すぐに嫁いだ。

 

料理が上手で、知識も豊富。

 

物腰穏やかな頼れる田舎のかーちゃん。

 

169: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 23:18:33.77 ID:i1nggAI80

 

(‘A`) ドクオ(29)

 

地元で漁師をしている男性。

 

父親の家業を継ぎ、若い頃から漁に出ている。

 

老けて見られるのが嫌らしい。ブーンの憧れ。

 

川 ゚ -゚) クー(29)

 

ドクオの妻。幼馴染でそのまま結婚。

 

人に自分の話をするのが好き。

 

ドクオのよき理解者であり、パートナー。

 

( ゚∀゚) ジョルジュ(32)

 

ドクオと同じく、地元の漁師。

 

方言がきつく、何を喋っているか分かりにくいアホ。

 

海が大好きなアホ。

 

170: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 23:19:15.22 ID:i1nggAI80

 

/ ,’ 3 荒巻スカルチノフ(70~80)

 

この町一帯で薬を売り歩くお爺さん。元々は店舗を持っていた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

歩いても歩いても疲れない、まだまだ元気な老人。

 

掴みどころがない性格。

 

中二っぽくまとめてみました

 

あと年齢はいずれも数えでの年です

 

159: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 22:58:0

 

4.30 ID:PbrxSOZjO

 

乙!

 

ドクオとクーは何歳の時に結婚したん?

 

174: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 23:21:42.80 ID:i1nggAI80

 

>>159

 

想像にお任せします

 

というより、そこまで考えていません

 

ドクオが漁師になって10年後の25,6歳ぐらいじゃないですかね

 

176: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 23:27:0

 

7.02 ID:PbrxSOZjO

 

真面目に質問

 

食事とかの表現ってやっぱり参考にした資料とかある?それとも自己流?

 

177: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 23:31:46.62 ID:i1nggAI80

 

>>176

 

参考にしたものはありません。完全に自己流です

 

 

 

↓次ページへつづく↓

相当こだわっています

 

メニューに関しては、作者の経験が基本で一部は調べました

 

182: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 23:44:53.04 ID:i1nggAI80

 

10話のパスタは完全に創作です

 

「海鮮~」は自分のレシピを改良したもの

 

「アスパラ~」も実際はベーコンではなくチキンの場合が多いです

 

また、あの商店街にもモデルがあります

 

186: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 23:52:0

 

6.90 ID:PbrxSOZjO

 

>>182やべえ食いてえパスタw想像したらヨダレがorz

 

作者の知識と文才とレシピにsit

 

184: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 23:48:21.71 ID:i1nggAI80

 

6話でアジをサビキで釣っていますが、現実とは違います

 

船でのアジ釣りは基本的に一本釣りの事が多いです

 

ただ、ブーンは初心者なので簡単なサビキ釣りで書くことにしました

 

とりあえず、突っ込まれそうな事を前もって書きました

 

181: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/21(土) 23:39:29.95 ID:i1nggAI80

 

ここからちょっと裏話

 

14話でブーンが歌っている曲は「Ocean Avenue/Yellowcard」という曲で

 

 

 

 

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一応ですが、この作品のイメージソングです

 

歌詞、曲調、どれもが夏と青春を感じさせていい感じです

 

ようつべ

 

183: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 23:45:2

 

8.28 ID:9/OYaciI0

 

なんか微妙に見覚えある歌詞と思ったらイエローカードだったか

 

187: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/21(土) 23:52:2

 

3.03 ID:3tmtflJg0

 

いいな、これw

 

さっきからループしっぱなしwwww

 

2: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:07:46.87 ID:md+Pbzs90

 

えー、前回「来週で最後の投下」と言いましたが・・・

 

ごめんなさい、今回でラストまで投下するのは無理です。本当にごめんなさ

 

 

今日はとりあえず、切りのいい所まで投下したいと思います

 

3: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:11:18.55 ID:md+Pbzs90

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第十六話

 

僕がツンに想いを告げてから二日。

 

その間、二人が口を聞くことは一度もなかった。

 

廊下ですれ違う度に気まずい空気が流れる。

 

 

 

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なるべく目を合わさないように、伏し目がちにして横を通り過ぎる。

 

……だけどツンがそうなのではなく、避けているのは僕の方。

 

食事の時はいつも隣同士だったのに、臆病な僕は違う位置に座るようになっ

 

た。

 

本当は、答えをちゃんと言うようにツンに要求すべきなのかも知れない。

 

だけど僕には、そんな事をする勇気はもう残されていなかった。

 

悲しくて、悔しくて、死んでしまいそうなほどの憂鬱は不思議と感じなかっ

 

たけれど、

 

僕はただ、自己嫌悪に陥っていた。

 

あんなに逃げないと誓ったのに、僕はまた辛い現実から逃げてしまっていた

 

 

4: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 23:

 

12:51.14 ID:kegktpM9O

 

待ってた

 

5: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:13:50.79 ID:md+Pbzs90

 

ひとつ、奇妙な点がある。

 

僕はあの日以来、肌身離さず付けていたペンダントを外した。

 

それが重くて、苦しくて、自分の首を絞めているように感じたからだ。

 

だけどもツンは、今もペンダントを首からぶらさげ続けている。

 

僕は訳が分からなかった。

 

 

 

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そういうものなのだろうか?

 

あの時の事は思い出なんかじゃなくて、ただの一瞬の出来事だったのだろう

 

か?

 

……僕は、嫌われたんじゃなかったのか?

 

でも今となっては、聞くこともできない。

 

あの日から三日目の昼下がり。

 

僕は時間帯を少しずらして、今日も日課の散歩に出掛けた。

 

いつも見ていた景色も。

 

いつも歩いていた道も。

 

今の僕の目には、寂々として見えた。

 

8: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:16:28.41 ID:md+Pbzs90

 

(*゚ー゚)「お兄ちゃん、おかえりー」

 

散歩から帰ると、玄関でしぃが出迎えてくれた。

 

( ^ω^)「ただいまだお」

 

僕は精一杯、いつも通りに振る舞おうと努める。

 

(*゚ー゚)「……お兄ちゃん、ふられたからって気にしちゃダメだよ?」

 

( ;ω;)「うぅ……しぃは優しいお……」

 

……とはいえ、もうしぃにはバレていた。

 

態度がどこか普段と違うことを見抜かれて、その理由を尋ねられた。

 

僕はお茶を濁そうとしたが、そうはしぃが許すはずもなく。

 

 

 

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結局、洗いざらい、一切合切を話す羽目になった。

 

僕の話を聞いている間、しぃはいつになく真剣な表情をしていた。

 

でも、口にしてしまうことでほんの少しだけでも心が晴れたのは事実で、

 

僕は話を聞いてくれたしぃに、感謝していた。

 

9: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:18:56.11 ID:md+Pbzs90

 

(*゚ー゚)「……あのね、ちょっと提案があるんだけど」

 

( うω;)「おっ? 何だお?」

 

(*゚ー゚)「今日はね、私がお兄ちゃんとデートしてあげる!」

 

(;^ω^)「……はひぃぃぃぃ!?」

 

(*゚ー゚)「……だって、お兄ちゃんずっと寂しそうだったから……」

 

(*゚ー゚)「お姉ちゃんの代わりに、私が一日彼女になってあげるね」

 

(;^ω^)「mjsk?」

 

あまりにも突拍子な申し出。

 

ふられた相手の、妹@12歳とデート。

 

( ^ω^)「(……これなんてエロゲ?)」

 

という率直な感想が頭の中に浮かぶ。

 

それに、今の僕の心境を考えればこんなことはとても言える筈はないだろう

 

に。

 

……でも、しぃはしぃなりに僕を慰めようとしてくれているのだろう。

 

塞ぎ込んで、またここに来る前の自分に戻りかけていた僕に、もう一度チャ

 

 

 

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ンスをくれている。

 

僕はその気持ちが嬉しくて、しいの提案に喜んで賛同した。

 

10: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:21:06.95 ID:md+Pbzs90

 

デートと言っても何のことはない。

 

特に開けた町に出掛けるでもなく、僕たちは海を目指して山道を下りていっ

 

た。

 

目に映る、青い海、青い空、青い風、青い緑。

 

――――僕には悲しみの色としか捉えられなかった。

 

そんな沈んだ気分を和らげてくれたのは、隣にいてくれる少女。

 

僕はしぃの歩幅に合わせて、ゆっくり、ゆっくりと下りていった。

 

(*゚ー゚)「もう、夏も終わっちゃうね」

 

( ^ω^)「おー、あと少し九月になって、秋が訪れるお」

 

(*゚ー゚)「夏が終わっちゃったら、お兄ちゃんも帰っちゃうんだよね……」

 

( ^ω^)「……そうだお。僕がこっちにいるのも、あと少しだけだお」

 

 

(*゚ー゚)「うん、だから……」

 

(*゚ー゚)「今日はいっぱい、思い出作ろうね!」

 

12: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:23:37.09 ID:md+Pbzs90

 

山を下り、海沿いを進み、海岸を目指す。

 

長くて、暑い道のり。

 

 

 

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そんな道程を、僕たちはゆるやかなペースで歩いていった。

 

( ^ω^)「やっと海に到着したお!」

 

目の前に広がる大海。

 

太陽で熱された白い砂浜。

 

静かに響く波の音。

 

鼻をくすぐる潮風の香り。

 

頭で捉えきれないほどの堂々たる光景。

 

僕は全身で海を感じていた。

 

(*゚ー゚)「私、今年海に来るのは初めてなんだ」

 

( ^ω^)「僕も、こうして海浜に来たのは初めてだお。やっぱり海はい

 

いものだお」

 

(*゚ー゚)「うん、夏が終わる前に、来られて良かった……」

 

しぃがきらきら光る海面を見つめる。

 

押しては返すさざ波の音色が、心の奥底にまで沁み渡った。

 

13: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:26:25.31 ID:md+Pbzs90

 

僕たちは砂浜に腰を下ろして海を眺めていた。

 

ここに着いた時には既に4時過ぎ。

 

まったりとした空気が漂う中で、僕としぃは談笑した。

 

(*゚ー゚)「落ち着くねー」

 

( ^ω^)「まったくだお……こうして眺めているだけで、穏やかな気分

 

 

 

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になれるお」

 

(*゚ー゚)「本当だね……」

 

海はすべてを優しく包んでくれる。

 

母なる海とは、昔の人は上手い事を言ったものだ。

 

僕はそんな雰囲気に乗せられて、身も心も遠くに預けてしまいそうになった

 

 

太陽はだんだん落ちてきて、暑さも薄らいでいく。

 

昼間あれほど目立っていた日差しも、もうどこかへ消えていってしまった。

 

 

15: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:28:49.80 ID:md+Pbzs90

 

腕時計にちらりと目をやると、とうに5時を過ぎているのが分かった。

 

もうすぐ、海へと沈む夕日が見られるだろう。

 

僕たち二人はその時を待った。

 

真っ赤に燃える太陽が水平線へと消えていく。

 

その景色が訪れる瞬間を、安らいだ表情で、のんびりと待ち続けた。

 

やがて辺りが茜色で染まる頃。

 

ゆっくりと沈んでいく夕日が、僕たちの目の前に現れた。

 

( ^ω^)「……」

 

(*゚ー゚)「……」

 

赤い光が、深い青をたたえていた海を覆う。

 

 

 

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吸い込まれそうな程真紅に輝く夕日が、大海原の彼方に沈んでいく。

 

夕焼け空は、茜雲を携えて悠然と広がっていた。

 

僕たちはただそれを眺めるだけで。

 

言葉に出来ないほど美しい光景の中に溶け込んでいた。

 

16: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:31:03.27 ID:md+Pbzs90

 

(*゚ー゚)「……ねぇ」

 

絶景に見とれる僕に、しぃがそっと話しかけてきた。

 

(*゚ー゚)「この夕日が沈むと、今日が終わっちゃうんだね」

 

( ^ω^)「……そう、だお」

 

(*゚ー゚)「……最近、どんどん一日が早くなってる気がするの」

 

しぃが呟く。

 

(*゚ー゚)「どんどん、夏の終わりが迫ってきて……」

 

