サンサーラ速報❗️

【幻の秘話】ドラえもん「道具を使って本気で戦いたいだって?」 ⇒ あの道具、こんな使い方あったのかよww アニメでは決して放送できない幻の秘話がココに!!

――7月13日、朝――――――…

 

ドラえもん「こらっのび太!起きろ!遅刻するぞ!」

 

のび太「…もーいいじゃん行かなくたってさぁ、あと数日で夏休みなんだから…」

 

ドラえもん「………そのまま起きずに死ねばいいのに」

 

のび太「…あ?」

 

ドラえもん「大体君は中学生になったというのに、無責任というか無神経というか」

 

のび太「あ?どっちが無神経だよ。居候の分際で死ねとか言っていいと思ってるの?」

 

ドラえもん「『あ?』て…誰に向かって口聞いてんのさ。せっかく起こしてあげたのに」

 

のび太「あ?」

 

ドラえもん「そんな性格で歴史を都合の良いように変えるなら君は粛清さ

 

れるべきだと思うよ」

 

のび太「あ?何言ってんのウスラハゲダヌキ」

 

ドラえもん「君は歴史の汚物であり僕の人生の汚点だからただちに殺すね」

 

のび太「お?お?やんのかタヌキ?お?」

 

ドラえもん「しょうがない奴だなぁ…苦しまないように瞬殺だよ」

 

ドラえもんが四次元ポケットに手をつっこむと同時に

 

すかさず押入れにあったスペアポケットに手を伸ばすのび太

 

のび太〈……何か道具で……距離をとらないとッ…!〉

 

ドラえもん「熱線銃~」てってれっててってってーー

 

のび太「ウワァッ!!?」

 

のび太が道具を取り出した瞬間、ドラえもんが引き金をひく…!

 

部屋は眩く光り、家は一瞬にして炭と化した

 

ドラえもん「ウフフフフフフフ…!」ガラガラガラ・・・

 

のび太「shitッ!タケコプターで窓から飛び出していなければ死ぬところ

 

だった……!」

 

ドラえもん「shitって……勉強してないくせに、そんな汚い英語はおぼえ

 

ているんだね」

 

のび太「しつけが悪いのさ。それよりいいのかい?僕はスペアポケットを

 

持っているんだよ?」

 

ドラえもん「君は実に馬鹿だなぁ」

 

ドラえもんの顔がニヤリと歪む

 

悪寒を感じ取ったのび太はとっさに身構えた

 

ドラえもん「あははははははは」

 

ドラえもんは狂気に満ちた笑い声をあげながら

 

勝ち誇った顔でフラスコ瓶を見せ付ける

 

ドラえもん「ハイこれ何でしょう」

 

のび太「それは…『ウソ8OO〈エイトオーオー〉』」

 

※ウソ8OO〈エイトオーオー〉

 

言った事が全てウソになる薬

 

以前、これを飲んだのび太の独り言によって

 

未来に帰ったドラえもんが再びこの時代に戻ってきた

 

二人にとって感慨深い道具である

 

ドラえもんは瓶の蓋を開け、『ウソ8OO〈エイトオーオー〉』をゆっくり

 

と飲み干す…

 

ドラえもん「のび太君は生きる」

 

のび太「…!!」

 

ドラえもん「のび太君は楽しみながら生きるよ」

 

満面の笑みを浮かべながらドラえもんは続ける…

 

ドラえもん「のび太君は生き続ける」

 

ドラえもん「のび太は永遠に生き続けるよ」

 

のび太「――――――ッ」

 

ドラえもん「君は…おっと!!」

 

とどめの決め台詞のひとつや二つ浮かんだのであろうが

 

ウソ8OO〈エイトオーオー〉の効果でのび太が生き返ってしまっては元も

 

子もない

 

ニアミスな発言は控えるべく、ドラえもんは衝動を押し殺した

 

 

 

↓ドラえもんの道具を使った本気の戦いが想像を絶した…続きはコチラ↓

 

ドラえもん〈これで君は……死んだッ!!!〉

 

ドラえもん〈ウソ8OO〈エイトオーオー〉を飲んで言った事は必ずウソになる〉

 

ドラえもん〈この嘘には絶対に逆らう事が出来ない…〉

 

ドラえもん「……それなのに……君はなんで生きているんだァァーーーッ!!」

 

動揺するのも無理はない

 

嘘をついたにも関わらずのび太は平然としていたのだから

 

のび太「………」

 

のび太は手帳に何かを書き始める

 

ドラえもん「答えr……るなッ!!ええい、ややこしいなぁ!!」

 

ドラえもん「どうやってウソ8OOから逃れたんだッ!?のび太ッ!!!」

 

のび太「…相当うろたえている様だけど、君が何を言っているのかわからないな。」

 

のび太はドラえもんの怒鳴りを他所に

 

持っている缶ジュースの蓋を開けて飲み始めた

 

ドラえもん〈な…何だのび太のやつ…缶ジュースなんか飲んじゃって…余裕のつもりか…?〉

 

ドラえもん〈い…いや…ジュースなんていつ買ったんだ?…いつから…缶…?〉

 

ドラえもん「……缶ジュースだってェェッ!!?」

 

のび太「2分17秒、気付くまでの時間だ。ドラえもん、『君は実に馬鹿だなぁ』」

 

ドラえもん「その缶ジュース、『吸音機』だなッ!」

 

吸音機

 

周囲の音を全て吸収し、蓄えておくことができる道具である

 

音が伝わらなければ声を出していないのも同然、ウソのつきようがない

 

のび太〈君がもし人間なら……『自分の声が聴こえていない』時点である

 

程度の憶測が立てられただろうに……〉

 

ロボットの場合、自分の声を発する際に内容をプログラムで認識してしまうため

 

『自分の発した音声を再び拾い処理する』という習慣が疎かになっている

 

……

 

まして〈自称〉高級ロボット、身体機能の不具合あらば内部で認識できる

 

彼にとって、その習慣ほど不要な物は無い

 

ドラえもんの盲点を突いたのび太の防衛策であった

 

ドラえもん〈……驚かされたけど……中身を飲んだ今なら音が伝わるだろう!?甘いねのび太!!〉

 

ドラえもん「のびた!!生き…」

 

のび太「『あははははははは』」

 

ドラえもん「!?」

 

のび太「『ハイこれ何でしょう』」

 

ドラえもん「そ…それは!!」

 

のび太「『それは…ウソ8OO〈エイトオーオー〉』」

 

ドラえもん「!!?」

 

のび太の手にはウソ8OO〈エイトオーオー〉

 

そしてもう一方の手に握られたスペアポケットから『鏡棚』が頭を覗かせていた

 

ドラえもん「どうしてだ!『フエルミラー』じゃ未来デパートで買った商

 

品は増やせないぞ!?」

 

のび太「自分の道具をろくに把握できてないくせに、何とかなると思って

 

るから君は道具の扱いに機転を利かせる事が出来ないんだ」

 

のび太「これは『フエルミラー』じゃなくて『あべこべ世界ミラー』さ」

 

※あべこべ世界ミラー

 

現実と全て反対の『あべこべの世界』へと続く鏡

 

『あべこべの世界』では現実世界と同じ人間が存在している上に、皆の性

 

格が逆になっている

 

のび太「さっき君がうろたえている時、『予定メモ帳』にこう書いたのさ

 

今日、『あべこべ世界ミラー』の世界から来たドラえもん が

 

起床前のドラえもん に

 

押入れ で

 

『ウソ8OO〈エイトオーオー〉』と『水』をバレないよう交換し、後で鏡

 

越しののび太に渡す

 

ドラえもん「じゃあさっき僕が飲んだのは…ッ!」

 

のび太「得意そうにただの水を飲んじゃって。あははははは」

 

ドラえもんの顔が怒りでみるみる赤くなっていく…!

 

のび太「書いた予定通りになる『予定メモ帳』、こう使えば不都合無くち

 

ょっとした歴史も変えれるのさ。」

 

のび太「本来ならすぐにでも機能停止させれたんだよ?どんな気分だい?

 

生意気な口調で煽り、余裕の表情を見せるのび太だが

 

内心煮え繰り返っているのは、むしろ彼の方であった

 

タイムマシンで全て元通りになるとは言え

 

死ねと言われた挙句、両親と自宅を粉々にされたのだ

 

ドラえもんのプライドを完膚なきまでにズタズタにしなければ気がすまなかった

 

のび太「チェックメイトだよドラえもん」

 

のび太はそう言い終えた後、ウソ8OO〈エイトオーオー〉を飲み干した…

 

ドラえもん「のび太はshi」

 

 

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のび太「のび太は死ぬ、アトカラホントは壊れない」

 

ドラえもん「くっ…」

 

※アトカラホント

 

言った事が後で本当になるくちばし

 

のび太「タンマウォッチは壊れない」

 

先ほど使ったあべこべ世界ミラーや予定メモ帳をはじめ

 

地球破壊爆弾、原子核破壊砲、人生やりなおし機、ジャンボガン、ハツメ

 

イカーetc…

 

逆転の手を無くすべく、思いつく限りの危ない道具とその類似品の名前を

 

述べていく

 

ドラえもんも負けじと『安全ガス』や『相手ストッパー』等を取り出し、

 

反撃の機会を窺ったが

 

のび太によりあらゆる手段を封じられてしまった

 

のび太「『のぞみ実現機』も壊れない、ドラえもん、ラストだ」

 

ドラえもん「ラスト?君、『ラスト』って言ったの?」

 

ドラえもん「うふ、ウフフフフフフ…くくく…」

 

ドラえもん「あいかわらず最後に間の抜けたミスをするなぁ」

 

のび太「……しまったっ!!」

 

のび太が最期と言ってもそれは最期にならない

 

ウソ8OO〈エイトオーオー〉の効果が続くかぎり…

 

 

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ドラえもん〈言った嘘が後で本当になる『ソノウソホント』――――――

 

君はまだこの名を述べてはいないッ!!〉

 

ソノウソホントを飲み込むドラえもん

 

のび太「ドラえもんが…!!」

 

ドラえもん「のび太が…!!」

 

ドラえもん、のび太「今飲み込んでいない道具の効果は…

 

ドラえもん、のび太「切れない!!」

 

お互い道具を封じる為に

 

全く同じタイミングで言葉が発せられた……!

 

両者予想外の展開に

 

精神的な疲労が額に滲み出す……!

 

のび太〈これで振り出しか……次の手は一体どう出るか……〉

 

ドラえもん「君がどうあがこうと関係の無い処刑方法を思いついたぞ…!

 

!」

 

のび太「何ッ!?」

 

のび太が次の一声を発するより先に

 

ドラえもんは姿を消した

 

――7月13日、朝――――――…

 

ドラえもん「こらっのび太!起きろ!遅刻するぞ!」

 

のび太「…もーいいじゃん行かなくたってさぁ、あと数日で夏休みなんだ

 

 

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から…」

 

ドラえもん「………そのまま起きずに死ねばいいのに」

 

のび太「…あ?」

 

ドラえもん「大体君は中学生になったというのに、無責任というか無神経

 

というか」

 

のび太「あ?どっちが無神経だよ。居候の分際で死ねとか言っていいと思

 

ってるの?」

 

ドラえもん「『あ?』て…誰に向かって口聞いてんのさ。せっかく起こし

 

てあげたのに」

 

のび太「あ?」

 

ドラえもん「そんな性格で歴史を都合の良いように変えるなら君は粛清さ

 

れるべきだと思うよ」

 

のび太「あ?何言ってんのウスラハゲダヌ…うわぁッ!」

 

のび太が文句を言い終える直前

 

真上から青い物体が現れ、覆いかぶさって来た

 

ドラえもん「ぼ…僕がもう一人…!?」

 

のび太の上にもう一体のドラえもん…

 

青天の霹靂

 

状況をいち早く理解したのは現代のドラえもん

 

ドラえもん「なるほどね。『タイムベルト』を使って僕の手助けをしに来

 

 

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てくれたのか^^」

 

未来から来たドラえもん「その通りッ!今すぐ殺るんだッ!今なら歴史の

 

修正が出来るッ!」

 

ドラえもん「のび太君、君は歴史の汚物であり僕の人生の汚点だからただ

 

ちに殺すね」

 

のび太「ドラえもん…『タイムベルト』を使って過去に遡るなら…」

 

未来から来たドラえもん「ウォォォォッ!?」

 

のび太に覆いかぶさっていた未来のドラえもんが

 

突如、宙に浮かび上がり消えていく…!

 

ドラえもん「!?」

 

のび太「僕の動きを封じてから遡らないと……『現実ビデオ化機』で今日

 

の時間を巻き戻した…ッ!」

 

のび太「間一髪だ…!過去の自分が殺されちゃったら元も子もない…!」

 

※現実ビデオ化機

 

時間をビデオのように早送りしたり巻き戻したり出来る、類似道具多数

 

この道具の恐ろしい点は、時間を巻き戻しても使用者の記憶はそのままで

 

あること…

 

ドラえもん「のび太…、何回過去を遡った?」

 

のび太「………」

 

ドラえもん「『何巡目』かと聞いているんだッ!答えるんだッ!」

 

 

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ドラえもんが四次元ポケットに手をつっこむと同時に

 

すかさず押入れにあったスペアポケットに手を伸ばすのび太

 

のび太〈『過程』は変わった…だけど『結果』は…!?〉

 

ドラえもん「『熱線銃』だッ!粉々にしてやる!」

 

直後 部屋が眩く光り、家は一瞬にして炭と化した…

 

ドラえもん「ウフフフフフフフ……!」ガラガラガラ・・・

 

のび太「さっきと同じだ…!タケコプターで逃げれるところも…」

 

ドラえもんとセワシが初めて来たとき言っていた…

 

のび太がジャイ子と結婚しようが、しずちゃんと結婚しようが

 

孫の孫であるセワシという存在が生まれてくる『結果』は変わらないのだ

 

のび太「つまりさっきの時間軸で壊した道具も……故障か何かが原因で壊

 

れるという『結果』は変わらない…」

 

ドラえもん「ほう、だが少し違うんじゃあないか?君が使うはずの『現実

 

ビデオ化機』も粉々だ」

 

ドラえもん「この有様じゃあタイムマシンも故障かな、君は時間の逆行が

 

出来ない」

 

のび太「…!」

 

ドラえもん「苦しそうだね、余計に悪い『結果』が増えたみたいで良かった」

 

家が崩れ、眼下の両親が死にきれず悶える様子を見ながら

 

 

 

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ドラえもんが不敵に微笑む…

 

――――――怖い

 

のび太は先の見えない不安と

 

今までにないおぞましい表情を見せるドラえもんに恐怖した

 

圧倒的な天敵が今まさに一つの生命を蹂躙しようとしている…!

 

非力な動物が本能的に取る行動はひとつしかない

 

のび太「…うわーん外道ハゲダヌキ~~!!」

 

ドラえもん「親不孝物で臆病者で君はほんとどうしようもない人間のクズ

 

だなぁ」

 

逆転する機会を自身の手で失った事による一時的な戦意喪失と恐慌…

 

全速力で逃げ出すのび太をよそに

 

ドラえもんは瓦礫に埋もれかけたのび太の両親に銃口を向けた

 

ドラえもん「Good Night!トーチャン、カーチャン」

 

ズチュ―――z___ン!

 

ドラえもん「それにしても実にバカだなぁのび太は。どこでもドアがあれ

 

ばすぐに追いつくことが…」

 

ドラえもん「…ちっ…ポケットに無い……さては僕が熱線銃を撃ったとき

 

爆風に巻き込ませたな…」

 

―――裏山―――

 

のび太「た…たすかった…はやく…ジキルを…」

 

 

 

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スペアポケットから『ジキルハイド』を取り出し、それを手のひら一杯に

 

出して飲み干す…

 

一錠飲めば10分の間、性格が逆になる秘密道具である

 

のび太が以前飲んだ時は血の気が多い性格になったのだが…

 

のび太「あそこで逃げたのは臆病ながら良い判断だ…」

 

のび太「あんなにチャンスがありながら………僕はあまりに未熟だった…」

 

ドラえもんが日々どれほど不満を募らせていたのか、自分が逃げた後に両

 

親が撃たれたか

 

今、のび太にとってそんなのはどうでもよかった

 

これまでにない命の危機に直面し、パニックに陥った今

 

ジキルハイドは想像以上の効力をもたらし、先刻以上の冷静さと判断力を

 

彼に与えたのだ

 

のび太「僕がすべきことは…」

 

のび太「あの暴走したドラえもんを無力化&和解してさっさとこの惨劇を

 

終わらせる事だ…」

 

のび太「しかし、こんな事になってもタイムパトロール達が未だ出動して

 

いない所をみると……」

 

のび太「このまま何も行動を起こさなければ、都合の良い様に時間を埋め

 

合わされた地獄の日々が待っているのだろう。」

 

のび太「そんな未来、冗談じゃあない」

 

 

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のび太「僕は勝つ未来を選ぶ」

 

のび太はスペアポケットから『とりよせバッグ』を取り出した

 

のび太「今、一番危険な道具はこの『とりよせバッグ』だ」

 

のび太「これをとられたら、今この手に持っているスペアポケットや取り

 

出した道具の全てを奪われてしまう…」

 

のび太「逆に、こいつを先に確保してしまえば…!!」

 

ゴソゴソ…

 

のび太「あった…!やったぞ!ドラえもんの四次元ポケットを取り寄せた

 

!」

 

スペアポケットもドラえもんのポケットも

 

今やのび太の手の内…

 

数世紀先から来た未来のロボットと言えど

 

道具の全てを奪ってしまえば赤子同然である

 

のび太「とは言え…凶悪な武器が使えなくなるという『結果』は変わらな

 

い…」

 

のび太は試しに四次元ポケットからジャンボガンを取り、引き金を引いた

 

 

カチカチと音を立てるだけであった…

 

のび太「タイムマシンが壊れたままって事もないだろう、直ったら色々と

 

厄介だ」

 

 

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タイムマシンが直る前にドラえもんを取り押さえなければならない

 

例えばドラミが介入し、新たなスペアポケットを補充されると厄介な事に

 

なるからだ

 

そのため、なんとしても道具を四次元ポケットから他の場所へ移さなけれ

 

ばならない

 

『壁紙ハウス』を木に貼り付け

 

続いて思いつく限りの道具をポケットから次々に取り出していく…

 

この『壁紙』、中に入ることで絵の中の建物が使えるようになるのだ

 

のび太「必要な道具はこの『壁紙ハウス』の中に入れておけばバッグでい

 

つでも取り出せる」

 

のび太「そしてこの道具、故障したとも限らない…これらは今のうちに完

 

全に壊しておこう…」

 

水圧銃、ショックガン、チッポケット二次元カメラetc…

 

近いうちに故障する危ない道具とその類似品

 

そして『四次元ポケットを確保』というベストな結果を歩んだ今、時間を

 

逆行できる道具も必要無いので

 

一通り取り出して処分していく

 

のび太「全くあきれるよ。こんなの僕の更生に必要無い道具ばっかりだ。

 

アイツ本当は犯罪者なんじゃないか?」

 

何時、ドラミの介入があっても対処できる様に

 

 

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ポケットから必要な道具だけ取り出し『壁紙』に確保しつつ

 

危険な道具は壊していく

 

一見順調にいくかと思われたが

 

妙な違和感と焦りが頬へと駆け巡る…

 

のび太「おかしいぞ……さっきまで『壁紙ハウス』の中には溢れんばかり

 

の道具が入ってあったのに……」

 

道具の処分に夢中で気がつかなかったが

 

壁紙の中に確保してあった道具が明らかに減っていたのだ

 

考えられる理由…

 

取り寄せバッグで四次元ポケットを奪う前…

 

つまり、先ほど自宅から裏山に逃げている間に

 

ドラえもんもポケットから何か必要な道具を確保していたに違いない

 

その『何か』

 

冷静なのび太がまず確保した『とりよせバッグ』と似たような能力の道具

 

……

 

のび太「『なくし物とりよせ機』だ…あいつ、僕が確保した道具を密かに

 

横取りしているのか!?」

 

直後、握っていた四次元ポケットが消える…!

 

のび太の疑念が確信へと変わった…!

 

のび太「……ドラえもんと話し合って何とか和解したかったけれど……悠

 

 

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長にしている暇は無いようだね……」

 

のび太「後で修理してやるよ……だからドラえもん!かなり荒っぽいけど

 

……君を『壊す』ッ!!」

 

のび太はドラえもんの機能を停止させる為

 

取り寄せバッグの中に手を突っ込んだ!

 

狙うはもちろん『心臓部分』

 

ドラえもんの『動力源』である……!

 

のび太「掴んだぞッ!!ドラえもんの『動力源』ッ!!」

 

しかし……!

 

のび太「こ……怖い……!!」

 

ドラえもんの『動力源』を掴んだにも関わらず

 

のび太は自分の元へ手繰り寄せる事が出来なかった

 

のび太「た……ただの恐怖心じゃあ無い…!『他人の内臓』が途轍もなく

 

怖いと感じた………!!」

 

のび太「ドラえもんの奴……まさか『苦手つくり機』を横取りして僕に動

 

力源を触らせないよう設定したのでは…!?」

 

※苦手つくり機

 

一人につき一つ苦手な物をつくる事が出来る

 

片方のボードに人の名前

 

もう片方に苦手にさせたい物の名前を書いて機械を作動させると

 

 

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その人はその物が苦手でたまらなくなる

 

のび太「な……なら尻尾だ……あいつの尻尾を引っ張れば電源が切れる筈

 

……!」

 

のび太は再び

 

取り寄せバッグの中に手を突っ込む……!

 

のび太「………握れない!『ひらりマント』でも括り付けているのか……

 

!?」

 

のび太「こ……これじゃあドラえもんを止める事が出来ないじゃないか…

 

…!」

 

のび太「やはり『動力源』を奪うしか………だけど怖いッ!!触りたくも

 

ないッ!!」

 

恐怖心を煽られたのび太だが

 

先程服用した『ジキルハイド』の効力により、すぐに平常心を取り戻した

 

…!

 

のび太「……ドラえもんも道具の使い方がなっちゃいないな……!」

 

のび太「それなら……『苦手つくり機』を奪うまでだ!!」

 

のび太は恐怖心の元を解く為

 

今度は『苦手つくり機』を取り寄せようと試みる…

 

しかし…!

 

のび太「うおォ!!」

 

 

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バッグに突っ込んだ手が強力な力に引きずられ

 

同時に鈍い痛みが襲ってきた!

 

のび太「こ…これはッ!!マズいぞッ!非常にマズいッ!!」

 

鈍い痛みが鋭い痛みへと変わる…!

 

指先の爪が剥がされ、指がねじ折られ、一つ一つの肉が引きちぎられてい

 

く!

 

のび太は勢い良くバッグから腕をひっこぬいた

 

悲痛な叫び声が裏山に響き渡る…

 

のび太〈何て事だ…手が引きちぎられてしまったぞ…ドラえもんも自ら確

 

保した道具を守っているーーーッ!!〉

 

千切られた片手を

 

『タイムふろしき』で元に戻しながら、のび太は冷静に分析する

 

『とりよせバッグ』は取り寄せたい物体に対して手一個分まで迫る事が出

 

来る道具

 

それが瞬時に阻止されたとなると自動操縦〈オートマチック〉型の道具で

 

守られている事になる

 

のび太〈横取りした道具を含め、ひとつにまとめて置いて『玩具の兵隊』

 

か何かで守っているのか…?〉

 

※玩具の兵隊

 

握りこぶし程の小さな兵隊の群れを使用者の命令通りに動かせる道具

 

 

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機械的な瞬時の感知、手に受けたダメージ…

 

のび太の仮説はほぼ正解だった

 

だがそれはもうひとつの不安を意味する

 

のび太「道具を取り戻そうとしたら体ごと向こうに引きずり込まれてしま

 

うかもしれない…」

 

のび太「逆にドラえもんはこっちの道具を横取りし放題……立場が逆転し

 

た!対処しなければ!」

 

のび太「道具が奪われても、僕の元に戻ってきてくれれば万事解決だ」

 

のび太「『あなただけのものガス』を…確保してある道具に吹きかけるッ

 

!」

 

『あなただけのものガス』のスイッチを捻り、壁紙の中に放り込む事で

 

『なくし物とりよせ機』による脅威を何とか対処した…

 

しかし、のび太は焦った…

 

いくつかの道具をドラえもんに奪われたのは相当の痛手である

 

恐るべき事態に対処する為、『タイムホールとタイム取り餅』を使い

 

急いで過去のドラえもんから『なくし物とりよせ機』を奪う必要があった

 

※タイムホールとタイム取り餅

 

『タイムホール』で過去の映像を映し出し、さらに映っている物を『タイ

 

ム取り餅』で奪うことが出来る

 

※ほぼ同じ効果の類似品として『タイムめがね、タイムてぶくろ』が存在

 

 

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するが

 

『タイムホール』は場所を指定出来るのに対し、こちらは『タイムめがね

 

』で覗いた物や場所のみ過去を映し出す

 

ドラえもん「………こんなところにいたのか。一発でビンゴだ!」

 

のび太「ドラえもん!?どうしてここがわかった!?」

 

ドラえもん「『玩具の兵隊』で君を引きずり込む事は出来なかったが……

 

付着した土埃から大体の見当はついた……!」

 

のび太〈遅かった!!先に見つかってしまうとは…!〉

 

ドラえもん「四手…遅れたようだね。四次元ポケットを奪って慢心するか

 

らだよ」

 

のび太「まさか『なくし物とりよせ機』を密かに確保してるとは思わなか

 

った…」

 

ドラえもん「だろうね。そこで僕は君の次の手を予想したよ」

 

ドラえもん「もし君が『タイムホール』を使って、過去の僕から『なくし

 

物とりよせ機』を奪ったら…」

 

ドラえもん「道具を横取りした過程を全て無かった事に出来るんじゃあな

 

いかってね」

 

――ドラえもんの世界

 

例えばのび太がテストで悪い点数を取ったので、タイムマシンで過去の自

 

分に答案を渡しに行った場合

 

 

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答えを渡されたのび太は悪い点を取らなくなるので過去に遡る必要が無く

 

なる。では元ののび太の記憶や存在はどうなるのか?

 

いくつかの時間旅行を取り扱った作品では、この『パラドックス』を簡潔

 

に説明する為

 

『過去を干渉されていない世界』と『過去を干渉された世界』に分岐する

 

概念を取り入れているのだが

 

ドラえもんの世界の場合、パラレルワールドという概念は『もしもボック

 

ス』等、並行世界を行き来出来る道具でしか発生しない

 

タイムマシン等で過去の歴史を変えた場合、『過去を干渉された世界』が

 

基準となり

 

並行した別世界に分岐するという事が無いのである

 

そして過去に干渉しても何々が誕生する、発生する等の微妙な『結果』は

 

その限りではないので多少のパラドックスは埋め合わされる事になる

 

上記の例で言うと、元ののび太の記憶は『テスト前に未来から来た自分に

 

答案を渡されたが

 

結局、何らかが要因となり過去の自分に答案を渡しに行くはめになった』

 

という新たな記憶に改変される

 

詳細はタイムマシンを使って過去の自分に干渉してる回とか大魔境とか鉄

 

人兵団とかを参考にね――

 

ドラえもんは『タイム手袋』を装着し、『タイムめがね』をのび太に向け

 

 

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ドラえもん「君は『タイムホール』を使い慣れてない、これなら先に僕が

 

取り出せられる」

 

のび太は眉ひとつ動かさず、ドラえもんを見据える

 

ドラえもん「……」

 

ドラえもんものび太も、お互い微動だにせず睨み合う…

 

ドラえもんが『タイムめがね』を使って奪うのは間違いなく

 

のび太が早朝持って行ったスペアポケット

 

しかし、ドラえもんは結論を出せずにいた

 

仮にスペアポケットを過去から奪った場合、今朝からの出来事はどうなる

 

のか…

 

1、自宅で撃った熱戦銃が、のび太を灰にするのか

 

2、『現実ビデオ化機』で既に何通りか出来事を経験済みであり、何らか

 

の対策で逃げられてしまうのではないか

 

3、逃げられた場合『なくし物取り寄せ機』に対処したのび太の道具〈あ

 

なただけの物ガス〉は『過程』なのか『結果』として扱われるのか

 

4、埋めようの無い大きなタイムパラドックスが生じる為、タイムパトロ

 

ールが阻止しに来るのではないか

 

ドラえもんが優位な事に変わりないが

 

パラドックスの埋め合わせによっては自滅する恐れがあり、迂闊に行動に

 

 

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移すわけにはいかない……

 

ドラえもん「どのみち僕が先手を取れるんだ」

 

先に動いたのはドラえもんの方だった

 

ドラえもん「一番リスクが少ない手は…これだッ!」

 

ドラえもんは『タイムめがねとタイム手袋』で先程の のび太から

 

壁紙ハウスに収納しようとしていた『タイムホールとタイム取り餅』を奪

 

 

そして『タイムホールとタイム取り餅』と自分の持つ『タイムめがねとタ

 

イム手袋』をミサイルで破壊した

 

のび太「タイムパトロールを警戒して消極的になっているね、と言いたい

 

ところだけど…」

 

のび太「その道具を確保していたのか……単純に、無駄なリスクを省いた

 

とも言えるわけだ…」

 

ドラえもんの使ったミサイル、のび太は見覚えがあった

 

ドラえもん「そう…この『無敵砲台』さえ確保していれば、どのみち僕に

 

勝てる者はいないからね」

 

無敵砲台

 

地球のどこかに砲台を設置しておけば命令ひとつで

 

二の腕程の小型誘導ミサイルを目の前の敵に撃ち込める

 

文字通り無敵の道具である

 

 

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ドラえもん「さぁ!地獄の日々を味あわせてやるッ!!」

 

ドラえもんの怒声と共に

 

どこからともなくミサイルが飛来してきた!

 

のび太「過去を切り取るというのは危険な事だ…」

 

ドラえもん「!?」

 

狙いを定めたはずのミサイルがのび太の体をすり抜ける…!

 

のび太「君は過去の僕から『タイムホールとタイム取り餅』を奪った…」

 

のび太「おかげでここに至るまで少し違う『過程』を歩んだんだ……」

 

のび太「草むらに隠しておいた『タイムテレビ』に、僕の立体映像〈ホロ

 

グラム〉を作らせるよう設定しておいた…!」

 

ドラえもん「えっ!?」

 

のび太「つまりここにいる僕は設定しておいた立体映像ってわけさ……本

 

物の僕は既に裏山から逃げたよ!」

 

ドラえもん「のび太ァ!!」

 

半狂乱のまま無敵砲台を乱射するドラえもん

 

山肌は跡形も無く吹き飛んだ…

 

ジキルハイドを服用した事で冴えていたのび太は

 

ポケットの道具を壁紙に移す最中、取り出した『タイムホール』が奪われ

 

たのを不思議に思い

 

裏山でこれから起きる出来事をタイムテレビの倍速で確認

 

 

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逃げる準備をしていたのである

 

目の前でのび太を絶望の淵に堕とす

 

残酷な手段を用いようとしてドラえもんは愚かにも判断を誤ったのだ

 

のび太「自分の道具をろくに把握できてないくせに、何とか思ってるから

 

応用力が身につかないんだよ」

 

ドラえもんに向けておしりを叩きながら立体映像〈ホログラム〉は消えた

 

ドラえもん「ウワァァァァ!!」

 

この挑発、タイムテレビを再利用させずに壊してもらう為でもある

 

ドラえもんは見事、術中にはまってしまった

 

ドラえもん「くそぉ~のび太を見失ったッ!!」

 

ドラえもん「道具の使い方だけ妙に知恵が働くんだアイツはッ!!」

 

ドラえもんはカンカンに怒っていた

 

ドラえもん「…今はとりあえずこの半壊した裏山と警察騒ぎをどうにか鎮

 

めなきゃ…」

 

ドラえもん「現状を覆すにはタイムマシンが一日も早く治ってくれないと

 

…だがのび太もこれを狙っている」

 

ドラえもん「のび太を消し炭にするには統率された武力!そして道具!…

 

…」

 

ドラえもんは一抹の不安を抱えていた…

 

現実ビデオ化機など処分された道具を除いても

 

 

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ウソ8OOを遥かに凌ぐ「起死回生の秘密道具」がポケットにはいくつか存

 

在していた

 

しかし、ポケットにはその道具が既に無かったのだ

 

取り寄せバッグをすぐさま回収したのび太の判断力からしてまず見落とす

 

はずがない

 

この道具の不安要素、そしてたった今見せ付けられたのび太の判断力

 

ドラえもんも理解していただけに

 

のび太に対し、安易に近づくわけにもいかなかった

 

――――大丈夫、捨て駒ならこの町に星の数ほどいる…

 

おぞましい笑い声が町に響き渡るのを合図に

 

ドラえもんの追撃が始まった…!

 

ー中学校、教室ー

 

キーンコーンカーンコーン・・・

 

先生「えー…7月13日、出席をとるぞーー」

 

のび太〈次の一手、ドラえもんにとっても僕にとっても一番やっかいなの

 

は誰かと『協力』することだろう…〉

 

のび太が次に危惧しているのは『仲間との協力』

 

お互い相見え、実力が拮抗していると分かった今

 

五分の状況をひっくり返すには第三者の協力が不可欠である

 

そして、協力者を得た状況下で最も恐ろしいのは

 

 

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身内による『裏切り』……

 

ドラえもんが学校のみんなも視野に入れて狙ってくるのは必至であり

 

敵の傘下に入った者を引き込むわけにはいかない

 

先にみんなの理解を得て協力して貰わなければならなかった

 

のび太「出席なんて待っちゃいられないよ、先生!トイレ行ってもよろし

 

いでしょうか!」

 

先生「早くしてきなさい」

 

教室から笑い声とざわめきが起こる

 

生死をかけている状況の中、彼の耳に嘲笑が入り込む余地はなかった

 

のび太は焦りと不安で息が弾む…!

 

教室を出て右の階段を上がれば、源静香のいる教室に続く廊下へと出る筈

 

だった

 

しかし…

 

のび太「階段が…無いッ!!?」

 

寝ぼけているわけではない

 

朝にあれだけの事が起きたのだから

 

のび太はドラえもんの攻撃であると即座に理解した

 

のび太「先手を取られてしまったのか!?くそう……!」

 

振り返ると今出てきた教室の扉までもが無くなっている

 

それどころか…

 

 

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のび太「この学校…生きているのか?廊下が、部屋がッ!!」

 

見ている先…

 

さっきまでの面影は既に無く

 

それどころかみるみると廊下の構造や柱の配置が変わっていくのだ

 

異質な空間の中、のび太はもう一つの違和感を覚える…

 

のび太「ぼ…僕自身もグルグルと回っているのか…?い、いや、窓の外の

 

景色が回っている?」

 

のび太「危険だ、とにかく危険だ!ど…どこでも良い…教室に…部屋に、

 

逃げなければ…ッ!」

 

のび太「『稲妻ソックス』…!これを履いた足ならすぐ現れては消える扉

 

にも入れるはずだ!」

 

のび太「いくぞぉぉ!」

 

めまぐるしく変わる景色によろめきながらも

 

のび太は目の前に現れた扉に飛び込んだ

 

ドガァン!―――――…

 

しずか「…のび太さん!?」

 

のび太「しずちゃん!?」

 

とびこんだ部屋は源静香のクラス

 

幸いにも目的地であった

 

のび太「……みんな何をしているんだ?窓の外なんか見ちゃってさ」

 

 

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別のクラスメイトが大きな音をたててなだれ込んだというのに

 

生徒達は何やら別の事でどよめいている様子である

 

しずか「それが…外の様子がおかしいのよ」

 

のび太「外?ああ、ぐるぐる回っているね…」

 

ドラえもんの道具による攻撃

 

恐らく、廊下がうごめいている影響だろう…

 

しずか「回っている?そろどころじゃないわ。下の建物が…」

 

のび太「下の建物?」

 

のび太は身を乗り出し

 

窓の外を覗き込んだ…――――――

 

のび太「――――――…」

 

しずか「のび太さん、大丈夫?」

 

のび太は絶句し、みるみるうちに青ざめていった…

 

教室は既に

 

高層ビルの屋上が見えなくなるほどの高度に達していたのだ

 

のび太「し、下の建物だって…?冗談じゃあない…雲しか見えないじゃな

 

いか…!」

 

のび太〈…いや…これは秘密道具の攻撃なんだ…考えるんだ…〉

 

しずか「のび太さん…?」

 

この状況…

 

 

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学校がロケットのように打ち上げられたのかと思ったがそうではない

 

窓の外は雲一色でわかりにくいが

 

下を覗いて見ると校舎の壁が地上まで続いている様子である

 

教室の高度、廊下の異常な変化…

 

のび太「まだ直接攻撃されたわけじゃあない…これは僕を閉じ込めておく

 

道具…」

 

今度こそ、逃がさない為の作戦であろう

 

ドラえもんの道具には建物の構造を変えてしまうものがいくつかある

 

のび太「建物の位置がそのままなら…使っている道具は三つ…」

 

1、建物が回転する道具

 

2、建物の高度を自由に変化させる道具

 

3、建物の内部を複雑に変えてしまう道具

 

のび太「不意打ちで戸惑ったけど…大した道具じゃあない、タネがわかれ

 

ばいくらでも対処できる」

 

のび太〈かと言って取り寄せバッグで相手の道具を奪うのは危険だ……体

 

ごと向こうに引きずり込むのが狙いかもしれない…〉

 

のび太「ここはまず、みんなの避難路を確保しよう!」

 

無生物催眠メガホン

 

これを向けて命令するとあらゆる無生物に催眠をかける事が出来る

 

のび太は教室の窓にメガホンを向けた

 

 

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のび太「『ここは校舎一階の窓だ!』」

 

のび太「窓に催眠をかけたよ!これでこの窓を飛び出せば一階の外に出る

 

!急ごう!」

 

クラスメイトにそう呼びかけ、のび太は窓を開けた

 

――――――ズドドドドドドドォ!!

 

生徒達「うわあああああああああああああああああ」

 

窓の外から猛烈な勢いで水が押し寄せる!

 

のび太「ブフォ!?何だこれ!濁ってるぞ!?」

 

しずか「のび太さん!!はやく閉めて!このままだと教室が!」

 

のび太「いや!駄目だ閉まらない!水圧で窓ガラスがッ!!」

 

他の窓ガラスをも突き破り

 

教室が一気に浸水していく…!

 

のび太「『ここは校舎10階の窓ッ!!』」

 

メガホンにむかって必死に叫ぶのび太

 

――――――……

 

のび太「ハァー…ハァー…」

 

のび太「止まった……」

 

教室は無残なものだった

 

流れてきた水のかさは腰のあたりまで達しており

 

生徒の中にはガラス片に突き刺さり、重傷の者までいた

 

 

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のび太「み…みんな…」

 

「オイてめぇ!どういうつもりだ!!」

 

生徒の一人がのび太の胸倉を掴む

 

生徒A「普通に廊下に出て逃げりゃあ良かったんじゃあねぇのか!!」

 

生徒B「そうだそうだ!余計な事してるんじゃねぇ!」

 

しずか「みんな違うわ!のび太さんは…!」

 

生徒に続き、次々とのび太に対する野次が飛び交う

 

のび太〈こ…このわからずや共…僕はその廊下から来たというのに…!〉

 

廊下は恐らく来た時よりも複雑になっているに違いない…

 

クラス全員無事に逃げられる保障はゼロと言ってもいいくらいだ

 

薄情な生徒の野次に対し

 

のび太はあくまで平常心を保った

 

そう、これも敵の作戦の内だ

 

自分に対しての信用を無くす間接的な攻撃なのだ

 

そう自身に言い聞かせる事によってなんとか怒りを静めた

 

のび太〈それにしても…一階は浸水しているのか?町はどうなっているん

 

だ?〉

 

自身の道具に過信していると足元をすくわれる可能性がある

 

持っている道具を看破されるだけであっという間に逆転されてしまう可能

 

性が出来る

 

 

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先刻、ドラえもんがそうだったように…

 

だがのび太は戦慄した

 

裏山の出来事からわずかに時を刻んだだけである

 

のび太「たったあれだけのドジから学んだのか…!?……これが『ドラえ

 

もん』……!」

 

ウソ8OOのような無敵には程遠い地味な道具だが

 

選択肢をひとつずつ確実に減らし、ジワジワと追い詰めてくる

 

一回凌いだところで、それが決定打にはならない

 

のび太〈『仲間』?『裏切り』?それ以前の問題じゃあないか…!〉

 

――――――――――――『現実』

 

想像よりも、大きな壁が眼前を憚っていた

 

生徒C「じょーだんじゃねぇぜ!今日の学校はおかしい!みんな帰ろうぜ

 

!」

 

生徒D「センコーも来ねぇしな!」

 

生徒達「そうしようぜ!」

 

のび太「だ…だめだ…廊下に出ちゃあ…」

 

生徒A「あ?おめぇさっき何したよ?俺達逃げられたかよ?解決できてね

 

ーじゃねーか!」

 

生徒B「おいそんな奴ほっといて行こうぜ!」

 

生徒達はのび太の静止を振り切り、教室のドアに手をかける…

 

 

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「――――――ウワアアアアア!!」

 

他の生徒「!?」

 

教室のドアに手をかけた生徒達がその場に崩れおちる

 

クラスメイトの一人が恐る恐る倒れた生徒に駆け寄った…

 

生徒「し…心臓が…止まってるや…はは……」

 

「いやああああああああああああああああああああああ!!」

 

――――――次の瞬間、教室が悲鳴と怒号に包まれた

 

今、その時まで威勢よく逃げようとしていた生徒が死んだのだ

 

逃げられない…

 

焼け焦げた死臭が部屋中に漂いはじめると同時に

 

絶望と狂気が次第に大きく渦を巻き始めた…

 

ドラえもんの攻撃はこれまでとは明らかに『異質』なものであった

 

それはタイムパトロールの介入を怖れず、無関係の人々にまで危害を加え

 

たという点である

 

のび太〈この攻撃には、明確な『殺意』がある…〉

 

のび太を殺す為なら誰が巻き込まれてもかまわないという『殺意』……

 

ドラえもんは無差別テロを起こすつもりで攻撃してきたのだ

 

のび太〈…思えば、何人殺そうが『タイムマシン』さえ修理すれば後で不

 

都合な歴史を修正出来るし、過去のドラえもん自身と協力して僕を『生け

 

捕り』にする事だって出来る……!!〉

 

 

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のび太〈不都合な歴史を修正する意志が伴っていれば……これらの出来事

 

は全て改変可能の『過程』として扱われタイムパトロールが介入する理由

 

も無くなる、という事か………〉

 

のび太〈ドラえもんめ……裏山の失敗から色々悟った様だな……やはり戦

 

いは避けられない…………〉

 

のび太〈ふぅ……〉

 

のび太は鬱憤を晴らすように

 

教室の床を思い切り殴った

 

バゴォン!!

 

大きな物音に驚いたのか

 

静まり返り困惑を見せる生徒達…

 

のび太〈脱出用の穴を空けたんだけど……やりすぎちゃったか……〉

 

『スーパー手袋』着用済みである

 

床に大きな穴が開いてしまった

 

期待と偏見がはらんだ生徒達の異様な視線がのび太に集まる…

 

のび太「何だい何だいその腫れ物を触るような感じは!身勝手な奴らだね

 

全く!」

 

――――ピンポンパンポーン…

 

気まずい沈黙

 

堰を切ったのは校内放送である

 

 

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校内放送「諸君、楽しんでいただけているかな?」

 

ドラえもんでは無く、男の声であった

 

校内放送「87名」

 

のび太「…?」

 

校内放送「教室から脱出を試みた不届き者だ。全く…ここの教育の程度が

 

伺えるな」

 

校内放送「『ルームガードセット』と言ってね。私はこの学校を掌握して

 

いる」

 

ルームガードセット

 

建物に設置すればドアロックや監視カメラを好きなように配置できる

 

先程ドアを開けようとした生徒を襲った電撃もそれである

 

のび太〈ドラえもんの奴、もう町の誰かを仲間に引き込んだのか?〉

 

校内放送「今日からこの学校は私の居城とする。あなたがたには即刻退去

 

願いたいのだが…」

 

校内放送「しかし、出入り口付近は浸水させてあるので外へ出るのは不可

 

能だ」

 

校内放送「この摩訶不思議な状況を門外に触れ込まれてみろ、軍隊を呼ば

 

れかねないからな」

 

退去願いたいのに学校から出るな

 

この矛盾した意見が示す相手の主張はつまり…

 

 

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校内放送「余興がてら…皆で殺し合いをしてもらおうか」

 

生徒達「!?」

 

校内放送「どの道、教室から出ることは出来ないのだ。今、この間にも校

 

舎は高度を上げている」

 

校内放送「タイムリミットは、そうだな…各々方の教室で天体観測が出来

 

るようになるまで、というのはどうかね」

 

校内放送「最後の一名に残ることが出来たら出してやらんでもないぞ、ふ

 

はははは…」

 

校内放送「どのみち人は死ぬんだ。存分に楽しみたまえよ!」

 

―――ぷつん

 

放送が終わると同時に

 

のび太は静香の手を掴むと、先程空けた床の穴に飛び込んだ―――

 

のび太「冗談じゃあないよ…暴動に巻き込まれるのはごめんだ!」

 

しずか「でも…みんなが…」

 

のび太「さっきの身勝手な奴らを見ただろう!?何とかなると思う!?」

 

パチン!

 

静香はのび太の頬を思いっきりひっぱたいた

 

のび太「………」

 

しずか「酷いわよ…自分の命が大切なのはわかるわ…」

 

しずか「だけどあなたにはみんなを助けられる知り合いがいるじゃない…

 

 

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!」

 

のび太「……優しいんだね君は…」

 

のび太は取り寄せバッグからバリヤーポイントとまもり紙を取り出した

 

のび太「この『バリヤーポイント』は君をあらゆる脅威から完全に守って

 

くれる道具だ。両親の事が心配なら『守り紙』で守ってあげるといい……

 

 

※バリヤーポイント

 

半径2メートルのバリアを張り、『あ』のつくもの等、使用者が指定した

 

頭文字と一致するもの以外

 

全てを遮断する

 

しずか「のび太さん…?」

 

のび太「これは…ドラえもんの仕業なんだ…」

 

しずか「そんな…うそよ…」

 

のび太「嘘じゃない……だから確かめなきゃいけない…」

 

しずか「ドラちゃんなわけないじゃない!」

 

のび太「回路が壊れているなら直してあげたい!」

 

しずか「!」

 

のび太「ネジが緩んでいるなら…閉めなくちゃならない」

 

のび太はかすむ視界をぬぐいながら、何とか声を絞り出した

 

のび太「じゃあ、行ってくるよ…!」

 

 

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ー廊下ー

 

のび太「校内放送ではああ言ってたけど…」

 

のび太「自分のいる部屋まで宇宙に突っ込ませるなんて間の抜けた敵じゃ

 

あないだろう」

 

のび太「とすれば、かなり低い位置に陣取っている事になるのか…?」

 

のび太は『迷路探査ボール』を転がした

 

のび太「どんな迷宮だろうが…このボールの煙は建物を全て把握する…!

 

 

『迷路探査ボール』が作った地図を覗くのび太

 

遥か下層、4階部分に人間の反応がある不自然な部屋を見つける

 

のび太「無生物催眠メガホンッ!『ここは四階の放送室!』」

 

ー放送室ー

 

のび太「さぁ着いたぞ…!」

 

少年「コイツ!?予定よりもずっと早いじゃん!?」

 

のび太「!」

 

放送室には男…というより小学生がいた

 

のび太「さっきの放送と声が違うみたいだけど…!」

 

少年「そりゃあそうさ!」

 

少年は自慢気に首筋に貼ってあるシールを見せ付ける…

 

のび太「それは…『階級ワッペン』!」

 

 

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少年「よく知ってるね!僕は『兵長』の階級を与えられたのさ!」

 

のび太〈なるほどドラえもんの奴、ワッペンで手下を増やしたのか〉

 

のび太「さっきの男はどうした?」

 

少年「さっきの?」

 

のび太「校内放送してた男だよ」

 

少年「ああ、『大佐』の事だね」

 

少年「さあどこいったかなァ~、もう逃げちゃったかもしれない」

 

のび太「あまり乱暴な事はしたくないんだけど…!」

 

少年「おっと!あぶない!」

 

のび太「!?」

 

のび太が少年に飛び掛ろうとするも

 

急にバランスを崩してしまう…!

 

のび太「な…何だ?足が……変な形に…!」

 

少年「へっへっへ……!!」ジャ――z___ン!

 

少年は持っていたスケッチブックをのび太に見せる

 

中にはのび太の変化した足そっくりの形が描かれていた

 

少年「描いた絵の通りになる『そっくりクレヨン』ってね」

 

のび太〈この道具…!スネ夫に使った事あるぞ…!またやっかいな物を…

 

!〉

 

少年「でもずるいよな、『大佐』なんてこの建物を変えちゃう道具全部貰

 

 

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ってるんだもの」

 

少年の指差す先

 

建物を迷宮にする『ホームメイロ』

 

建物を回転させる『メリーゴーラウンドゴマ』

 

建物の高度を自由に変える『四次元たてましブロック』

 

生徒を電撃で襲った『ルームガードセット』、そして…

 

のび太〈『集中気候装置』!あれで学校の最下層だけ雨で浸水させたのか

 

…!〉

 

のび太〈そしてなるほど…ワッペンの階級が高いほど持っている道具が優

 

遇されているって訳か…〉

 

少年「え!?え!?足が治ってる!?なんで!?」

 

のび太「僕はね、君達より前に君のボスの道具を使い慣らしてきたんだよ

 

?」

 

のび太「負けるわけないじゃないか…!」

 

少年「待てーーーッ!うごくんじゃねーーーッ!」

 

のび太「…!」

 

少年「右腕を消したッ!次一歩でも近づいたらもう片方の腕も消すッ!」

 

のび太「僕は…ここの学校の『生徒全員』が助かる方法を考えていたんだ

 

 

少年「…?」

 

 

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のび太「初めてみんなの為にどうやって道具を使うか考えていたんだ…!

 

 

のび太「だけど君達は…その選択肢を奪ってしまった…!」

 

のび太「許さないぞ…絶対に許さないぞ…!」

 

のび太「道具を自分の為だけに道具を使ったら…!」

 

のび太「どれだけ恐ろしい事になるか教えてやる…!」

 

少年「今動いたなッ!オメーの左腕を消したッ!僕もうしらねーッ!」

 

少年「…あれ?」

 

少年は何度もスケッチブックを覗き込む

 

確かに『そっくりクレヨン』で腕を無くした胴体を描いたはずである

 

少年「なのになんでオメーの左腕は消えてねーんだよぉぉぉ!!」

 

のび太「よそ見してていいのかい?」

 

少年「ゲェェ!右腕も何ともねぇーーーッ!」

 

のび太「………」

 

少年「…待てよ…?そうか!道具だな!?何か『元に戻す』道具!」

 

のび太「うっ…!」

 

のび太の胸にバックリと大きな切り傷が開く

 

少年「僕は『芸術家』になりたいんだッ!今のあんたの傷みたいに永遠に

 

刻まれるようなッ!」

 

少年「さぁーその傷を治してみろよッ!そんなこと出来たら奇跡ッ!芸術

 

 

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的瞬間だッ!」

 

のび太は手に持ってあった棒を胸に当てる…

 

少年「おおお…!」

 

棒を胸から足、足から地面、地面から少年へとずらして行く

 

少年「…へ?」

 

少年「ゴガァッ!?」

 

少年は驚きのあまり後ろに倒れるも起き上がる事が出来ない

 

それもそのはず…

 

腕も、足も、そして胸の傷も

 

全て自分の描いた絵の通りになってしまったのだ

 

少年「僕のッ!?僕の体が絵の形にッ!?」

 

のび太「これは『ずらしんぼ』って言ってね、道具の効果だろうと何でも

 

ずらしてしまうのさ。」

 

少年「痛ぇッ!痛ぇよぉぉぉぉッ!!!傷はあるのに血が出ないッ!!」

 

のび太「87人も犠牲者が出たんだ!当然の報いだろう!」

 

のび太は少年から奪ったそっくりクレヨンを圧し折り

 

『大佐』の5つの道具を破壊した

 

少年「今『ベキッ』って!まさかクレヨンも壊したの!?元に戻れないじ

 

ゃん!」

 

のび太「良かったじゃない…!君自身が『芸術作品』になれたんだ…!」

 

 

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少年「そんなぁ~!大佐ーーー!隠れてないで助けて下さいよーーーッ!

 

 

のび太「大佐はもうここにはいないよ。君を当て馬に…」

 

当て馬にして逃げる…

 

戦闘結果も確かめずに…?

 

そもそもどうやってこの迷宮と化した学校から…?

 

再び身構えるのび太…『大佐』は近くに潜んでいる…!

 

『ハッハッハッハッハ…ボスからは情けない男と聞いていたんだがね』

 

『全く大した激情家じゃあないか、せっかくの『尻尾』が台無しになりそ

 

うだ』

 

のび太〈この部屋の中にいたのか!?〉

 

のび太「そこだッ!!」

 

スーパー手袋装着済の拳でロッカーを勢いよく殴りつける

 

中にいようが、常人なら即死級の威力である

 

しかし…!

 

のび太「か…硬い!!こいつ…!何か道具を…!」

 

男「まさかロッカーを殴り飛ばすとは…恐ろしい威力だ…」

 

へし折れたロッカーの裂け目を破り、大佐が姿を現した…!

 

のび太「ぐ…拳が…木もひっこ抜くほどの怪力を得る手袋なのに…!」

 

大佐「無駄な事だ、今の君じゃあ決して私を傷つける事は出来ない」

 

 

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のび太「ぬかせ!」

 

大佐「例えば、私がこうやって姿を暗ませると…!」

 

のび太「!?」

 

目の前にいた大佐が急に姿を消した

 

のび太〈透明マント…?いや、裏山の時点で処分した筈だ!これは別の道

 

具!〉

 

のび太は『警察犬つけ鼻』を付けて大佐のにおいを探った…

 

のび太「……逃がさないッ!」

 

背後のドアの方向を勢いよく殴りつけるのび太

 

拳はドアごと透明になった大佐を廊下に吹っ飛ばした

 

大佐「ぐっ…!その道具、においを追跡するのか!」

 

大佐「『甲羅』の効果が切れていれば殺られていた……君は、恐ろしい奴

 

だ…!」

 

のび太「『甲羅』の効果が切れる?」

 

――――さっきは『尻尾』がどうとか言っていた…

 

――――『尻尾』、『甲羅』、そして『透明』の能力…

 

のび太「そ、その道具はッ!!」

 

大佐「また会おう!!」

 

のび太「逃げられた…!こ、この能力…!」

 

のび太「オ、オエ~~ッ!!」

 

 

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部屋は強烈な悪臭に満たされた……

 

急いで窓を開けるも『警察犬つけ鼻』をつけている分

 

臭いは早々離れるものでは無かった

 

のび太「く…くっそ~よりによって『屁』をかまされるなんてッ!」

 

のび太〈完全に仕留め損ねた……恐ろしい敵だ!〉

 

のび太「オ、オエ~~ッ!!」

 

※動物型逃げ出し錠

 

それぞれの錠剤でトカゲの尻尾きり、亀の甲羅篭り、カメレオンのステル

 

 

スカンクのガスが使えるようになる

 

――――あまりに異質な事件

 

警察はおろか地元のマスコミまで駆けつけ

 

学校は慌しさを増し、収集がつかない事態へと陥った

 

その後、体育館にて緊急集会が開かれ

 

生徒の安全を考えた結果、一時間授業で切り上げ

 

学校は一足早く夏休みに突入することになった

 

モブ男「酷い目にあったよ…今も意識が戻らない子もいるみたいだよ」

 

出木杉「メディアも黙ってはいないだろうね…前代未聞だよ、テロといっ

 

てもいい」

 

スネ夫「しずちゃんどうしたの?元気ないね」

 

 

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しずか「え、ええ……〈のび太さん…どこ行ったのかしら〉」

 

のび太「体に染み付いたヘンな臭いが消えない……」

 

のび太「クラスメイトには勝手に重要参考人だと決め付けられ警察に追っ

 

かけられるし…」

 

のび太「今日は人生最悪だよもう!」

 

のび太「考えたら帰る家も無いじゃあないか!」

 

のび太「どこか人気の無い場所を探さなきゃいけない!」

 

のび太「ウワァめんどくさい!昼寝したいよーーー!」

 

ジャイアン「よう!のび太じゃねえか!無事だったか!」

 

ジキルハイドの効力も切れ、疲労もピークに達してる中

 

よりによって今、一番会いたくない男に声をかけられてしまった

 

のび太「や、やぁジャイアン……」

 

ジャイアン「む!なんだその嫌そうな顔は」

 

のび太「べ、別に嫌じゃあないよ!〈道具はあるけど苦手だなぁジャイア

 

ンは…〉」

 

ジャイアン「そうか、それならいいんだが」

 

ジャイアン「今朝のあの出来事、ドラえもんだろう?」

 

のび太「え?」

 

のび太にとって意外なことであった

 

しずちゃんでも疑うことのなかったのに

 

 

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あの『暴』若無人のジャイアンが一発でドラえもんの仕業だと見抜いたの

 

 

ジャイアン「俺は全てお見通しだぞのび太」

 

ジャイアン「お前らは俺に道具で報復することはあっても死人までは出さ

 

なかった」

 

ジャイアン「おおかた、ドラえもんのやつがおかしくなったんだろ?」

 

のび太「ジャイアン……」

 

ジャイアン「悩んでるなら俺たちにも話せよ!水くせぇじゃねぇか!」

 

ジャイアン「何も言ってないけどよ……スネ夫だってほんとはわかってる

 

んだ!だけど、疑いたくねぇし、知りてぇんだよ!」

 

ジャイアン「お前が一人抱え込んでちゃ何もわからねえだろうが!」

 

のび太はジャイアンに全て話した

 

今朝の日常離れした出来事…

 

ジャイアンは一言一句頷いて真剣に話を聞いていた

 

ジャイアン「そんな事があったのか…」

 

ジャイアン「尚更みんなに知らせて対策を練るべきだぞ!相手はあのドラ

 

えもんなんだ!」

 

のび太「ジャイアン…!」

 

ジャイアン「そうと決まれば行くぜのび太!スネ夫ん家にみんな集めっぞ

 

!」

 

 

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のび太「君という奴は……なんでこんな時には頼もしい奴なんだ…!」

 

ジャイアン「急ぐぞ!」

 

ガンっ!

 

のび太が背を向けた瞬間である

 

鈍い音が響き渡ると共に後頭部に激痛が走った

 

のび太「――――――っ!」

 

ジャイアン「…悪いなのび太」

 

よろめきながらも後ろに振り返るのび太

 

ジャイアンの右手には『黄金バット』が握られていた

 

ジャイアン「長い付き合いだ。こんな時、俺が何て言うかわかるだろ?」

 

のび太〈た…立てない……酷い眩暈だ…体が思うように動…か……〉

 

ジャイアン「こいつは振りさえすれば周りのもの何でも打っちまうバット

 

さ」

 

ジャイアンが『黄金バット』を思い切り振り上げる

 

ジャイアン「安心しろ、お前の背番号は永久欠番にとっておいてやる」

 

のび太〈ほ……本気だ…振り下ろすつもりだ……!避けられない…!〉

 

ジャイアン「あばよのび太!!」

 

のび太「っ………?」

 

のび太が恐る恐る見上げると

 

ジャイアンが片手を振り上げたまま必死にもがいていた

 

 

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ジャイアン「さ…さっきの奴が…!俺にこんなもんを貼り付けて命令しや

 

がった…」

 

のび太〈それは…『伍長』の階級ワッペン…!〉

 

ジャイアン「このバットでのび太を始末しろって言われてよ…!」

 

ジャイアン「いいか…!最初言ったのは…本心だからな……!」

 

ジャイアン「それが急にドス黒い命令が頭の中で膨れ上がって……!」

 

ジャイアン「…のび太…もう俺の意識は……何とか…してくれ…」

 

再び血走った眼に戻るジャイアン

 

のび太「こ…今度こそ殺されるかと思ったけど…ジャイアン…この時間は

 

無駄にはしないよ…!」

 

のび太はバッグからチューブを取り出し

 

中の液体を手に垂らしていく…

 

のび太「…いくら野球が上手くたって…『黄金バット』でもこいつは打ち

 

ようがないぞ…!」

 

※空気ピストルのもと

 

この液体を指に垂らせば指一本につき一発だけ空気の弾を放てるようにな

 

 

のび太「両手に塗った…!計10発だ!くらえ!」

 

――――のび太の射撃の腕は本物である

 

かつて空気ピストルで射撃大会を開いた時も一人勝ち残った程だ

 

 

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生まれる時代が違えば間違いなく名手として

 

遠い異国の地で名を刻んでいたであろう――――

 

スパァァン!!!

 

破裂音とともに衝撃波が大気を震わせた

 

のび太「―――……バカな…!全部…全部打ったのか!?」

 

のび太が撃つ寸前

 

ジャイアンは後ろに距離をとり

 

空気ピストルの弾を単発ずつ正確に往なしてみせた

 

のび太「野球が上手いとかってレベルじゃない…!」

 

のび太「今のは…何時どの指から発射されるか分かってないと絶対に出来

 

ないぞ…!」

 

のび太「だ…駄目だ…次に詰め寄られたら……!」

 

ジャイアンから距離を取る為

 

のび太はタケコプターを取り出しスイッチを押した

 

ジャイアン「うははは!道具に引きずられてやがんの!逃がすかよ!」

 

のび太「この眩暈と…感覚が戻らない事にはどうしようもない……!」

 

――――――…

 

片手に掴んだタケコプターの勢いだけでひたすら逃げ続けるも

 

とうとう住宅街の行き止まりに追い詰められてしまった…

 

ジャイアン「一々手こずらせやがって…だけどもう終わりだ…」

 

 

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のび太「これだ…今朝の…この感じ……!」

 

のび太「この追い詰められた状態を待ってたんだ…!」

 

のび太はジキルハイドを一錠飲みこんだ

 

のび太「よくよく考えてみれば逆転できる好機はいくらでもあるじゃない

 

…!」

 

ジャイアン「血迷ったかのび太!ギッタギタにしてやる!」

 

のび太「『コエカタマリン』…この液体を飲めば発した声が固体で出てく

 

る…」

 

のび太「振れば必ず当たる黄金バットでも…『音速』に反応できるかい…

 

?」

 

ジャイアン「俺様に打てない打球は無い!」

 

のび太「そうかい…!!」ゴク…!