その声はどこか寂しげで――――。

 

(* ー )「……お兄ちゃんも、思い出になっちゃうんだよね……」

 

何かを隠しているように思えた。

 

17: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:33:25.64 ID:md+Pbzs90

 

目を伏せるしぃ。

 

何気ない会話の中に潜む想いが、言葉の節々から滲み出ている。

 

(* ー )「……お兄ちゃんは……」

 

……しぃはそこで顔を上げ、僕の目をじっと見た。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(*゚ー゚)「……お兄ちゃんは、まだお姉ちゃんのことが好きなの?」

 

(;^ω^)「っ!?」

 

僕ははっと息を飲む。

 

心臓が飛び出しそうなほど大きく揺れた。

 

(*゚ー゚)「……きっと……まだ、好きなんだよね……」

 

再び寂しげに呟くしぃ。

 

何度も何度も、その言葉が僕の中を駆け巡る。

 

夕日は、今にも沈み切ってしまいそうな程に、その姿を海に隠していた。

 

18: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/28(土) 23

 

:33:48.52 ID:iATLqBvh0

 

支援

 

19: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:35:43.45 ID:md+Pbzs90

 

……僕は考える。

 

僕はよく分らないままにツンにふられた。

 

返事は無かったけれど、恐らくそうなんだろう。

 

だけど、ちゃんとした答えを貰えるまでは諦めきれない自分がそこにいて、

 

 

正直な自分の気持ちを、胸の奥にしまい込んでいた。

 

僕はジーンズのポケットに触れる。

 

毎日身に付けていた、星を模ったペンダント。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

あの日から、僕はペンダントを外した。

 

だけども僕は。

 

今もそれを、ポケットの中にしまい込んでいる。

 

――――僕は。

 

――――僕はまだ。

 

( ^ω^)「……ツンのことが、好きなんだお」

 

21: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:38:29.40 ID:md+Pbzs90

 

(*゚ー゚)「……」

 

しぃは黙ったまま、夕日を見ている。

 

その遠くを見つめる横顔が、とても印象的だった。

 

(* ー )「……ずるいよ……」

 

しぃの漏らした声が、かすかに聞こえた。

 

(*;ー;)「……ずるいよ……お兄ちゃん……」

 

(;^ω^)「ちょっ、い、いきなりどうしたんだお!?」

 

一瞬の沈黙の後、しぃが急に泣き出した。

 

あまりに突然だったので、僕は狼狽して何を言うべきなのか分からなかった

 

 

しぃの涙は夕焼けの明かりを受けて、ぽろぽろと流れ続ける。

 

僕はただ、しぃの言葉を辿るだけだった。

 

22: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:41:18.73 ID:md+Pbzs90

 

 

 

↓次ページへつづく↓

しぃが秘め事のすべてを、一気に吐き出す。

 

(*;ー;)「……私ね、お兄ちゃんが来るって聞いた時、凄く嬉しかったん

 

だ」

 

(*;ー:)「お兄ちゃんが出来るんだと思って、凄く、どきどきしてたの」

 

(*;ー;)「……それでね、久しぶりに見たお兄ちゃんは……」

 

(*うー;)「遠い昔の思い出よりも、ずっと、ずっと格好良かった」

 

流れる涙はそこで止まった。

 

僕は黙って、顔をそむけずに聞いていた。

 

(* ー )「……それに、何年も会ってなかった私に、お兄ちゃんは優しくし

 

てくれて……」

 

(* ー )「私も、そんなお兄ちゃんに甘えちゃって……」

 

(*゚ー゚)「……私は……私は、お兄ちゃんのことが、好きになっちゃたんだ

 

 

そう言ってしぃは僕を見つめ返した。

 

僕は動揺して、目を逸らしてしまいそうになる。

 

瞳の奥に灯る想いが、こうして目を合わせているだけでも伝わってきた。

 

23: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:43:24.18 ID:md+Pbzs90

 

(* ー )「……だけど……」

 

再びしぃが目を伏せる。

 

(* ー )「……きっと、お兄ちゃんは私みたいな子どもの話なんか聞いてく

 

 

 

↓次ページへつづく↓

れないだろうから……」

 

(* ー )「……私は……その気持ちを、ずっと我慢してたの」

 

しぃが、ぎゅっと拳を握る。

 

手の甲には、零れ落ちた涙の跡がありありと残っていた。

 

(* ー )「それに……お兄ちゃんが、お姉ちゃんを好きなことも、分かって

 

たから……」

 

(* ー )「……私なんか、相手にしてくれないと思ったんだ」

 

隠していた想いが、潮風に紛れて僕の耳に届く。

 

それは叶うことのない夢のように儚くて、一言ごとに僕の胸を締め付けた。

 

 

24: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:46:15.62 ID:md+Pbzs90

 

(* ー )「……でも、お兄ちゃんがお姉ちゃんに返事を貰えなかったって聞

 

いて……」

 

(* ー )「……その時……私は……」

 

しぃの声が震える。

 

まるで、言葉にすることを恐れているかのように。

 

(* ー )「……私は、チャンスだ、って思ったの」

 

うつむいたまま、自分を責めるようにそう言った。

 

赤く染まったしぃの髪が、風でさらりと揺れて、僕の胸の奥をくすぐる。

 

僕はしぃの独白を、真っ白な頭の中で噛み締めながら追っていった。

 

 

 

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(* ー )「今なら……今ならお兄ちゃんの気を惹けるって……」

 

(* ー )「お兄ちゃんの気も考えないで……そんな風に思ってデートに誘っ

 

て……」

 

(*;ー;)「……本当に、私って最低な女の子だよね……」

 

26: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:48:22.78 ID:md+Pbzs90

 

まだあどけなさの残る少女。

 

その裏に潜む想いは、あまりにも利己的で、あまりにも残酷で、

 

あまりにも、純粋過ぎていた。

 

(*;ー;)「……でもっ! ……お兄ちゃんは……っ!」

 

(*;ー;)「……やっぱり、まだお姉ちゃんのことが好きなのっ!」

 

(*;ー;)「……私なんかじゃ……勝てないの……っ!」

 

28: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:50:45.48 ID:md+Pbzs90

 

僕は言葉を失った。

 

何の慰めの言葉も掛けられず、ただしぃの顔を見つめて謝るだけだった。

 

(;^ω^)「……ごめんだお……全然気付いてあげられなかったお……」

 

 

(*;ー;)「謝らないでよ……ずるいよ……」

 

(*;ー;)「……そんな風に優しくするから……嫌いになんてなれないの…

 

…っ!」

 

しぃが僕に抱き寄る。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

熱い涙がシャツをじゅんと濡らして、熱い想いが心にまで響く。

 

まだ沈み切らない夕日。

 

最後の最後まで、この世界を熱く、熱く照らしていた。

 

29: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:53:11.78 ID:md+Pbzs90

 

しぃが泣き止むまで、僕は胸を貸し続けた。

 

想いを叶えてあげられなかった僕には、これが精一杯のことだったから。

 

(*うー;)「……うっ……でも……もう分かってるの……」

 

(*;ー;)「……私が……本当にお兄ちゃんのことを想っているなら……」

 

(*;ー;)「……お兄ちゃんの恋を、優先するべきだって……」

 

しぃが顔を上げる。

 

真っ赤に腫れた瞼は、夕焼けよりも悲しく、愛しい赤をしていた。

 

(*;ー;)「……どんなに好きでも……お兄ちゃんは、私なんか……」

 

( ^ω^)「しぃ、それは違うおっ!」

 

(*;ー;)「っ!?」

 

僕は思わず大声を上げ、しぃがびくっと反応する。

 

受け止めた想い。

 

……僕は、その想いに答えなくちゃいけないんだ。

 

32: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:57:09.03 ID:md+Pbzs90

 

( ^ω^)「……確かに、僕はまだツンのことが好きだお」

 

( ^ω^)「だけど、しぃのことも大好きだお!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「それはツンに対する『好き』とは違うけれども……」

 

( ^ω^)「しぃの気持ちは、ちゃんと受け取ったお」

 

( ^ω^)「……僕は、伝えてくれた想いが嬉しかったお」

 

そう言って、しぃをぎゅっと抱き寄せる。

 

(*うー゚)「……っ!?」

 

( ^ω^)「やっぱり、ツンのことを忘れられないから……こんなことし

 

かできないけど……」

 

( ^ω^)「……僕は出来る限り、しぃの気持ちに答えてあげたいお」

 

……こっちに来る前なら、こんな事はできなかっただろうな。

 

だけど今ここにいるのは、変わり始めた自分。

 

真っすぐで、正直で、前向きなかつての自分の姿。

 

僕は今再び、それを取り戻せたような気がした。

 

33: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/28(土) 23:59:39.26 ID:md+Pbzs90

 

しぃのすすり泣く声が耳に突き刺さる。

 

こうしているだけで、僕は心を引き裂かれそうになる。

 

(* ー )「……やっぱり、お兄ちゃんはずるいよ」

 

(* ー )「こんなにも優しくて、あったかいのに……」

 

(*゚ー゚)「……諦めるしか、ないんだもん」

 

その体勢のまま、何分が過ぎただろう。

 

しぃがようやく泣くのを止めて、笑顔を見せた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

36: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:03:16.29 ID:7IZKqER00

 

(*゚ー゚)「……初恋って、叶わないって本当だね……」

 

( ^ω^)「……しぃ、ごめんだお」

 

(*゚ー゚)「……だけど、お兄ちゃんはきっと上手くいくよ」

 

(*゚ー゚)「お姉ちゃんのこと、諦めないでね」

 

しぃは顔を近づけて――――

 

(;^ω^)「おぉっ!?」

 

――――僕の頬にそっとキスをした。

 

僕の顔が燃える夕日よりも紅くなる。

 

(*゚ー゚)「私、応援してるからっ!」

 

38: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:05:28.61 ID:+xDvCRSJ0

 

しぃは勢いよく立ち上がり、茜空を背景に微笑む。

 

これまでとはうってかわって、いつものような明るい声で語りかけてくる。

 

 

だけど、僕にはどこか無理をしているように感じられて、

 

その無垢な笑顔を見て、胸が張り裂けそうになった。

 

その言葉の裏には、どんな心情が隠されているのだろう。

 

僕にはそれを聞くことは、とてもじゃないけど出来なかった。

 

二人を見守っていた夕日は、もう居なくなっていた。

 

夜の帳が下りる前に、僕たちは家路につく。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

波の音は静けさを増し、少しずつ白い砂を運んでいった。

 

帰り道、僕たちは手を繋いで歩いた。

 

握りしめたしぃの手は、暖かくて、切なかった。

 

41: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:07:03.96 ID:+xDvCRSJ0

 

ここで16話は終わりです

 

少々の休憩を挟んで17話を投下します

 

ここまで読んでくれた方、ありがとうございました

 

44: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/07/29(日) 00

 

:11:37.10 ID:/3p+SCIDO

 

、、、、

 

ミ・д・ミ<ほっしゅ

 

“”””

 

45: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:17:45.23 ID:+xDvCRSJ0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第十七話

 

八月ももう残り一週間を切り、残暑も終わりを迎える時期。

 

あれほど長いと思っていた一か月が、駆け抜けるように過ぎていった。

 

蝉の声は徐々に治まり、静けさと侘しさが辺りに漂う。

 

一日の長さが短く感じられて、実際にもそうだった。

 

僕はいつもより早めに目覚める。

 

朝日の昇る時間は、だんだんとずれてきていた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕がこっちに居られるのも、今日を含めてあと三日。

 

残された時間はあと僅か。

 

その間に、僕はもう一度だけ、ツンに聞かなくちゃいけない。

 

この夏が、終わってしまう前に。

 

47: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:21:25.44 ID:+xDvCRSJ0

 

とはいえ、なかなか上手く言い出せないのが実情だ。

 

強引に詰め寄るのもいくらなんでも失礼だと思うし、

 

おどおどしながら聞くのも、以前の自分のようで嫌だった。

 

どんな切り口で入るべきなのか、それが僕にはよく分らなくて――――。

 

(‘A`)「……で、俺のところに来たわけか」

 