 

コエカタマリンを飲み干すのび太……

 

のび太「………『ヨ』!!」

 

ジャイアン「!?」

 

のび太は背後の壁に向かって声を発し

 

跳ね返って来た個体の『ヨ』にしがみついた

 

ジャイアン「何かと思えば所詮のび太!逃げるだけかよ!」

 

ジャイアンものび太と同じく『ヨ』の文字にしがみついた

 

ジャイアン「へへへへ…この字が地に降りた瞬間がのび太の最後だ…!」

 

 

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のび太「そうそう…君にもこの字にしがみ付いて貰わなきゃ困る」

 

ジャイアン「何だと!?」

 

のび太「わざわざ掴みやすい文字にしたんだからね」

 

のび太「そしてこれでハッキリした事がある、今の君の反応速度は『異常

 

』だ」

 

ジャイアン「…!」

 

のび太「自分のタイミングで発した文字、僕は稲妻ソックスの足で飛び込

 

んでギリギリだった…」

 

のび太「それなのに君は跳ね返って来た文字を難なく掴んだ…」

 

ジャイアン「…お、俺にとっちゃ朝飯前よ」

 

のび太「さっきもおかしいと思ったよ…空気ピストルを撃つ寸前、君は僕

 

から距離を置いた」

 

のび太「距離をとるという事は『反射』ではなく僕に『反応』して打って

 

いる事になる」

 

ジャイアン「………」

 

のび太「その『眼』……何秒先が見えているんだい?」

 

ジャイアン「な、何のことだか…」

 

ジャイアンは明らかに焦りを見せていた

 

のび太「とぼけるんじゃあない。ドラえもんの道具にはそういうのがある

 

んだ」

 

 

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のび太「『イマニ目玉』だったっけな。ダイヤルを合わせた分だけ未来が

 

見える」

 

ジャイアン「のび太の癖に生意気だぞ!ここで叩き落してやろうか!」

 

ジャイアンはバットを振り上げて脅すも、のび太は微動だにしない

 

ジャイアン〈こ…こいつ…!ちっとも怯えてねぇ…!〉

 

のび太「僕が怖いのはジャイアンだ。ワッペンで操られた君じゃあない」

 

ジャイアン「のび太ァ!!」

 

のび太「どうやらあまり先の未来をみていないようだね」

 

ジャイアン「あ!?こんにゃろ!下に飛び降りる気だな!?」

 

のび太が飛び降りると同時にジャイアンも下に飛び降りた

 

ジャイアン「海!?」

 

ザパァアァァン!!

 

ジャイアン〈あ…あぶねぇ…息継ぎ間に合ったぜ…!〉

 

ジャイアン「もが……ゴバァ!?」

 

のび太〈今更気づいても手遅れだよ!〉

 

のび太「『ア』!!」

 

のび太の発した声の塊は

 

ジャイアンを陸地へと叩きつけた

 

ジャイアン「」ピクピク

 

のび太〈……いくら予知が出来てもここは海…水の中じゃあ素振りもまま

 

 

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ならない〉

 

のび太〈それに水中では地上より数倍早く音が伝わるんだ、今の君じゃ予

 

知出来ても絶対に打てない訳さ…〉

 

ジャイアン「うう…ここは…」

 

のび太「ジャイアン!気がついたかい!?」

 

ジャイアン「ああ…終わったんだな…」

 

のび太「ワッペンが上着に付いてたおかげで助かったよ。これを脱いでお

 

けばもう大丈夫」

 

ジャイアン「…面目ねぇ…」

 

のび太「気にしないでよ。『イマニ目玉』は壊れてたけど『黄金バット』

 

は…回収できた……」

 

ジャイアン「いいや!俺の気がおさまらねぇ!お前の気がすむまで俺を殴

 

……のび太?」

 

ジャイアン「寝てやがる……」

 

ジャイアン「……タケコプター、使わせてもらうぜ」

 

ピンポーン

 

スネ夫「はいはい今出ます〈予約した例のゲームが届いたのかな…〉」ガ

 

チャ

 

ジャイアン「よぉスネ夫」

 

スネ夫「ジャイアン!?それに…のび太なんか担いでどうしたんだい?」

 

 

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ジャイアン「わけは後で話す、ちょっと上がらせてもらうぜ」

 

スネ夫「え…ええどうぞどうぞ〈最新ゲームが取られちゃう…〉」

 

ジャイアン「……今日は何もとらねぇから安心しろ」

 

スネ夫「…嘘だ!絶対いつもみたいにとる!」

 

ジャイアン「!おい怪我人を介抱するだけだって…」

 

スネ夫「許さないぞ!いつもいつも!ジャイアンが悪いんだ!」

 

ジャイアン「うぉぉ!!」

 

のび太を背負った無防備のジャイアンに

 

スネ夫が殴りかかる

 

スネ夫「『チャンピオングローブ』!!これを付ければどんな相手にも負

 

けない!!」

 

ジャイアン「や…やろう…!既にワッペンを貼られてたか…!」

 

スネ夫「ジャイアンは剥がしたのかい?『軍曹』の僕が命令してやろうと

 

思ってたのに」

 

のび太「うっ…今の衝撃は…」

 

ジャイアン「のび太、起きたか…どうやらスネ夫も手遅れらしいぜ…!」

 

のび太「それよりジャイアン……脇腹を…殴られたのかい…?」

 

ジャイアン「こんなのどうってことないぜ…うぷっ!?」

 

強がるジャイアンだったが

 

不意打ちのダメージは相当なものだった

 

 

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のび太「くそう…僕は…立ち上がる余力も…ない…」

 

ジャイアン「俺のツケを払う時が来たんだ…!のび太はそこで寝てな」

 

のび太「む…無茶だ……チャンピオングローブ相手に…」

 

のび太「せめてこれを…あのグローブと互角に戦える道具……」

 

のび太は『あいこグローブ』をジャイアンに差し出した

 

ジャイアン「道具で勝つってのは気にいらないが…相手が使っているんじ

 

ゃしかたねぇ!」

 

スネ夫「ジャイアン!プライドを捨てるのかい!?君ほどの男が!」

 

ジャイアン「見損なってくれるなよ…!全部……お前等の為だぜ!」

 

咆哮とともに繰り出したジャイアンの拳は

 

チャンピオングローブのガードを弾きとばした

 

スネ夫「フリッカージャブか!………腐ってもジャイアン、喧嘩慣れして

 

やがる…でもね!」

 

ジャイアン「―――っ!」

 

ジャイアンがたて続けに繰り出した拳を捌き

 

チャンピオングローブはジャイアンの頬にめり込んだ

 

のび太「ク…クロスカウンター……!」

 

スネ夫「このグローブはあらゆる戦闘技術を体現出来るんだ!」

 

ジャイアン「くそっ…油断してたぜ…!」

 

のび太「ス…スネ夫のあの眼…!生体実験をしている科学者の様な…冷静

 

 

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と情熱が入り混じったあの眼は…!」

 

のび太「『観察』している…!今のダメージがどの程度か観察しているぞ

 

…!」

 

ジャイアン「スネ夫め……な…生意気なやつだ…その余裕をへし折ってや

 

るぜ!」

 

のび太「僕も…何とか他の道具で援護を…!」ゴソゴソ

 

?「ふむ…状況は芳しく無い様だ……」

 

玄関で倒れているのび太の背後から突如男が現れた

 

スネ夫「『曹長』!?まだいらしてたんですか!?」

 

ジャイアン「おめぇは…さっき俺にワッペンを貼りやがった奴…!」

 

曹長、と呼ばれた男がため息をつきながら応えた

 

曹長「失態ですね……どうやら服にワッペンを貼るのはいけなかった様で

 

…」

 

のび太〈スネ夫も服にワッペンが…!〉

 

曹長「いや~ボスにお叱りを受ける事になる…『准士官』殿が出木杉とい

 

う少年の服に貼ったと自慢していたのでつい…」

 

ジャイアン「なんだと!?出木杉も悪者になっちまったってのか!?」

 

曹長「それにしても野比氏は抜け目のない…か弱い娘には先に完全バリア

 

を施しているなんてね」

 

のび太「っ!…ジャイアン!ワッペンの付いたスネ夫の服を破けばこっち

 

 

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の勝ちだ!」

 

ジャイアン「わかってるけどよ…!それが出来ないからかきたくも無い汗

 

をかいてるんだぜ…!」

 

曹長「おっと…貴方にはここでゲームオーバーとなってもらいますよ」

 

チク…タク…チク…タク…

 

のび太「…え!?」

 

のび太は音のする方を見上げる…!

 

ジャイアンの首筋に貼られているシール…

 

あれは…!

 

曹長「『チクタクボンワッペン』…時限爆弾、とでも言っておきましょう

 

か」

 

ジャイアン「俺の首にッ!?」

 

曹長「それと…野比氏にも特別な物を貼っておきましたよ。君の『ずらし

 

んぼ』が厄介なんでね」

 

曹長が手首を指差し

 

侮蔑の微笑を含みながら言った

 

のび太「こ…この道具は!!!」

 

のび太の手首には一枚のバンドエイドが貼られていた…

 

このバンドエイド、『ドジバン』といって

 

貼られたら何をやろうとしても失敗に終わる

 

 

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のび太「い…いつの間に貼ったんだ!?」

 

曹長「ハハハ!爆発に巻き込まれるのは嫌なので外から観察しておきます

 

よ!」

 

曹長は望遠鏡を覗き込むと姿を消した

 

※手に取り望遠鏡

 

望遠鏡で覗き込んだ物を手で掴み、取り寄せられる。木など固定された物

 

を掴むと逆に向こうへ移動できる

 

のび太「望遠鏡で遠くから貼ったのか…この道具…はやく剥がさないと…

 

 

のび太「『ずらしんぼ』で…バンドエイドを地面にずらす!」

 

スネ夫「うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

ボキッ!

 

のび太「っ!?」

 

ジャイアンと交戦中のスネ夫がこちらに吹っ飛ばされたはずみで

 

握っていた『ずらすんぼ』が折れてしまった

 

曹長「フフフフフ…本来なら剛田氏の裏切りを上に報告しに行きたいとこ

 

ろですが…」

 

曹長「人が苦しんでいる様を見逃してしまうのは勿体ない…」

 

のび太「木の上で高みの見物…いつでも逃げれる準備はしてあるって事か

 

…」

 

 

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のび太〈マズいぞ…新しい道具を出したら…僕は必ず『失敗』する…!〉

 

相手はいつでも逃げ出せる位置から『手に取り望遠鏡』で様子を伺ってい

 

 

今、道具を取り出そうとすれば失敗に終わり

 

最悪、『取り寄せバッグ』が奪取されてしまうのだ

 

『あなただけのものガス』を吹きかけてあるとは言え『ドジバン』が付い

 

た今、安全だと保障できるものでは無かった…

 

のび太〈何とかしてこの状況を切り抜けなければ……!〉

 

曹長〈…おや?野比氏の手…道具を取り出す素振りは見せていない様でし

 

たが…?〉

 

曹長が現れる前…

 

スネ夫と対峙したジャイアンを援護するため

 

のび太はずらしんぼの他に、もうひとつ道具を取り出していた

 

のび太〈……しかし、二人はどうやって助ける…?ジャイアンの爆弾をど

 

うやって剥がせばいい?〉

 

のび太〈今の僕じゃあ……ジャイアンとスネ夫を助ける方法が思いつかな

 

い……!〉

 

曹長「何ですかね、その丸い粒は?」

 

のび太「ぐっ…!!」

 

再び部屋の中に戻ってきた曹長は

 

 

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のび太の手首を踏みながら不敵に微笑んだ…!

 

曹長「貴方は本当に抜け目の無い人だ」

 

曹長「この粒のような物を…どうするおつもりで…?」

 

のび太「……」

 

曹長「今の貴方は何をやっても失敗してしまうのですよ?」

 

のび太「……」

 

曹長「…黙ってないで何か答えたらどうですッ!!!」

 

のび太「ウガァアアアア!!!」

 

のび太〈ブーツのかかと…痛すぎる…!!〉

 

曹長「…よろしい、これは没収します」

 

のび太「……!!」

 

曹長「この状況、不自由なあなたが使うのでは無く骨川氏か剛田氏に使う

 

と見ました」

 

曹長「錠剤かと思いましたが…『肌に付着させる物』なら、今のあなたの

 

状態でも十分使用可能…」

 

曹長「『ドジバン』と同じく、付着させるとあまりメリットが無い類の物

 

なのでしょう?」

 

曹長がのび太に歩み寄る

 

のび太「何を…!!」

 

曹長「……貴方自身、その身をもって確かめさせてもらいましょうか!!

 

 

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のび太「さっきの『ずらしんぼ』は僕が握っていたから『失敗』したんだ

 

…!」

 

曹長「……?」

 

のび太「初歩的なミスだね…僕の行いは全て失敗するけど…君なら失敗し

 

ないだろう…!?」

 

のび太は自身の手首に貼ってあった『ドジバン』を剥がした

 

曹長「えッ?えッ?」

 

のび太「君が僕に付けたこの粒は『人間ラジコン』の受信機さ…!誰に付

 

けられても良い様に『自動操縦』にしてあったんだ…!」

 

のび太「自分の意思で動く事は出来ないが…こいつは『善』に全力を尽く

 

す行動をしてくれるからね……!」

 

のび太「僕の肉体が限界を超えても…君を地の果てまで追い詰めてやるぞ

 

…!」

 

曹長「は…速い!!」

 

望遠鏡を使い、部屋から瞬く間にいなくなった曹長だが

 

稲妻ソックスに加え『自動操縦』であるのび太は

 

寸分狂わず最短距離で曹長に詰め寄る…!

 

手に取り望遠鏡で移動できる距離では差を広げる事が困難であった

 

のび太〈体が…軋む…けど!逃がさないぞ!!〉

 

 

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曹長〈まずい…勝つ見込みがあるとすれば…先程の骨川氏を利用するしか

 

…!〉

 

のび太「…何だ…?来た道を戻っていくぞ…!」

 

曹長〈どんどん距離の差を縮めて来ているものの…全力疾走の野比氏も流

 

石に疲労を隠せない様で…〉

 

曹長「ふむ…肉体の疲労か……良い事を思いつきましたよ!!」

 

ーとある公園ー

 

のび太「…はぁ…はぁ……追いついた…」

 

曹長「上の者に道具を渡された時…私の戦略は『ドジバン』を貼って貴方

 

の自爆を誘うしか道が残されていませんでした」

 

のび太「……?」

 

曹長「つまり『ドジバン』を看破された時点で貴方を倒す術が無くなった

 

わけです」

 

曹長「ですが…その道具を攻略する際、貴方にはひとつの『弱点』が生ま

 

れた…!」

 

曹長「それが……これですッ!!」

 

のび太「……!!」

 

曹長は懐から瓶を取り出し、飲んでみせた

 

のび太「今のは…『トロリン』ッ!?」

 

曹長「御名答、私の体はこれで『液体』になった。自動操縦の貴方では私

 

 

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を倒す事は不可能…!」

 

のび太「……それなら何か道具で君を『固体』に戻せば…うぉぉっ!!」

 

ドゴォン!

 

人間リモコンはのび太の意思とは裏腹に

 

液体となった曹長を殴りつけるように体を操った

 

のび太「無駄だ!畜生!これじゃあダメージは無いんだよっ!」

 

曹長「ハハハハハ!道具に何を言っても無駄!早く疲弊しきって命乞いを

 

する様を見てみたいものです!」

 

のび太の必死の訴えも空しく、水溜りごと地を抉る音が

 

何度も公園に響き渡った…

 

のび太「はぁ…はぁ………こ、今度は何だ!?足が勝手にッ!?」

 

曹長「おや?今なら何らかの道具を使えば私を倒せる絶好の機会だという

 

のに…」

 

のび太の足は水溜りとなった曹長から

 

どんどん離れていく…!

 

のび太「バカなッ!?『人間リモコン』!逃げるつもりなのかッ!?僕の

 

意思を汲んではくれないのか!?」

 

のび太〈いや…人間リモコンの行動は『善』だ…つまりこの目の前の敵を

 

倒す事より大事な用が…〉

 

のび太「あるわけ無いだろうッ!?今奴を倒さずに何時倒すってんだッ!

 

 

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!」

 

曹長「長距離走ご苦労様、とでも言っておきましょうか……アハハハハハ

 

!」

 

のび太〈今の僕じゃあとてもこの状況を突破できる気がしない……!悔し

 

いが…完敗だ…!〉

 

今朝からの連戦、度重なる疲労、そして敗走…

 

肉体を酷使し続け、のび太の心身は既にボロボロであった

 

のび太〈僕は……どこへ行くのだろう……このまま…死ぬのだろうか…〉

 

人間リモコンによって操られたのび太は歩みを止める

 

辿り着いたのは一軒のアイスクリーム屋

 

客、というより近所の子供達に泣きつかれ

 

店主が困った様な顔をしている…

 

のび太は操られるがまま、持っていた500円玉を差し出すと

 

子供達の顔に笑顔が戻った

 

店主「いやー助かった!こっちも奢りたい気持ちはあれど…一応商売なん

 

でねぇ」

 

のび太「子供を甘やかしすぎるのも、良くないですもんね…」

 

店主「まぁそういう事だ。へへへ、ちょっと待ってな…」

 

店主はのび太に

 

コーラフロートが入ったジョッキを渡した

 

 

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この炎天下、今朝から何も口にしていないのび太にとって

 

これ以上無い施しであったが…

 

人間リモコンに操られるがまま貪りつくも、内心は躊躇していた

 

明らかにお釣りの量を超えていたからだ

 

のび太「あんまり子供を甘やかすなって今言ってた所じゃ…」

 

店主「情けは巡り巡って自分に返ってくるってのも教育上大切な事だぞ、

 

少年!」

 

ー30分後ー

 

曹長「流石は『自動操縦』、こうもあっさり見つかってしまいましたか…

 

…」

 

のび太「何処へ着くかと思ったら……また君か……」

 

曹長「まさか懲りずに私の元へ来るとは……単純な機械に頼ってしまいま

 

したね」

 

のび太「ああ……それならもうどうでもいいんだ……」

 

曹長「とうとう諦めましたか……どちらにせよ、その受信機が付いている

 

限りあなたは何も出来ないでしょうからね」

 

のび太「二人を助けられなかったのが何より残念だよ……」

 

曹長「では大人しく貴方がボスから奪った道具を返してもらいましょうか

 

 

のび太「何を言っているんだ?」

 

 

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曹長「往生際の悪い…ッ!」

 

曹長「今自身で何と言いましたッ!?勝負などどうでもいいと仰ったでし

 

ょう!」

 

のび太「どうでもいいって言ったのは…この勝負の決着がついたからさ」

 

曹長「!?」

 

曹長はのび太の発言にたじろいだ

 

それはのび太の顔付きがさっきまでの疲弊したものでは無く

 

清々しい爽やかな顔であったからに他ならない

 

曹長〈馬鹿な…ハッタリに決まっている…!〉

 

のび太「もう一度言う。勝負は終わりだよ」

 

のび太「君は僕の不意打ちに身構えてずっとその姿で隠れていたのかい?

 

 

曹長「……それが、どうしたと言うのです…」

 

のび太「僕はね、君がそうやって息を潜めている間『休憩』していたんだ

 

 

曹長「……ずいぶんなめられたものですね、お友達が命の危険にさらされ

 

ているというのに」

 

のび太「いいや、君が言ったんだ『僕を倒す術が無い』と」

 

のび太「だからお言葉に甘えて休憩させてもらったよ。君は僕から逃げる

 

事しか出来ないからね」

 

 

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曹長「ほう、しかし再び私を見つけたところで殴る術は無く……貴方の行

 

動も徒労に終わると思いますが…?」

 

曹長「さぁ、もうひと運動してもらいましょうか!!」

 

のび太「もちろんそうさせてもらいたいのは山々なんだけど…」

 

曹長「………どうした、何故動かない」

 

のび太「この『人間リモコン』…君を殴らせようとしないんだよ。どうい

 

う事かわかるかい?」

 

のび太「君を『脅威』だと認識しないんだ。今は他の人に助けを求められ

 

るまでじっと待っている感じだ」

 

曹長〈このガキ…!〉

 

今までの落ち着いた態度から打って変わり

 

曹長が口調を荒らげる…!

 

曹長「まだ『トロリン』の効果は続いているんだ!さっさと負けを認めた

 

らどうだ!!」

 

のび太「それだ……!」

 

曹長「……!?」

 

のび太「君のその『トロリン』がいけない……」

 

曹長「聞き分けの悪い……!!」

 

のび太「さっき確認したんだけど今日が何月何日で……今、何時か知って

 

いるかい?」

 

 

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曹長「……?」

 

7月13日の午後2時…

 

真夏の兆し、プール開き真っ盛りの時期である

 

のび太「最近授業で耳にした知識なんだけど、人間の体の半分以上は『水

 

分』で出来ているらしいね」

 

のび太「この、日差しが照りつける中、道路の温度も相当なものだ、君は

 

その上で長い時間水溜りになっていた」

 

のび太「さっき休憩しながら思ったよ、君の体の水分はもう大分無くなっ

 

ているんじゃないかってね」

 

曹長「ばかばかしい……生命維持が困難な程に私の体内の水分が奪われた

 

と?ありえないな!」

 

のび太「もし『自覚』が無かったとしたら……?」

 

曹長「………!」

 

液体となった体に喉が『渇く』という感覚が果たしてあるのだろうか…

 

そしてのび太を操る人間リモコンの自動操縦が作動していない現実

 

曹長は自身の顔が不安と恐怖で引きつっていくのがわかった

 

曹長「く…くそ…そんな、そんな馬鹿な事があるはず…無い!」

 

のび太「……実体化するならどこか水のある場所をお勧めするよ…」

 

曹長「そんなハズは無ァい!!!」

 

のび太「駄目だ!こっちに来たら…!」

 

 

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曹長「うわぁぁぁぁ!!?」

 

曹長の体がみるみる蒸発していく…!

 

曹長「これはッ!?マンホールッ!!?熱いッ!!!か、体がァ!!!」

 

曹長「アアアアァァァァ……」シュウゥゥゥ…

 

のび太「……お互い自分の道具に負けるなんて…皮肉なもんだ」

 

しかし敵を倒したところでのび太は『人間リモコン』に操られるがまま…

 

先ほどの様な恩を受ける事が今後も無ければ餓死するまで彷徨う事になる

 

……

 

のび太は再びどこかに向かい走り出した…

 

のび太〈稲妻ソックスで町を駆け抜けるのは気持ちがいいなぁ…〉

 

のび太〈けれど道具を使うだけで……自分から何かしようとした覚えがあ

 

んまり無いな…………〉

 

のび太〈ドラえもんも愛想を付かすわけだよ……〉

 

のび太〈あれは………見覚えのある人影だ……あの下品なヘアースタイル

 

…〉

 

のび太〈スネ夫みたいな髪だ………スネ夫?〉

 

のび太「……スネ夫!?スネ夫なのか!?ジャイアンは、ジャイアンはど

 

こだ!?」

 

のび太の目の前には

 

泣き崩れたスネ夫がいた

 

 

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スネ夫「あああ~のび太~…ジャイアンを…ジャイアンを助けてくれよぉ

 

~」

 

のび太「落ち着いて!…それより君、スネ夫なのか!?元に戻ったんだね

 

!?」

 

スネ夫「ジャイアンが身を徹して爆発から守ってくれたんだ……」

 

スネ夫「僕は上着が破れただけで済んだけど…ジャイアンがぁ…うわああ

 

あん!」

 

のび太「僕の額に付いたこの受信機を…外してくれないか?」

 

スネ夫「そんな物外してどうするんだ……?」

 

のび太「ジャイアンを……助ける!!」

 

スネ夫「ほ、本当かい!?ジャイアンは助かるのかい!?今外すよ!」プ

 

チッ!

 

のび太「良し!……腕さえ動かせれば!」

 

のび太はとりよせバッグからボロボロのジャイアンを取り寄せ

 

タイム風呂敷を被せた

 

ジャイアンの傷口がみるみる治っていく…

 

ジャイアン「……のび太!スネ夫!無事か!」

 

スネ夫「それはこっちの台詞だよ!」

 

ジャイアン「おお心の友よ!!」がしっ!

 

のび太「ちょ、ジャイアン…痛いってば…」

 

 

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―――敵も諦めたのか

 

その後、ドラえもんの部下達の猛襲が続くことは無かった。

 

今朝からの怒涛の追撃をとうとう退けた事を実感した三人は

 

安堵の胸を撫で下ろすのであった。

 

ーとある家ー

 

ドラえもん「誰だい?」

 

中将「私ですけど……」

 

ドラえもん「ああ…どうしたんだい中将?」

 

中将「ターゲットが『大佐』と一戦交えた模様。それと『兵長』と『曹長

 

』から報告がありません、恐らく…」

 

ドラえもん〈一日で二人もやられたか……のび太め、なかなかやるな……

 

 

ドラえもん「そうかい。じゃあ次の強襲日を決めておくよ」

 

中将「……」

 

ドラえもん「何か言いたげな顔だね…?」

 

中将「あの……ボス、お言葉ですが…」

 

ドラえもん「何だい?」

 

中将「葬るのなら今すぐに全戦力を向けて潰すべきです。」

 

ドラえもん「ふむ…」

 

中将「ターゲットの疲労も相当蓄積されているはず。今なら我々で…」

 

 

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ドラえもん「う~ん…」

 

中将「全戦力とは言わずとも、間髪を入れず戦力を投入し続けるべきでは

 

?」

 

ドラえもん「今すぐってわけにもいかないんだなぁこれが…」

 

中将「?」

 

ドラえもん「『階級ワッペン』はいくつあるか知っているかい?」

 

大将〈ドラえもん〉

 

中将、少将

 

大佐〈校内放送の男〉

 

中佐、少佐

 

大尉、中尉、少尉

 

准士官

 

曹長〈手に取り望遠鏡の男〉

 

軍曹〈スネオ〉

 

伍長〈ジャイアン〉

 

兵長〈そっくりクレヨンの少年〉

 

上等兵、一等兵、二等兵

 

中将「17…ですね」

 

ドラえもん「僕は准士官より低い階級にはワッペンを貼っていない。残り

 

の人選は全て部下に任せている。」

 

 

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ドラえもん「それと道具の編成も……何名かは僕が選んだけど殆ど君と准

 

士官に任せてる。」

 

中将「私と面識の無い部下も数名おりますが……よろしいのでしょうか?

 

 

ドラえもん「別にかまわないよ……あまりこういう言い方はしたくは無い

 

が、下の階級の者は『捨て駒』なんだ」

 

ドラえもん「僕の部下がちゃんと仕事をし終えていたなら…」

 

ドラえもん「君達、上の階級の者と戦うまでに、のび太は実に10回近い戦

 

闘をこなすことになるだろうね」

 

中将「実戦による成長度合いは未知数です。あまり経験を積ませない方が

 

よろしいのでは…?」

 

ドラえもん「いいや逆だよ。戦わせれば戦わせるほどこちらの勝率が上が

 

ると言っていい」

 

中将「?」

 

ドラえもん「五割の勝率と十割に近い勝率……誰だって後者を選ぶよね?

 

 

中将「……この時間差襲撃の意図は疲労させるのでは無く、ターゲットが

 

持ついくつかの凶悪な道具を消耗させる事にあると……?」

 

ドラえもん「その通りッ!忌々しい奴を墜とすには『早期決着』ではなく

 

、ある種の『兵糧攻め』にも似た『持久戦』ッ!」

 

 

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ドラえもん「というわけで、戦いの日までしばらく暇だろう?バカンスで

 

も楽しんできてよ」

 

中将「…失礼します」

 

―――しばらくの間、のび太達を襲ってくる者は現れず拮抗状態が続く…

 

10日目…

 

痺れを切らしたのはのび太の方であった

 

タイムマシンが何時、直されるかわからない現状…

 

早期決着を迎えたい彼にとって、一刻の猶予も残されていないと言えよう

 

7月23日…

 

この日、ドラえもんを討つべく、のび太はひとつの『賭け』に出る…

 

――7月23日、朝――――――…

 

ースネオ宅ー

 

スネ夫「今日だけ単独行動するだって?」

 

のび太「悪いけど……」

 

スネ夫「ぼ…僕はいいさ…でもジャイアンが許してくれるかどうか…」

 

ピンポーーン

 

のび太「噂をすれば…」

 

ジャイアン「おーーい!今日も作戦会議するぞーーっ!」

 

のび太「ジャイアンには上手く言っておいてくれよ!『通り抜けフープ』

 

ッ!」

 

 

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スネ夫「ああっおい!……困ったなぁ、あれからすっかりお節介だからな

 

ジャイアンの奴…どう誤魔化そうか…」

 

ー街ー

 

のび太「しかし本当に何も無いなぁ……」

 

のび太「出木杉は留守だし、しずちゃんも特に変わった様子は無い……」

 

のび太「今日こそあれを使うか……だけど、チャンスは一回だ……」

 

のび太「今すぐに使うべきか……」

 

「ふぇぇぇん……ふぇぇん……」

 

のび太「……何だ…?」

 

のび太が悩みながら朝の街を歩いていると

 

シャッターの前で泣いている女の子を見つけた

 

のび太「どうしたんだい?」

 

幼女「……ふぇぇ…?」

 

のび太〈……何だか……とてつもない誤解をされそうだなぁ……〉

 

幼女「お金が…お金が足りないよぅ……」

 

のび太「うーん困ったな……いくらだい?」

 

幼女「ごじゅーえん……」

 

幼女「ふぇぇん……ふぇぇん……」

 

のび太〈…50円か……ま、いっか〉

 

のび太「それくらいなら……」

 

 

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のび太は女の子に50円玉をさしだした

 

幼女「ふぇぇ…ありがとぅ…」

 

のび太「それにしても何でこんなとこにいるんだい?お母さんは?」

 

幼女「ふぇぇ…いないよぅ……」

 

のび太「迷子か…まいったなぁ…」

 

幼女「ふぇぇ…迷子だよぉ……」

 

のび太「そっか………」

 

のび太〈やっぱり……とてつもない誤解をされそうだなぁ……離れよう…

 

…〉

 

のび太「君も一人でこんなとこにいちゃ危ないよ、お店まだシャッター閉

 

まってるし…」

 

幼女「ふぇぇ…危ないよぅ……」

 

のび太〈しょうがない…あそこの雑貨屋のおばちゃんにでも子守を頼んで

 

…〉

 

幼女「――…今に連なる総ての始まりと終焉を司るデウスの腕≪かいな≫

 

から 我を安息の地へと誘い給え」

 

のび太「え?」

 

幼女「ガイアの潮流よ、我が身を纏い 虚大なるスピラを成さん」

 

ドパァ―――z___ン☆

 

のび太「――――――ッ!?」

 

 

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少女が何かを唱え終えると

 

足元からまばゆい光が溢れ出し

 

のび太達をあっという間に包み込んだ――――――…

 

のび太「――――………何だったんだ今のは……?」

 

ガラガラガラガラ…

 

店員「へい!いらっしゃい!」

 

のび太「あ…………」

 

幼女「ふぇぇ…おみせ開いたよぅ……」テクテク

 

のび太「…………」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・

 

のび太〈どういうことだ………!?〉

 

のび太〈女の子が…ヘンなお経を唱えだしたかと思ったら…〉

 

のび太〈お店が開店したッ!!〉

 

のび太「……どうかしてるな、僕は…!」

 

のび太「……ごくっ」

 

ジキルハイドを手の平いっぱいに取り出し

 

それを全て口に含むのび太

 

のび太「……普通に考えて……これはつまり『敵襲』じゃあないか。しか

 

し…」

 

のび太「ドラえもんの奴、あんな小さい子までも傘下においたのか!?」

 

 

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幼女「ふぇぇ…おみせの人がおまけしてくれたよぅ……」

 

のび太「クレープ買いに来たのかい?」

 

幼女「ふぇぇ…おにぃちゃん…一緒にたべよぅ……」

 

のび太「えー…うん…〈調子狂うなぁ…本当にドラえもんの部下なんだろ

 

うか……〉」

 

のび太〈そもそも階級ワッペンが見当たらないぞ…こんな子が、戦いに…

 

…?〉

 

幼女「ふぇぇ…ごちそうさまぁ……」

 

のび太「はやいよ、もっと噛んで食べないと…って、一箇所かじっただけ

 

じゃない」

 

幼女「ふぇぇ…これじゃないよぅ……」

 

のび太「?」

 

幼女「かすたーどでずねーろーるが食べたいよぅ……」

 

カスタードデズネーロール

 

それは日本最大級の遊園地「デズネーランド」にのみ販売されている

 

大人気クレープである

 

魔女によってお菓子の屋敷に招待された貴族の子供達が赴くままにお菓子

 

を食していく内に

 

自分達がクレープの生地にされてしまうという何とも後味の悪い原作があ

 

るのだが

 

 

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その 他作品と一線を画すホラーな作品のクレープが元になっている事で

 

話題を呼び

 

今日に至る……

 

のび太「また贅沢言うなぁ…残念だけどここじゃあそんな高価なクレープ

 

……」

 

女の子がのび太の手を握った

 

のび太「え…ちょっ……」

 

幼女「――…久遠の昔より旅人はかく語りき、悠久の大河を経て聖域(こ

 

こ)に 我にその大いなる“運命石の扉”を紐解け」

 

のび太「!?」

 

ドパァ―――z___ン☆

 

ガヤガヤワイワイ…

 

のび太「ここは――――――ッ!?」

 

幼女「ふぇぇ…着いたよぅ……」

 

のび太が空を仰ぐと

 

巨大な観覧車が眼前を覆っていた

 

のび太「デズネーランド……!」

 

のび太〈――――馬鹿なッ!!まるで……どこでもドアじゃないかッ!!