(;^ω^)「あうあう」

 

……僕はまた、ドクオさんに助言を貰いに来ていた。

 

本当は、自分で決めるべきことなのに。

 

少しだけ、自分を叱責した。

 

(‘A`)「……しかしまぁ、答えが無かったとはな……」

 

ドクオさんが煙草の煙をふっと吐く。

 

(‘A`)「……問題外だったんじゃね?」

 

(;^ω^)「ちょwwwwwwwwwwww」

 

49: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:23:26.28 ID:+xDvCRSJ0

 

(‘A`)「まぁまぁ落ち着け、ただの冗談だ」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(;^ω^)「タチの悪い冗談ですお……」

 

燃ゆる灰をとんと落とし、表情を崩さずに話を続ける。

 

(‘A`)「まぁあれだ、照れてるんじゃないのか」

 

( ^ω^)「でも、そういう感じには見えませんでしたお」

 

(‘A`)「……んじゃ、答えるのも嫌だった、っつーことか?」

 

( ^ω^)「……やっぱりそうなのかも知れませんお」

 

(‘A`)「それはねぇと思うがな……ツンちゃんの性格からいって、うやむや

 

にするのは嫌いだろうしな」

 

ドクオさんが腕を組んで考え込む。

 

僕の私事なのに、親身になって考えてくれる。

 

僕は心の底から感謝した。

 

50: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:25:54.03 ID:+xDvCRSJ0

 

(‘A`)「……いかんな、どうも俺は女心には疎くてな……」

 

( ^ω^)「でも、結婚する時はどうだったんですかお?」

 

(‘A`)「あー、そいつはクーにでも聞いてくれ。俺が言うもんでもねぇし」

 

ドクオさんは、文字通り事の顛末を煙を巻く。

 

吸っていた煙草は、もうほとんどが灰に変わっていた。

 

(‘A`)「そいじゃ、俺は出掛けますよっと」

 

( ^ω^)「おっ? どこに行くんですかお?」

 

(‘A`)「煙草が切れちまったからな……ちょっと買ってくる」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(‘A`)「一応、俺もいろいろと考えてやるけど、あんま期待すんなよ?」

 

腰を上げたドクオさんはそう言って、煙の匂いを残して家を後にした。

 

後姿が、やけに大きく見えた。

 

ドクオさんが出ていった後すぐに、部屋の戸がすっと開かれる。

 

入れ替わりでクーさんが居間に入ってきて、机を挟んで僕の対面に座った。

 

 

53: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:28:18.82 ID:+xDvCRSJ0

 

川 ゚ -゚) 「話は済んだか?」

 

澄んだ瞳で見つめられる。

 

僕は何もかも見透かされているような気がした。

 

( ^ω^)「……いえ、まだですお」

 

川 ゚ -゚)「そうか……」

 

(;^ω^)「……あの」

 

僕は、思い切ってクーさんにも打ち明けることにした。

 

こうして人の意見を伺ってばかりで、自分が考えつくことは信用しないで。

 

 

それはきっと褒められたことではないだろう。

 

だけど今の僕は、少しでもきっかけが欲しかった。

 

情けないと思われても構わない。

 

最後の最後まで足掻きたい、そのことだけを切に思っていた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

54: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:30:27.28 ID:+xDvCRSJ0

 

これまでのこと、起こったこと、これからのこと。

 

僕はこの町に来てからの一切をクーさんに話した。

 

クーさんは時々頷きながら、僕の話を黙って聞いていた。

 

川 ゚ -゚)「ふむ……そういうことか」

 

(;^ω^)「……」

 

川 ゚ -゚)「そうか……むぅ……」

 

神妙な顔つきで、思考を広げるクーさん。

 

長い沈黙の後、机上に置かれたお茶を少し含み、ゆっくりと口を開く。

 

55: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:32:41.30 ID:+xDvCRSJ0

 

川 ゚ -゚)「……そうだな、一つ昔話をしてやろう」

 

( ^ω^)「おっ?」

 

川 ゚ -゚)「……私とドクオが、まだ子供だった頃の話だ」

 

クーさんがもう一口お茶をすする。

 

遠くを見ているかのような目をしながら、懐かしむように言葉を紡いでいく

 

 

僕はそれを追っていった。

 

57: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:35:04.50 ID:+xDvCRSJ0

 

川 ゚ -゚)「あれは6歳の頃……小学校の入学式の日だ」

 

( ^ω^)「おっ、その日にドクオさんと出会ったんですかお?」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

川 ゚ -゚)「そうだ。私の隣に座っていた真っ黒に日焼けした少年、そいつが

 

ドクオだった」

 

川 ゚ -゚)「子供のくせにひねくれていて……今思うと可愛げがなかったな」

 

 

なぜか嬉しそうに過去を語るクーさん。

 

川 ゚ -゚)「だが話してみると、これが結構面白い奴でな」

 

川 ゚ -゚)「……その日以来、私たちは行動を共にするようになった」

 

( ^ω^)「いつも一緒だったんですかお?」

 

川 ゚ -゚)「一学年に一つしかクラスが無かったからな……切っても切れぬ縁

 

だったよ」

 

ドクオさんとクーさんが幼馴染ということは前に聞いていた。

 

だけど、詳しい事はほとんど聞いていない。

 

この話が僕とどう繋がるのか、その事にも興味を惹かれつつ耳を傾けた。

 

58: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:38:16.48 ID:+xDvCRSJ0

 

川 ゚ -゚)「あの頃は楽しかった……毎日、二人でいろんな事に夢中になった

 

 

川 ゚ー゚)「幼き日々の記憶は、いつになっても忘れる事が出来ないな」

 

ふっ、と軽い笑みを浮かべる。

 

川 ゚ -゚)「小学校だけじゃなく、中学校も同じだった。この辺りには一校し

 

かないからな」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

川 ゚ -゚)「もう何年も、一緒にいて……それが当たり前になっていったよ」

 

 

僕は聞き手に回ることに専念して、クーさんの次の言葉を待つ。

 

川 ゚ -゚)「ところが、だ。私たちが15歳の時の事だ」

 

川 ゚ -゚)「当然、あいつも地元の高校に行くものだと思っていたが、そうじ

 

ゃなかったんだ」

 

川 ゚ -゚)「あれほど漁師を継がないと言っていたのにな」

 

そこで、嬉しそうな語り口調が少しだけ陰った。

 

川 ゚ -゚)「……その時分かったよ、いつもそばに居た人が、居なくなること

 

の辛さを」

 

60: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:40:31.93 ID:+xDvCRSJ0

 

川 ゚ -゚)「……私は知らず知らずのうちにドクオに依存していたんだ」

 

川 ゚ -゚)「漁師になることはあいつ自身の決断なのに、私はそれを責めたり

 

もした」

 

川 ゚ -゚)「……完全なお門違いだというのにな」

 

ふっ、と今度は自嘲気味に笑う。

 

川 ゚ -゚)「私は学校に、あいつは海に……会う時間もどんどん減っていった

 

 

川 ゚ -゚)「次第に、今までになかった感情が私の中に湧いてきてな……」

 

川 ゚ -゚)「……いや、元々あったものなのだろうな」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(*^ω^)「それは……もしかして……」

 

僕は興味津々な顔をする。

 

川 ゚ -゚)「……まあ、言わずとも分かるだろう」

 

クーさんが湯呑みの中のお茶を飲み干した。

 

61: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:44:11.30 ID:+xDvCRSJ0

 

クーさんは一息入れて、今度は僕を諭すような口調で続けた。

 

川 ゚ -゚)「いつもいた人間が、そこにいない――――」

 

川 ゚ -゚)「それは本当に悲しい事だ」

 

川 ゚ -゚)「……今の君も、それを感じているんだろう?」

 

( ^ω^)「……」

 

確かに、クーさんの言うとおりだ。

 

いつも隣にいたツンが、いない。

 

僕は以前にもこんな経験をしたことがある。

 

いつもそばにいてくれた友達がいなくて、孤独だった高校生活。

 

それは寂しくて、辛くて、悲しかった。

 

今も、同じような心境で毎日を過ごしている。

 

63: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:46:45.40 ID:+xDvCRSJ0

 

川 ゚ -゚)「……そして、それを感じているのは恐らく君だけではないな」

 

( ^ω^)「おっ?」

 

川 ゚ -゚)「……いや、正しくは『感じていた』か」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

独り言のように呟くクーさん。

 

誰に聞かせるでもないような小さな声だったが、僕にはその言葉がよく聞こ

 

えた。

 

窓の向こうに見える海は、今日は普段にも増して穏やかだった。

 

64: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:48:53.45 ID:+xDvCRSJ0

 

川 ゚ -゚)「聞いた話だと、君とツンは小さい頃仲が良かったらしいな」

 

( ^ω^)「そうですお。毎日のように遊んでいたのを覚えていますお」

 

 

川 ゚ -゚)「そう、毎日のように遊んでいた」

 

川 ゚ -゚)「まるで、昔の私たちのようにな」

 

(;^ω^)「……あっ」

 

クーさんの語尾が強くなる。

 

僕ははっとして、ぐらついた頭の中を整理する。

 

川 ゚ -゚)「会えなくなってから、私は自分の気持ちに気が付いた」

 

川 ゚ -゚)「……君はツンと会えなくなって、どう感じたんだ?」

 

( ^ω^)「……それは……」

 

66: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:51:14.83 ID:+xDvCRSJ0

 

――――どうしてだろう?

 

大事な記憶だったはずなのに、思い出す事が出来ない。

 

ツンと離れ離れになった時の自分を、見失ってしまっている。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「……思い出せませんお」

 

川 ゚ -゚)「そうか……」

 

川 ゚ -゚)「……それじゃあ逆に、君がいなくなった時ツンはどう感じただろ

 

うな」

 

(;^ω^)「……!」

 

川 ゚ -゚)「予測だが……幼心なりに、寂しさを覚えただろうな」

 

川 ゚ -゚)「それが今、君に再会できた。喜ばないはずがなかろう」

 

こちらに来た日の事を思い出す。

 

……あの時、ツンはそっけない態度を取っていた。

 

僕は混乱する。

 

クーさんの予想通りだとしたら、あれは照れ隠しだったのだろうか?

 

67: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:53:16.43 ID:+xDvCRSJ0

 

そんな僕のことはお構いなしに、クーさんは話を進める。

 

川 ゚ -゚)「ところが、当の君が覚えていたことはツンの名前と簡単な記憶だ

 

け、だったのだろう?」

 

(;^ω^)「……そうですお」

 

僕はあの時の事をまた思い出し、自分の行動をなぞる。

 

確かに自分は名前と、よく遊んだという事しか思い出せなかった。

 

それも、かろうじて。

 

川 ゚ -゚)「……ツンからしたら、自分のことは忘れられたのかと思っただろ

 

 

 

↓次ページへつづく↓

うな」

 

( ^ω^)「そうかもしれませんお……」

 

川 ゚ -゚)「そんな中で、突然君に告白された。動揺しないはずがないだろう

 

 

川 ゚ -゚)「もっと言えば、自分の上辺しか見られていないと思ったかもしれ

 

ないな」

 

川 ゚ -゚)「自分を忘れかけていた人間に、好きだなんて言われてみろ。どん

 

な風に感じるか……」

 

(;^ω^)「……」

 

69: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:57:03.56 ID:+xDvCRSJ0

 

川 ゚ー゚)「……君は、女心がよく分かっていないようだな」

 

クーさんが優しく微笑む。

 

何もかもクーさんの言うとおりだ。

 

僕は気持ちを伝えたんじゃなくて、押し付けていただけ。

 

ツンの心境も考えないで、答えを無理に求めていた。

 

――――そして。

 

( ^ω^)「……僕は、ツンに謝らなくちゃいけませんお」

 

川 ゚ -゚)「そうだな。まずはそこから始めなくてはならない」

 

僕は机の下で、ぎゅっと汗ばんだ掌を握る。

 

握られた拳で、何かを掴んでいるように感じた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

71: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 00:59:36.63 ID:+xDvCRSJ0

 

(‘A`)「ありゃ? クーと話してたのか?」

 

戸が開かれ、いつの間にか帰ってきたドクオさんの姿が見えた。

 

時計に見ると、僕たちは一時間近く話をしていたことに気付く。

 

ドクオさんの手には1カートン分の煙草と、ビニール袋が握られていた。

 

川 ゚ -゚)「遅かったじゃないか」

 

クーさんがすぐに反応して、席をすっと空ける。

 

ドクオさんがそこに座り、買ってきた物を乱雑に机の上に置く。

 

(‘A`)「いやな、こいつを選んでいたら時間がかかっちまって……」

 

そう言ってドクオさんが袋の中の物を取り出す。

 

冷気を放つ、何種類かの色とりどりのアイスが広げられた。

 

74: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 01:01:59.91 ID:+xDvCRSJ0

 

(‘A`)「ほれ、適当に食え」

 

(*^ω^)「いただきますお!」

 

(‘A`)「……んでな、俺も考えたんだが……」

 

ドクオさんが、これまでに見たことがないような表情で僕を見る。

 

(‘A`)「あれだ、もう襲っちまえ! それが手っ取り早ぇ!」

 

クーさんの右の拳が、ドクオさんの顎を威勢良く打ち上げた。

 

呆れた様子でクーさんはアイスの包みを剥がす。

 

咥えたアイスの甘さが疲れを癒し、冷たさが熱を下げてくれる。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

暑い日の長い午後。

 

僕たちはこうして、ゆったりとした空気の中で過ごした。

 

75: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 01:04:21.70 ID:+xDvCRSJ0

 

ドクオさんたちに別れを告げて、帰路につく。

 

帰る道は、来た時よりも長く感じられた。

 

僕はポケットからペンダントを取り出し、星をぎゅっと握る。

 

それだけで希望が湧いてくるような気がした。

 

もう夏が終わる。

 

だけど、このまま終わらせたくない。

 

この夏の思い出の中で、たった一つだけピースが埋まっていない出来事。

 

足りないピースは、どんな色で、どんな形かは分からない。

 

それでも僕は結末を知りたかった。

 

もう明日しかチャンスは残されていない。

 

僕の全部を、ツンにぶつけよう。

 

僕はそう思いながら、ペンダントを再び首に掛ける。

 

それは太陽の光を浴びて、きらりと輝いた。

 

76: 名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 01:06:42.25 ID:/3

 

p+SCIDO

 

wktk

 

77: ◆zS3MCsRvy2:2007/07/29(日) 01:07:14.71 ID:+xDvCRSJ0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

以上で17話、及び今日の分の投下は終わりです

 

遅くまで㌧

 

最終話を含む最後の投下ですが、来週中にはできるようにしたいと思います

 

 

前回の公約を破り、本当に申し訳ありませんでした

 

出来る限り早く、そして満足のいくラストを書きたいと思います

 

それでは、読んでくださりありがとうございました

 

78: 名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 01:08:44.88 ID:Jm

 

l3XqUr0

 

乙!

 

79: 名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 01:09:20.18 ID:QS

 

8jqk0SO

 

乙だぜー!

 

80: 名無しさん@そうだ選挙に行こう:2007/07/29(日) 01:09:37.16 ID:Vz

 

KyQX9C0

 

GJです!!

 

毎回、ノスタルジックな夏の日の描写に感動してます。

 

俺もこんなの書きてぇ……

 

4: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 21:52:20.33 ID:siQeC2cx0

 

先週お知らせしたとおり、今日で最後の投下になります

 

 

 

↓次ページへつづく↓

では18話からゆっくりと投下していきます

 

これまでよりちょっと長いです

 

6: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/04(土) 21:53:13.

 

53 ID:w7RJwBGUO

 

待ってたよ!!wktk!!

 

7: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 21:54:09.33 ID:siQeC2cx0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第十八話

 

郷愁を誘うヒグラシの声も止み、辺りが闇に包まれる。

 

今夜は新月、地上を照らすものは星の幽かな光だけだった。

 

こっちで過ごす最後の夜。

 

今日は花火大会が行われる日だ。

 

僕たちは海に近いドクオさんの家に一同に集結し、特等席から花火を見るこ

 

とにした。

 

打ち上げ開始は9時。

 

壁に掛けられた古びた時計を見ると、まだ7時を過ぎたばかりだ。

 

だけど僕には、花火よりも大事なことがある。

 

それはツンにもう一度話をすること。

 

僕はそのことだけを考え、星のペンダントをぎゅっと握る。

 

空に瞬く星よりも、ずっときれいな銀の輝き。

 

「もう今日で終わってしまうんだな」と思うと、切なくて堪らなかった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

9: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 21:56:13.21 ID:siQeC2cx0

 

(‘A`)「よぅし、どんどん食ってどんどん飲めよ!」

 

(;^ω^)「ちょwwwwww痛いwwwwwwwww」

 

( ゚∀゚)「ほれ、箸持てぇ!」

 

ドクオさんが僕の背中を叩きながら囃し立て、ジョルジュさんがそれに便乗

 

する。

 

この集まりは僕のお別れ会も兼ねている。

 

提案者は叔父さんとドクオさん。僕が一番お世話になった二人だ。

 

机いっぱいに並べられた彩豊かな料理の数々。

 

カンパチのお刺身、冷奴、ワカメの酢の物、浅漬け、とうもろこし。

 

鶏の唐揚げ、卵焼き、アジのたたき、じゃこ天、さばしゃぶ。

 

イカ焼き、ポテトサラダ、海老の天麩羅、ウィンナー、つみれ汁。

 

……いずれも一度食べたことのあるもの。

 

一口毎に、その時の記憶が戻ってくる。

 

瞳を閉じると、見えるのはこの上なく眩しい情景。

 

僕は惜しむように、ゆっくりと噛み締めて味わった。

 

11: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 21:58:48.63 ID:siQeC2cx0

 

永遠に続いてほしいと願いたくなる宴の席。

 

だけども、時は無情に過ぎていく。

 

この楽しい時間も、きっとすぐにアルバムの中の出来事になってしまう。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

そう思うと涙が出そうになった。

 

それに何より、この間一言もツンと喋っていない。

 

ツンは妹弟と一緒に料理をつまみながら、適当に笑っているだけだった。

 

(‘、`*川「はい、すいかが切れたわよ」

 

叔母さんが台所から均等に切られたすいかを持ってきた。

 

赤く瑞々しい果肉が、見るだけで唾液を誘う。

 

川 ゚ -゚)「男どもにはこっちだな」

 

クーさんは何本かのビール瓶を抱えて席についた。

 

( ゚∀゚)「いよっ! 待ってました!」

 

(´・ω・`)「さぁさぁ、まずは年配者に敬意を払って荒巻の爺さんに……」

 

/ ,’ 3「ほっほっ、かたじけないのぉ」

 

14: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:01:06.25 ID:siQeC2cx0

 

大人たちが互いにグラスにビールを注ぎ、僕も一杯だけ頂く。

 

これっぽっちも飲めなかったお酒も、少しだけなら飲めるようになった。

 

ほろ苦い味はまるで今の僕の気分のようだ。

 

そして浮かんでは消える白い泡は、この夏の日の思い出のようだった。

 

(*’A`)「クー! 一本空いたぞー!」

 

川 ゚ -゚)「知らん。自分で取りに行け」

 

/ ,’ 3「ほっほっほっ、これはまた手厳しい」

 

 _

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(*゚∀゚)「うまいのうwwwww酒うまいのうwwwwwww」

 

(;^ω^)「どこまで飲む気なんですかお……」

 

酔って騒ぐ大人を尻目に、ツンは席を外して縁側に腰かけてすいかを食べて

 

いる。

 

モララーもそれに続いて、並んだ二人の背中を僕は眺めていた。

 

花火の開始時刻まであと一時間。

 

早くしないと行けないのに、僕は時期を逃していた。

 

16: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/04(土) 22:03:18

 

.55 ID:w3LHBUxOO

 

待ってました支援

 

17: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:03:38.55 ID:siQeC2cx0

 

すいかを一口かじる。

 

夏を代表する果実の味。

 

水っぽすぎず、それでいて潤いのあるしゃりっとした果肉。

 

冷たく甘い果汁が口いっぱいに広がる。

 

――――僕はなぜか寂しくなった。

 

すいかを食べると、もう終わりだと感じられたから。

 

(‘A`)「おい、早くした方がいいんじゃねぇか?」

 

( ^ω^)「……分かっていますお」

 

周りの喧噪に紛れてドクオさんがそっと耳打ちする。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ずっと聞いていないツンの笑い声。

 

このまま終わってしまうなんて、とてもじゃないけど耐えられない。

 

海の手前に見えるツンの後姿。

 

その美しい髪が、水平線の向こうから吹いてくるそよ風に揺られた。

 

18: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:05:44.06 ID:siQeC2cx0

 

僕は意を決して立ち上がり、モララーがトイレに行った隙を狙ってツンの元

 

に向かった。

 

幸い、大人たちは騒いでいて僕の様子に気が付いていない。

 

――――今しかないんだ。

 

――――もう本当に、これが最後なんだ。

 

( ^ω^)「……ツン、ちょっといいかお」

 

平静を装ってツンに話しかける。

 

あの時よりもずっと勇気が必要だった。

 

ξ゚⊿゚)ξ「……何よ」

 

ツンが口を開く。

 

久しぶりに聞く、ツンの僕に対する声。

 

だけど、ツンは目を合わせてくれなかった。

 

これまで目を逸らしていたのは僕の方だったのに。

 

僕たちの視線が交じわることは今回もなかった。

 

19: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:07:59.98 ID:siQeC2cx0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕たちは縁側から家を抜け出して、防波堤沿いの道を並んで歩いた。

 

並んで、と言っても僕とツンの間には結構な間隔が開いている。

 

僕にはそれが二人の心の距離のように思えた。

 

海が見える道には、花火を今か今かと待つ人が集まっていた。

 

期待に胸を膨らませる小さな子どもから、夏の醍醐味を知り尽くしたような

 

老人まで、

 

その人々が見せる表情はさまざまだった。

 

ただ一つ言えるのは、みんな嬉しそうな笑顔だったこと。

 

( ^ω^)「……ツン、僕は君に言わなくちゃいけないことがあるお」

 

人影が少なくなってきた所で、僕は立ち止まった。

 

あらん限りの勇気を振り絞りながら、慎重に言葉を選んでいく。

 

( ^ω^)「僕は……ツンに謝るべきだったんだお」

 

返事はない。僕は続けた。

 

20: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/04(土) 22:09:14

 

.38 ID:Sqm3ImvRO

 

ブーン頑張れ

 

21: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:10:49.10 ID:siQeC2cx0

 

( ^ω^)「情けないけれど、僕はツンのことをほとんど覚えていなかっ

 

たお」

 

( ^ω^)「思い出せたことは、ほんの少しだけで……」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( -ω-)「……それなのに今になって『好きだ』なんて、勘違いもいいと

 

ころだお」

 

( -ω-)「申し訳ないお。僕は君との思い出を忘れてしまっていたんだお

 

 

( -ω-)「だから、僕は謝らなくちゃいけないんだお。ツン、ごめんだお

 

 

僕はツンの方を向いて頭を下げた。

 

ツンの顔はよく見えない。

 

僕を見てくれているのか、それとも違う何かを見ているのか。

 

それは僕には分からなかった。

 

顔を上げると、ツンは俯いたままそこに立っていた。

 

肩をぶるぶると震わせて、何かに怯えているように、立っていた。

 

( ^ω^)「ツン――――」

 

名前を呼びかけた途端。

 

ツンは顔を隠したまま、一目散に走り去った。

 

24: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:13:07.98 ID:siQeC2cx0

 

僕は驚いて、「あっ」と声を漏らす。

 

またツンは答えることもなく、僕の目の前からいなくなった。

 

だけど、もう目を逸らしたりなんかしない。

 

最後に残された夏色のピース。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

今ツンを追いかけなければ、僕は一生後悔することになる。

 

僕は駈け出した。

 

港に続く道は、この町で唯一アスファルトで舗装されている。

 

山道に慣れてしまった僕には驚くほど硬くて、足に大きな負担がかかった。

 