 

 

のび太〈だけど道具を使った様子はないぞ!?〉

 

 

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幼女「ふぇぇ…おにぃちゃんの分だよぅ……」

 

のび太「ああ……ありがと……え?」

 

幼女「ふぇぇ…いただきまぁす……」はむっ…

 

のび太「代金はどうしたの?」

 

幼女「ふぇぇ…あついよぅ……」

 

のび太「…そりゃあ出来たてだから熱いよ」

 

幼女「――…混沌の渓谷より吹きし死の風よ、大地の息吹を天に還し 宵

 

闇を纏いし深き朱を砕け」

 

ドパァ―――z___ン☆

 

突如、デズネーランドは猛吹雪に見舞われた…!

 

握りこぶし程の雪の塊や雹が辺り一面に降り注いでいく

 

四方から人々の逃げ惑う悲鳴が次々と飛び交った

 

のび太「――――う…」

 

幼女「ふぇぇ…くれーぷおいしいよぅ……」

 

のび太「やはり…君なのか…さっきからこの異常な…現象を起こしている

 

のは……」

 

幼女「ふぇぇ…みんなさむそうだよぅ……」

 

のび太「きみ…今すぐ……この……吹雪を………」

 

幼女「ふぇっwwwwふぇぇwwwwwwwwwww」

 

のび太「!?」

 

 

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幼女「ふぇぇwwwwwみんな倒れていくよぅwwwwwwwwwwww

 

wwww」

 

のび太「………『悪意』の無い…無垢な悪ほど…邪悪なものはない…ッ!

 

 

のび太は女の子のフードを掴み上げた

 

幼女「…ふぇぇ…?」

 

のび太「戻すんだッ!全て元通りにッ!!」

 

幼女「ふぇぇ……おにぃちゃんこわいよぅ…」

 

のび太「元に戻すんだよッ!出来るだろうッ!?」

 

幼女「――ガイアの潮流よ、我が身を纏い 虚大なるスピラを成さん」

 

ドパァ―――z___ン☆

 

――――――…

 

のび太「――――…時が戻った……!」

 

閉じているシャッターの前で

 

少女がぼんやりと両手を見つめていた

 

幼女「ふぇぇ…くれーぷ無くなっちゃったよぅ………」

 

のび太「こんなぶっ飛んだ超常現象を起こせる道具があるとすれば……!

 

 

のび太「自分で魔法を作って使える道具…『魔法事典』だけだ!!」

 

※魔法事典

 

 

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この辞典に書き込むことで、魔法が使えるようになる

 

『魔法事典』は魔法が自由に作れる反面

 

デメリットがあった

 

それは、持ち主以外の者が偶然その呪文を唱えても、魔法が発現するとい

 

う点である

 

そして使用者が作った呪文を『逆から唱える』ことで、使用者の魔法の効

 

力が消えてしまう

 

のび太「しかしあんな長い詠唱……デメリットどころか最強じゃあないか

 

……!」

 

幼女「ふぇぇ…?」

 

のび太「君、どこでこの道具を?……それに、シールか何か貼られなかっ

 

たかい?」

 

幼女「ふぇぇ…あしたもらったよぅ…まほうがつかいたぃっていったら…

 

もらったよぅ…」

 

のび太「は…?」

 

幼女「あした、みどりのしーるをはられて…あおいたぬきさんに本をもら

 

って…しーるもはがしてもらったよぅ…」

 

のび太〈…あ、頭がパニックで割れそうだ……時が戻ったからジキルハイ

 

ドを飲んでいない状態なのか僕は…〉

 

のび太は必死に少女の言葉を整理した

 

 

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のび太「明日この子は緑のシール、つまり階級ワッペンを貼られる……明

 

日って事は未来から来たのか?」

 

のび太「そして青い狸さん、即ちドラえもんに『魔法事典』をもらう…」

 

のび太〈『魔法事典』…僕はすっかり忘れていた。目の前で数回魔法を使

 

われてやっと見当がついたくらいだ……〉

 

のび太「その後、ドラえもんはわざわざ貼ったワッペンを剥がした……」

 

のび太「……緑の階級ワッペンは確か『一等兵』だったな……」

 

のび太〈……う~ん限界だ……知恵熱で死んじゃう………〉

 

のび太は一日分あろうかという程の量のジキルハイドを目一杯口に含んだ

 

のび太「明日の事を含むんだ。状況は理解できなくてもいい。それでもい

 

くつかのケースを想定しておかなければ……」

 

のび太「僕は今日ドラえもんを探し当てるつもりだった…仮説としては、

 

この後、僕はドラえもんに『魔法事典』で殺されて…」

 

のび太「翌日、入れ違いで部下が引き込んだこの子に、面白半分で道具を

 

渡してみたら…この子が魔法でワッペンを剥がして過去に遡った……?」

 

のび太「そして今、僕の目の前にいる……辻褄を合わせるとしたらこんな

 

ところかな。」

 

のび太は取り寄せバッグを使い

 

少女から『魔法事典』を取り上げた

 

幼女「…ふぇぇ…?」

 

 

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のび太「悪いけど、この『魔法事典』、没収させてもらうよ。これは危険

 

すぎる」

 

幼女「………」

 

のび太「じゃあね、ママのところに帰りなよ」

 

幼女「…ふぇぇん……かぇしてよぅ……」

 

のび太「駄目だ、もう一度言うけどこれはとても危ない道具で…」

 

幼女「――…混沌の渓谷より吹きし死の風よ、大地の息吹を天に還し 宵

 

闇を纏いし深き朱を砕け」

 

のび太「!」

 

ドパァ―――z___ン☆

 

幼女「ふぇぇwwwwふぇぇwwwwwwwwwwwwwww」

 

快晴だった天気は一変し

 

街に猛吹雪が吹き荒れる…!

 

幼女「ふぇぇwwwつめたいよぅwwwwwwwww」

 

ビュゴオオオオオオオオオ……

 

のび太「…やっぱり君なんかに、こんな危ない物を持たせるわけにはいか

 

ない…」

 

幼女「ふぇ…」

 

のび太〈この『オールシーズンバッジ』があれば、猛吹雪だろうと僕の周

 

り数メートルには影響がない…!〉

 

 

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幼女「……………」

 

幼女「――…今に連なる総ての始まりと終焉を司るデウスの腕≪かいな≫

 

から 我を安息の地へと誘い給え」

 

幼女「ガイアの潮流よ、我が身を纏い 虚大なるスピラを成さん」

 

ドパァ―――z___ン☆

 

ビュゴオオオオオオオオオ……

 

幼女「ふぇぇwwwwwゆきだるまだよぅwwwwwwwwwwwww」

 

のび太〈時を数時間先へ進めたのか…!!積もって前が見えないぞ……!

 

 

のび太「けど…僕には『スーパー手袋』の怪力があるんだ!こんな雪くら

 

い掻き分けて…!」

 

ゴバァァァッ!

 

幼女「ふぇ…」

 

のび太〈このままでは近隣の被害が酷い…僕も魔法を作ってこの現状を…

 

…〉

 

幼女「――…虚ろなる闇に生まれしものよ、非情の腕≪かいな≫をもって

 

忘却の海に沈み逝く記憶を縛れ」

 

ドパァ―――z___ン☆

 

のび太「事典が…ッ!開かないッ!!」

 

幼女「ふぇぇwwwwぁかないよぅwwwwwwwwwwwwwふぇぇw

 

 

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wwぁかないよぅwwwwwwwwwwwww」

 

のび太「こいつ…ッ!」

 

幼女「――…炮烙の乙女よ、大いなる意思によって刻印を定め 有りて罪

 

多き回廊を導かん」

 

ドパァ―――z___ン☆

 

のび太「事典がひとりでに…あの子の手に戻っていく…ッ!」

 

幼女「ふぇぇ……返してもらったよぅ……つぎのまほぅでおしまぃだよぅ

 

……」

 

のび太〈あまり深く考えていない……この子は『直感』で次の手を打って

 

くる……!〉

 

のび太〈子供の思考で考えるんだ…!目の前に敵がいたら…どうする…!

 

?〉

 

目の前に障害があれば

 

誰だって取り除こうとするだろう…

 

次の魔法は恐らく――――――『死』

 

のび太「参ったな…!邪魔なオモチャを片付ける様に…この子は僕を排除

 

するだろう…」

 

のび太「問題はその『内容』だ……『外傷的なもの』なのか……『全く傷

 

つけずに対象を死に至らしめる』ものなのか……」

 

のび太〈生き残れる望みはひとつ……!しかし、それを決めるのはあの子

 

 

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だ……!〉

 

のび太〈――――……だけどもし、その選択権を『僕が』獲ることが出来

 

る道具があるとしたら…?〉

 

―――――10日前、裏山に着いた時の事である

 

ドラえもんに対しのび太は、あるひとつの罠を仕掛けていた

 

その罠というのは

 

一度作動してしまえばドラえもんの位置が手に取るようにわかる、という

 

ものである

 

しかし、ドラえもんがその罠に引っかかるのかは全く保障できるものでは

 

無く

 

罠に引っかかったとしても、何時どのタイミングで引っかかるのかも不明

 

である

 

そんな博打にも似た罠を

 

強制的に発動させる方法がひとつだけあった……

 

のび太「罠の効果時間は引っかかってから…誤差を含めれば『1時間前後

 

』…!」

 

のび太「この子の一撃必殺の魔法を避け…ドラえもんを罠にはめる…!」

 

のび太「……両方叶ってくれる事を祈るばかりだ…!!」

 

のび太は錠剤のようなものを二つ取り出し

 

それらを飲み込んだ…!

 

 

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幼女「――…地に堕とし宿命と共に灰燼と化しん 神苑の淵へと還る大海

 

に至らんとする流れを渡れ」

 

ドパァ―――z___ン☆

 

ドクンッ!!

 

のび太〈……………〉

 

のび太「」どさっ

 

幼女「ふぇぇ……おにぃちゃんうごかないよぅ………」

 

幼女「ふぇぇ……おきてよぅ………」ツンツン

 

のび太「」

 

幼女「ふぇ…」

 

のび太「」

 

幼女「ふぇぇ……しんでるよぅ………」

 

のび太「」

 

幼女「ふぇっwwwwwwwwwふぇぇwwwwwwwwwwwwwww

 

w」

 

のび太「」

 

幼女「ふぇっwwwwしんでるよぅwwwwwwwwwwwふぇぇwww

 

wwwwしんでるよぅwwwwwwwwwwwwwwww」

 

幼女「ふぇぇwwwwふぇぇwwwwwwwwwwwww」

 

のび太「やぁ」

 

 

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幼女「ふぇぇwwwwwwwふぇ…」

 

少女が後ろに振り返ると

 

そこには三角頭巾を被った、足の無いのび太が……

 

┣¨・・・┣¨・・・┣¨・・・┣¨・・・┣¨・・・┣¨・・・┣¨・

 

・・┣¨・・・

 

幼女「ふぇ………ふぇぇ………」

 

のび太「………バアっ!!」

 

幼女「ふぇぇぇん………こわいよぅ…………」トテトテトテトテ……

 

のび太「……どっかいっちゃった……やっぱり子供だ……」

 

のび太は幽体から自分の肉体に戻ると

 

少女の落としていった魔法事典を拾い上げた

 

のび太「まず、この吹雪を止めなければ……この事典、開かない様だし燃

 

やしてしまうか。」

 

のび太「『とりよせバッグ』でライターを取り出して、と………」シュボ

 

ォォ…

 

のび太が魔法事典を燃やすと

 

それまで吹き荒れていた猛吹雪が嘘の様に治まった…

 

分厚い雲の切れ目から、夏の日差しが差し込む…!

 

のび太「太陽の位置……ひょっとすると……もう既に昼を過ぎているのか

 

……?」

 

 

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―――少女の魔法が放たれる直前、のび太が服用した二つの錠剤のような

 

物…

 

そのひとつが『うらめしドロップ』である

 

これを飲み、眠りにつくと一時的に魂が体を離れ幽霊になることができる

 

のび太はうらめしドロップを服用し

 

魂を肉体から離すことで死の魔法を避けたのである

 

※ちなみに『うらめしドロップ』は服用後、眠らないと効果が発動しない

 

 

 のび太は0.93秒で眠りにつくことが可能

 

……だが、少女の使う魔法が『全く傷つけずに対象を死に至らしめる』魔

 

法でなければ

 

この作戦は成功しなかったと言える

 

もし魔法が『外傷的なもの』であれば

 

肉体はズタボロにされ、幽体から戻った時点でのび太は死んでいたであろ

 

 

のび太は何故そんな危険な賭けを実行に移せたのか…

 

その答えは 服用したもうひとつの道具にあった

 

のび太「今から三時間………僕は信じられないような幸運に見舞われる…

 

…!」

 

のび太「この『ツキの月』…最後の一粒が残ってただけでも幸運なくらい

 

 

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だ…!」

 

『ツキの月』を飲むと三時間だけ幸運を呼び寄せる…

 

つまり、のび太はこの道具を服用する事により先程の魔法を凌ぎ

 

尚且つ『運任せ』とも言える無謀な罠を強制的に発動させようと試みたの

 

である

 

のび太〈僕にとって幸運が訪れるとすれば『今日中にドラえもんとの決着

 

がつく事』、それだけは間違い無い筈!〉

 

のび太〈それでも『運』が向かないのなら仕方が無い…またみんなと作戦

 

を練り直すだけ……〉

 

時刻は午後3時を回ろうとしていた……―――

 

―――『ツキの月』を服用してから、待つこと約2時間…

 

半分諦めかけていたその時である…!

 

町で時間を潰していたのび太に緊迫した空気が纏わりついてきた…!

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

 

のび太〈ドラえもんの奴…とうとう罠に引っかかった!〉

 

のび太「あっちから感じるぞ…!この異様な感じは……間違いない!」

 

のび太は街の本道を抜け、住宅街へと駆け出す

 

道行く人の影が落ち 町が徐々に色を付け始める頃

 

街角から流れるラジオが時刻を告げた…

 

「ピッ…ピッ…ピッ…ポーン……」

 

 

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「―――さぁ17時を回りましたミュージックチャンネル。7月23日現在の

 

ヒットチャートをお送り致します…」

 

ー住宅街ー

 

のび太「――――――行き止まりッ!!?」

 

のび太〈参ったな…ここら辺の地理はあまり詳しくない…回り込んでる時

 

間は無いぞ……!〉

 

のび太〈ドラえもんは明日まで『魔法事典』を持っているんだ…『ツキの

 

月』の強運が味方をしているうちに対峙しないと…!〉

 

のび太「……回り道して時間を食うより……多少目立っても確実に近づい

 

た方がマシだ…!」

 

のび太はタケコプターを取り出し

 

空を進んだ…

 

のび太「あまり上昇するとかえって危険だな……屋根に隠れる様に進まな

 

ければ……!」

 

前方の屋根にのび太が足をつけようとしたその時――――――

 

突如、銃弾のようなものが、のび太の肩をかすめた…!!

 

のび太「うわっ!!こ、この攻撃はッ!!?」

 

飛行機の漏れたエンジンが引火していく様に

 

傷口から赤々しい血液が飛散し墜落していく

 

のび太〈下に……誰かいる……ッ!!〉

 

 

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下に居る男が再び目に見えぬ攻撃を繰り出す…!

 

のび太は思わぬ不意打ちに体勢を崩し尻餅をついた

 

のび太〈くそっ……こんな時に……ッ!!〉

 

大男「……そろそろのび太が来る頃だと思ってたぞ」

 

のび太が崩れた体勢から大男を見上げると

 

ジャケットに張られている『准士官』のワッペンが

 

夕日に照らされギラリと輝いていた

 

准士官「お前が今にボスの居場所を把握しようとしてるって『中将』が言

 

うんでな」

 

のび太「…ドラえもんのやつ…自分の位置が割れている事に気がついてな

 

いのか…」

 

准士官「そぉいう事よ。上がボスに連絡を取ろうと躍起になってる間、俺

 

達下っ端は道中見つけ次第足止め役ってわけだ」

 

のび太「大した統率力だよ…君達のボスはワッペン以外にも何か道具を使

 

って従えてさせているようだね…」

 

准士官「さぁ…どうだったかな…」

 

のび太〈この忠誠と統率……『桃太郎印のきび団子』を使っていてもおか

 

しくない……!〉

 

准士官「お前は中々の策士だと聞いてるが……まさか仲間を連れてくると

 

は…」

 

 

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のび太「仲間?」

 

のび太は後ろに振り返った

 

次の瞬間、ナイフのように鋭い衝撃波が胴体を貫き、のび太を壁に叩き付

 

けた!!

 

のび太「ガハッ!?」

 

准士官「おいおい……策士って情報は何かの間違いか?」

 

のび太〈き……気のせいか……後ろで気配がしたんだけど……!〉

 

のび太〈……い、いや……そんな事よりもだ………こいつのこの攻撃は…

 

…!〉

 

准士官は先端にスペースシャトルの付いたストローを咥えていた

 

※ロケットストロー

 

吹くと勢い良く空気を噴射する。下に向けて吹けば空を飛ぶことも可能

 

のび太「『ロケットストロー』?そんな……オモチャで攻撃を………!?

 

 

准士官「そう……こいつは本来なら空を飛んで遊ぶ為の道具さ……」

 

のび太〈……まるで……投げナイフだ……これ程の空気圧を飛ばすなんて

 

……!〉

 

准士官「そしてもうひとつのこれがッ……俺の真骨頂……!」バギッ

 

のび太「……!!」

 

准士官は素手でブロック塀を握り締め、粉々に砕いて見せた…!

 

 

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准士官「『強力スーパーパワーゲン』ってのをだいぶ前から5分置きに服

 

用してる。知ってるか?」

 

効果が現れるまでに30分かかるが

 

一粒飲むと力が2倍に、二粒飲むと力が4倍…と段々力が強くなっていく

 

道具である

 

のび太〈それで『肺活量』も強化されていたって事か…なら、こいつの腕

 

力は…!〉

 

准士官〈遠距離で動きを止めて……!近づいて仕留めるのが…俺の…ッ!

 

!〉

 

准士官〈必勝の……戦法ッ!!〉  ズガァァァァァンッ!!

 

倒れているのび太に対し

 

准士官がその鋼の鉄槌を振り下ろした…!!

 

のび太「……悪いけど君のような格下に手を焼いているほど暇じゃ無いん

 

だ……!!」

 

巨大なその拳はのび太の顔面を丸ごと覆っていた…!

 

しかし、自信の一撃を打ち込んでも崩れる事の無いのび太に対し

 

得体の知れない脅威を感じた准士官は警戒する様に腕を引っ込める……

 

振り下ろしたその拳からは水が滴っていた…!

 

准士官「……こいつッ!?体を『液体』にして今の攻撃を避けたのかッ!

 

?」

 

 

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のび太「『サンタイン』って道具さ……!!一粒飲めば体が『液体』にな

 

る…!」

 

准士官「…曹長のやつに渡した『トロリン』ってやつも確か似た能力を…

 

!」

 

のび太「あの道具、君が渡したのか…!」

 

准士官「俺や『中将』は道具の支給係だからな……」

 

のび太の頭の中に

 

相関図のようなものが浮かび上がってゆく……

 

10日前に戦った曹長の言動や行動から察するに

 

この組織は、部下が新たな人材を見つけワッペンを貼るシステム……

 

のび太〈ワッペンを貼られた後、道具を渡されそのまま戦いに向かう者も

 

いれば……ドラえもんの『桃太郎印のきび団子』で洗脳されてしまう者も

 

いるという事か…〉

 

のび太〈実際、即戦力要員であろうジャイアンなんかはバットを振り上げ

 

た時に隙が生まれるほど統率が弱かった……〉

 

のび太〈今朝戦った女の子はドラえもんによって直接道具が渡された、し

 

かし彼女は『魔法事典』の能力でワッペンやきび団子の支配から逃れたっ

 

て事か……?〉

 

のび太〈それより一番気になるのが出木杉だ。『桃太郎印のきび団子』で

 

完全に洗脳されていた場合どうやって止めるべきか……〉

 

 

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准士官「……他事でも考えてんのか?『液体』になっただけでもう勝った

 

気でいやがる…気にいらねぇな……」

 

のび太「…僕も同じ手で苦労させられたんでね…これで君のパワーは封じ

 

……!」

 

のび太が言い終える前に

 

准士官が呆れたように大きな溜息を付いた

 

准士官「……お前には『支給係』の意味がいまいち飲み込めてねぇようだ

 

な…」

 

のび太「…?」

 

准士官「下の者に道具を渡す役を任されるって事は…道具の編成も好きに

 

任されているって事だ…」

 

准士官「自分で道具を管理出来るとしたら…てめぇの取り分をどうするよ

 

……!」

 

のび太「………!」

 

准士官「遠近距離特化だけでは無く……俺はあらゆる事態を想定して自分

 

の道具を選んだ…!!」

 

准士官は『ミニ・ブラックホール』を取り出し、その欠片を口に含んだ

 

※ミニ・ブラックホール

 

この道具を少し食べるだけでご飯を何杯も食べられるほど腹が減るように

 

なる

 

 

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のび太〈相変わらず戦闘用からは程遠い道具……今度は何をするつもりだ

 

…?〉

 

准士官「鈍い奴だな……」

 

准士官「知ってるだろ?『ストロー』ってのはコップに入った飲料水を口

 

に運ぶ為にあるんだ」

 

准士官は再び『ロケットストロー』を咥えた

 

のび太「…ま、まさか……!!」

 

准士官「ブラックホールにご招待だッ!!粉々になるんだなッ!!」

 

のび太「ウォォォォォォッ!!」

 

准士官が勢い良くロケットストローを吸い込む!

 

下水や砂埃をも巻き上げて

 

周囲の全てが准士官の口へと運ばれていく…!!

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・!!

 

のび太〈だ、駄目だ…ッ!この攻撃は…液体になった僕に対しての…言わ

 

ば『最善手』ッ!!〉

 

のび太「の…飲み込まれる――――――ッ!!」

 

のび太「――――――…!!」

 

准士官「――――――ッ!!――――――ッ!!」

 

のび太「…………!?」

 

のび太が目を開くと

 

 

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顔を真っ赤にしながら

 

咥えたストローを必死に吸い込んでいる准士官がいた…

 

のび太「吸い……込まれてない……?吸引が止まった…!」

 

のび太「……ストローの吸引口に……ガムが引っかかってるのか……?」

 

准士官「ちくしょー……道端にガムなんか捨てやがって、ドアホ市民めッ

 

!!」

 

怒りの赴くままストローを地面に叩き付ける准士官

 

のび太「ぐ、偶然にもほどがある……今度こそ駄目かと思った……」

 

准士官「ちっ…悪運の強い奴だ……!!」

 

のび太〈悪運……そうだった!『ツキの月』!効果は今も持続しているん

 

だ!!〉

 

のび太「どうやら僕は幸運の女神に見放されていない様だ……!!」

 

のび太は取り寄せバッグからサンタインを二粒取り出し飲み込む…

 

液体だったのび太の体は、ぐんぐんとその形を元に戻していった…!

 

准士官「実体に…戻りやがった……!!」

 

のび太「『サンタイン』ってのは三態(さんたい)って言葉から来ている

 

んだ。

 

     『液体』、『気体』とくれば、三錠目は当然『固体』に戻る…

 

 

のび太「君には少し難しい話だったかな……?」

 

 

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准士官「何を…!んぐ!!」バシャァ!!

 

のび太「口に含んだね…?…今の液体、『ブラックホール分解液』だ。」

 

准士官「な…何故おめぇがその道具を…!」

 

のび太「君が持ってるって言ったんだ、その『ミニブラックホール』、道

 

具の管理を任されている身なら…」

 

のび太「当然『分解液』の方も持参してると思ってね、隙を見せた君から

 

『取り寄せバッグ』で奪った…!!」

 

准士官「…!!」

 

准士官「まだだ…!俺には誰にも負ける事の無いパワーがっ!!」

 

准士官がのび太に飛びかかる…!

 

のび太「……君が事前に服用していたという『強力スーパーパワーゲン』

 

 

のび太「あまり服用し過ぎると『くしゃみ』で人を吹き飛ばせる程のパワ

 

ーになる…!」

 

のび太はバッグからコショウを取り出した…

 

准士官「…何ッ!?」

 

のび太「『爆発コショウ』だ!!『自分自身の』クシャミで遠くまで飛ん

 

でいけッ!!」

 

准士官「ウォォォォォォッ!!」

 

爆発コショウを振りかけられた准士官のくしゃみは

 

 

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爆弾が炸裂したかの如く強烈な爆風を生み出し

 

准士官は遥か彼方まで吹き飛んでしまった…!

 

――――――…

 

のび太「『強力スーパーパワーゲン』で強化されたくしゃみだろうと……

 

僕は『台風の複眼』で風を無力化出来る…」

 

のび太「『爆発コショウ』も本来なら使用者自身を飛ばすほどの設計はさ

 

れていない……」

 

のび太「……みんなに……自分勝手に道具を使わせるから……こんな惨い

 

結末を生む事になるんだ……」

 

のび太「許さないぞ……僕はドラえもんの事…絶対に許さないぞ……!」

 

敵を哀れんでいる暇は無い…

 

諸悪の根源と決着をつける為、のび太は再び走り出す

 

静けさを取り戻した住宅街の一角…

 

そこには、准士官の着ていたジャケットだけが空しく横たわっていた…

 

――――――…

 

のび太「街を抜けてからだいぶ経ったけど……!!」

 

のび太「段々距離が近づいて来たぞ……!!」

 

ドラえもんとの距離を徐々に詰めていったのび太だが

 

ここに来て一転、憂慮すべき事態に陥る…

 

のび太「ハァ…ハァ……」

 

 

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のび太「な…なんだ…ドラえもんの奴…」

 

のび太「さっきまでこっちの方角…『西側』にいた筈だぞ!?」

 

のび太「真逆だ…今は『東』にいる……!」

 

のび太〈罠に気付かれたか――――――…ッ!?〉

 

のび太は進路を変えようと来た道を振り返る…

 

しかし…

 

のび太「今度は北ッ!!」

 

10日前から仕込んだ罠…

 

雲を掴むような話から始まり

 

やっと討つべき好機が訪れたというのに…!

 

のび太「くそ~…ここまで頻繁に移動されちゃ…!」

 

のび太「―――ッ!!」

 

それはドラえもんに気を取られていた一瞬の出来事であった…

 

違和感を感じたのび太は自分の足元へと視線を下ろす…

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・

 

のび太「この……足の刺し傷は……何だッ!?」

 

知らぬ間に足をやられてしまった事で体勢が崩れ

 

無防備の状態でその場に倒れてしまう

 

しかし、それよりものび太が恐れたのは…

 

のび太〈……今…僕は、刺されたのか…!?〉

 

 

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のび太〈全くだ……全く気配を感じなかった……!!〉

 

バッグから『警察犬つけ鼻』を取り出し着用しようとしたその時…!!

 

のび太に無数の刺し傷が襲う!!

 

のび太「っ……!!まずい……!『タイムふろしき』で傷を……!」

 

真新しい傷口を風呂敷で押さえながら

 

のび太は思考をフルに回転させていた…

 

平静を保とうとする程、いつもより早い動悸が焦燥感を煽る…

 

それは、この攻撃を突破する糸口が掴めなかったからに他ならない…

 

現在、自分を襲っている敵が

 

今まで戦ったどの相手よりも『格』が違う事を認識せざるを得なかった

 

のび太〈攻撃が止んだ…追撃してこない……!?〉

 

のび太「考えられるとすれば遠距離からの攻撃……しかし……!」

 

再び激痛が走る…

 

今度は腕から血しぶきが上がった…!

 

のび太〈傷を付けられている方向が毎回違うッ!!この敵は近くに居る―

 

――ッ!!〉

 

のび太は腕を治す為、視線を下ろす――――――…

 

ガヤガヤ・・・ガヤガヤ・・・

 

のび太「――――――…何の…声だ……?」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

 

 

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のび太「――――――……!」

 

のび太〈……僕は街の本道を抜けて住宅街へと入った……!〉

 

のび太〈そして『准士官』を倒して……!ドラえもんを探して…――――

 

 

のび太〈それまでに僕は何かされていたのか……?〉

 

のび太〈い…いや、僕の意識は…!僕は至って正常だった!〉

 

のび太〈それなのに何故だ……?何故、僕はここに――――――

 

「―――――さぁ今週のミュージックチャンネル!如何だったでしょうか

 

?」

 

バァ――z___ン!!

 

のび太が立っていた場所は

 

先程時間を潰していた街の本道であった…!

 

――――――……

 

スネ夫「ああっ、あそこ!ねぇジャイアン!!」

 

ジャイアン「あれは…!のび太!?おい、どうしたのび太!!しっかりし

 

ろぉ!!」

 

抜け出したのび太の安否が気にかかり、街に繰り出した二人は

 

街からやや離れた裏通りにて、電柱にもたれ掛かる様にして倒れていたの

 

び太を見つける…

 

意識を確かめるように二人が必死に肩を摩るも

 

 

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のび太のその目は焦点が合う事無く宙を漂い 表情は燃え尽きた炭の如く

 

困憊しきっていた…

 

スネ夫「僕が…僕が単独行動を許したばっかりに……!」

 

ジャイアン「スネ夫!悔やむのは後だっ!とりあえずここはまずい…担い

 

で家にかえっぞ」

 

?「そういう訳にはいかんな…」

 

スネ夫・ジャイアン「!?」

 

ジャイアン「なんだよオッサン!こいつは…のび太は俺達の…!!」

 

ジャイアンの言葉を遮るように男は手帳を見せる…!