 

しかも履いている物は、縁側にあったサンダル。

 

足を一歩踏み出すたびに、脱げそうになって走りにくい。

 

それでも、僕は走った。

 

ツンの声が聞きたい。

 

どんな困難があったって、僕はもう諦めたりなんかしないんだ。

 

これが僕の、やらなければいけないことなんだ。

 

25: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:15:39.87 ID:siQeC2cx0

 

僕は海沿いの道を走り続ける。

 

つまずきそうになっても、決して倒れるなと自分に言い聞かせた。

 

途中で、道の上に転がっている何かを見つけた。

 

それはツンが脱ぎ捨てたサンダル。

 

僕はさっと拾い上げ、前を行くツンを追いかけた。

 

流れる汗を振り払う。

 

体温が急上昇しているのが分かった。

 

心臓はかつてないほどのペースで動いていた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

道の上に点々と滲んだ跡が見られる。

 

それが波で打ち上げられた海水なのか、ツンの汗なのかは分からない。

 

でもそんな事を考える暇なんて一秒も無かった。

 

僕の頭は走ることでいっぱいだった。

 

28: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:18:01.17 ID:siQeC2cx0

 

長くて先の見えない夜道に、やがて行き止まりが訪れた。

 

辿り着いたのは人気のない漁港。

 

海がパノラマのように見渡せる港の先。

 

コンクリートの地面の上、ツンは裸足で立っていた。

 

(;^ω^)「はぁ……んっ、はぁ……」

 

こんなに長い距離を、懸命に走ったのは久しぶりだ。

 

息も絶え絶えに、言うべき言葉を探す。

 

(;^ω^)「ツン! 聞いてくれお!」

 

後ろ向きのツンに呼びかける。

 

(;^ω^)「僕が言いたいことは、それだけじゃないんだお!」

 

ぴくり、とツンが反応する。

 

その表情はやっぱり分からないけれど、僕は想いをぶちまけた。

 

30: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:20:18.78 ID:siQeC2cx0

 

(;^ω^)「僕は! 確かに君の思い出を忘れていたお!」

 

(;^ω^)「言い訳なんてしないお! 本当にごめんだお!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(;^ω^)「……だけど! ツンは!」

 

(;^ω^)「こんな僕に! 新しい思い出を作ってくれたお!」

 

自分でも何を言っているのかよく分らなくて、

 

もしかしたら意味の通じる言葉になっていないんじゃないかと思った。

 

だけども僕は、そんなことは頭の片隅に押し込んだ。

 

昼の姿から大きくかけ離れた、静かで暗い海。

 

そんな海に突き出た冷たいコンクリートの上で、僕は大きな声を上げた。

 

31: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:22:43.46 ID:siQeC2cx0

 

(;^ω^)「あの日見た空! あの日見た海! あの日見た星!」

 

(;^ω^)「ツンと一緒に見た、すべての物が僕の宝物だお!」

 

(;^ω^)「僕はもう、絶対に忘れたりなんかしないお!」

 

(;^ω^)「そんなたくさんの宝物をくれたツンが!」

 

( ;ω;)「僕は……僕はまだ、大好きなんだお!」

 

そこで涙が溢れた。

 

ぐしゃぐしゃになった顔で、何も考えられない頭で、声にならない声で。

 

僕はもう一度、ツンに想いを伝える。

 

33: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/04(土) 22:23:28

 

.53 ID:Sqm3ImvRO

 

ktkr

 

35: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:25:26.17 ID:siQeC2cx0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ;ω;)「こんなに好きなのに! 何も言ってくれないなんて!」

 

( ;ω;)「そんなの……そんなの、ずるいお!」

 

( ;ω;)「……ツンには迷惑なことかも知れないけど!」

 

( ;ω;)「僕は! あやふやなままでこの夏を終わらせたくないんだお

 

!」

 

( ;ω;)「ツンと過ごした夏を! こんな形で締め括りたくないんだお

 

!」

 

言いたかったことのすべてを、溢れる感情のままに残り残さず言った。

 

ツンはまだ、海の方角を向いたままでいた。

 

96: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:29:57.82 ID:siQeC2cx0

 

そこで突然、ひゅうんという音が聴こえた。

 

音の正体は、打ち上げられた一発目の花火。

 

まん丸に広がった美しい炎の花は、まるで日向に咲き誇る向日葵のようで、

 

 

その鮮やかで明るい光が、ツンのお気に入りの白いワンピースを橙色に染め

 

た。

 

少し遅れてどんという低い音が響き渡り、僕の心を揺れ動かす。

 

その音に負けないように、僕は思いっきり叫んだ。

 

( ;ω;)「僕はもう! 逃げたくないから!」

 

( ;ω;)「だから! ちゃんと! 答えてほしいんだお!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

36: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:27:31.96 ID:siQeC2cx0

 

僕の言葉はツンに聞こえただろうか。

 

言い切ったあとで、汗まみれの右腕でこすって涙を拭う。

 

腫れた瞼を開くと、視界はぼやけている。

 

花火が何発も打ち上げられていることだけが、かろうじて分かった。

 

( うω^)「ツン……お願いだお……」

 

ツンに近寄り、かき消されそうな声で話しかける。

 

やはり俯いたままだ。

 

僕は急かさずに待ち続けた。

 

開いては散っていく花火を背景に、僕たちはこの町の淵に立っていた。

 

ツンの口元だけがちらりと見える。

 

唇をぐっと噛んで、じっと耐えているかのようだった。

 

38: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:29:43.18 ID:siQeC2cx0

 

数分の後、ツンが顔を上げた。

 

……今度はちゃんと口を開いてくれた。

 

ξ - )ξ「……あと、ちょっと……」

 

聞こえるか聞こえないかのか細い声。

 

僕は耳を澄ませる。

 

ξ - )ξ「……あと、ちょっとだったのに……」

 

(;^ω^)「な、何がだお?」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ツンの声は震えている。

 

ξ ⊿ )ξ「……あんた、本当に馬鹿よ……」

 

ξ; -;)ξ「あと、ちょっとの我慢だったのに……!」

 

39: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:32:12.18 ID:siQeC2cx0

 

一粒だけ、ツンが涙を見せる。

 

女の子の涙を見るのはこれで二度目。

 

だけど少しも慣れることはない。僕は今回もうろたえた。

 

ξ - )ξ「……」

 

涙はすぐに止まり、しばらくの間閉口するツン。

 

空では花火が月の代わりに夜を彩っている。

 

星よりも何よりも派手に、一瞬を照らしていた。

 

僕はツンに目を戻す。

 

――――次に口から出てきたのは意外な言葉だった。

 

ξ - )ξ「……ねぇ、あんた『忘れちゃった』って言ったわよね」

 

ξ゚ -゚)ξ「……昔のこと、聞きたい?」

 

40: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/04(土) 22:32:19

 

.32 ID:j4lkXumWO

 

支援

 

41: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:34:32.24 ID:siQeC2cx0

 

やけに落ち着いたツンの声。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

僕は拍子抜けすると共に、どこか安堵した気になる。

 

( ^ω^)「……聞かせてほしいお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「分かったわ」

 

ξ゚⊿゚)ξ「私の記憶を、あんたに教えてあげる」

 

先程までの熱はどこへ行ったのだろう。

 

僕の想い、葛藤。

 

ツンの涙、沈黙。

 

まるで夏が過ぎてしまったかのように、それらは呆気なく消えていた。

 

今二人の間に漂っているのは、ちょっと不思議で涼しげな空気。

 

僕たちは座り込んで、花火を眺めながら話をした。

 

ツンの胸に輝くハート型のペンダント。

 

それは位置が少しだけずれていて、ハートが歪な形に見えた。

 

42: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:37:00.31 ID:siQeC2cx0

 

こうして並んで座るのも久しぶりだ。

 

出来ることなら、気持ちの整理が出来てから花火を鑑賞したかったな。

 

僕はそんなことを考えていた。

 

ξ゚⊿゚)ξ「あんたの覚えていたことって、どの程度なの?」

 

( ^ω^)「……庭で遊んでいたな、ってことぐらいだお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「……」

 

少しの間ツンが考え込む。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ゚⊿゚)ξ「……そう。そんなもん、よね」

 

(;^ω^)「あう、ごめんだお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「ううん、いいの」

 

これまでになく、柔らかな態度でしおらしいツン。

 

僕はちょっとだけ変な感じがした。

 

ξ゚⊿゚)ξ「……それに、私はそんなこと気にしてないし」

 

43: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:39:09.82 ID:siQeC2cx0

 

……どういうことなのだろう。

 

ツンは僕が記憶を失くしていたことに怒っていたものだと思っていた。

 

それなのに「気にしてない」だなんて、全くの見当違いだったのか?

 

僕は思わず声を漏らした。

 

(;^ω^)「えっ、でも……」

 

ξ゚⊿゚)ξ「話、続けるわよ」

 

ツンが遮る。

 

ξ゚⊿゚)ξ「ブーンの言うとおり、私たちはよく遊んでいたわ」

 

ξ゚⊿゚)ξ「でも、何をしていたかなんて覚えていないでしょ?」

 

( ^ω^)「……」

 

僕は無言で頷く。

 

ツンは夜空を見上げて、大輪の花火を見つめた。

 

ξ゚⊿゚)ξ「私たちがしていたことはたった一つ……」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ゚⊿゚)ξ「……空を、見ていたの」

 

46: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:41:31.29 ID:siQeC2cx0

 

( ^ω^)「空?」

 

ξ゚⊿゚)ξ「そう、空」

 

ツンは顔を上げたまま話を続けた。

 

ξ゚⊿゚)ξ「だけどこんな風に真っ暗な空じゃなくて、青く澄んだ太陽の輝

 

く空」

 

ξ゚⊿゚)ξ「……私とあんたはそんな夏の空が大好きで、いっつも眺めてた

 

の」

 

昔を懐かしむように話すツン。

 

思い出はいつまでも優しいままでいてくれる。

 

だからこそ、愛しいのだろう。

 

……悲しい事に、僕はその思い出を見失ってしまった。

 

だけど、隣にいる少女が、僕のすかすかのパズルを埋めてくれている。

 

ξ゚⊿゚)ξ「空の世界の中で特に好きだったのが、白く広がった雲」

 

ξ゚⊿゚)ξ「私が白色を好きになったのは、それがきっかけよ」

 

言われてみれば、ツンの服装は白が多かった。

 

その事に気付けなかったのかと思うと、僕はなんだか恥ずかしくなった。

 

ツンは、昔の記憶に繋がる欠片をちらつかせていたというのに。

 

48: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:43:46.74 ID:siQeC2cx0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ゚⊿゚)ξ「毎日毎日、空は違う雲の様子を見せてくれた」

 

ξ゚⊿゚)ξ「流れる雲、覆いかぶさる雲、ちぎれる雲……」

 

ξ゚⊿゚)ξ「飽きることなく、幼い二人はそれを見ていたわ」

 

そこまで言ったところで、少しだけツンの表情が曇る。

 

ξ゚ -゚)ξ「……そんな風にして過ごしていたら、ある日珍しい雲を見つけ

 

たの」

 

ξ゚ -゚)ξ「見たことのない、突然現れた細長い雲」

 

ξ゚ -゚)ξ「私たちはそれを見上げて、物凄くはしゃいだの」

 

遠い目をして海を見るツン。

 

僕は懸命に幼い頃の記憶を辿りながら、その雲を思い出そうとする。

 

虚しくも、それは叶わなかった。

 

だけど話の内容から、雲の正体は見えていた。

 

( ^ω^)「飛行機雲、かお?」

 

ξ゚ -゚)ξ「……そうよ」

 

ツンが軽く首を縦に振る。

 

50: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:45:47.83 ID:siQeC2cx0

 

ξ゚ -゚)ξ「真っ直ぐで真っ白な飛行機雲」

 

ξ゚ -゚)ξ「それはまだ小さかった私たちにはとても印象的だったわ」

 

ツンが足首の辺りを触る。

 

細くてきれいな脚に、僕は少々の間見とれた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

……そう言えば、ツンはまだ裸足のままだ。

 