 

スネ夫「ジャイアン……本物の警察だよ…!」

 

ジャイアン「…っ!」

 

警部「7月13日に学校で起きたテロ事件…この子はその重要参考人なん

 

だ…」

 

警部「君たちに憎まれても構わない。だが私は、テロに巻き込まれた自分

 

の子供の無念は晴らしたいと思っている…!!」

 

スネ夫・ジャイアン「……!!」

 

警部「事件解明の糸口を見つけたい。悪いが、この子は連れていかせても

 

らうよ…」

 

ただならぬ男の熱意と気迫に

 

二人は何も言い返す事が出来なかった…

 

 

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―――――それから一週間が過ぎた…

 

朝日が街に差し込むより少し前…

 

二つの人影が街道を歩く…

 

男「本当に…覚悟はできてるんだろうな…」

 

街頭にぼんやり照らされた訝しげな表情が

 

もう一人を見据えて言った…

 

女「あたり前だろ?チャンスがあるとすれば今日さ…」

 

女が頷く様に答える

 

その右手には 透明な刃物が握られていた

 

女「今日…あたし達は自由になるんだ…!」

 

――7月30日、朝――――――…

 

ー留置所ー

 

警部「あの子は…あれからどうかね」

 

担当刑事「体調は大分回復した様ですけど…」

 

警部「依然、口は開かず…か」

 

担当刑事「ええ…」

 

警部「ふむ、困ったな…」

 

のび太は警察に身柄を拘束され

 

留置所で取調べを受けていた…

 

逃げようと思えば『通り抜けフープ』等で逃げる事も出来た

 

 

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しかし、スネ夫やジャイアンに被害が及んでしまう事を思えば

 

留置所の方がいくらか安全と考え、踏み止まる

 

ここにいればドラえもんも襲ってはこない……

 

のび太〈もう……全部…疲れた………〉

 

いつもの様に、とある一室に呼び出され取調べが始まる…

 

我が子の仇を討たんとばかりに必死に訴えかける警部

 

それでも、のび太は頑なに口を閉ざす…

 

無関係の者を巻き込みたくない

 

何よりのび太自身、この戦いを続けられる精神状態ではなかった…

 

いつも通りの空虚な時間が過ぎ

 

雑居房に戻るのび太

 

のび太〈おなかすいたな……ご飯にしよう………〉

 

留置所での食事は少しの自由が許されており

 

自費で出前を取ることも出来る

 

のび太は『グルメテーブルかけ』で注文し

 

自分で食事を用意していた…

 

標高7000メートル以上ともあろう高山から削り取った氷で冷やしたグラス

 

 

遥か山脈の地中深くから汲み上げた良質な天然水を注ぎ、食事中はそれで

 

水分を摂る

 

 

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前菜はイタリア料理

 

生ハムやサーモン等を特製ソースで和えたサラダで始まり

 

パスタ、リゾットとその日の気分で一皿目を注文

 

フランスの最高峰グラニデ〈冷菓〉で口直しの後

 

メインディッシュのヴィヤンドに移る

 

こちらもフランス料理であり

 

皿に飾り付けられた華やか彩りは殺風景の留置所にどこか気品を持たせる

 

……

 

それらを一通り食したのち

 

三ツ星レストラン専属のパティシエまでもが舌鼓を打つという最高級ケー

 

キを一切れ…

 

食後のティータイムを楽しみ

 

『グルメテーブルかけ』の前で両手を合わせ深々とお辞儀をすることで

 

のび太の一食は終わる……

 

男「軽い気持ちでつまんでみたら……何と豊穣極まりない味!」

 

のび太「……」

 

隣でつまみ食いをしながらのび太を茶化すボサボサ髪の男…

 

同じ雑居房に住む同居人である

 

男「あんたも強情だね…毎度取調べを受けても相変わらず黙り込んでるら

 

しいじゃないか…」

 

 

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男「無関係ならありのまま吐いちまえばこんな豚箱から抜け出せるのに…

 

 

男「この無愛想&物好き野郎めっ、このっこのっ…」グイグイ

 

のび太「………」

 

男「あーーー……退屈だ………」

 

男「……あんたはどんなヤマに首つっこんだんだ?」

 

のび太「…………」

 

男「俺はさ……クラッキングってやつさ………」

 

男「半月前……行政機関のサーバーにアクセスして……ある男の個人情報

 

を抜き取った……」

 

男「……そいつは俺達の…大切な人の命を奪ったのさ………!」

 

――――――突如、見張りの警官達が慌しくなる…!

 

牢の前を次々と駆ける警官…

 

遠くの部屋から警報のような音が響いてきた……!

 

男「俺達は特定した……その男は…先日中学校で起こったテロ事件の組織

 

に勧誘された一人だってな……!」

 

のび太「…!!」

 

男「奴は人の命を奪っておきながら今もこの街で生きている………!」

 

男「だから俺達は……復讐するのさ…!」  ボゴォンッ…!!

 

雑居房の壁が破壊される…!

 

 

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崩れた横穴から出てきた男がこちらに手招きをしている

 

その上着には 半分に破れた『大尉』のワッペンが貼られていた…!

 

大尉「よぉ……豚箱生活ご苦労さん。」

 

のび太「まさか留置所にまで刺客を向けるとは……!!」

 

男「待て、こいつは俺の仲間だ…あんたを此処から出してやる。その代わ

 

り、力を貸して貰いたい…!」

 

のび太「誰がそんな事っ…信じられるとでも…!!」

 

大尉「何か勘違いしてる様だが……俺達は道具の力が欲しいだけで、てめ

 

ぇを助ける義理なんて無ぇんだぜ…!」

 

大尉が腰に差した鞘から刀を抜き取る……!

 

男「二人とも落ち着いてくれ!」

 

男が二人を静止する

 

大尉「ちっ…仕方ねえ……」

 

男「悪いな…少し時間をくれ……」

 

のび太は『うそ発見器』を取り出し、二人にいくつか質問をした…

 

ワッペン以外に洗脳されていないか、逆スパイではないか…

 

しかし、うそ発見器が反応する事も無く 二人の述べた事が真意であると

 

証明された

 

男「『野比 のび太』…あんたと出会ったのは偶然。いや、俺達にとっち

 

ゃまさに『奇跡』ってやつだ……」

 

 

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男「あんたがいなきゃ『少佐』は倒せないんだ…頼む…!」

 

のび太「………」

 

男「……俺達は、そりゃ所詮ただの他人だよ………」

 

男「あんたが戦いから逃げてるだとか……人の心に土足で踏み込むような

 

事は言わない………」

 

男「だけど…この組織のボスは例え、危害を加えようとしなくたって無関

 

係の人間に仇なしていくぜ…」

 

男「先日の無差別テロのように……いずれあんたの周りの人間にも、だ…

 

…!!」

 

男「あんたは自分が此処にいた方が安全だと思うかもしれない…だけど、

 

守れたはずの命が守れずに失っていくなんて……あんたには耐えられるか

 

!?」

 

のび太「………っ!!」

 

のび太は男の差し出した手を掴んだ…!

 

男「行こうぜ……!戦いを終わらせにな……!」

 

「脱走だ!!取り押さえろ!!」

 

警官達が入り乱れ出入り口を塞ぐ…!

 

大尉「おっと…そうはいかねえ…!」

 

大尉は懐から取り出した手帳を

 

警官隊の目の前にちらつかせた

 

 

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大尉「『PASSPORT OF SATAN』……読めるな?俺達の悪行を見逃せ」

 

「ぐぬぬ……!!ここは異常無し!通っていいぞっ!」

 

『悪魔のパスポート』を提示すれば、どんな悪事を働いても免罪になる

 

その先入観がわずかな弛緩を招く…

 

三人が留置所から出ようとしたその時である

 

――――――パァン!!

 

背後から響く発砲音と共に男がその場に崩れ落ちた…!

 

警部「何を……したか知らんが…!!ここは……通さん………!」

 

大尉「おい…!冗談じゃねぇぞ!!しっかりしやがれ!!」

 

男「う……うう………!」ドクドクドク・・・

 

大尉「他の警官の頭に隠れて『悪魔のパスポート』が見えなかったのか…

 

…!?」

 

警部が再度、男に銃口を向ける…!

 

大尉「こいつ!?『悪魔のパスポート』が通じねぇ…!」

 

再び留置所に鳴り響く発砲音!

 

しかし今度は着弾する事無く

 

その銃弾はのび太の手の平の中に吸い込まれた…!

 

のび太「危ない……銃弾はこの『ブラックホールペン』で描いた黒丸の中

 

に吸い込ませた…!」

 

大尉「……!」ワナワナ…

 

 

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のび太「今はこらえて早くここを出よう大尉…!男の怪我なら道具で治す

 

ことが……!」

 

のび太「待つんだ大尉!!」

 

大尉「てめぇ!!!」

 

大尉が刀を抜き警部に斬りかかる!

 

ズバッ!!

 

警部「ぐああああ………!」

 

そのままとどめを刺そうと大尉が切っ先を警部に向けた瞬間…

 

刀が、背後まで迫った『空気ピストル』の衝撃を弾き落とした!

 

大尉「……何のつもりだ!邪魔をするな!!」

 

のび太「もうやめるんだ!次、その警部に斬りかかったら今度は僕が『空

 

気ピストル』でこの男の傷口を撃つ…!!」

 

大尉「ちっ…!」

 

ー外ー

 

大尉「――――――…ここまでくればもう大丈夫だろ…」

 

男「迷惑かけたな……」

 

のび太「怪我は大丈夫かい……?」

 

男「もう心配無い。助かったぜ。」

 

大尉「これから『中尉』と落ち合う予定になっている……中尉つっても俺

 

が命令してお互いにワッペンは破いてあるけどな。」

 

 

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男「女〈中尉〉を迎えにいってくる!二人はそこで大人しく待っててくれ

 

よ!」

 

大尉「頼んだぜ…俺達も一緒に移動したいが『少佐』に見つかった時点で

 

アウトだ…」

 

男が女〈中尉〉を迎えに車を発進させる…

 

のび太は車が見えなくなった事を確認すると

 

来た道を再び引き返し始めた…

 

大尉「どこへ行く……!」

 

のび太「決まってるだろ…!警部の傷を治しに行く!!」

 

大尉「留置所に戻るのかっ!?」

 

のび太「あの傷は重症だ!僕の道具なら治せる!!」

 

大尉「バカが!!俺達がこの計画の為にどれだけ苦労したと思って…!」

 

のび太「……知らないよ、そんな事……!」

 

大尉「何だと……っ!!」

 

のび太「……お前が斬ったあの警部だって……被害者なんだ……!!」

 

のび太「…自分の子供が……学校でテロに巻き込まれていたんだよ!!」

 

大尉「…!!」

 

のび太「お前達からすればあの警部は……自分達の『障害』に見えたかも

 

しれない…!!」

 

のび太「けどね……あの人だって必死に悩んでいたんだよ…!あんな道具

 

 

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なんかに屈しない程にね……!!」

 

大尉「……」

 

のび太「どいつもこいつも同じだ!傲慢な考えで自分を納得させて…現実

 

が見えていないのはどっちの方だ!!」

 

のび太「お前達が自分勝手に行動するなら……僕も好きにさせてもらう!

 

!」

 

大尉「水と油だな……相容れない仲って事だ…!」

 

大尉が刀を抜く…!

 

大尉「傲慢かまして行こうってんなら……お前の道具だけは置いて行って

 

貰う…!」

 

のび太「…!!」

 

大尉「思い通りにしたいんなら……実力で語るんだな……!」

 

のび太「戦うことでしか…互いの気持ちを交わすことが出来ないのか…こ

 

のわからず屋!!」

 

のび太はジキルハイドを取り出すも

 

それらを踏み潰した…!

 

のび太〈こんな仮面の人格にはもう頼らない…!!自分で考え、こいつを

 

出し抜くッ!〉

 

のび太〈あの刀は……名刀『電光丸』だ…!!〉

 

※電光丸

 

 

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この刀にはレーダーが内臓されており

 

たとえ目を閉じていても襲ってくる相手の動きを自動的に探知し、撃退す

 

 

のび太〈『黄金バット』と違い、振る意思は必要ない。いわば『超反射』

 

!!〉

 

のび太〈ならば…!!〉

 

のび太は『がん錠』を口に放り込む…!

 

のび太〈体の強度を『鉄』にして……あの刃をあえて受けて止める……!

 

!〉

 

大尉「何を……ッ!?」

 

振り払った大尉の刀がのび太の脇腹に

 

ズブズブとめり込んでいく…!

 

大尉「…こいつッ!?自分から刀に突っ込んで…!」

 

のび太「体の強度を固めれば…肉体に食い込み徐々に勢いを失った刃は急

 

所に達する前に『止まる』…!」

 

大尉「…!」

 

のび太〈いくら自動で追撃する刀でも、刀身が動かなければその機能を…

 

…!〉

 

大尉「その覚悟は認めてやる……だがな!」

 

のび太「!?」

 

 

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のび太の胴体に大尉の拳が炸裂し

 

その体を三件先まで吹っ飛ばした…!

 

大尉「ちっ……隣の通りまでぶっとばしちまった……!」

 

大尉「やつの覚悟、相当なもんだ……徹底的に仕留めておかないと、いず

 

れ『障害』に成りかねん……!」

 

――――――――――――…

 

のび太「ゴホッ!………とりあえず……回復を……!」

 

のび太は自身の傷口にタイム風呂敷を被せる…!

 

のび太「奴の指に…『ウルトラリング』をはめられているのが見えた……

 

…」

 

のび太〈あの道具で得られる腕力は『スーパー手袋』以上……飛び道具で

 

仕留めなければ…!〉

 

しかし、大尉の『電光丸』は飛び道具であろうと自動で探知し、阻止する

 

機能が備わっている……

 

レーダーでのび太の位置を特定し、追い詰められるのも時間の問題であっ

 

た……!

 

のび太「考えろ……!奴にダメージを与えるには…ッ!!」

 

大尉〈見つけたぜ………!〉

 

のび太「後ろかッ!?」

 

大尉「これで終わりだ…!」

 

 

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大尉が背後からのび太の間合いに詰め寄り

 

刀を引き抜く…しかし!

 

大尉「……浅かったか…いや、『逸れた』!?」

 

のび太の急所を捉えたはずの刀は上へと逸れ

 

そのダメージは致命傷には至らなかった

 

のび太〈くそ…!『電光丸』がここまで反射的な速さで動くとは…!〉

 

大尉が疑念を抱いたと同時…

 

電光丸が独りでに動き出す…!

 

〈カツカツカツカツ……〉

 

大尉「何だ!?『電光丸』が勝手に……!それにこの音は…何を斬ってい

 

る…!?」

 

電光丸が四方八方に空を斬りつける

 

その刀身は氷の粒を弾いていた…!

 

大尉「これは『氷』…?『雹』が降っているのか…!?」

 

のび太「……殴り飛ばされた後、お前が来るまでに『お天気ボックス』で

 

2分だけこの一帯に『雹』を降らせる様に設定しておいた…!」

 

大尉「…!!」

 

のび太「電光丸は、この『氷の粒』も探知せざるをえない…!」

 

のび太〈だけど…降り注ぐ氷を弾きながらも電光刀は僕に傷を負わす事が

 

出来た…!〉

 

 

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のび太はもうひとつの道具を取り出す

 

のび太「あらゆる手を使って…電光丸の隙を大きくしなければ…!」

 

※ころばし屋

 

小さなロボット。十円玉を入れてターゲットを指名するとどこまでも相手

 

を追いかけ

 

手にした拳銃状の武器を使って必ず3回転倒させる

 

のび太「『ころばし屋』…目の前の男を三回転ばせるんだ!」

 

大尉「!」

 

のび太「そして更に!僕も『空気ピストルの元』を使って、各指から『空

 

気の弾』を撃つ……!」

 

上空から降り注ぐ氷の雨、『ころばし屋』の銃弾

 

そして『空気ピストル』…

 

ありとあらゆる飛び道具が大尉を襲うも、全く隙を見せる事無く

 

電光丸は全ての攻撃を弾いていく…!

 

そして、その時が訪れた…

 

大尉「…上がったぜ……『雹』…!」

 

大尉の突き出した電光丸がころばし屋を貫く…!

 

大尉「あとはお前だけだ……!」

 

のび太「……!」

 

大尉「あらゆる飛び道具も……どうやらただの時間稼ぎにしかならなかっ

 

 

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た様だな…」

 

のび太「…その通りだよ、2分稼げただけでも十分な成果だ!」

 

大尉「バカが……時間稼ぎで俺は倒せねぇぞッ!!」

 

大尉が襲い掛かる瞬間…!

 

のび太は道路に設置してあった大きなビニールの袋を投げつけた!

 

大尉「そこらの物を投げつけた所で!!この刀に敵うかよッ!!」

 

電光丸が袋を撃墜する…!

 

破けた袋の中から粉のようなものが飛散した…!

 

大尉「何だこれは……目暗ましのつもりか?」

 

のび太「かかったなッ!!」

 

大尉「!?」

 

のび太の指先からほどばしる電流が

 

電光丸を通して大尉の体内に流れ込む……!

 

大尉「う……ッ!?」

 

のび太「時間を稼いだのはこの『蓄電スーツ』の電流を溜める為さ!!」

 

※ちく電スーツ

 

着用して動き回ると静電気が起き、スーツに電気がどんどん蓄積されてい

 

く。

 

専用のアースを付けておかないと電気がたまりすぎ、1万ボルトを超えた

 

放電が始まる

 

 

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大尉「……だが、電流如きで俺がダウンすると思ったら大間違いだ…!」

 

のび太「何も感電させて倒そうだなんて思っちゃいない!!」

 

のび太はバッグから『黄金バット』を取り出し

 

大尉に振り下ろした!

 

バリィィィィィンッ!!

 

大尉「――――――――――――…………馬鹿な……」

 

電光丸は黄金バットと共に

 

粉々に砕け散った…!

 

のび太「…これで…勝負あった……ッ!」

 

大尉はしばらく放心していた…

 

電光丸とともに

 

これまで自身を支えていた

 

復讐心までもが打ち砕かれたような錯覚を覚えていたのである…

 

大尉「一撃で刀がへし折られた………」

 

大尉〈奴は……一体何をしたんだ…!?〉

 

のび太は蓄電スーツの専用アースを取り付け終えると

 

大尉に向かい合った

 

のび太「1週間前の話だ……」

 

のび太「真夏にも関わらず、この街は深さ1メートル半以上もの猛吹雪に

 

見舞われた…」

 

 

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大尉「……?」

 

のび太「たった数時間で雪は止んだけれど…その後も分厚い雲は北上を続

 

け、他の地域にまで微量ながら雪を降らした…」

 

のび太「各地域は異常気象を懸念して……道路にこの袋を設置していたの

 

さ…!」

 

のび太は先程投げつけたビニール袋を拾い上げて見せた

 

大尉「融雪剤……だと?」

 

のび太「融雪剤の主成分は塩化カルシウム……袋を撃墜した時、その粉は

 

雹で濡れた電光丸に染み付いた…!」

 

のび太「後は蓄電スーツで電流を流し込めば……微弱ながら反応を起こし

 

たその刀身は劣化する…!!」

 

大尉「………!!」

 

のび太「昔は融雪剤で車のサビが云々……留置所ではくだらない話しか耳

 

に入ってこなかったけど…人の話は聞いておくもんだね……」

 

「――――――――そこまでだっ!」

 

後方から不意に発せられる怒声……

 

男「何をしているんだ二人とも!大人しくしておけって言ったじゃないか

 

…!」

 

女「おっと、動くなよ…男もあたしがやる事に余計な口を挟むな…いいな

 

?」

 

 

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のび太「………ッ!」

 

振り返ると

 

先程の男に中尉と思われる女…そして…

 

のび太「スネ夫……捕まってしまったのか……ッ!?」

 

女「見ろ…あたしの言う通り人質を用意しておいて良かった…!」

 

男「おい!落ち着け!今『少佐』にこの事が気付かれたら……」

 

女「黙りな!どの道あいつが仲間にならないんじゃ全員あの世逝きだよ!

 

!」

 

女「だから…汚い手でも何でも使ってあいつの道具を奪うまでさ…!!」

 

女がガラスのような透明の刃を

 

スネ夫の首筋に突きつける…!

 

スネ夫「あ…あわわ………」ガクガクブルブル

 

女「大尉、あんたが負けるなんてね……如何にそこの男が危険かわかった

 

よ…」

 

大尉「面目ねぇ……」

 

女「構いやしないよ……あたしが何とかする…!!」

 

女「道具を差し出せば、この人質の命は助けてやる…!」

 

のび太「……!」

 

女「差し出す気が無いなら……こいつもお前も始末して道具を奪う!」

 

男「無茶苦茶だぞ女!……第一道具を奪ったとしても使い方を覚えている

 

 

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猶予は……」

 

女「あんただってわかるだろ!やっと奴を裁ける兆しが見えてきたんだ…

 

その為ならあたしは容赦しない…!」

 

男「……っ!」

 

女「さぁ、好きなほうを選びな…!!」

 

のび太「僕は……!」

 

のび太は取り寄せバッグからスネ夫をとりよせた!

 

スネ夫「のび太ぁぁ~~!」

 

女「!?」

 

のび太「スネ夫!泣いている暇は無い!!逃げよう!!」

 

のび太はスネ夫を担ぎ

 

その稲妻ソックスの足で逃げる…!

 

女「残念だけど…!あたしの攻撃からは逃げられないよ!!」

 

女はその手に持つ

 

透明の刃を放り投げた…!

 

三人を撒くべく、道行く道を曲がり

 

街を全速力で駆け抜けるのび太…しかし!

 

スネ夫「の…のび太…さっきからおかしいぞ…この『刃』は!!」

 

のび太「!?」

 

先程投げられた透明の刃は

 

 

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ぶれる事無くのび太の後を追従する…!

 

のび太「僕らの後をピッタリと付いてくる…これは『エースキャップ』で

 

コントロールされた物だッ!!」

 

スネ夫「名前の響きだけで…な…何だか嫌な予感がするよ…!!」

 

のび太「そう…エースキャップを被って投げた物は、狙ったところに必ず

 

命中させる事ができる…!」

 

スネ夫「ど、どうやって避ければいいんだよそんな道具!?」

 

のび太は立ち止まり

 

向かってくる刃と向き合う…!

 

スネ夫「う…うわぁ危なぁぁぁい!!」

 

ザクッ!

 

スネ夫「……………?」

 

スネ夫が恐る恐る目を開けると

 

透明の刃はのび太の持つグローブのミットに収まっていた…!

 

のび太「『がっちりグローブ』……悪送球だろうと、このグローブは飛ん

 

できたものを全て受け止めるッ!!」

 

のび太「だ…だけど…ッ!!」

 

のび太の手の平から血が溢れ出す…

 

その手には透明の刃が突き刺さっていた…!

 

のび太「ミ…ミットにきっちり収まると言っても……掴むタイミングは自

 

 

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分で調整しなきゃあならない…ッ!!」

 

スネ夫「手が貫かれてる…あわわ……」

 

のび太「これぐらいの傷ならタイム風呂敷で治せるからいいんだけど……

 

痛ッ……!」

 

のび太は突き刺さった刃を引き抜いた後

 

貫かれたがっちりグローブを破き、脱ぎ捨てた…!

 

のび太〈それにしても…この透明の刃は何だ……?硬度は『鉄』並だけど

 

、この独特な手触りは……?〉

 

スネ夫「の……のび太…あ、あれ……」

 

スネ夫が指差す先…

 

そこには複数の新たな刃が、まっすぐとのび太達を目指し飛んで来ていた

 

…!

 

のび太「スネ夫……『透明のナイフ』って…どこの店で取り扱ってると思

 

う…?」

 

スネ夫「し、知らないよそんなの!大体『透明のナイフ』なんて危なっか

 

しくて……!!」

 

のび太「そう、その通りだ…だけどあの『中尉』はそんな珍しい物を何故

 

これほど持っているんだ…?」

 

スネ夫「う…うわぁ命中するぅぅぅぅッ!!」

 

スネ夫「……………?」

 

 

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スネ夫が恐る恐る目を開けると

 

今度はのび太が杖を掲げていた…!

 

のび太「旧約聖書のモーゼは…エジプトで奴隷として虐げられていたユダ

 

ヤ人を率いて脱出する際、海を2つに割ったという…」

 

スネ夫「な……なんだ……?飛んできた刃物が僕らを逸れていくぞ…!?

 

 

のび太「この『モーゼステッキ』は海を割ったモーゼの伝説のように……

 

『水』を寄せ付けない…ッ!」

 

のび太〈思ったとおり…!これはただの刃物じゃあ無い…『水加工用ふり

 

かけ』で作られた『水』の刃物だ!!〉

 

※水加工用ふりかけ

 

水に振りかけると好きなように加工できる

 

粘土、スポンジ、鉄ふりかけ等、種類は様々

 

スネ夫「す、すごいじゃないか!のび太のくせに頼もしいや!!」

 

のび太「だけどこの『モーゼステッキ』……何時、電池が切れるかわから

 

ない…」

 

スネ夫「…へ?」

 

のび太達に第三波の刃が押し寄せる…!

 

スネ夫「お、おい!これじゃ何時刺さるか……!」

 

のび太「『水よけロープ』を使おう。このロープを結んでその輪の中に入

 

 

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れば水を寄せ付けずに済む」

 

スネ夫「始めから出しとけやい!そういうのは!」

 

女「様子を見に来てみれば……中々しぶといね…!」

 

投げた刃物の道筋を辿り

 

中尉がのび太達に追いつく…!

 

スネ夫「き、来た…!!」

 

のび太「大丈夫……!『水よけロープ』には電池切れとかそういうのは無

 

い…!」

 

女「なるほどね…あたしのナイフが『水加工用ふりかけ』で作られた物だ

 

と見抜いたのか……!」

 

中尉の攻撃を凌いだのび太だがその警戒を緩める事は無かった…!

 

一週間前に戦った准士官は

 

『強力スーパーパワーゲン』、『ロケットストロー』、『ミニブラックホ

 

ール』を所持していた…

 

准士官より上の階級である中尉が見せた道具は『水加工用ふりかけ』に『

 

エースキャップ』……つまり…

 

のび太〈この女は少なくとも……あと1つ道具を隠し持っている事になる

 

……ッ!!〉

 

女「水が駄目なら……こいつを喰らいな!!」

 

女が新たな道具を繰り出す…!!

 

 

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のび太「あれは…『誘導ミサイル』だッ!!」

 

スネ夫「うわぁもう勝てっこないよぉぉぉ!ママーーーーッ!」

 

のび太はスネ夫を担ぎ込むと

 

全速力で逃げ出した…!

 

スネ夫「どうするんだよぉぉのび太!!」

 

のび太「『誘導ミサイル』の特性は確か……!!」

 

高級住宅街に逃げ込んだのび太達は

 

敷地内に停めてあったリムジンの屋根に飛び乗り

 

『通り抜けフープ』で車内へ飛び込んだ!

 

スネ夫「フーっ…フーっ…!!」

 

のび太「『誘導ミサイル』は障害物を突き破ってこない…!この鉄の密室

 

ならひとまず安全だ…!」

 

誘導ミサイルはのび太達のなだれ込んだ

 

リムジンの前でピッタリと静止した

 

女が再び繰り出したであろう無数の水ナイフが

 

リムジンを直撃する!!

 

スネ夫「!!このリムジン、『防弾仕様』か……ひとまず助かった……」

 

のび太〈助かったけど……この猛攻をどうやって避わす…!?〉

 

戦えないスネ夫を安全な所まで逃がし、尚且つ猛攻をかい潜り中尉に近づ

 

く……

 

 

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のび太はこれまでにない選択を迫られていた…!

 

相手がエースキャップを持っている以上、投げ物はどこまでも追ってくる

 

スネ夫を逃がす為、距離をとってしまえば相手を見失い

 

こちらにはまず勝ち目が無くなる

 

近くにいる今だけが唯一のチャンスであった…!

 

のび太〈今、中尉に近づけば勝てるかもしれない…だけどスネ夫をどうや

 

って守ればいい………!?〉

 

のび太〈『サンタイン』でスネ夫を『液体化』させておいたとしても……

 

誘導ミサイルで『吹き散らかされる』様な事があればスネ夫は……〉

 

のび太「…スネ夫、まだ車から出ちゃあ駄目だ……!!」

 

スネ夫「あ、ああ…わかってるさ……!」

 

スネ夫は車内の席を左右に移動する

 

のび太「スネ夫…?一体何をしてるんだ……?」

 

スネ夫「なぁのび太……この外にあるミサイル…空中で止まったまま動か

 

ないけど…」

 

のび太「そりゃあそうさ……『誘導ミサイル』は障害物を全て回避してタ

 

ーゲットに直接着弾するように出来てる……」

 

スネ夫「じゃあ、このミサイル……どっちが『ターゲット』だと思う……

 

?」

 

のび太「……?」

 

 

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スネ夫「僕は出た後の話をしているんだぜ…!」

 

のび太「……!?」

 

スネ夫「防弾仕様といっても…何回も同じ箇所にナイフをブチ込まれたら

 

このリムジンもおしまいだ…」

 

のび太達が話している間も水ナイフは次々と繰り出されている…

 

丁度、そのひとつが車の天井に突き刺り、車内にまで深く食い込んだ…!

 

 

のび太「!!……確かに……車がつき破られるのも時間の問題だ…」

 

スネ夫「この状況を突破するには…『中尉』を直接叩く以外に方法は無い

 

と僕は思う……!」

 

のび太「!」

 

スネ夫「僕らが二手に分かれれば…!その分のび太の負担が減ってあの女

 

の所まで距離を詰める事もできる!」

 

のび太「スネ夫、君は……!」

 

スネ夫「僕がなるべく時間を稼ぐ…!だけどこのミサイルがもし道具を持

 

ってない僕に矛先が向いているとしたら…!」

 

外に出た瞬間スネ夫は瞬殺され

 

のび太は二人分の猛攻を掻い潜って中尉に近づかなければならない事にな

 

る…

 

スネ夫「僕が人質にならなけりゃ君にこんな苦労をさせる事もなかった…

 

 

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…僕は何て非力なんだ………」

 

のび太「いや…僕は大変な誤解をしていたよ…!」

 

スネ夫「のび太…?」

 

のび太「君が『戦う意思』を示してくれたおかげで…!僕の迷いは晴れた

 

!」

 

天井に食い込んだいくつかの水ナイフの効力が切れ始める…

 

上から徐々に滴り落ちる水…

 

次にこの隙間を狙われたらひとたまりも無い状況であった

 

のび太「勝機なら…ある!……というより…君のおかげで今思い浮かんだ

 

!」

 

スネ夫「本当か!?」

 

のび太「君も一緒に戦ってくれるかい……?」

 

スネ夫「勿論協力させてもらうけど……この状況でどうすりゃいいんだ…

 

?」

 

のび太「……この水が良い……!」

 

スネ夫「?」

 

のび太「この隙間から滴る水がいいんだ!いいかい…」

 

水ナイフによりとうとう車は突き破られ

 

誘導ミサイルが再び作動する…!

 

しかし、車内は既にのび太達の脱出した後であった…!

 

 

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―――――――――……

 

女「……反応が無いから仕留めたと思ったけど……ナイフの軌道が変わっ

 

た……!」

 

大尉「……」

 

女「また逃げたのか……それとも…!!」

 

男「おい女!いい加減にしろ!!」

 

女「何だい…!口出しなら受け付けないよ…!」

 

男「大尉も何か言ったらどうなんだ!」

 

大尉「俺には何も言える資格はねぇ……けどよ、俺達の思いはこんなもん

 

じゃねぇ筈だ……」

 

男「…!」

 

女「……あいつは牢を出るときに、ちゃんと協力を承諾してくれたんだろ

 

?」

 

男「あ、ああ……大体話したけど……」

 

女「あいつは私達の心境を知りながら、それを蹴ったんだ……他に目的が

 

あるなら…相応の思いを示してもらわないと……!」

 

女「あたし達が……バカみたいじゃないかッ!!」

 

?「まったくだ!!お前達は…大馬鹿野郎だよ!!」

 

三人「!?」

 

三人が後ろを振り返ると

 

 

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そこにはのび太にもスネ夫にも似た奇妙な男が佇んでいた…!