ξ゚ -゚)ξ「でね、興奮した私たちは何をしたと思う?」

 

返答を期待せずにツンが僕に囁く。

 

僕は黙っていた。

 

ξ゚ -゚)ξ「……私たちはね、庭に一本の線を描いたの」

 

ξ゚ -゚)ξ「まっさらな地面の上に、飛行機が通り過ぎた後のような一本の

 

線を」

 

51: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:48:03.57 ID:siQeC2cx0

 

すっ、とツンが指で宙に一本線を引く。

 

ξ゚ -゚)ξ「……この話には、まだ続きがあってね」

 

( ^ω^)「おっ?」

 

ξ゚ -゚)ξ「その後、私たちは線の両側にお互いの名前を書いたの」

 

ξ*゚ -゚)ξ「まるで相合傘みたいに、ね」

 

少しだけ照れてみせるツン。

 

話を聞いている僕も照れくさい気になった。

 

ξ゚ -゚)ξ「今思うと、馬鹿みたいよね……」

 

ツンが呟く。

 

その後に流れたのは、一時の沈黙。

 

ツンはその先を話す事をためらっているように思えた。

 

52: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:50:21.33 ID:siQeC2cx0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「まだ、続きがあるのかお?」

 

ξ - )ξ「……」

 

ツンは目を伏せて、陰った表情を見せる。

 

やはり、その先に何かあったのだろう。

 

ξ - )ξ「……それでね」

 

ゆっくりと、ツンは重い口を開いた。

 

ξ - )ξ「私たちは出来上がったものを見て、笑いあったの」

 

ξ - )ξ「『これで、ずっと一緒にいられるね』って」

 

ξ - )ξ「……だけど、その相合傘には傘がなかったから……」

 

ξ;-;)ξ「それは相合傘じゃなくて、二人を隔てる境界線になったの」

 

54: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:53:10.20 ID:siQeC2cx0

 

再び涙声になるツン。

 

僕はまたまたうろたえた。

 

けれどもこれまでよりは、ずっとまともな振る舞いが出来るように努めた。

 

 

ξ;-;)ξ「……その年の夏が終わると、あんた達一家は都会の町に引っ越

 

していったわ」

 

(;^ω^)「あっ……」

 

ようやく途切れ途切れながら思い出せた。

 

ツンが僕に話していたことは、幼い二人が過ごした最後の夏の記憶。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ;-;)ξ「あんたが出ていってから私は気づいたの」

 

ξ;-;)ξ「……私の中で、ブーンは凄く大きな存在だったって、そう幼心

 

に思った」

 

クーさんに言われた言葉が僕の頭に浮かんだ。

 

ξ;-;)ξ「その後傘がないことに気が付いて、急いで描いたわ」

 

ξ;-;)ξ「ブーンとの日々を思い出しながら、毎日それを眺めてた」

 

55: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:55:42.65 ID:siQeC2cx0

 

ツンは静かに泣きながら、昔話を紡いでいく。

 

ξ;-;)ξ「雨の日は消えてしまわないように、本当に傘をさした」

 

ξ;-;)ξ「これが消えちゃうと、思い出もなくなっちゃうような気がした

 

から……」

 

ξ;-;)ξ「だけど台風が来て、守ろうとしたけどお母さんに止められて…

 

…」

 

ξ;-;)ξ「……相合傘は雨に流されて、消えてしまったの」

 

すすり泣く声が漏れてくる。

 

ξ;-;)ξ「……それで……ひっく、思い出はもう、私の中だけのものにな

 

った気がして……」

 

ξ;-;)ξ「……都会に行ったブーンは、そんな記憶なんて忘れてしまうと

 

思った」

 

ξ;-;)ξ「……だけど、だけども……!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ツンが語調を強くする。

 

ξ;ー;)ξ「ブーンは私の事を、ほんの少しでも覚えていてくれた」

 

57: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:57:37.33 ID:siQeC2cx0

 

泣きながら、笑顔を見せるツン。

 

――――だけどツンの言っていることには矛盾した所がある。

 

(;^ω^)「でも、僕が覚えていたのは名前と遊んだことのわずかな記憶

 

だけだお」

 

ξ;ー;)ξ「……私は、それでも嬉しかったの」

 

ツンが涙をごしごしと拭く。

 

ξうー゚)ξ「私、あんたが来た時どう接していいか分からなかったわ」

 

ξ゚ー゚)ξ「……だけど、名前を呼んでもらえて本当に嬉しかった」

 

ξ゚ー゚)ξ「本当に嬉しくて……また昔みたいに過ごせるって思った」

 

ツンの顔から笑みが零れる。

 

けれども、すぐにまた無表情になった。

 

ξ゚ -゚)ξ「でも、ブーンは昔とどこか違ってた」

 

( ^ω^)「……」

 

ξ゚ -゚)ξ「やっぱり、変わってしまったのかなって、そう思ったの」

 

60: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 22:59:29.99 ID:siQeC2cx0

 

その通りだ。

 

ツンの言うとおり、僕は昔とは変わってしまっていた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

だけど――――。

 

ξ゚ -゚)ξ「それでも少しずつ、あんたは昔みたいに前向きになっていった

 

 

ξ゚ー゚)ξ「デートに誘ってくれた時なんか『どうしちゃったの?』って思

 

ったわよ」

 

そう言われて、僕は心の中で喜んだ。

 

ツンに僕の変わろうという意思が伝わっていた。

 

ξ゚ -゚)ξ「――――そうして過ごすうちに、突然ブーンに告白された」

 

僕ははっと息を飲む。

 

冷や汗が首筋を伝わり、背筋に冷たい感触を覚えた。

 

ξ゚ -゚)ξ「私はその時、凄くびっくりして……」

 

ξ゚ -゚)ξ「……次に思ったことは、嬉しい、ってことだった」

 

62: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:01:40.96 ID:siQeC2cx0

 

( ^ω^)「えっ……?」

 

ツンの口から出た予想外の一言。

 

僕は少し錯乱状態に陥ってしまい、慌てて気を取り戻した。

 

ξ゚ -゚)ξ「昔と今の、ぽっかり空いた隙間が埋まったような気がして」

 

ξ゚ -゚)ξ「そう思って……嬉しかったの」

 

ツンは何度も「嬉しい」と言う。

 

なのに、少しも表情は晴れていなかった。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ゚ -゚)ξ「……だけど、すぐにこう思った」

 

ξ゚ -゚)ξ「ここで返事をしても、ブーンは夏が終わるといなくなっちゃう

 

 

ξ゚ -゚)ξ「今は楽しくても、また寂しい日々に戻ってしまうから……」

 

ξ – )ξ「……私はもう、そんなのは耐えられない」

 

ξ – )ξ「だから私は……答えを出さずに逃げてしまった」

 

64: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/04(土) 23:02:53

 

.64 ID:Sqm3ImvRO

 

これは間違いなく純愛モノだったか

 

65: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:03:58.91 ID:siQeC2cx0

 

ξ – )ξ「自分勝手なのは分かっていたけど、もう昔みたいな思いはしたく

 

ない」

 

ξ – )ξ「それで逃げ出して……なるべくブーンと話さないようにした」

 

ξ – )ξ「これ以上思い出が増えると、もっと辛くなるから……」

 

ξ – )ξ「だから我慢してたの、ブーンが帰るまで」

 

ツンの声は弱々しくて、今にも花火の音に紛れてしまいそうなほどだった。

 

 

ξ – )ξ「……わがままを言うと、あんたに話しかけてもらいたかった」

 

ξ – )ξ「だけど、何だか避けられてるような気がして……私もますます避

 

けるようになっちゃった」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

(;^ω^)「それは……僕のことを嫌いになったのかと思ったから……」

 

 

ξ゚⊿゚)ξ「そんなことっ……!」

 

ツンは目を見開いて、僕の顔をじっと見た。

 

ξ;⊿;)ξ「嫌いになるなんて、そんなこと、あるはずがないじゃないっ

 

……!」

 

66: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:06:08.71 ID:siQeC2cx0

 

ξ;⊿;)ξ「何年も、何年も会えなくても、私はブーンを忘れたりなんか

 

しなかった!」

 

ξ;⊿;)ξ「あんただって、私のことを少しでも覚えていてくれた!」

 

ξ;⊿;)ξ「私には、それだけで十分だったのに……」

 

ξう⊿;)ξ「あんたには分からないわよ……私の気持ちなんか……」

 

ぽろぽろと、今度は大粒の涙を流す。

 

細やかな花火が次々と打ち出され、夜空はきらめく。

 

僕たちはそんな空の下、ただ向かい合っていた。

 

僕はツンをほとんど忘れていたのに、ツンは僕を少しも忘れていない。

 

僕は心苦しい気持ちに苛まれた。

 

68: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:08:14.50 ID:siQeC2cx0

 

だけどツンは言っていた。

 

「少しでも覚えていてもらえて、嬉しかった」って。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

それは名前と、よく遊んでいたという漠然とした印象だけ。

 

――――僕は考える。

 

本当に大事なことは、失くしてしまった遠い過去の思い出だけなのだろうか

 

 

記憶を辿っても答えは見つからない。

 

だからきっと、その答えは昔じゃなくて、今にあるはず。

 

今覚えていることの中に、一番大切なこと隠されているはずなんだ。

 

僕はもう昔の記憶に捉われない。

 

頭の中にあることの中で、最もツンの元に繋がること。

 

それだけを、ひたすらに探し続けた。

 

72: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:10:20.46 ID:siQeC2cx0

 

( ^ω^)「ツン……」

 

僕はツンに、優しい声で語りかける。

 

ξう -;)ξ「……何よ?」

 

( ^ω^)「僕は、君の名前と、曖昧な思い出ぐらいしか覚えていなかっ

 

たんだお」

 

ξう -;)ξ「だから、そんなこと気にしてないって……」

 

( ^ω^)「でもっ!」

 

ξう -;)ξ「っ!?」

 

突如として大きくなった僕の声に、ツンは少しだけ身震いする。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「もう一つ、覚えていたことがあったんだお」

 

( ^ω^)「……それは、一番大切なことだったお」

 

75: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:12:43.83 ID:siQeC2cx0

 

――――そうだ。

 

今の僕が覚えていた、昔のツンの記憶。

 

些細な事だと思っていたけれど、本当は一番輝かしい記憶。

 

( ^ω^)「それは、ツンは昔、とても素直で可愛い女の子だったってい

 

うこと!」

 

( ^ω^)「そして、今でも変わっていないということだお!」

 

僕はツンの肩を掴んで、じっとその顔を見つめた。

 

長いまつげ、くりっとした大きな瞳、白く透き通った肌、小さめの唇。

 

すらりと高い鼻、華奢な体、紅をさした頬、さらさらの髪の毛。

 

ツンのすべてが、この町の景色のように、変わらずに僕の目に映っている。

 

 

77: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:15:07.68 ID:siQeC2cx0

 

( ^ω^)「ツンは、覚えていた昔の姿と何も変わっていなかったお」

 

( ^ω^)「僕は変わってしまったけれど、昔の自分を精一杯取り戻そう

 

としているお」

 

僕ははっきりと、自分が言いたい事を伝えた。

 

( ^ω^)「大切な思い出を忘れてしまったことは、本当にすまないと思

 

 

 

↓次ページへつづく↓

うお」

 

( ^ω^)「……けど、きっとこの先……」

 

( ^ω^)「昔の記憶よりも、もっともっといい出来事が待っているはず

 

だお!」

 

幼い頃のように、二人で思い出を綴るにはもう遅いだろうか。

 

いや、そんなことはないはずだ。

 

だって僕の目の前には、あの時の少女が、あの時のままでいてくれるから。

 

 

( ^ω^)「だから……僕はツンとの思い出を、また新しく作りたいんだ

 

お」

 

81: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:17:47.81 ID:siQeC2cx0

 

ツンは僕の手を振りほどき、甲高い声で叫ぶ。

 

ξ;⊿;)ξ「馬鹿じゃないのっ!」

 

( ^ω^)「馬鹿なことかも知れないけど、本気でそう思ってるんだお!