 

大尉「何だこいつは!?」

 

女「背後に回られた…何時の間に!?」

 

振り返りざまに女が放った水ナイフや誘導ミサイルを

 

奇妙な男は全て空気ピストルで弾いて見せた…!

 

男「は……速い…!!」

 

女「……何者だお前は!!」

 

?「僕は………『のび夫』ッ!!」

 

のび夫〈攻めるのも逃げるのも駄目なら……両方やればいい……!!〉

 

車から脱出する前…

 

のび太とスネ夫は『ウルトラミキサー』で合体し

 

天井から滴る水で濡らした『三倍時計ペタンコ』を体に貼る事によって

 

自身の速度を3倍に上げたのである

 

この『三倍時計ペタンコ』……ドラえもんと対峙するまで取っておきたい

 

道具であったが

 

スネ夫の覚悟と誠意に答える為、のび太はあえてこの道具を使った

 

のび夫「今の僕なら『7秒』でこの場全員を仕留める事が出来る…!!」

 

大尉「………!!」

 

女「くそっ……こんな筈じゃ…!」

 

のび夫「もう……諦めるんだ…!」

 

 

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にじり寄るのび夫の前に

 

男が立ちふさがる…!

 

大尉・女「男……!!」

 

のび夫「何で庇うんだ!こいつらは目的の為なら手段を選ばない…残酷な

 

奴だ!!」

 

男「二人も俺も……始めから残酷だったわけじゃない……!」

 

のび夫「だけど……!」

 

男「後ろの二人は……妹の無念を晴らす為に……必死だったんだ……!」

 

のび夫「……!!」

 

――――四人は同じ児童養護施設で出会った

 

無責任な、あるいは哀れな両親により

 

壮絶な幼少期を過ごして来た彼等の心は脆く荒んでいた……

 

互いの心の隙間を埋めあうかの様に寄り添う四人…

 

辛い時や苦しい時も兄弟の様に分かち合い共に過ごして来た

 

苦い経験……いつしかそれは思い出へと変わり

 

四人は遅れながらも人並みの至福を取り戻していた…

 

しかし、その幸せはいとも簡単に踏みにじられてしまう……

 

女の妹が殺されたのだ……

 

男「俺達は許せなかった……!だから、復讐する事を決めた…!」

 

男「その過程でおかしな組織にまで関わってしまったけど……今日、やっ

 

 

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と復讐の機会が巡ってきた…!!」

 

のび夫「……!」

 

男「勝手な話かもしれないが……見ず知らずのあんたが最後の希望だった

 

んだ………」

 

男「今回ばかりは俺達も……心を鬼にするしか無かった……!」

 

『そして……貴様ら子羊は愚かにもこの私に対し悪巧みを企てたわけだ…

 

 

突如、空に暗雲が立ち込め

 

不気味な声が響き渡る…!

 

のび夫「何だ……空が…曇っていく……!」

 

男「こ…この声は……!!」

 

大尉「見つかっちまったか…!!」

 

女「こいつだ…!!あたし達の大切な者を奪った……『少佐』ッ!!」

 

『命令外の行動、不審に思い様子を伺っていたが……まさか私の本性を知

 

る者が三人もいるとはな………』

 

直後、のび夫達四人の周囲を落雷が襲う!!

 

『貴様らをここで始末せねばなるまい……!』

 

のび夫〈こ、この道具は……ッ!?〉

 

男「協力して貰いたかった理由がこれさ……奴がこの組織に入ったことで

 

俺達は迂闊に手を出す事が出来なくなった……!!」

 

 

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大尉「奴はどこにいようがこちらの様子を見ることも、話しかける事も、

 

攻撃する事も出来る……!!心当たりは…?」

 

落雷は止む事無く降り注ぎ

 

四人を取り囲むように接近する……!!

 

のび夫〈該当する道具なんて…ひとつしかないじゃないか…!〉

 

※神さまセット

 

神さまプール…直径1メートルほどの平べったいプールから好きな景色を

 

覗く事が出来る

 

神さまマイク…プールに映っている人に語りかける事が出来る

 

神さまステッキ…プールに映っている場所へ雷や雨を撃ち出したり出来る

 

『10秒やろう……!言い残すことは無いかな?ん?』

 

女「あたし達を舐めてやがる…!!」

 

のび夫は対策を考えながら顔を俯かせる…

 

不意に、見覚えのある道具が視界に入りこんできた

 

のび夫〈この道具は『温泉ロープ』!?何でこんな物がここに…?〉

 

※温泉ロープ

 

ロープの輪の中が温泉になっている、いわば携帯できる露天風呂

 

男「水ナイフを奴に投げられないのか…!?」

 

女「あいつは『ナイヘヤドア』を使って壁の中の部屋に住んでいるんだ…

 

!ここでナイフを投げても壁に突き刺さるだけだよ…!」

 

 

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のび夫〈水ナイフ……そうか!中尉はこの『温泉ロープ』の温泉水を加工

 

して水のナイフを作っていたのか!!〉

 

『5……4……3……』

 

のび夫は三人を『温泉ロープ』の中に突き落とした

 

男「ぷはっ……!何をするんだ!!」

 

のび夫「君達は僕の事を信じてくれた……だから僕もそれに答えようと思

 

う…!」

 

三人「……!」

 

のび夫「『五分』…いまから五分間だ。五分経つまでこの『温泉』から出

 

ないでくれ……!」

 

大尉「バカ野郎!それじゃあ俺達は無防備…!!」」

 

大尉の言葉を男が遮る

 

男「信じよう……この男の言う事を……!」

 

三人が温泉ロープに入った事を確認すると

 

のび夫はそのロープを抱え込んだ…!

 

『……何をしている?』

 

のび夫「お前の攻撃を『耐える』!!」

 

『耐える?この落雷を?……フハ……フハハハハハ!!』

 

少佐はのび夫を嘲り笑う

 

『言っておくが貴様を襲うのはこの杖の雷だけではない…上空の入道雲に

 

 

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刺激を加えた…本物の雷も落とす!』

 

『バーチャルと現実は違うのだ、実際の雷に耐えれる者などいない!!』

 

四方から落とされた雷が

 

のび太を直撃する!

 

―――――――――…

 

『な…何故だ!常人なら立ち上がることもままならない筈だ……』

 

のび夫「……こんなものじゃあ無い……!」

 

『……!?』

 

のび夫「こんなものじゃ無いぞ……三人の怒りは…!」

 

『き、貴様は……あいつらの何だと言うのだ……!?何故私に歯向かう…

 

!?』

 

のび夫「お前のような奴を倒すために……僕はここにいるんだ……!!」

 

『奴等のよしみの者かと思っていたが………まさか、貴様がボスを脅かす

 

というあの……!?』

 

のび夫「今頃気付いたのか……そう、僕にも『蓄電スーツ』という電撃を

 

無効化させる道具があるのさ!」

 

のび夫「『五分』経過した。お前を裁きに向かう……!」

 

のび夫は温泉ロープを再び床に敷いた…!

 

中から赤色の肌に変色した三人が飛び出す…!

 

※ジークフリート

 

 

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この入浴剤の入った湯に5分浸かると30分間不死身になる

 

『ば……化け物共が……』

 

少佐が間を置かずにただひたすら落雷を落とすも

 

四人はビクともしない……

 

女「あたし達を化け物と呼ぶのなら……そうさせるように追い立てたアン

 

タ自身を恨みな…!!」

 

大尉が『ウルトラリング』を差し出す…!

 

それを受け取った女は三人を持ち上げた…!

 

『何故だ……何故、雷が効かないッ!?』

 

のび夫「奴はこちらの様子を伺っている……という事は『神さまプール』

 

は今、上空にある……!」

 

女「今そっちに向かってやるよ!!覚悟しなぁッ!!」

 

女が上空へ三人を放り投げた…!

 

ー壁の中の家ー

 

少佐「ば……馬鹿な!!どうやってここまで来た!!」

 

のび夫は取り寄せバッグで中尉を取り寄せながら

 

少佐に向かい言い放つ…

 

のび夫「知らなかった様だね…『神様プール』は使用者まで直通している

 

んだ。『エースキャップ』で上空に投げてもらえば逆に使用者まで辿る事

 

もできる…!」

 

 

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少佐「……!!」

 

男「今日という日を……どれ程待ちわびた事か……!!」バキッベキッ!

 

神様ステッキをへし折り

 

三人が少佐に詰め寄る……

 

女「さて…こいつをどう料理するよ…!」

 

大尉「当然、死ぬより苦しい思いをさせなきゃあな……!」

 

少佐「ひぃぃ……――――――――――――――

 

―――――――――…

 

のび太「本当に……良いのかい?」

 

男「ああ、これでも思う存分制裁を加えたつもりさ……」

 

大尉「こいつは指名手配中の『連続殺人犯』だ。俺達以外にも沢山の被害

 

者遺族が今も苦しんでいる。」

 

女「だから……こいつは司法に任せることにするよ。あたし達が我を貫い

 

て手を下せばこいつと同じになってしまうからね…」

 

男「あんたは復讐心に取り憑かれた俺達の暗雲を拭ってくれた……本当に

 

感謝してる……!」

 

のび太「そんな……でも良かった。初めて会ったときより、三人とも大分

 

晴れやかになった気がするよ」

 

女「さて……私たちの道具を返さなきゃね……」

 

のび太「うーん……ジークフリードも使ってしまったし、僕はいいや。処

 

 

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分するなり使うなり好きにしてくれよ………どうしたんだスネ夫?」

 

神様プールで街の景色を覗いていたスネ夫の顔が青ざめていく……

 

スネ夫「大変だ……のび太……あれ………」

 

スネ夫が水面を指差す

 

そこに映っていたのは次々と動物を体に取り込んでいく一人の男の姿…

 

のび太「こ…こいつは……『大佐』ッ!?」

 

大尉「行くのか……」

 

のび太「うん……僕の戦いはまだ終わってはいないからね…!」

 

男「俺達も協力しようか?」

 

のび太「いや……今回ばかりは誰も手を出さないでもらいたい……!」

 

男「何か因縁があるみたいだけど……あんたならきっと上手くいくさ…!

 

 

女「絶対負けるんじゃないよ…!!」

 

スネ夫「のび太……僕は待つことしかできないけど……死ぬなよ…!」

 

のび太は四人に手を振り見送られるまま

 

大佐と決着をつける為、水面へと飛び込んだ…!

 

ー動物園ー

 

目的地にたどり着いたのび太…

 

あたりを見回すと周囲にパトカーの残骸らしきものが四散している

 

先行していた警官隊の壊滅……

 

 

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今から戦う相手がどれほどの猛威を振るうのか

 

想像を苦にしない光景である

 

大佐「久しぶりだな……!」

 

のび太は声のする方へ目をやると

 

そこにはこの世の生物とは思えない程に豹変した男がそびえ立っていた

 

人間の胴をも鷲掴み出来るほどに大きな手には鋭利な爪が生えそろってお

 

 

鉄すらも噛み砕きそうな牙とアゴ

 

そしてその背には大きな翼が湛えていた…!

 

大佐「見たかね……これが進化の到達点だ……!」

 

のび太「学校で殆どの道具は壊したと思ってたけど……まだそんな道具を

 

隠し持っていたとは……!」

 

大佐「他の生物を自身に取り込む『合体のり』も使い方次第でここまで昇

 

華させる事が出来るのだ!」

 

のび太「何が昇華だ!そういうのは悪用って言うんだよ!」

 

大佐「君にはこの素晴らしさが理解できないらしい。残念だよ。」

 

のび太「大佐!今度こそお前を倒す!!」

 

のび太は『がん錠』を何粒か口に放り込み

 

渾身の力を込めて大佐に殴りかかった!

 

のび太「ぐッ……!!」ブシュウウウ…

 

 

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のび太の拳が大佐の肉体へと沈み込む…

 

しかし大佐にダメージは無く、放ったその拳の方がズタズタに削られてし

 

まった…!

 

のび太「―――…この皮膚は甲羅っ!?それに……無数の硬いトゲが鱗の

 

様に張り巡らされている……!!」

 

大佐「………進化とは『克服』の系譜ッ!」

 

大佐「ある者は鎧で身を包み、ある者は自然にその身を委ね、ある者は空

 

へ駆け上がり……!」

 

大佐「生物達はありとあらゆる障害や環境を克服することで激化した生存

 

競争から生き残ってきた……!」

 

大佐「こうして長きに渡り積み重ね上げてきた『闘いの遺伝子』達が人の

 

叡智によって交わり、今、一個の生命体と成した!」

 

大佐「それが………私だ!」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

 

のび太「くっ……クレイジーな奴だ……ッ!!完全にイッちまってる…!

 

!」

 

大佐「非力な人間は『道具』を駆使する事で、辛うじて野生動物と対等の

 

存在になる事が許される……!」

 

大佐「君も人間の端くれなら……進化のその先を見せてみるのだな!!」

 

のび太が後ろに駆け、距離を取ろうとするも

 

 

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大佐に回り込まれてしまう…!

 

大佐「チーターの時速は100km以上……四足を持ってすれば君など捉えら

 

れぬ速度では無い……!!」

 

のび太〈間合いが……取れない……!!〉

 

大佐「園内に身を潜めてからの不意打ち……人間である君が至る考えは至

 

極読みやすい」

 

大佐「しかし今の私は『視力』も、『嗅覚』も、『聴力』さえも常人のそ

 

れとは比べ物にならないほどに飛躍しているのだよ!」

 

のび太「……!!」

 

大佐「リスがくるみを割る程度の知恵で……この私を仕留められると思う

 

なよッ!!」

 

大佐が急速に間合いを詰め

 

のび太に襲いかかる!!

 

大佐「知っているかね!檻に入れることで観察出来る様になったゴリラ…

 

…その野性の力を解放してやると……!」

 

のび太「何を…ッ!?」

 

大佐はのび太の腕を掴み上げると

 

雑巾の如く両手で捻りあげた!

 

のび太「うわぁぁああああ!」ベキッ!ボキッ!バキッ!

 

大佐「握力、実に500kgに及ぶ……その力を持ってすればご覧の通りだ。<

 

 

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p> 

実に脆い生き物……!」

 

大佐「思い上がった人間は自分達の牙を磨くことさえ忘れてしまったのだ

 

……その報いを受けるがいい……!」

 

のび太〈そんな……『がん錠』で鉄並の硬度を得ている肉体でさえも……

 

!!奴には関係無いというのかッ!?〉

 

のび太「な……ならば……!!」

 

のび太はもう一方の手で取り寄せバッグからフラスコ瓶を取り出し

 

大佐の頭にその中身をぶち撒けた…!

 

大佐「ぐッ…!……これは……『酸』!?」

 

のび太「ただの酸じゃあ無い……硫酸の比じゃない腐食性を備えた『超酸

 

』の一種だ……ッ!」

 

のび太「人間の戦争は『科学力』……ハイテクノロジーが戦力を決める…

 

…ッ!!」

 

のび太「獣の理論には無い……人間の力を教えてやるッ!!」

 

大佐「君はひとつ重大な事を忘れているようだ……」

 

のび太「!?」

 

大佐「究極の生命体である以前に……私は一人の人間だ……!」

 

酸によって溶けた皮膚が剥がれ落ちていく…!!

 

しかし、剥き出しとなった大佐の顔は全くの無傷であった

 

大佐「外殻は言わば膜…いかに強い酸と言えど、何層にも覆った鎧を全て

 

 

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溶かし貫くには多少の時間がかかるものだ…」

 

大佐「外殻が全て溶解する間に『脱皮』を済ませれば……酸が私の肉体に

 

到達する事は無い……!」

 

のび太「そ…そこまで自分の体を操る事が出来るなんて……ッ!」

 

大佐「野生動物に人間の知恵が加われば、君の言う『科学力』も最早無に

 

等しい!!」

 

大佐の大きな口が

 

のび太の首筋を捉える!

 

のび太〈まずいッ!!ワニにも似たこの口ッッ!!噛む力は恐らく先程の

 

握力の比じゃない…ッ!!〉

 

これを喰らえば一撃…!!

 

避けようにも片方の腕を掴まれて動けない状況…

 

のび太はここにきて常軌を逸した選択を迫られた……!!

 

――――――ブチン!!

 

のび太「動けないなら……『チャンバラ刀』で掴まれた僕の片腕を斬り離

 

すまでだ……ッ!!」

 

大佐「フハハ……そうこなくては。君も『野性の闘い』がどういう物かわ

 

かりかけてきた様だな」

 

のび太「狩るか狩られるか……なら当然僕は『狩る方』を選ぶよ……!!

 

 

 

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大佐「それを決めるのは君ではない……野性の闘いとは即ち、弱肉強食の

 

世界ッ!!実力が物を言うのだッ!!」

 

のび太〈狩る……とは言ったものの……どうするッ!?奴の『弱点』がま

 

るで見当たらない…!!〉

 

のび太〈油を付けて火を放とうが奴の身体機能はそれを超越するだろう…

 

ッ!それ程までに満ち溢れた奴の自信…!!〉

 

取り寄せバッグから『近代兵器』でも取り寄せて

 

この目の前の生物を粉々にしてやりたいと思うのび太であったが…

 

中学生である彼には銃や爆弾の種類も、まして取り扱いすら知る由も無い

 

仮に拳銃を取り出し安全装置を探そうものなら、その間に相手の牙が自身

 

を貫いているであろう

 

それ程に、大佐のその眼は全てを屈服させる迫力をはらんでいた…!

 

のび太〈この状況、ヘビに睨まれたカエル、いや…生きたまま丸呑みされ

 

ているかの様だ……!!〉

 

大佐「攻めあぐねている様子だな。ひとつ、私がヒントをやろう」

 

大佐「ライオンにしろ……チーターにしろ……動物が標的を仕留める時、

 

まず何をすると思う……?」

 

のび太「……?」

 

大佐「ある者は毒を用いて、ある者は呼吸器を狙い……」

 

大佐「そして私の場合、こうやって――――――――――――…」

 

 

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キィィ――――z_______ン!!

 

のび太「――――――――――――!?」ビリビリビリビリ……!

 

のび太〈何だ……!?景色が歪んで……!?〉

 

のび太〈……僕は………その場に倒れているのか――――――ッ!?〉

 

大佐「――――――――――…相手の身動きを……封じる……ッ!」

 

大佐「良い眺めだろう?といっても今の君には聴こえていないだろうが…

 

…」

 

大佐「狼の喉笛と蝙蝠の超音波の原理を併用した『特殊な声帯』に大量の

 

空気を通過させた……!」

 

大佐「これによって発せられた『音』は鼓膜を破り……三半規管にダメー

 

ジを負った君は平衡感覚を失った…!!」

 

のび太〈耳が聴こえない――――――ッ!?それに黄金バットで殴られた

 

時のような眩暈が…ッ!!〉

 

倒れているのび太の前に

 

大佐が詰め寄る…!!

 

大佐「正直残念だよ。君を倒してしまえばこの先、能力を思う存分に披露

 

できる好敵手は恐らく現れまい……」

 

大佐「競争無き生物は己をも滅ぼす……しかしそれ以前にこの力は君を葬

 

る為に与えられたものだ……目的が成就されるなら、私は滅びようとも構

 

わん……!」

 

 

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大佐の開いた大きな口が

 

のび太の胴に喰らいついた!!

 

大佐〈―――――内臓の一部は貫いた……しかし絶命してはいない様だ…

 

…〉

 

鋭い牙がのび太の体に食い込む……

 

しかしその一撃は肝心の急所を逸らす形となった

 

大佐〈この一瞬で上体を逸らし急所への一撃を避けたのか……!?〉

 

大佐はのび太の頭部に視線をやると

 

そこには、古いテレビに取り付けるアンテナの様な物体が刺さっていた…

 

 

大佐「……これは……『道具』!?」

 

のび太〈『あらかじめアンテナ』……これを刺せばあらかじめ起こる出来

 

事を予測して僕の体を自動で動かしてくれる……!〉

 

大佐「……道具を使おうとも肝心の体は身動きも取れず……致命傷には変

 

わりあるまい!このまま噛み砕かせてもらおう!!」

 

大佐は顎に力を入れ

 

のび太の体を二つに噛み千切った!!

 

しかし…!!

 

大佐「……奴の体ッ!!一体何が起こった!?」

 

噛み切られたのび太の体はその場に崩れると

 

 

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ドロドロに溶け出した…!

 

のび太〈『あらかじめアンテナ』が体を操ってくれたおかげで……片腕だ

 

けは自由に動かす事が出来た………!〉

 

のび太はあらかじめアンテナに操られた事により

 

取り寄せバッグからサンタインを取り出し、服用していたのである

 

大佐「……奴の体がッ!!『液体化』している!!この期に及んで何をす

 

る気だッ!?」

 

サンタインにより液体となったのび太は

 

ズルズルとその身を這わし

 

排水溝の金網へと落ちてゆく…!

 

大佐「逃げるか…!?……だが、この声帯が発する『超音波』のソナーを

 

持ってすればどこへ逃げようと同じだ……!」

 

金網を通る事でのび太の頭から外れてしまった『あらかじめアンテナ』を

 

踏み潰すと

 

大佐は狼の遠吠えにも似た、けたたましい雄叫びを上げた……!!

 

ー下水道ー

 

のび太「……ッ!!」

 

のび太〈タイム風呂敷で傷を塞ぎ一命は取り留めたものの……この倦怠感

 

ッ!熱ッ!吐き気ッッ!〉

 

のび太〈僕は未知の生物に噛まれた事で『毒』もしくは何らかの『ウイル

 

 

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ス』に犯されている可能性が高い……!!〉

 

のび太〈そしてこの不衛生な環境……感染症の疑いもあるな………!!〉

 

のび太「『お医者さんカバン』で血清を作り……『ウルトラスーパーオー

 

ルマイティワクチン』で体内のウイルスを破壊するッ!!」

 

――――――――――――――――――……

 

のび太「ひとまず助かった……!しかし地上に戻った所でどうすればいい

 

んだ……!?」

 

のび太「僕が奴に引けをとらない点は『スーパー手袋』の怪力……とすれ

 

ば『車』を持ち上げて奴を叩き潰す以外に方法は無い……!!」

 

『――――――無駄な抵抗はせず!さっさと上がって来るがいい!!』

 

下水道に大佐の声が響き渡る…!!

 

のび太「さっき僕の耳がやられた攻撃は恐らく『音』によるものだ……」

 

のび太「『音』を操るなら……奴はコウモリのように跳ね返った『超音波

 

』を聞き分け、こちらを探知できるはず……」

 

のび太「金網やマンホールから馬鹿正直に飛び出すのは駄目だ………『通

 

り抜けフープ』で地上へ出る…!!」

 

『――――――早く出て来たまえよ!!君が生き延びているのはわかって

 

いるのだ!!』

 

のび太「……さっきから馬鹿みたいにデカイ声で喚きやがるね全く…!今

 

すぐ出てくればいいんだろう!?」

 

 

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ー動物園ー

 

『通り抜けフープ』を使い下水から地上へと飛び出したのび太

 

しかし、そこに大佐の姿は無かった…!

 

のび太〈しめたッ!!奴に見つかっていない!!今のうちにパトカーを持

 

ち上げて……!〉

 

その時である……!

 

進行方向に突如、隕石の如き物体が飛来し

 

のび太の胸をかすめた…!

 

のび太「――――――ッ!?」

 

大佐「……ちっ、あと少し前に出ていれば楽になれたものを……!」

 

のび太「今のは大佐……!?大佐が『滑空』したのか……!?速すぎるッ

 

!!」

 

のび太が空を見上げるとそこには

 

大きな翼を広げた大佐が旋回し、こちら側を見下ろしていた…

 

大佐「ツバメはその種類によっては時速170kmを超えるものも存在する

 

…!」

 

のび太「……!」

 

大佐「更に……ハヤブサの急降下時のスピードは角度、高度によって時速

 

300kmに達するッ!」

 

大佐「当然、それらを取り込んだ私にもその可動速度に達する事が可能だ

 

 

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!この意味がわかるな!?」

 

時速300km……!

 

それ程まで高速に動き回る相手に対し

 

果たして重い車を叩きつける事は出来るのだろうか……?

 

のび太「……非現実的すぎる……しかし、これしか手段は……!!」

 

二度目の滑空

 

大佐の持つ鋭利な爪は

 

がん錠によって鉄の硬度と化したのび太の肉体をも貫き

 

その脇腹を深く抉る…!!

 

大佐「深いな……今のは致命傷だろう!君はもう動き回る事は出来ない…

 

…!!次で最後だッ!!!」

 

大佐が再び上空へ舞い上がり

 

その身を旋回させる…!

 

のび太〈タイム風呂敷で傷を治している間に……!!次の急降下攻撃をモ

 

ロに受けてしまう!!〉

 

のび太〈このままカウンターで迎撃するしかないけど……!!時速300km

 

相手に重い物体を命中させるには……リスクが高すぎる…!!〉

 

のび太「あんな大した事の無い相手に負けるなんてな……カッコつけずに

 

みんなの協力を得ていれば良かったよ………」

 

それはのび太も意識しない内に

 

 

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喉から不意にでた言葉だった

 

のび太〈何を言っているんだ僕は……〉

 

今、圧倒的な能力で追い詰められているにも関わらず

 

相手を下に見てしまったのだ……

 

相手は大した事がない

 

どうしてそう思えたのだろうか…

 

のび太〈そう遠くない……さっき……ほんのさっきだ……大佐に『違和感

 

』を覚えたんだ……〉

 

のび太〈あんな圧倒的な実力の相手にも関わらず……こう、何というか…

 

…〉

 

――――――あえて言うならば、『虚勢』

 

三度目の滑空

 

大佐の大きな手はのび太の急所を完全に捉えた……!!

 

大佐「…!?」

 

しかしどうしたものか

 

のび太に直撃する筈であったその手を逸らした事によって

 

大佐はバランスを崩し、大地に激突する形となった…!

 

のび太「…………」

 

大佐〈……私の方が『反射的』に身を逸らしてしまった……!〉

 

大佐〈それもただの反射行動では無い…!何か……奴を『本能的』に危な

 

 

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いと感じた……!〉

 

大佐〈今、奴は一体何をッ!?……私に対し、何を『投げた』のだ…!?

 

 

のび太「………思った通りだ…」

 

のび太は振り向き

 

地に伏せている大佐を見下ろしながら言った……

 

のび太「僕は終始圧倒されっぱなしだった……だからこそ『違和感』を感

 

じたんだ……」

 

大佐「……!?」

 

のび太「圧倒的優位な立場である君の言葉から…信じられない『違和感』

 

を抱いた……」

 

のび太「エリマキトカゲの威嚇行動にも似た……『虚勢』を感じたんだ…

 

…」

 

大佐「私が………エリマキトカゲだと……?」

 

のび太「君は自身の事を……あらゆる障害や環境を克服した究極の生命体

 

であるかのように自負していた……」

 

のび太「にも関わらず、ある一点において君は保守に回った……!」

 

大佐「……!」

 

のび太「君はあれだけ間髪をいれず攻撃してきたのに『下水道』まで逃げ

 

た僕を追い詰める事はしなかった……!」

 

 

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大佐「ッ!!」

 

のび太「先程の音を利用した攻撃から察するに、君は暗闇に適した特性を

 

得ているはず……」

 

のび太「ならば何故、ワニの遊泳能力やコウモリ等の特性を利用し、僕に

 

追い討ちを仕掛けなかったのか……」

 

のび太「下水道に僕以上の天敵がいたとは考え辛い……ならば答えはひと

 

つ……!!」

 

のび太「君は……本能的に『水辺』を恐れていたんだ……ッ!」

 

大佐「何を『投げた』……!?」

 

のび太「……君は急降下した時、『さっきの物体』に触れたようだね……

 

 

大佐「何を『投げた』かと聞いているんだッ!!」

 

のび太「そろそろ兆候が現れるはずだ……!」

 

大佐「ウプッ………!!」

 

突如、大佐の身体に変化が訪れる…!

 

顔はブクブクに膨れ上がり

 

鎖骨から首周りに駆けて徐々に皮膚が裂けていったのである

 

のび太「僕が感じた違和感は……君があらゆる動物の長所を取り入れたに

 

も関わらず……!」

 

のび太「水中で呼吸する為の『エラ』が無かった事だ!」

 

 

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大佐「貴様……ッ!この私に『魚』を投げつけたのか…ッ!?」

 

のび太「急降下する寸前の君から取り寄せバッグで『合体のり』を奪い…

 

続いて取り寄せたマンボウに合体のりを垂らした……ッ!」

 

大佐「マンボウ……だと……ッ!?」

 

のび太「君が何故、魚類を取り込まなかったのか……それは肉体にあると

 

僕は考えた」

 

のび太「以前の様に脳で考え行動する以上、君は『哺乳類』である人間に

 

近い形で肉体の機能を維持しなければならない」

 

のび太「君が恐れたのは『肺呼吸』と『エラ呼吸』の両立、そして……」

 

大佐「ガハ……ッ!?」

 

のび太「魚の体内にいる寄生虫だ……ッ!」

 

のび太「マンボウは数十種類もの虫に寄生されている……そのほとんどが

 

人体に影響は無いが…」

 

のび太「中には『シュードテラノーバ』の様に人体の胃や腸を食い破る虫

 

がいる……ッ!!」

 

のび太「『人間』がベースの君にマンボウをそのまま取り入れたら……寄

 

生虫は瞬く間に全身を駆け巡るッ!!」

 

倒れていた大佐が鞭で打たれた様にもがき始める…!

 

地に何度も頭を打ちつけながら身を捩じらせ、胸を掻きむしる…

 

慣れない肉体へと変化した事で呼吸すらままならないのか

 

 

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その口からは泡を吹き出していた……

 

のび太「『合体のり』で取り込んだ動物も、僅かながら意思や習性が残っ

 

ている……」

 

のび太「寄生虫を送り込まれた事で危機を察知した動物達が統制から逃げ

 

たがり、肉体が意思に反している様だね……」

 

大佐「こんな……こんな事が許されていいのかッ!?」

 

のび太「『非人道的』と言いたいのだろうけど……君はもう『人間』では

 

ないしそれだけの事をしてきた…」

 

のび太「それに……君を裁くのは僕じゃない………ッ!」

 

のび太は取り寄せバッグから

 

ひとつのペンを取り出した……

 

大佐「……何を……する気だ……ッ!?」

 

のび太「今朝、留置所から逃げ出すとき僕は銃で撃たれた……君が学校で

 

起こしたテロ事件の被害者の親にね……」

 

大佐「………?」

 

のび太「『ブラックホールペン』で描いた円に物を投げ込むと、物が吸い

 

込まれて消える……」

 

のび太「後で『ホワイトホールペン』を使って同じように円を描くと、そ

 

の円から吸い込まれた物が飛び出す……ッ!」

 

大佐「ま……まさか………」

 

 

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のび太は取り出した白いペンで手の平に丸を描き込むと、大佐の頭に向け

 

た……!