 

 

ξ;⊿;)ξ「だって、言ったじゃない!」

 

ξう⊿;)ξ「あんたが街に帰っちゃったら、そんな思い出も無駄になっち

 

ゃうって……!」

 

( ^ω^)「無駄なんかじゃないお」

 

ξう⊿;)ξ「……えっ?」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「……僕はまた、この町に帰ってくるお」

 

ξう⊿;)ξ「そんなのっ……で、でたらめばかり言わないでよ……」

 

( ^ω^)「でたらめなんかじゃないお!」

 

( ^ω^)「僕は……絶対にツンの元に帰ってくるお」

 

そう言うと、ツンは力が抜けたように僕の胸に倒れ込んだ。

 

僕はそんなツンの肩を、両腕でそっと抱いた。

 

二つのペンダントが、かちゃんと音を立てて軽く触れ合って、

 

その拍子で、ずれていたペンダントのハートが元の位置に戻った。

 

82: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:20:31.32 ID:siQeC2cx0

 

花火はまだ続いている。

 

最上級に華やかな、夏の風物詩の王様。

 

人生の中で一番きれいな空を見ているような気がした。

 

( ^ω^)「……ツン、泣き止んだかお?」

 

ξ ⊿ )ξ「ん……もうちょっとだけこうしていたい……」

 

( ^ω^)「了解だお」

 

僕の胸に顔をうずめているツン。

 

とっくに涙は収まっているのは分かっていた。

 

ツンの体は、もう震えていなかったから。

 

88: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:23:02.94 ID:siQeC2cx0

 

記憶はあやふやだし、夏も終わってしまう。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

それでも思い出は消えたりなんかしない。

 

だって僕たちには、もっと素晴らしい日々があるはずだから。

 

ξ゚⊿゚)ξ「――――ありがと、もう大丈夫だから」

 

ツンがゆっくりと顔を上げる。

 

ξ゚⊿゚)ξ「……ねぇ、さっき言ってたこと、本当かしら?」

 

( ^ω^)「もちろんだお。嘘なんて言わないお」

 

ξ゚⊿゚)ξ「そう……」

 

ツンは、ぎゅっと自分のペンダントを握る。

 

ξ゚ー゚)ξ「……私、その言葉信じるから」

 

ξ゚⊿゚)ξ「絶対に、帰ってきなさいよねっ!」

 

89: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/04(土) 23:25:05

 

.13 ID:MSClLYYf0

 

全力で支援だろ……

 

90: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:25:17.75 ID:siQeC2cx0

 

落ち着いた僕たちは、二人寄りそって空を見上げた。

 

まるで、ツンの言っていた昔の僕たちみたいに。

 

そこには雲なんてないけれど、代わりに大きな花が咲いている。

 

それはどんな記憶よりも美しかった。

 

(;^ω^)「それで、えぇと、ツン。答えを聞かせてほしいんだけど……

 

 

 

 

↓次ページへつづく↓

思い出したようにツンに兼ねてからの話題を振る。

 

ξ゚⊿゚)ξ「へっ? い、今さらぁ!?」

 

(;^ω^)「あ、いや、一応それが僕の目的だったんだお」

 

ξ;゚⊿゚)ξ「ちょっと、言わせるつもりなの? もう分かってるでしょ?

 

 

(;^ω^)「でも、ちゃんと聞いておきたいんだお」

 

何故かお互いに恥ずかしがる。

 

そんな二人の間に漂っている空気は、この上なく和やかだった。

 

93: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/04(土) 23:27:16

 

.68 ID:nuCO4E090

 

ブーンwwwwドSすぎワラタwwww

 

95: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:27:57.32 ID:siQeC2cx0

 

ξ;゚⊿゚)ξ「ねぇ、本当に言わなきゃダメ?」

 

(;^ω^)「そりゃ、僕だけ言うのは不公平だお。今度はちゃんと言って

 

ほしいお」

 

ξ;゚⊿゚)ξ「もっ、もう、分かったわよっ!」

 

ツンは「こほん」と一つ咳払いをして、僕の目を見て想いを口にする。

 

真っ赤になった顔がたまらなくいじらしかった。

 

ξ////)ξ「わわわ、私は……」

 

ξ*゚⊿゚)ξ「ブ、ブーンのことが――――」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

そこから先の言葉は、夜空に咲いた花火の音にかき消されてしまった。

 

だけど僕には、確かにツンの声が聞こえた。

 

この日一番大きな花火。

 

まるで僕たちの未来を祝福するかのように、満開に咲き誇った。

 

97: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:32:29.20 ID:siQeC2cx0

 

以上で18話はおわりです。長かったと思います。お疲れ様でした

 

それといろいとろ手違いをしてしまいました。すみません

 

少しの休憩のあと、19話を投下します

 

98: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/04(土) 23:34:11

 

.29 ID:XOJNiuO90

 

wktk

 

102: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/04(土) 23:36:3

 

0.62 ID:MSClLYYf0

 

支援としか打ち込めない

 

107: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:42:19.88 ID:siQeC2cx0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第十九話

 

風で揺れる草木の音。

 

焼けた線路の鉄の匂い。

 

僕は駅のホームで電車を待っていた。

 

今日が最後の日。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

いつか必ず訪れることだと分かっていたのに、それでもやっぱり悲しかった

 

 

あんなに楽しかった夏も、電車が来てしまえば終わってしまう。

 

もう時間はほとんど残されていない。

 

僕はぐっと涙を堪える。

 

蝉の声はもう止んでいて、空は七月に見た時よりも高くなっていた。

 

108: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:45:08.45 ID:siQeC2cx0

 

背中にリュックを担ぎ、両手には抱えきれないほどのたくさんのお土産。

 

時刻を気にしながら、僕は振り返って辺りを見回す。

 

お世話になった人たちが見送りに来てくれていた。

 

叔父さん、叔母さん。

 

モララーにしぃ。

 

ドクオさんとクーさんの二人。

 

ジョルジュさん、荒巻のお爺さんも。

 

……そして、ツン。

 

みんな、僕の毎日を鮮やかに彩ってくれた。

 

本当に感謝の気持ちでいっぱいだ。

 

僕は一人一人の顔を順番に見る。

 

それだけでたくさんの思い出が呼び戻されるような気がした。

 

110: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:47:30.72 ID:siQeC2cx0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「えと……今日までの間、ありがとうございましたお」

 

電車が来てしまう前に、お別れの挨拶を告げた。

 

何を言っていいのか、そんなことは思いつかなかったけれど、

 

自分の心の中にあることを、素直に伝えることにした。

 

( ^ω^)「僕は、本当に楽しくこの夏を過ごせましたお」

 

( ^ω^)「それもこれも、みんなのおかげですお」

 

少し口を開くだけで、込み上げてくる想いで胸がいっぱいになる。

 

( ^ω^)「僕は感謝の言葉を、一人一人に言いたいですお」

 

( ^ω^)「……きっと、うまく言葉に出来ないと思いますお」

 

( ^ω^)「それでも、聞いてほしいですお」

 

113: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:49:55.78 ID:siQeC2cx0

 

( ^ω^)「叔父さん……」

 

( ^ω^)「叔父さんは、ずっと会っていなかった僕を本当の家族のよう

 

に見てくれましたお」

 

( ^ω^)「それに叔父さんからは、とても大切なことを教えてもらいま

 

したお」

 

( ^ω^)「本当に、お世話になりましたお」

 

(´・ω・`)「いやいや、僕の方こそありがとうと言いたいぐらいさ」

 

(´・ω・`)「また、君が来る日を楽しみに待っているよ」

 

116: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:51:52.00 ID:siQeC2cx0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「叔母さん……」

 

( ^ω^)「毎日食べた叔母さんの料理、とてもおいしかったですお」

 

( ^ω^)「それに、自分を変える手掛かりをくれましたお」

 

( ^ω^)「こうして元気でいられるのは、叔母さんのおかげですお」

 

(‘、`*川「ふふ、嬉しいことを言うわね」

 

(‘、`*川「あなたが来た時は、いつだっておいしいごはんを作ってあげるわ

 

ね」

 

117: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/04(土) 23:52:0

 

8.70 ID:MSClLYYf0

 

ししししししえーん

 

118: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:54:01.60 ID:siQeC2cx0

 

( ^ω^)「しぃ……」

 

( ^ω^)「君がいてくれたおかげで、僕の日々は特別なものになったお

 

 

( ^ω^)「僕はしぃと夏を過ごせてよかったお」

 

( ^ω^)「しぃの一言が、嬉しかったお」

 

(*゚ー゚)「うん……私も、楽しかったよ」

 

(*;ー;)「……おかしいな……どうして涙が出ちゃうのかな……」

 

119: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:56:01.36 ID:siQeC2cx0

 

( ^ω^)「モララー……」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「一緒に遊んで、心の底から笑えたお」

 

( ^ω^)「それに、モララーにはいろんな物の見方を教わったお」

 

( ^ω^)「そんなモララーと過ごす時間が楽しくて、仕方なかったお」

 

 

( ・∀・)「寂しいけど、さよならなんだよね……」

 

( ・∀・)「僕、お兄ちゃんといられて本当によかった! またね!」

 

121: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/04(土) 23:58:21.94 ID:siQeC2cx0

 

( ^ω^)「ドクオさん……」

 

( ^ω^)「きっかけは、いつもドクオさんでしたお」

 

( ^ω^)「導いてくれたのも、ドクオさんですお」

 

( ^ω^)「もし会えなかったら、僕はずっと駄目な自分のままでしたお

 

 

(‘A`)「自分では、大したことはしてねぇと思うんだがな……」

 

(‘A`)「まっ、ここからはお前だけが歩く道だ。がんばれよ」

 

122: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:00:0

 

9.80 ID:QEzPPSFa0

 

俺が好きだった作品は最近一気に完結して寂しいお

 

124: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:00:40.89 ID:/2fKFijt0

 

( ^ω^)「クーさん……」

 

( ^ω^)「クーさんからは、僕の知らないことをいろいろ学びましたお

 

 

 

↓次ページへつづく↓

 

( ^ω^)「それはとても貴重なことでしたお」

 

( ^ω^)「またいつか、お話を聞かせてほしいですお」

 

川 ゚ -゚)「私の話ぐらい、いくらでもしてやるさ」

 

川 ゚ー゚)「だがそれはまた今度、だな」

 

127: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:03:04.22 ID:Li84sgyw0

 

( ^ω^)「ジョルジュさん……」

 

( ^ω^)「海は、本当に刺激的でしたお」

 

( ^ω^)「船から見る景色は素晴しかったですお」

 

( ^ω^)「僕は太陽のようなジョルジュさんが、大好きでしたお」

 

( ゚∀゚)「照れるけん、やめてくれんかのぉ」

 

( ゚∀゚)「そんなことより、笑え笑えー!」

 

129: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:05:12.03 ID:/2fKFijt0

 

( ^ω^)「お爺さん……」

 

( ^ω^)「お爺さんと歩いてびっくりしましたお」

 

( ^ω^)「あんなに険しい道を歩いて、大変ですお」

 

( ^ω^)「お爺さんの考え方も、凄く心に残りましたお」

 

/ ,’ 3「ほっほっ、そかそか」

 

/ ,’ 3「わしもお前さんのことは忘れんよ」

 

131: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:07:22.86 ID:/2fKFijt0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

( ^ω^)「ツン……」

 

僕はツンの方を見る。

 

ツンは背中の後ろで手を組んで、もじもじしていた。

 

( ^ω^)「ツン……必ず、帰ってくるお」

 

それ以上の言葉は必要ないと思った。

 

ξ゚ー゚)ξ「……うん、待ってるから」

 

ツンもまた、そう思っていたのだろう。

 

簡単で、だけど正直な気持ちのやり取りを僕たちは交わした。

 

133: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:10:04.81 ID:/2fKFijt0

 

挨拶を済ませたのとほぼ同時に、電車がホームに入ってきた。

 

ドアがゆっくりと開かれる。

 

少しだけ乗り込むのをためらいそうになった。

 

けれどこの電車に乗らないと、僕はこの最高の夏の最後を飾れない。

 

いろんな気持ちが混ざり合ったまま、僕は電車に乗り込んだ。

 