 

のび太「これが……お前が傷つけた人達の痛みだ……!!」

 

――――――――――――…

 

ー夕刻、動物園ー

 

部下A「警部!?お体の方は大丈夫なんですか!?」

 

警部「ああ、心配ない……現場に呼ばれたからには寝込んではおれんよ…

 

…」

 

部下B「それより聞きましたか!?テロ事件の首謀者と思われる男、第二

 

班の我々が着いた頃には既に銃殺された後だったとか……」

 

警部「ああ、その事でちょっと、な…………」

 

部下A「しかしあの怪物のような男を誰が仕留めたんでしょうね……」

 

警部「………神様が…天罰をお下しになったのかもしれんな………」

 

部下A「警部?どうかしました?」

 

警部「いや何でもない!引き続き現場に当たってくれ。」

 

長い戦いの一日は幕を閉じ

 

戦士達はそれぞれの帰路に着いた……

 

――――――――――…

 

しずか「のび太さん、明日は家に誰もいないわ……」

 

のび太「明日だね……わかった。」

 

 

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のび太はそう言い終えると

 

電話を切った……

 

思春期のカップルが交わすような

 

やましい会話ではない

 

大佐でさえ公共施設に壊滅的な被害を与えたのだ

 

残る少将や中将がもたらす被害規模は恐らくそれ以上…

 

ドラえもんと戦う為、そして自分達の身を守るために

 

今一度みんなで作戦会議を開くことにした

 

――8月1日、朝――――――…

 

ーしずか宅ー

 

ジャイアン「さて、今日はみんなに集まってもらったわけだが…」

 

スネ夫「ちょ……ジャイアン、ここはしずちゃん家だし…ややこしいから

 

のび太に仕切らせた方が……」

 

ジャイアン「お、おう…そうだったな……」

 

しずか「戸締り終わったわ…」

 

のび太「じゃあ始めるよ」

 

とうとう強敵の候補である『大佐』まで仕留めた

 

残る部下の内、脅威なのは『少将』と『中将』である

 

のび太はこれまでの記憶をもとに

 

相手が持っているであろう道具を分析し、今後の対策を練ろうと提案した

 

 

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しかし……

 

ジャイアン「ちょっと待てよ!」

 

ジャイアンがのび太の話に割り込む

 

スネ夫「ちょ……ジャイアン……話はまだ始まったばっかりだよ……」

 

ジャイアン「のび太、俺達が聞きたいのはそういう話じゃねぇ……」

 

のび太「……?」

 

ジャイアン「出木杉が今どうなっちまっているのか!!まずはそこだぜ!

 

!」

 

しずか「出木杉さんが……この戦いに巻き込まれているの!?」

 

スネ夫「そういえば、しずちゃんは知らないんだっけ……僕らは一度『階

 

級ワッペン』を貼られてしまったのさ」

 

ジャイアン「ニュースで動物園の惨状を見たけどよ……あれは人を何とも

 

思ってないような奴が暴れたとしか思えねぇ酷い有様だったぞ……!!」

 

ジャイアン「もし出木杉までああなっちまってたら……元に戻す手立ては

 

あるのかよ!?」

 

のび太「それについては心配ない…」

 

三人「!?」

 

のび太「………………と思う」

 

スネ夫「なんじゃそりゃ」

 

のび太「いや、根拠が無いわけじゃない。ワッペン以外にも道具で洗脳し

 

 

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ているとすればそれは『桃太郎印のきび団子』……」

 

ジャイアン「だから!それを出木杉が食っちまってたら……!」

 

のび太「君たちはワッペンを貼られた時、ドラえもんに直接会ったかい?

 

きび団子は食べた?」

 

スネ夫「そういえば団子どころか………」

 

ジャイアン「ドラえもんにすら会ってねぇなあ……」

 

のび太「そう。君たちはワッペンを貼られた後すぐに、支給係から道具を

 

貰いそのまま僕を倒しに来たんだ。」

 

スネ夫、ジャイアン「………?」

 

のび太「つまり准士官程度にワッペンを貼られた出木杉は放置プレイ状態

 

!大した事ないってことさ!」

 

ジャイアン、スネ夫「……………根拠になってない!!」

 

しずか〈のび太さんは出木杉さんの事、嫌いなのかしら……?〉

 

スネ夫「あれから20日近く経ってるんだぞ?流石にドラえもんも全員の部

 

下を召集して『きび団子』を食わせているんじゃ……」

 

のび太「それは無いよ。2日前、僕は中尉や大尉と一戦交えたけど…彼ら

 

は既に自分達でワッペンを破いて、ドラえもんへの忠誠すら無かった。」

 

スネ夫「ドラえもんも随分とずさんな管理体制だなぁ……」

 

のび太「そこだよ。色々思い返してみると道具もワッペンも下の階級に行

 

くほど部下にまかせっきり……」

 

 

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しずか「そこまで部下には期待していないのかしら?」

 

のび太「沢山戦わせて僕にいくつか道具を消費させるのが目的なんだと思

 

う……だからドラえもんにとって下の階級の者は捨て駒みたいなものなん

 

だ。」

 

ジャイアン「酷ぇ話だな……」

 

のび太「そこでさっきの話に戻るけど……現在、僕は見事に敵の術中には

 

まってしまっている訳だ……」

 

のび太「相手の持っている道具をとことん悪用すれば恐らく、大勢の人達

 

が被害に巻き込まれる事になる……」

 

三人「!?」

 

のび太「起死回生の道具が底を尽きた今の僕には人命救助が出来ない……

 

だからこの道具を君たちに渡しておく」

 

のび太「この…『テキオー灯』で君達は人命救助に専念して貰いたい……

 

!」

 

スネ夫「……てことは、のび太は今まで通り一対一で敵に挑むのかい!?

 

 

しずか「そんな…!危ないわ!」

 

のび太「わかっておくれよ……そりゃあ四人で敵を迎え撃ちたいけど…そ

 

うすれば無関係の人達に被害が及んでしまうんだ……」

 

ジャイアン「わかったぜ!のび太の心意気、確かに受け取った…!」

 

 

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スネ夫「ジャイアン…!?」

 

しずか「たけしさん……?」

 

ジャイアン「街の人達の救助は俺達に任せて、お前はお前の成すべき事を

 

やりな!」

 

のび太「……ありがとう、ジャイアン!」

 

しずか「たけしさん……でも……」

 

ジャイアン「しずちゃん、そりゃあ俺達も協力してぇ……けど、俺達に出

 

来るのはこいつの邪魔をしない事だけだぜ……!」

 

しずか「そ……そうね………少しこの場を外すわ……お手洗いに行ってく

 

る……」タッタッタ…

 

のび太「なんだか具合悪そうだね…大丈夫かな……」

 

ジャイアン「これはひょっとすると…!」

 

スネ夫「しずちゃんはのび太の事が……!」

 

のび太「え?え?ええ!?」

 

スネ夫「おいおい耳まで赤くなっちゃって!」

 

ジャイアン「ほんとわかり易い奴!」

 

キャ――――z___ッ!!

 

三人の笑い声が

 

突如、悲鳴によって掻き消える…!

 

スネ夫「今の悲鳴は……!」

 

 

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のび太「しずちゃん!?」

 

ジャイアン「……行くぜ!のび太、スネ夫!!」

 

のび太「こっちからだ!!」ガチャッ!

 

しずか「いやーーーまだ入っちゃだめーーーー!」 ドコ!バキ!グシャ

 

ッ!!

 

のび太「……っ」

 

ジャイアン・スネ夫「oh……」

 

のび太〈こんな時に風呂に入ろうとするやつがあるかっ……!!〉

 

しずか「……着替えたわ…これ見て…」

 

しずかは浴室へ三人を案内し

 

浴槽に浮いている物体を指差した……

 

しずか「お風呂に入ろうと覗いてみたら既に……」

 

のび太「これは……『瞬間移動潜水艦』!!」

 

スネ夫「潜水艦って……なんでそんなものがここに?」

 

のび太「ただの潜水艦じゃない……これは中のスイッチを押せば水場から

 

他の水場へワープできる……」

 

ジャイアン「てことはよぉ、つまり……」

 

しずか「誰かがこの『瞬間移動潜水艦』を使って……この家に侵入したっ

 

て事…?」

 

のび太「……恐らく」

 

 

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┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・

 

スネ夫「じ……冗談じゃないやい!今も僕らの様子を伺っているかも知れ

 

ないなんて……」

 

のび太「待った!単独行動は危険だ…!少なくとも四人で固まっている内

 

は大丈夫だと思う」

 

ジャイアン「確かに……始めから俺達を倒せるならこんな回りくどい方法

 

で襲ってはこねぇ…!」

 

しずか「でも……この家へ侵入しているのなら、放っておくわけにはいか

 

ないわ」

 

スネ夫・ジャイアン「…………」

 

のび太「ひとまず部屋に戻ろう。もし家の排気口を使って移動していたら

 

…『換気扇』があるこの場所は危険だ……」

 

ーリビングー

 

ジャイアン「おい……こりゃあ……!」

 

スネ夫「しずちゃん家ってこんなに広かったっけ……?」

 

しずか「どうなっているの……!?」

 

四人がリビングへ移動すると

 

そこは野球場がすっぽり収まるほどの巨大な空間となっていた…!

 

のび太「家具の位置や大きさはそのまま……部屋の幅だけが異様に大きく

 

なっている…!」

 

 

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ジャイアン「こんだけ広いと移動にも一苦労だぜ……」

 

スネ夫「……あの……ちょっと今、言いにくいんだけど……」モジモジ…

 

ジャイアン「どうしたスネ夫?」

 

スネ夫「その……こんな時になんだけど……トイレ貸してくれないかな…

 

…」

 

しずか「トイレならここの扉を戻って、さっきのお風呂場の隣の部屋よ」

 

スネ夫「はいはいさっきのとこね…」ガチャ

 

ジャイアン「何だ?忘れ物か?」

 

スネ夫「あれ?あれ?」

 

スネ夫「い…いや何でもない……」ガチャ

 

しずか「?」

 

スネ夫「あれ?」

 

ジャイアン「どうしたんだ?扉を出たり入ったりして………」

 

のび太「い……いや…これは………」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨

 

スネ夫「なんで今、僕は部屋から出たのに……またこの部屋に戻ってくる

 

んだ!?」

 

のび太「扉の先がこの部屋に繋がっているという事か……なら、秘密道具

 

によるものだ……!」

 

ジャイアン「すると何だ?敵の攻撃は既に始まってるっていうのか!?」

 

 

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しずか「一体どういう事……?」

 

スネ夫「それより、このままじゃ僕はトイレに行けない!!」

 

のび太「『無生物催眠メガホン』ッ!ここはトイレ前の廊下!」

 

のび太がメガホンで叫ぶと

 

のび太達のいたリビングの景色がうねり

 

廊下へと姿を変えた…!

 

スネ夫「うぉ!トイレ前に移動した!サンキュー、のび太!」ガチャ!

 

のび太「とりあえずこれで移動はできるけど……!」

 

ジャイアン「な…なぁ……この廊下も広くなってないか……?」

 

ジャイアンの言う通り

 

先程まで普通だった廊下の横幅は

 

電車が二台収まるほどの広さに達していた

 

スネ夫「お待たせ………何だか家中変になってるみたいだね……」

 

しずか「自分の家じゃないような気がして……気味が悪いわ……」

 

のび太「一旦外へ出よう!『無生物催眠メガホン』ッ!ここは玄関!」

 

のび太達は玄関の扉を開けた…!

 

スネ夫「ねぇ……これって……」

 

ジャイアン「外へ出たと思ったら………しずちゃん家の玄関に戻っちまっ

 

た!!」

 

しずか「それに私の家の玄関……こんなに広くないわよ……」

 

 

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のび太「これじゃあまるで大型ビルのエントランスだ……!」

 

ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・

 

スネ夫「ど……ど……どうなってるんだよのび太!」

 

のび太「……潜水艦で侵入した奴が道具を使って家の中を複雑にしている

 

んだと思う……!」

 

ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・

 

しずか「電話が鳴ってるわ……どうしようかしら……」

 

のび太「取らないほうがいい……!今、鳴り響いている電話の着信音が途

 

切れれば敵に位置を知らせるようなものだ……」

 

ジャイアン「こんな状況で宅配や何かに来られても出迎えようが無いしな

 

……」

 

スネ夫「電話の音……!そうか!それだよのび太!」

 

のび太「?」

 

スネ夫「僕が電話に出る…!敵をおびき出してみんなで倒すんだ!」

 

のび太「!!」

 

しずか「そんな……危ないわ…!」

 

スネ夫「どうせ敵は隠れてコソコソしてる様な奴さ……!この一本道の広

 

い廊下に誘き出せば逆にこっちが有利だよ!」

 

ジャイアン「よっしゃ!そんなら俺が…!」

 

スネ夫「駄目だよ…!ジャイアンこそ敵をやっつける役目じゃないと僕は

 

 

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安心して囮になれない!」

 

ジャイアン「スネ夫……!」

 

スネ夫「別に立派な事じゃあない……僕が怖いから……この状況をさっさ

 

と終わらしたいからやるんだぜ……!」

 

スネ夫「さぁのび太!そのメガホンで三人とも移動して身を潜めてくれよ

 

!合図は僕が出す!」

 

廊下にスネ夫を残し

 

三人は付近の部屋へと移動し、身を潜めた……

 

ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・

 

スネ夫「さ……さぁ取るぞ……!どこからでもかかって来い!」 ガチャ

 

 

スネ夫「はいもしもし!こちら源ですが――――――――」

 

スネ夫は警戒を強めつつ、相手の出方を考える……

 

自分が敵ならこの状況をどこから覗いているだろうか―――――

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・

 

スネ夫「――――――――ッ!?」

 

しずか「遅いわね……何かあったのかしら……?」

 

ジャイアン「もう敵が出てきていてもおかしくねぇ!のび太!」

 

のび太「『無生物催眠メガホン』ッ!ここは電話前の廊下!」

 

――――――…

 

 

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ジャイアン「な……なんてこった……!」

 

三人が援護に駆けつけるも

 

既にスネ夫の姿は無かった…!

 

ジャイアン「どこ行っちまったんだーーー!!スネ夫ーーーーッ!」

 

のび太「どういう事だ…!?『取り寄せバッグ』でもスネ夫を掴む事が出

 

来ない…!!」

 

ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・

 

ジャイアン「また電話がかかってきた……話してる途中で襲われたのか…

 

!?」

 

しずか「今度は囮になるわ…!」

 

のび太「そんな……!!」

 

しずか「のび太さん、私なら大丈夫。私ならどこから襲われようと、この

 

『バリヤーポイント』が守ってくれるわ。」

 

のび太「いや……今度は三人だ……三人で迎え撃つ……!!」

 

しずか「大丈夫よ!私でも戦える!」

 

ジャイアン「い……いや得策だぜ…このまま得体の知れない敵に一人ずつ

 

襲われたらそれこそ絶望的だ……!」

 

のび太「そういう事、三人でも敵わないんじゃ、どの道勝てっこない相手

 

だってことさ……!!」

 

しずか「…そうね……ごめんなさい……強がっちゃって……」

 

 

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のび太「いいさ…!!さぁ、しずちゃん!受話器を取って!」

 

しずか「ええ……!」 ガチャ!

 

しずか「はい、こちら源静香ですけど…」

 

宅配屋『ああ~、そちら源さんのお宅ですか?…アマゾン様から宅配物が

 

届いております。今からお伺いしても―――――』

 

ジャイアン「さぁ……出て来い……!」

 

のび太「……!」

 

ジャイアンがリビングへと通じる扉を

 

のび太が玄関へと

 

それぞれ廊下の先を見据えて構える……!

 

ジャイアン「あーーーーーーーーー!お前はーーーーー!!?」

 

のび太「!?」

 

ジャイアンが叫ぶ!

 

その視線の先には少し開いた扉から顔を覗かせる出木杉の姿があった…!

 

ジャイアン「見たかのび太!!今のは出木杉……!!」

 

のび太「じゃ……ジャイアン、それより……!!」

 

ジャイアン「あ……あれ……!?」

 

二人が顔を見合わせ気付く!

 

しずちゃんの姿がない……!!

 

のび太「しずちゃんがいなくなった!!いつ攻撃されたッ!?」

 

ジャイアン「で……出木杉が逃げていくぜ!?どうする!?」

 

のび太「逃がさないッ!!」

 

稲妻ソックスによる踏み込みからの突進!

 

のび太は瞬く間に扉の向こう側まで駆け抜け

 

出木杉目掛けて体当たりした!

 

ジャイアン「す…すげぇ……ラグビー選手も真っ青だぜ……」

 

のび太「捕まえたぞ…ッ!!」

 

出木杉「は……離せぇ!!」

 

ジャイアン「ワッペンのついた上着を脱がすぜ!!」

 

ジャイアン「脱がしたぜ……どうだ!?」

 

のび太は嘘発見器を取り出し

 

出木杉に向けた

 

のび太「君は今もドラえもんに忠誠を誓っているのかい!?」

 

出木杉「ぼ……僕はもう正常だよ……離して……!!」

 

のび太〈反応無し……洗脳されていない!〉

 

出木杉「ふぅ……二人ともすごい形相で……殺されるかと思ったよ……!

 

!」

 

ジャイアン「ワッペンを貼られる以外に何かされなかったのか?」

 

出木杉「何かされるどころか、ドラえもんはここ最近全然連絡を取り合っ

 

てくれなかったんだ……」

 

 

 

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のび太「?」

 

出木杉「僕だけじゃない、他の幹部にものび太君達を抹殺する日程を指示

 

してそれっきりみたいだよ」

 

ジャイアン「なるほど……通りで最近平和だったわけだ……」

 

のび太「それで君は今日襲って来たわけだ。」

 

出木杉「そう。以前、准士官に渡されたこの道具を使ってね……」

 

出木杉は手に持っている

 

『引き伸ばしローラー』と『空間ひん曲げテープ』を見せた

 

出木杉「非力なもんだよ。『ひき伸ばしローラー』で各部屋の幅を大きく

 

して『空間ひん曲げテープ』で扉の先をごちゃごちゃにかき回すしか手が

 

無かった」

 

ジャイアン「戦闘用じゃあねーな……」

 

のび太〈うーん、あの頭の良い出木杉がこんな手段しか使ってこないなん

 

て……いや、この道具でよくここまでやったと言うべきか……〉

 

ジャイアン「それじゃあ、スネ夫やしずちゃんはどうやって消したんだ?

 

 

のび太「そうだった…!二人はどこへ…!?」

 

出木杉「それが……言いにくいんだけど……」

 

ジャイアン・のび太「『中佐』と協力関係!?」

 

出木杉「ごめん!この程度の道具しか貰えなかった『上等兵』の僕じゃあ

 

 

 

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君達に負けてしまうから……上の階級の人に協力してもらったんだ………

 

 

ジャイアン「や……やってくれるぜ………二人がいなくなっちまったのは

 

『中佐』の攻撃ってわけか…!」

 

のび太〈やっぱり出木杉は敵にすると面倒くさい奴だなぁ……〉

 

出木杉「僕の役割は中佐から貰った『瞬間移動潜水艦』でここへ侵入し、

 

君達を引っ掻き回して分断させる役割………」

 

ジャイアン「思惑通りじゃねーか……むしろ出来杉が戦闘用の道具を渡さ

 

れてなくて良かったよ。」

 

のび太「まったくだよ。ところでその肝心の中佐は…?」

 

出木杉「それが……中佐の道具までは教えてもらえなかった。こういうケ

 

ースも想定しているだろうね……」

 

ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・

 

ジャイアン「で……電話だ……!」

 

のび太「待ってジャイアン!その電話……何かおかしい……!」

 

ジャイアン・出木杉「………?」

 

のび太「スネ夫もしずちゃんもその受話器を取ってから行方を暗ましたん

 

だ……!」

 

のび太「特にしずちゃんは『バリヤーポイント』があるにも関わらず行方

 

を暗ました……」

 

 

 

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のび太「『バリヤーポイント』は許可無き物を絶対に通さない……例外が

 

あるとすれば、その『受話器』……!」

 

ジャイアン「受話器から……攻撃したっつーのか!?」

 

のび太「それしか考えられない……」

 

ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・

 

出木杉「敵の攻撃を見極める方法ならあるんだけど……言いにくいなぁ…

 

…」

 

ジャイアン「本当か!?」

 

のび太「一人目の犠牲で攻撃を見極める……更に敵が二人目を仕留め油断

 

したスキに、三人目が反撃をする……」

 

出木杉「そう!だけど言い換えれば犠牲は二人必要で、最後の一人は必ず

 

勝たなければならない………」

 

ジャイアン「じゃあ俺が囮で、ラストはのび太でいいんじゃないか?」

 

のび太「元部下の出木杉が最後のほうが相手も油断するかも……」

 

出木杉「いや、僕は二人目の囮になるよ。道具はのび太君のほうが使い慣

 

れているし、僕も信用を取り戻したいからね」

 

のび太・ジャイアン「出木杉……」

 

ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・

 

ジャイアン「じゃあ……受話器をとるぜ……!」

 

のび太・出木杉「うん……!」

 

 

 

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ジャイアン「はいもしもし、こちら源ですが……!」ガチャ

 

宅配屋『ああ~やっと繋がった。さっきから電話が途切れてしまいまして

 

……』

 

ジャイアン「え…ええちょっとゴタゴタで……!」

 

出木杉「のび太君……この電話の声……!」ヒソヒソ

 

のび太「……!!」

 

出木杉「『中佐』の声だ……!」

 

その時である……!

 

受話器の送話口から突如、手が飛び出し

 

ジャイアンに対しビー玉の様な物が投げつけられた!

 

ジャイアン「――――――――――――ッ!」

 

のび太〈ジャイアンが…!!〉

 

出木杉〈地面に沈んでいく!?〉

 

受話器から生えた手はその身を動かし

 

電話を元の位置へと戻すと、姿を消した

 

出木杉「送話口から手が生えた……!これって昔、僕が悩まされたイタズ

 

ラ電話の犯人を捕まえる為に君が使ったっていう……!」

 

のび太「『物体電送アダプター』ッ!!あの道具で受話器から手を伸ばし

 

て『しずめ玉』をジャイアンに投げつけたんだ……!」

 

※しずめ玉

 

 

 

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当たると身体が地に沈む。沈んだ後は意識が無くなり気絶した状態になる

 

出木杉「じゃあ、他のみんなもこの地面の下に沈んでいるんじゃ……?」

 

のび太「そうだろうね……みんなを戻すには沈んだ場所に『うかび玉』を

 

投げつけるしか方法は無い…!」

 

ジリリリリリリ・・・・ジリリリリリリ・・・・・

 

のび太〈取り寄せバッグで『うかび玉』を奪いたいけど……掴むのに失敗

 

したら奴は二度と電話をかけてこないだろう……これが最後のチャンス!

 

 

出木杉「準備はいいかい……取るよ……!」ガチャ!

 

宅配屋『お荷物が届いているんですが今からお伺いしてもよろしいでしょ

 

うか?』

 

出木杉「…………」

 

宅配屋『もしも~し?聴こえてますか~?』

 

出木杉「はい!!」

 

再び受話器から手が飛び出し

 

出木杉に『しずめ玉』が投げつけられる!

 

出木杉「のび太君!今――――――――――――ッ!」

 

のび太は受話器から伸びている手を掴み

 

向こう側へと移動した!

 

ーとある家ー

 

 

 

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中佐「う……うわああああああッ!?」

 

のび太「お前が中佐か……!!」

 

中佐「ここまで伝って来たのか!?」

 

のび太〈今だッ!!〉

 

のび太は取り寄せバッグに手を突っ込んだ!

 

のび太「痛ッ……!!」

 

中佐「……君の狙いは僕のポケットに入っている『うかべ玉』という訳か

 

……!」

 

のび太〈こいつ……カッターナイフを忍ばせていたのか……!!〉

 

中佐が床に散らばってある漫画を踏みつけると

 

その身体が徐々に沈んでいった…!

 

中佐「『絵本入りこみ靴』はそこにもう一足揃えてある……君も、ついて

 

来るよな……?」

 

のび太〈何の漫画かわからないけど……奴を追わないと『うかび玉』は回

 

収できないぞ……!〉

 

ー漫画の中の世界ー

 

のび太「どこにいったんだ……?」キョロキョロ

 

のび太は漫画に入り込むと

 

学校のグラウンドのような場所に飛び出した

 

のび太〈あそこにいるのは…中佐か!?何をやっているんだ!?〉

 

 

 

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中佐〈ついて来たか……馬鹿め!〉

 

中佐「君の名前は……『野比のび太』……そう、『野比のび太』だ……」

 

のび太「……?」

 

中佐〈……校舎まで思ったより距離があるのが気に入らないが……まぁい

 

いだろう!〉

 

中佐は校庭に落ちている黒いノートを拾うと

 

何かを記入し始めた…

 

のび太「そ……そのノートは……!?」

 

中佐〈いくら僕でも『稲妻ソックス』とやらを持つ相手に逃げ続けること

 

は出来ない……だからここでケリをつけるッ!!〉

 

秘密道具には無い得体の知れないノート…

 

追い詰められたこの場で使うからには攻撃手段に違いない…!

 

のび太は中佐の行動を阻止する為

 

勢い良く前方に飛び出す!

 

しかし…!

 

のび太「うわ!?か……身体が…沈むッ!?」

 

中佐〈かかったッ!〉

 

中佐がニヤリと笑う…!

 

のび太がこの世界に潜り込むまでに

 

『しずめ玉』を地面にばら撒いていたのだ…!

 

 

 

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中佐「これで君はゲームオーバー………だが念の為、『死の状況』も記載

 

しておくッ!僕の完全勝利の為に!」

 

中佐「ぐッ!?」

 

中佐にとって想定外の出来事が襲う…!

 

ノートに筆を走らせた瞬間

 

衝撃波がその手を貫いたのだ!

 

のび太〈漫画の中に入る直前、『空気ピストルの元』を手に塗っておいた

 

のが功を奏した……!〉

 

中佐「指先から何かを飛ばしたのか!?……それはともかく、まだ地中に

 

沈んでいないだとォ……ッ!?」

 

のび太は下半身こそ地に埋もれてしまっているものの

 

しずめ玉の効力に対し懸命に抗っていた

 

のび太「タ……タケコプターの持ち上げる力よりも強いのか……このまま

 

では沈んでしまうのも時間の問題だ……!」

 

中佐〈『状況』だ……このまま待っても奴は死ぬが……筆を拾い『死の状

 

況』を記載して奴の動きを完全に封じなければ……ッ!〉

 

のび太「筆を拾おうとしている……や、やっぱりあの黒いノートはこの世

 

界にある特有の物だ……恐らく僕を抹殺する為の……!」

 

のび太は再び空気ピストルの弾を発射し

 

中佐の両足を貫く!

 

 

 

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中佐〈くそッ!!気付かれたか!?だが、名前は書いたんだ……残り30秒

 

で奴は死ぬ…ッ!〉

 

のび太〈スネ夫から聞いた事あるぞ……ノートに名前を書かれたら40秒で

 

死んでしまう漫画の話……!〉

 

のび太は取り寄せバッグからフリスビーのような円盤を取り出し

 

中佐の近くへ放り投げた

 

中佐「何を投げた……あれは……『的』!?」

 

のび太「『はこび矢』……この矢は僕ごと『的』の真ん中へと飛んでくれ

 

る……!」

 

中佐「!!」

 

のび太は『はこび矢』を真上へ放つ

 

のび太〈この浮力でかろうじて身体が持ち上がる程度か……だけど、矢は

 

着実に中佐の近くに向かって前進している……!〉

 

中佐〈23……22……21……20……19……〉

 

のび太〈かなり近づいたぞ……後はこの『N・Sワッペン』を空気ピストル

 

で弾いて奴の額に命中させるッ…!〉

 

ビシィッ!!

 

中佐「何を……くそッ!剥がれないッ!?」

 

のび太「『N・Sワッペン』だ……君の額に張られたNワッペンと僕の持つS

 

ワッペンが磁石の様にお互いの体を引き合わせる……ッ!」

 

 

 

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しずめ玉の効力に抗うので精一杯ののび太が

 

今更近づいてきたところで何が出来るというのだろうか…

 

しかし中佐の頭の中に巡ったのは慢心とは真逆に位置する考えであった…

 

中佐〈コイツは近づいた以上『何かする気』だ……そう考えて挑まなけれ

 

ば……!〉

 

中佐はかろうじて動かせる片腕で

 

胸ポケットからライターを取り出すと黒いノートに火をつけた

 

のび太「ッ!?」

 

中佐「君が『ノートの内容を消す』道具を持っていないとも限らない……

 

可能性は潰しておかなきゃな……!」

 

のび太〈ノートが燃えても記載した事実は取り消されないのか……!!〉

 

中佐は腕時計を確認し

 

不敵に微笑む…!

 

中佐「残り8秒だ……!」

 

ノートの内容が変えられる可能性も潰えた…

 

中佐は嬉々として絶望へのカウントダウンを始めた…!

 

中佐「5……4……3……!」

 

のび太「うおおおおおおおおおおおッ!!」

 

中佐「!?」

 

のび太は雄叫びを上げながら中佐に飛びかかり

 

 

 

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その足首を掴んだ…!

 

中佐「必死に飛び掛ったところで僕にダメージは与えられず……悪あがき

 

も空しく終わったな!これで僕の勝ちだッ!!」

 

のび太「――――――ッ!?」

 

ドクン!!

 

中佐「………」

 

のび太「………」

 

中佐「………」ヨロ…

 

のび太「おっと!」

 

地面に崩れ落ちる中佐を

 

支えるように抱え上げるのび太

 

のび太「……まず『うかび玉』を回収しなくちゃな……」ゴソゴソ…

 

のび太「あとはNSワッペンを剥がして……これで良し、と………」

 

のび太が両腕を放すと

 

中佐のその身は地の底へと沈んでいった……

 

のび太「『しずめ玉』は対象が地中に沈み気絶する事で初めて効果が発動

 

したと言える……」

 

のび太「その黒いノートも君の秒読みが完了する事で本来の効果が発動す

 

る物なのだろう……」

 

のび太「効果が完全に発動する前なら『タッチ手ぶくろ』で全て君に押し

 

 

 

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付ける事が出来る……」

 

のび太「…………」

 

のび太「正当防衛とはいえ……後味の悪い結末だ………」

 

ーしずか宅ー

 

のび太「みんな……大丈夫かい…!?」

 

ジャイアン「どうやら終わったみてぇだな……」

 

回収した『うかび玉』を使った事により四人を救出する事に成功したのび

 

 

四人は歓喜……というより落胆の気持ちの方がやや強い様子である…

 

スネ夫「……のび太の言う通り人命救助に専念するよ……早々離脱するよ

 

うじゃこの戦いについていけそうもない……」

 

しずか「そうね……それより出木杉さん。広くなった家を元に戻せないか

 

しら?」

 

出木杉「今から戻すけど……それよりテレビで確認したい事があるんだ…

 

…」

 

のび太「……?」

 

ーリビングー

 

出木杉「思ったとおりだ……ほら、このニュース……!」

 

映し出した映像は一局を除き

 

ほぼ全てのチャンネルが臨時中継へと繋がっていた…!

 

 

 

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ジャイアン「ま……町の人たちが……!」

 

スネ夫「道路で溺れている!?」

 

しずか「水も無いのにどうして!?」

 

出木杉「本日強襲を指示されていたのは僕や中佐だけでは無かったってこ

 

とさ……!」

 

のび太「先手を取られたわけか……けどやる事は変わらないんだ!!みん

 

な、今すぐ都心部へ行こう!!」

 

ー都心部ー

 

しずか「着いたわね……」

 

スネ夫「それにしてもあっという間だなぁ」

 

のび太「タケコプターは時速80キロ近く出るからね……みんな、テキオー

 

灯は浴びたかい?」

 

ジャイアン「おう!バッチリだ!」

 

出木杉「僕らはさっそく救援活動にあたろう……!のび太くん、無理をし

 

ちゃ駄目だよ!」

 

のび太「わかってるさ!みんな頼んだよ!」

 

ジャイアン「遠慮無くぶちのめしてこいよ!」

 

※ドンブラ粉

 

この粉を体に付けると体の触れている床、地面、壁などが水のようになり

 

床や地面で泳いだり、壁を泳いで突き抜けることができる

 

 

 

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一般市民が地面に溺れる状況があるとすれば

 

それは『ドンブラ粉』によるものであろう…

 

のび太〈ドンブラ粉を散布しているとすれば……『高所』……!!〉

 

のび太〈そして風向きだ……この都心部に風が入り込む場所にそびえる建

 

物……!!〉

 

のび太「あそこか……!!」

 

のび太は高層ビルの連なる一帯に向かい

 

屋上を見上げた…!