ドアが締まりきる前に、僕は最後の挨拶をする。

 

( ^ω^)「……みんな、本当にありがとうだお」

 

( ^ω^)「僕は帰っても、絶対に、絶対にこの夏の出来事を忘れないお

 

 

( ^ω^)「それじゃ、バイバイですおー!」

 

涙を我慢して、笑顔で手を振り別れを告げる。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

最後は笑って別れよう、そう決めていたから。

 

発射のベルが鳴り響き、ドアが閉まる。

 

ツンが駆け寄って、ドアの窓越しに僕たちは見つめあった。

 

だけどやはり、言葉は必要なかった。

 

二人で共に笑って、いつかの再会を誓いあった。

 

135: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:12:37.25 ID:/2fKFijt0

 

電車は駅を発ち、長い長い線路の上を走り出した。

 

僕は窓際の席に座り景色を眺めた。

 

きらりと光る海が見える。

 

木々の緑は薄くなっていて、ところどころ色づき始めていた。

 

僕は電車の揺れに身を任せる。

 

ふとしたきっかけで目を閉じると、すぐに情景が広がった。

 

海、空、雲、木々、川、風、太陽、星、池、夕日、月、大地。

 

そのすべてが鮮明に映っている。

 

そして何よりも、僕に接してくれた人の思い出が蘇ってくる。

 

みんながくれた例えようもない宝物の数々は、僕の心の奥で輝いている。

 

ツンとの思い出は、その中でも特に一番深い所できらめいていた。

 

舞い戻る鮮やかな記憶。

 

それはこの夏、一番のお土産だった。

 

140: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:15:09.04 ID:/2fKFijt0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

やがてトンネルに入った。

 

暗い一本道。

 

この長いトンネルを抜けると、あの町とも本当にお別れなんだという気がし

 

た。

 

夢から覚めるかのような気分に襲われる。

 

だけど夢じゃなかったことは、ペンダントを握るだけで理解できた。

 

しばらくして電車はトンネルを抜け、目の前には違う景色が広がった。

 

それはまるで別世界であるかのように感じられた。

 

振り返るともう町は見えない。

 

僕はとうとう、思い出の最後の一ページにピリオドを打った。

 

もう自分の中での夏は終わってしまった。

 

けれど寂しいだなんて言わない。

 

これからは、新しい僕の、新しい生活が始まるんだ。

 

そんな事を考えながら、窓の向こう側を眺めていた。

 

その光景はやはり、新しかった。

 

141: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:16:56.88 ID:/2fKFijt0

 

以上で19話はおわりです

 

えー、次が最終話になります

 

数分後、ゆっくりと投下したいと思います

 

142: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:17:2

 

 

 

↓次ページへつづく↓

4.52 ID:+nS6TSqo0

 

作者は俺を寝させない気だな!

 

144: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:19:3

 

1.68 ID:B5CQTSaA0

 

終わっちゃうんだな・・・

 

しかし支援

 

145: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:20:1

 

2.10 ID:WxsOO9lmO

 

とうとうラストか

 

wktk

 

147: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:24:45.66 ID:/2fKFijt0

 

『( ^ω^)と夏の日のようです』   第二十話

 

七月末。

 

僕は電車に揺られながら、叔父さんの家に向かっていた。

 

あの夏の日から、早4年。

 

その年の秋始め、僕は写真美術の専門学校に入学した。

 

毎日必死で勉強し、自分を鍛え直した。

 

……そして、僕は今雑誌の新米カメラマンとして働いている。

 

この町に来たのも、撮影のために長期滞在することになったからだ。

 

まだまだ駆け出しだけども、自分の進む道は見つけられたと思う。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

長い旅路の末駅に到着し、またこの道を歩いていく。

 

目の前に広がるのは、あの時と変わらない景色。

 

青い空は澄みわたり、木々の緑は色鮮やかだった。

 

149: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:26:32.84 ID:/2fKFijt0

 

照りつける太陽が眩しい。

 

道中、見知った顔に出会った。

 

あの夏、一緒に歩いた道を僕は覚えている。

 

「おや、あんたは……」

 

「ほっほっ、しばらくぶりじゃの」

 

「今日は、何をしに来たのかのぉ」

 

「何をするために、今日という日が来たのかのぉ」

 

150: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:28:3

 

1.32 ID:dZMPWz3V0

 

あれ、目から汁が・・・

 

151: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:28:45.90 ID:/2fKFijt0

 

少し寄り道をして、海沿いの道を歩いた。

 

船着場へと続く道の上で、トロ箱を担いだ男を見つけた。

 

あの夏、船の上から見た夕日を僕は覚えている。

 

「おっ、おめーは……」

 

「はっはっはっ、よー来たのぉ!」

 

 

 

↓次ページへつづく↓

「また釣りにでも行くか!」

 

「海が、おめーを待っちょるけぇのー!」

 

154: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:30:52.82 ID:/2fKFijt0

 

別れた後、僕は船着場を目指した。

 

荒々しい潮風が舞う中に、あの人はいた。

 

あの夏、追いかけ続けた背中を僕は覚えている。

 

「ん、お前は……」

 

「よぉ、久しぶりだな」

 

「お前が向こうに帰っちまってから、もう4年か」

 

「……見ないうちに、いい顔になったな」

 

157: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:33:03.27 ID:/2fKFijt0

 

暫しの間近況報告をしていると、後ろから女性の声が聞こえた。

 

僕は振り返り、軽く会釈をする。

 

あの夏、教えてもらった言葉を僕は覚えている。

 

「むっ、君は……」

 

「ようやくやってきたか」

 

「君がいなくなってから、いろんな事があったぞ」

 

「また、ゆっくりと話をしてやろう」

 

160: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:35:15.71 ID:/2fKFijt0

 

二人に別れを告げ、僕はひたすらに山道を進んでいく。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

上り始めてしばらくすると、一人の可憐な少女と出会った。

 

あの夏、伝えられた想いを僕は覚えている。

 

「あっ、あの人は……」

 

「久しぶり、だね」

 

「……私ね、好きな人が出来たんだ」

 

「今度、紹介するね」

 

162: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:37:2

 

5.50 ID:qi+HrRM/O

 

良い話すぎて和んだ挙句涙でてきた

 

163: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:37:39.43 ID:/2fKFijt0

 

僕はまだ歩き続けた。

 

途中、自転車に乗った少年が僕の手前で車輪を止めた。

 

あの夏、無邪気に遊んだ日々を僕は覚えている。

 

「あっ、あれは……」

 

「来てくれたんだ!」

 

「僕、中学で水泳部に入ったんだ」

 

「毎日、一生懸命がんばってるよ!」

 

165: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:39:47.96 ID:/2fKFijt0

 

道なりに進んでいくと、一軒の家が見えてきた。

 

玄関先で車を洗っていた男の人が、微笑みながら僕に目を向けた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

あの夏、語りあった夜を僕は覚えている。

 

「おや、君は……」

 

「やあ、待っていたよ」

 

「あの頃みたいに、ゆっくりしていってよ」

 

「この町は、君の訪れを待ち続けていたんだからね」

 

168: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:41:40.05 ID:/2fKFijt0

 

家に上がると、掃除をしていた女の人に声をかけられた。

 

窓辺の風鈴が、一度だけちりんと鳴った。

 

あの夏、見上げた星空を僕は覚えている。

 

「あら、あなたは……」

 

「ふふ、やっぱり来たのね」

 

「今日の夕ごはん、腕によりをかけちゃうから」

 

「……あの子なら、川にいるわよ」

 

169: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:41:5

 

1.30 ID:HmY/ZVevO

 

また一つ良作が終わるのか

 

173: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:44:20.38 ID:/2fKFijt0

 

僕は挨拶を済ませ、急いで川に向かった。

 

彼女に教えてもらった、とっておきの場所に。

 

山道を下っていく途中で、少しだけ足を止めた。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

空は、どこまでも青く。

 

新葉は、どこまでも鮮やかで。

 

海は、どこまでも広がっている。

 

目に映る風景のすべてが、あの夏の思い出を呼び覚ましてくれる。

 

僕たちの、大切な思い出を。

 

177: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:46:51.00 ID:/2fKFijt0

 

蝉の声が響く中、小道を抜け川に辿り着いた。

 

川辺には一人の女の子。

 

白いワンピースに身を包み、ぼぉっと水の流れを見ていた。

 

いろんなことがあった。

 

泣いた日もあったし、笑った日もあった。

 

色褪せることのない、数え切れないほどの記憶。

 

あの、一緒に過ごした夏を、僕は覚えている。

 

181: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:48:56.01 ID:/2fKFijt0

 

僕は大声で彼女の名前を叫んだ。

 

耳だけじゃなく心にも届くように、僕は大声で叫んだ。

 

( ^ω^)「――――ツン!!」

 

彼女が振り向く。

 

ξ゚⊿゚)ξ「…………」

 

一瞬の沈黙の末。

 

 

 

↓次ページへつづく↓

ξ゚ー゚)ξ「――――ブーン!!」

 

僕の名を呼んだ。

 

182: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:51:32.43 ID:/2fKFijt0

 

静けさの漂う川辺で、二人の声が一際大きく響いた。

 

僕はツンの元に駆け寄り、ぎゅっとその体を抱きしめる。

 

再開を喜ぶ大粒の涙の雫が、ツンの頬をそっと伝う。

 

生憎、僕は気の利いた台詞の一つも持ち合わせていなくて、

 

ただ自分の素直な気持ちを、真っすぐに伝えるだけだった。

 

ξ;ー;)ξ「バカ……こんなに、待たせて……!」

 

( ^ω^)「……ごめんだお。本当に、ごめんだお」

 

ξ;ー;)ξ「でも、もういいの! ちゃんと、迎えに来てくれたから……

 

!」

 

( ^ω^)「ツン……ずっとずっと、大好きだお」

 

それ以上の言葉なんか必要なかった。

 

僕の腕の中で、きらりと光る涙を流すツン。

 

壊れてしまわないように、優しく、抱きしめた。

 

184: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:53:3

 

4.44 ID:YazIVefpO

 

涙でよくわかんねぇよ…

 

186: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:53:48.99 ID:/2fKFijt0

 

 

 

↓次ページへつづく↓

お互いのペンダントが触れ合う。

 

天高くで輝く太陽の下、僕とツンは口づけを交わした。

 

時が止まったかのような世界の中で、二人の針だけが動いている。

 

川のせせらぎは、もう聴こえてこない。

 

僕は夢見る。

 

あの夏の日のような、飛びっきりの毎日を。

 

187: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:55:35.21 ID:/2fKFijt0

 

七月末。

 

僕は電車に揺られながら、叔父さんの家に向かっていた。

 

窓の外に広がる景色を見る。

 

今年もまた、この町にやってきた。

 

気のいい人たちと過ごす最高の夏。

 

それはどんなに楽しいことだろう。

 

僕は期待に胸を膨らませ、電車の到着を待ち続けた。

 

その隣に、愛するツンを連れて――――。

 

        『( ^ω^)と夏の日のようです』   おわり

 

188: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:56:1

 

2.93 ID:YazIVefpO

 

乙!!!!!

 

189: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:56:1

 

 

 

↓次ページへつづく↓

7.72 ID:40AuaR1VO

 

涙が……

 

191: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:57:5

 

4.13 ID:B5CQTSaA0

 

超乙!!!

 

197: ◆zS3MCsRvy2:2007/08/05(日) 00:58:35.59 ID:/2fKFijt0

 

以上で、「( ^ω^)と夏の日のようです」はおしまいです

 

初の長編だったので、いろいろ至らない点もあったと思います

 

ですが、こうしてめでたく完結を迎えることができました

 

それもこれも

 

励ましていただけた読者の方々

 

まとめていただいたオムライスさん

 

練習させてもらった総合

 

批評をくれた某スレ民

 

みなさんのおかげです

 

本当に、ありがとうございました!

 

199: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:59:4

 

2.77 ID:7cUrh++40

 

乙なんだぜ

 

196: 名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/08/05(日) 00:58:3

 

3.40 ID:xnkSwoNUO

 

乙!!!!!

 

また良作が一つ終わってしまった…