 

のび太「ここを上れば恐らく……!!」

 

のび太「―――うおッ!?」

 

タケコプターで屋上へ向かう途中…

 

ビルの側面からクレーンのアームの様な小型の二又銛が飛び出し

 

のび太の腕に深く食い込んだ!

 

のび太「これは……!?どんどん突き進んで来るッ!?」

 

二又銛はのび太の腕の中を伝い

 

胴体に達しようとしていた…!

 

のび太「こ……このままじゃあ心臓に達してしまう……チャンバラ刀で腕

 

を切り離すッ!!」ブチン!!

 

切り離された腕が

 

ビルの屋上へとぐんぐん引き寄せられていく…!

 

 

 

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のび太「……あれは釣り竿なのかッ!?ビルの壁から襲って来たって事は

 

……『地中つりざお』か……!」

 

釣り上げられている腕を追っていけば屋上にいる敵

 

恐らく『少将』と対峙する事になるであろう……

 

のび太「あの腕に気を取られた一瞬がチャンス……奇襲だ…!」

 

のび太はがん錠を服用し

 

更にタケコプターのスピードを上げて上昇した

 

ー高層ビル、屋上ー

 

謎の男「釣り上げたぜェェーーーッ!!………『腕』ッ!?」

 

のび太「かかったなッ!」

 

謎の男「えッ!?」

 

背後から飛び掛ったのび太が男の顔を勢い良く殴りつける

 

謎の男はそのまま高層ビルの屋上から放り出される形となった

 

謎の男「う、うわァァァァーーーッ!何をしやがるんだァーーーーーッ!

 

!!」

 

のび太「この高さから落ちたら即死だ……」

 

謎の男「オレが墜ちてもいいのかァァァーーーーーッ!オメーの腕はオレ

 

がァーーーーッ!!」

 

のび太「君が釣り上げていたこれかい?釣竿が緩んでいたから取り寄せバ

 

ッグで返してもらったよ」

 

 

 

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謎の男「そんな…うわァァーーーーーーーーーー……」ヒューン・・・

 

のび太「さてと『タイム風呂敷』で腕を治して………」キョロキョロ…

 

のび太「あった!『ドンブラ粉』…やはりここから散布したのか……」

 

のび太「……全て散布されてしまった……僕もみんなと一緒に救助して回

 

らなければ……!!」

 

のび太「――――――…!?」

 

謎の男「よくも突き落としてくれたなッ!?」

 

のび太「コイツは……ッ!!空をとべるのかッ!?」

 

男はのび太が身構えるより先に胴体に組みかかり

 

ビルの屋上から飛び降りた!

 

謎の男「オメーもオレと同じ苦しみを味わえッ!!」

 

のび太「うわァッ!!」

 

のび太〈――――僕ごと急降下して地面に叩きつけるつもりか……ッ!〉

 

謎の男「うおァァーーーーーーッ!!」

 

のび太「この体勢のまま地面に衝突したらお前もタダじゃあ済まないぞ…

 

…って聴こえてないか……ッ!」

 

のび太は腰に組まれた腕を無理やり引き剥がし

 

立て続けに拳を振り下ろした!

 

のび太「このォッ!」ゴシャア!

 

謎の男「げぇーーーーーーッ!!」ゴキベキバキッ!

 

 

 

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のび太「一人で墜ちてろッ!」ボコォ!

 

謎の男「か…カハ………」ヒューン・・・

 

のび太「ハァー……ハァー……体勢をとって……タケコプターで上昇を…

 

…ッ!」

 

タケコプターを装着し

 

上昇を試みようとしたその時である…

 

謎の男「うおおおおおーーーーーーッ!!」ギュォォォォ!!

 

下に叩き落されたはずの男は

 

再び上昇しのび太に掴みかかった…!

 

謎の男「へへへ……逃がさねェーーーーーーーッ!!」ガシッ

 

のび太〈ま……また組みかかってきた……!〉

 

謎の男「いい加減一緒に墜ちやがれェェーーーッ!!」

 

再びのび太を下にして両者は落下する

 

途中、男の口元が不意に緩む…!

 

のび太〈何だ……奴の表情……一瞬だけど『自信』に満ちた…勝利を確信

 

したような顔だった……!〉

 

のび太「落下方向に何かあるのか……?」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・

 

のび太「うぉぉぉぉぉーーーッ!!?」

 

謎の男「へっへっへ……このあたりはビルが密集してるからなァーーーッ

 

 

 

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!!」

 

のび太が振り返った先に見えたのは

 

高層ビルの側面であった…!

 

のび太〈い……いくら僕の体が鉄の硬度でも…この落下速度でビルの側面

 

に叩きつけられたらタダじゃあすまないぞ…!!〉

 

のび太〈だが奴はなんだ…!?同じ状況の中、生身のくせに嬉々として突

 

っ込もうとしている…!!〉

 

のび太〈とにかくパワーは僕の方が上なんだ……!奴だけビルに叩きつけ

 

て身を逸らすッ!!〉ギギギ…

 

謎の男「い、痛ぇッ!?さっきから腕のロックをほどく力が尋常じゃあ無

 

いッ!?」

 

のび太「お前だけ壁に抱きついてろーーーッ!!」ドギャァ!!

 

謎の男「うわァァァァーーーッ!!」

 

ザバァァァン!!

 

のび太「何だ――――――…!?」

 

本来なら渾身の力で殴られた事により

 

男は壁に叩きつけられるはずであった

 

しかし男は側面に激突すると

 

水面へ飛び込む様にビルの内部へと沈んでいったのである

 

のび太「ビルの壁が……まるで水のように奴を吸収した……!」

 

 

 

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のび太「『ドンブラ粉』を自身にも塗っていたのか………!?」

 

謎の男「少ォ~し違うんだなァこれが……!!」ユラァ~…

 

男がビルの側面から顔を覗かせる…!

 

謎の男「いつでも地の中を泳げる様にオレは『潜地服』を着ている……!

 

!」

 

のび太〈『潜地服』か……では空を飛んだ道具は…………!〉

 

謎の男「そして……オレは『ソーナル錠』っていう道具も服用している…

 

…ッ!!」

 

のび太「…!!」

 

※ソーナル錠

 

一錠飲めば思い込んだとおりになる

 

服用者のみに効果があらわれる為、

 

竜巻等を発生させても現実の人々には一切影響が無い

 

謎の男「そういや……その頭のやつで空を飛んでいるのか?」

 

のび太「……」

 

謎の男「そんな竹とんぼみたいな道具で空を飛べるんだから相当の馬力だ

 

ろうなぁ……」

 

謎の男〈ならオレはジェット機だ……鋼鉄の……ジャンボジェット機……

 

!〉

 

キィィ―――z___ン・・・

 

 

 

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のび太「……!!!」

 

ビルから超高速で発射された男の肉体は

 

一瞬でのび太の右腕ごと肩の周囲部分をもぎ取って行った……!

 

のび太「あぐぅ………!!!」ドバッ…

 

謎の男「オレの傷は治る……オレの骨は治る」シュウウウウ…

 

のび太〈……即死さえしなければ傷は治せるけど……こんなの何発も喰ら

 

いたくないね……!〉

 

謎の男「このままどんどん突っ込んでいくぜーーーーッ!!」

 

のび太「奴は結構遠くまで飛んだようだがあのスピードならすぐ戻ってく

 

るだろう……移動するなら今しかない……!!」

 

のび太〈空中戦に持ち込まれたら勝ち目は無い……かといって地上で戦え

 

ば『潜地服』を着ている奴に分がある……!!!〉

 

のび太「奴が逃げられず…尚且つあの突進攻撃の道筋が予測出来る絶好の

 

場所は………!!!」キョロキョロ

 

のび太は遥か後方から走ってくる物体目掛けて

 

高度を落とした…

 

謎の男「あいつがどんどん下降していく……あれは……ッ!」

 

ブロオオオオオオオ・・・・・・

 

謎の男「新幹線ッ!通り過ぎようとしている新幹線に乗り込むつもりなの

 

かッ!!」

 

 

 

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のび太「『通り抜けフープ』……おじゃまするよッ!!!」

 

ー新幹線、内部ー

 

のび太「都心部からどんどん離れていくけど……奴の目的は僕をおびき出

 

して抹殺する事だ。嫌でも追跡してくるに違いない…!!」

 

のび太「この地の利を活かせばそのうち倒せるチャンスがやってくる……

 

奴に一撃をぶち込むチャンスが……!!」

 

のび太「奴を捉えるには速度だ……速度を計算しなければ……!!」

 

のび太「新幹線のスピードを時速300キロとして……後ろから追って来る

 

奴のスピードが時速800キロとすると……」

 

のび太「ここから目視する奴のスピードは……足し算すると時速1100キロ

 

!!」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・

 

のび太「奴は…マッハを超えるのか……!?」

 

のび太「い……いや、何を言ってるんだ僕は……奴は追いかける、僕は逃

 

げる。単純に引き算じゃあないか……」

 

のび太「新幹線のスピードを時速300キロとして……外から追って来る奴

 

のスピードが時速800キロとすると……」

 

えーん!えーん!

 

のび太〈いや………60で割って1分間に進む距離を割り出さないと……そ

 

してこの新幹線の全長も……〉

 

 

 

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うわああああん!

 

のび太「ええい!泣き声がうるさくて集中できない……」

 

のび太「新幹線の速度だけじゃなだめだな……内部で稲妻ソックスを着用

 

した僕も走らないと……その場合、目視できる奴のスピードは……」

 

うわああああん!うわああああん!

 

のび太「さっきから……子供にしてはやけに声が低いと思ったら大人も叫

 

んでるのか……?」

 

のび太の視線の先には

 

駅員が四つん這いで床を這うように歩いていた

 

のび太「何だあの駅員………コンタクトでも落としたのか……?」

 

駅員「あー……」

 

のび太「………!?」

 

のび太〈油断しすぎだよなぁ僕も……!〉

 

のび太はタイム風呂敷で頭を包んだ

 

のび太「……通りで簡単な計算にも頭が回らないわけだ……!」

 

駅員だけでは無い…!

 

のび太が席を見回すと

 

大人の者とは思えない振る舞いの乗客で溢れ返っていた……!

 

ある者は窓に顔を擦り付け、涎を垂らし

 

ある者は大声で泣き喚き、食べ散らかし…

 

 

 

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乗客がまるで幼児の様に戯れているのである

 

のび太〈始めに赤ん坊の泣き声がした席は………この車両の先頭付近……

 

!〉ダッ!

 

のび太は先頭の乗車席に駆け寄り

 

席を覗き込む…!

 

のび太「やっぱりだ……赤ちゃんに『ハンディキャップ』が被せてある…

 

………!」

 

※ハンディキャップ

 

周囲の人の知力および体力がこの帽子を被った者と同じレベルになる

 

のび太「はやく外さないと……周りの乗客にお漏らしまでされたらシャレ

 

にならないぞ……!」

 

赤ん坊のキャップに手をかけようとしたその時…

 

のび太はその隣に座る乗客に殴りかかった!

 

のび太「『ハンディキャップ』の効果範囲は四方5メートル外からッ!!

 

つまり5メートル内に唯一いるお前が仕掛けた事になるッ!!」

 

?「油断した隙に襲うつもりが……このトラップまで見破るとはやはり頭

 

がいいな……だけどよォ……」

 

のび太の拳が乗車席に座る男の頬を捉える!

 

しかし…!

 

のび太「き……効いていない……それどころかこっちの拳が……!」ミシミシ

 

 

 

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ミシ…

 

?「オレの身に着けている『安全カバー』はあらゆる攻撃を無効化するッ

 

!」

 

のび太「くっ……!」

 

のび太は連結部分の貫通扉を開き、乗客のいない隣の車両へ移ると

 

とりよせバッグでハンディキャップを奪った…!

 

?「そんな道具まであんのか……」ガララララ・・・・

 

のび太「その手首に貼られたワッペン……もしかしてお前が『少将』なの

 

か……!?」

 

少将「どうした?さっきまで外で戦っていた相手が少将だと勘違いでもし

 

たのか?」

 

のび太「……!」

 

少将「残念だがアイツは『少尉』……お前がこの新幹線へ辿り着いたのも

 

全てオレの計算の内ってわけだッ!」

 

ガラララララ・・・

 

のび太〈貫通扉が開いた……あれは―――!〉

 

少尉「兄貴ィッ!計画通りだねッ!やっぱり兄貴はスゲェーやッ!」

 

少将「!?…ば…バカ野郎ッ!手筈が違…!」

 

少尉の突然の乱入により少将の気が紛れる…

 

のび太はその油断を逃さなかった!

 

 

 

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のび太「ここはマグマの底!!」

 

少尉「マグマの……底…?」

 

『ソーナル錠』により

 

服用者に思い込みの効果があらわれる……!

 

少尉「ギャアアァーーーーッ!!」ジュワアアア・・・・

 

少将「!?」

 

のび太〈今だッ!!〉ズァァ・・・!

 

視線を外した一瞬……!

 

のび太は少将に近づき、自身の掌を押し付けた…!

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・

 

少将〈何だ……ッ!?奴は手袋を外して……オレに何を塗った…ッ!?〉

 

のび太は再び『安全カバー』で身を包んでいる

 

少将に殴りかかる……!

 

のび太「……終わりだ!」ボコォッ!!

 

少将「おぅふッ!?」

 

ズシャァァ―――z___ッ!!

 

少尉「え?え?」

 

のび太の痛烈な一撃…!

 

少将は乗車席をいくつもなぎ倒し

 

壁に激突する形となった……!

 

 

 

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少将「……ガハ……ッ!」

 

少尉「あ……兄貴は『安全カバー』で身を守っているのに何で……ッ!?

 

 

のび太「この、全てが逆効果になる『あべこべクリーム』を塗ってやれば

 

『無敵の鎧』は『最弱の鎧』へと成り下がる…!」

 

のび太「後は取り寄せバッグで海水を取り寄せ、僕の手についた『あべこ

 

べクリーム』を洗い落とせば……!」

 

のび太「今まで通りスーパー手袋を着用して存分に戦う事が出来る……!

 

 

少尉「そ……そんなァァーー兄貴ーーッ!!」

 

少将〈まさか少尉がここまで頭の回らない奴だったとは……プラン変更だ

 

……ッ!〉

 

少尉「……オレが気を取らせちまったばっかりにッ!!こうなったら奴は

 

オレが……!!」

 

少将「それ以上言うんじゃねーーッ!!」

 

少尉「ひ……ッ!」ビクッ!

 

のび太「……?」

 

少将「少尉よ……そういう言葉はオレたちの世界にねーんだぜ……そんな

 

弱虫の使う言葉はな……」

 

少将「なぜなら、その言葉を頭に思い浮かべた時にはッ!」

 

 

 

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少将「その時すでに行動は終わっているからだッ!!」

 

のび太「え――――――――――――」

 

少将は『独裁スイッチ』を押した…!

 

※どくさいスイッチ

 

任意の人物を消すことができる

 

消された人物は最初から世界にいなかったことになる

 

少尉「……あいつが……消えた…ッ!?」

 

少将「………みたいだな」

 

少尉「は…ははは!やったね兄貴ッ!!」

 

少将「それよりよォー……なんでオメー直接ここへ来たんだ」

 

少尉「え?い、いや……下手に外から突撃して兄貴の『ハンディキャップ

 

』作戦に巻き込まれたら俺まで溺れちまうかもしれないし……!」

 

少将「そうならねー様に『ソーナル錠』で思い込めばいいだろーがよォー

 

ーーッ!!」ドゴォ!

 

少尉「痛いッ!!何で殴るんだよォー兄貴ッ!もう戦いは終わって……!

 

 

少将「これで本当に終わっていたらなッ!」

 

少尉「え……?」

 

ゴトンゴトン・・・

 

少尉「ど……どういう事だよ兄貴……」

 

 

 

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少将「……ボスとのび太って奴は以前に一度殺り合ったって言うぜ。妙じ

 

ゃあねえか?」

 

少将「相手をボタンひとつで抹消するってんならよォー…最初に殺り合っ

 

た時点でこの『独裁スイッチ』を押せば勝敗は決したもんだろ?」

 

少尉「ボスは自分の手で抹殺したかったとかじゃあ……」

 

少将は車内の手洗い場へ向かい

 

安全カバーに染み付いた『あべこべクリーム』を全て洗い流した…

 

少尉「もう戦いは終わったんだ……考えすぎですぜ兄貴……」

 

少将「いーや、まだ油断できねーな……今まで俺たち組織を引っ掻き回し

 

た相手が一瞬で、こんな簡単に事が運ぶわけがねぇ」

 

少尉「でも…ターゲットは消滅しちまいやしたぜ?」

 

少将「………」

 

少将〈とりあえず……奴の落とした『あべこべクリーム』のケースの中身

 

も全部水道に流しておくか………〉ジャー

 

駅員「すいませーん、切符拝見させてもらってよろしいですかー」

 

少尉「やべぇ…ど…どうする兄貴……」ヒソヒソ…

 

少将「おかしいなァー?切符ならさっき見せた筈なんだがなァー」

 

少尉「そ…そうだぞ!オレも見せたッ!」

 

駅員「そうですか……」

 

駅員「嘘ついたら………針千本飲む事になりますよ」

 

 

 

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少尉・少将「ッ!!?」

 

少尉「あ……あがが…………」ズブズブズブ……

 

少将「おいバカ野郎ッ!!思い込むなよッ!?」

 

少尉「 」ブシュウウウ…

 

少将「……!!」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・・・

 

駅員は少将に対し

 

不敵に微笑みながら告げた…!

 

駅員「さぁ……戦いの続きだ……!」

 

少将〈新手がいやがったのか――――ッ!!〉

 

駅員が帽子を脱ぎ、身構える…!

 

少将「……おめぇー…見たところ野比のび太の仲間だな……残念だが奴は

 

抹消したぜッ!」

 

多目「……何を言っている?お前達は僕以外にも他の誰かを敵に回してい

 

たのか……?」

 

少将「あいつの仲間じゃあねーのか…ッ!?」

 

多目「僕は多目〈ため〉だ……とっくにご存知の筈だと思ったんだがな…

 

…!」

 

多目は取り寄せバッグから

 

舞台用の照明を取り寄せた…!

 

 

 

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少将〈あれはッ!さっき奴が『ハンディキャップ』を回収した時の能力じ

 

ゃあ……ッ!?〉

 

多目「ライトアップッ!!」ガシャンッ!!

 

ピカァァァァァァーーーーーッ!!

 

少将〈むッ!眩しい―――――ッ!?〉

 

少将の目が眩んでいる内に

 

追い討ちをかけるように多目が襲い掛かる!

 

少将「目暗ましをしたところで……『あべこべクリーム』の中身は全部捨

 

てたッ!オメーにはオレを攻撃する術は無ぇーーッ!!」

 

多目「そうかい…ッ!」

 

少将は多目の一撃をかわすと

 

大きく間合いを取った

 

少将「く……ッ!?」ミシミシミシ……!

 

多目「骨の軋む音が聴こえた……やはり通じる……!」

 

少将〈野郎……何をしやがったッ!?オレは『安全カバー』を着用してい

 

るし……今の攻撃もかわした筈だ……!〉

 

少将〈だがオレはダメージを受けた……奴が攻撃した先にあるのは………

 

!〉

 

少将「……………ま……まさか……オレの影を攻撃して……ッ!?」

 

多目「さぁね………」

 

 

 

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※影ふみオイル

 

このオイルを影に垂らし危害を加えると、影の持ち主に同様の痛みが伝わ

 

 

少将〈この多目って野郎……完全に道具を使いこなしていやがるッ!!〉

 

少将〈そして読めてきたぞ……『独裁スイッチ』のデメリットッ!!〉

 

少将〈こいつは対象者の存在を完全に抹消するが……誰かがその人物の代

 

わりを埋め合わせる事になるんだ…ッ!!〉

 

少将〈生易しいデメリットじゃあねーな……消したと思ったら見ず知らず

 

の敵に不意撃ちを許し、少尉を犠牲にしちまった……!〉

 

少将「……ボスは自分でスイッチを使う事を恐れ、部下を使って道具を試

 

したかった、という事か……」ジョキジョキジョキジョキ…

 

少将がハサミを取り出し自身の影を切り取り始める……

 

切り取られた影はムクムク膨れ上がると人間の様に動き始め、隣の車両へ

 

と駆け抜けて行った…!

 

少将「こうやってオレの影を他の車両へ逃がしてやれば……その間、オレ

 

は無敵ってわけだッ!」

 

多目「『影切りばさみ』か……やはり少将相手となると一筋縄ではいかな

 

いようだ……!!」

 

※影切りばさみ

 

人間の影をはさみで切り取ると、影の分身が出来る。分身は30分間だけ命

 

 

 

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令を聞いてくれる

 

少将「これで『安全カバー』の弱点は消えた……さぁどうするよ…!」

 

多目「解決策は無くもないさ……!!」

 

少将「ならよォー……やってみやがれーーーッ!!」

 

多目の腹部を目掛けて

 

少将の拳が放たれた!

 

多目「へっへっへー…残念でしたー!」ジャ――z___ン!

 

少将「そ…その手にあるのは……ッ!?」

 

少将の繰り出した拳は

 

取り寄せバッグから覗かせている黒い物体に触れていた…

 

多目「『取り寄せバッグ』で君が隠している『影とり餅』を奪い、続いて

 

逃げ出した君の影分身をとりよせた……!!」

 

少将「ま……まさかこれ程のやり手とは……ッ!!」

 

多目「君はこの影に触れた……よって影は再び君の元に戻る…ッ!!」

 

少将「うおおおおおおおおッ!?」ズズズズズズ・・・・・・

 

多目「せっかく逃がした影分身も空しく……これでお前には再び弱点が出

 

来たわけだ……」

 

少将「や…やろォ~…!」

 

多目「車内に照りつける太陽がお前の弱点を浮き彫りにしている内にケリ

 

を着ける……ッ!!」

 

 

 

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少将「………どうやら現実はもっと残酷だった様だな……!」

 

多目「……!?」

 

多目の大きな誤算…!

 

新幹線がトンネルに入ってしまったのだ…!

 

少将「照りつける日差しも無くなったッ!蛍光灯だらけの車内に影は出来

 

ないッ!!」

 

多目「くッ…!!」

 

多目〈ならば『空気ピストル』で蛍光灯の一部を射る………!!〉

 

少将「先に言っておくけどよォー…蛍光灯は割れねーぜッ!!」

 

多目「!?」

 

少将「元々は『潜地服』を着た少尉が外から猛スピードで突っ込んでター

 

ゲットを車内で潰しちまう作戦だったんだぜ……?」

 

少将「この新幹線に乗り込んだ時から既にッ!!『材質変換機』でこの新

 

幹線の壁や天井を限りなく硬い材質に変えてあるッ!!」

 

多目「くっ……!」

 

少将「楽しい鬼ごっこの始まりだぜ……今度はテメーが逃げる番だけどよ

 

ォーッ!!」

 

少将「オラオラオラオラオラオラオラァッ!!」

 

少将の怒涛のラッシュ…!

 

多目も負けじと反撃を繰り出すも、少将の『安全カバー』は全てのダメー

 

 

 

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ジを遮断し

 

多目は徐々に車両の隅へと追い詰められていった…!

 

少将「追い詰めたぜェーーーーーッ!!死ねッ!!」

 

ゴシャアアッ!!

 

多目「……殴ったな……?」

 

少将の一撃が腹部に命中した瞬間……!

 

多目は真後ろにある貫通扉のノブを引き、もう片方の手でメガホンを構え

 

て叫んだ

 

多目「『無生物催眠メガホン』ッ!この扉はホームドアッ!!」

 

ドガァン!

 

少将「な…何ィィィッ!?」

 

多目が後ろの扉を開けたことにより

 

二人は新幹線からほの暗いトンネルに投げ出される形となった

 

多目「新幹線の中じゃあ明るすぎるから……トンネルに出ることにしたよ

 

……!!」

 

多目「自分自身の影を良く見てみろッ!!」

 

少将「!?」

 

トンネルの僅かな照明によって映し出される少将の影…

 

その頭部分を新幹線の車輪が次々と轢いていく…!

 

少将「 」ブシュウウウウウウ・・・・・

 

 

 

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多目「僕の……勝ちだ………」ドサッ・・・

 

命を賭した最後の攻撃…!

 

多目はとうとう少将を撃破した

 

しかし、時速数百キロの乗り物から放り出され、地に叩きつけられた衝撃

 

 

多目の肉体に深刻なダメージを与えていた…

 

多目〈おそらく僕はもう………助からない………〉

 

これまでの日々が走馬灯の様に頭の中をよぎる…

 

薄れゆく意識の中、最後に多目が思うこと

 

それは何も言わずに別れてきた両親のことではなかった

 

多目〈奴は……『野比のび太』を抹消したと言っていた………〉

 

多目〈存在を抹消する道具………独裁者を………懲らしめる道具…………

 

 

多目「もう腕もあがらないけど……バッグに手を突っ込むぐらいなら……

 

 

ゴトンゴトン・・・

 

のび太「―――――――――――……!?」

 

のび太は新幹線の中で意識を取り戻した…

 

のび太〈二人はどこへ行った…?いやそれよりも僕は確か………〉

 

バッグからデジタル時計を取り寄せ

 

 

 

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のび太は時刻を確かめる……

 

のび太〈今日の日付は……8月5日……ッ!?〉

 

多目は自分以外にも戦っている者の存在……

 

つまり自身がその人物の埋め合わせである可能性に気付き

 

死の直前、『上げ下げくり』を使う事で『独裁スイッチ』の効力が切れる

 

頃まで日付を進めた…

 

自身が死に、本来戦っていた者が不在の間

 

敵組織に数日の猶予を与える結果になってしまうのを避けたかったからだ

 

多目の最期の抵抗…

 

それは、もう一人の戦う者に対するささやかな優しさであった

 

のび太〈戻ったときに襲われなかった点から察するに……少将は恐らく『

 

僕の埋め合わせ』に敗れたと見ていいだろう…………〉

 

のび太〈僕は4日も無駄にしたのか……この4日間は埋め合わせが頑張っ

 

てくれていたのだろうか……………?〉

 

のび太〈それより…みんなは無事だろうか……ちゃんと家へ帰る事が出来

 

たんだろうか……心配だ……〉

 

のび太は新幹線から抜け出し

 

タケコプターで都心部へ戻る事にした…

 

歯車がひとつ欠けたまま全ては元に戻り……

 

孤独な戦士は人知れず永い眠りにつく……

 

 

 

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別の車両にいた乗客も、戦っていたのび太にも

 

勇敢な決断をした彼の事を知る由も無いのであろう

 

だが、のび太にバトンを繋いだ彼は確かに存在したのだ……

 

――8月5日、昼――――――…

 

瞼の痙攣

 

そんな日は必ずと言っていいほど良くない事が起こる……

 

のび太「今日のは特に……嫌な感じだ……」

 

時刻は昼を回り、のび太が都心部付近に着いた頃

 

向こうから見覚えのある二人がこちらに近づいて来た……!

 

出木杉「のび太君!!」

 

ジャイアン「おおい!!のび太~~ッ!!」

 

のび太「出木杉……ジャイアン……二人ともどうしたんだッ!?」

 

のび太を探し駆け回っていたのか

 

二人とも息も絶え絶えの様子である……

 

ジャイアン「のび太……無事だったか………!!」

 

のび太「うん、少将を倒して来たよ……」

 

ジャイアン「そうか……だけど安心していられねぇ…!!」

 

のび太「?」

 

出木杉は先程町で起こった現象を

 

のび太に説明した…

 

 

 

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のび太「空から人や車が次々に落ちてくるだって………ッ!?」

 

ジャイアン「冗談じゃねぇっつうのッ!あんな光景見てられっかよォーー

 

ッ!!」

 

出木杉「テキオー灯を浴びた人達は問題ないんだけど……それ以外の大勢

 

の市民や車が一斉に空へ向かって飛んでいったんだ……!!」

 

ジャイアン「今、しずちゃんとスネ夫がテキオー灯を使って地上に残って

 

いる人の救援に回っているけど、とても人手が足りねぇ!!」

 

のび太「ちょっと落ち着いてくれよ……言ってる意味が……」

 

出木杉「ほら、あれ……!!」

 

出木杉が指差す先…!

 

100……いや、200名ともあろう人の大群が空から墜ちて来ていた……!

 

出木杉「ああやって飛ばされた人々が数分刻みで落下して来ている!!何

 

とかならないのかい!?」

 

ジャイアン「のび太!!」

 

のび太「『安全ネット』、この網は墜ちてくる人を自動的に助けてくれる

 

……!」

 

のび太は『安全ネット』を解き放った

 

のび太「あの人数なら何とかなりそうだけど……車も墜ちてくるとしたら

 

まだ油断は出来ない……人々を安全な場所に誘導しておいてくれよ!」

 

ジャイアン「のび太!?どこ行くんだ!?」

 

 

 

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のび太「諸悪の根源を突き止めてくる!!」

 

のび太は都心部へ向かい

 

走り出した…!

 

のび太〈これ程の規模の災害を起こせる道具を持つ事が許されるのは恐ら

 

く一人………〉

 

残る敵、『中将』

 

ドラえもんを除けば最難関の敵である

 

のび太は今になって

 

准士官の言葉を思い出していた……

 

のび太〈下の者に道具を渡す役を任されるという事は道具の編成も好きに

 

任されている………〉

 

中将は道具の支給係

 

今まで自分を窮地に追い込んできた部下の殆どの道具編成を任されている

 

事になるのだ……

 

のび太「部下思いの遠慮した奴だったらいいんだけどなぁ……なんて希望

 

的観測を抱いてもしょうがないか……」

 

のび太「僕も場数を踏んだ……戦いの駆け引きなら自信はある……!」

 

次の瞬間――――

 

のび太の甘い考えは一気に吹き飛ぶ事になる……

 

のび太「――――――…」

 

 

 

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のび太は絶句していた

 

高層ビルの密集する都心部に足を踏み入れた瞬間

 

天地がひっくり返ったのである…

 

のび太「あ…危うく『上』に落っこちる所だった……」

 

のび太は丁度、横断歩道を歩いていたため

 

信号機に掴まる事でかろうじて難を逃れていた……

 

のび太「地球の引力が……逆に働いているのか………?」

 

のび太「とりあえずこのバッジを付けて元に戻るか…………」

 

※タテヨコバッジ

 

使用者のみ、バッジについている針の方向に重力が働く

 

のび太「……これだけの規模を逆さまにひっくり返す道具なんてあったか

 

……?」

 

引力ねじ曲げ機など、重力の方向を変えてしまう道具は多くあるが

 

どれも使用している者にしか効果はない…

 

自分以外の者に働いている重力の方向まで変える事は出来ないのだ

 

のび太「周りのものにまで重力の影響を及ぼす道具は『重力調節機』だ…

 

…だけどこれは重力の『力』を調整する道具であって『力の働く方向』ま

 

では変えられない……」

 

のび太〈それとも何だ?道具の使い方次第で重力の方向まで変化させる事

 

が出来るのか?………しかしどうやって……〉

 

 

 

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のび太「実際にどういう使い方をしているのか見てみないとわからないな

 

……早く探さなければ……」

 

のび太「…………………」

 

のび太はふと先の一戦を思い返す……

 

ドンブラ粉の被害を食い止める為、町に誘き出されたのび太は

 

敵の待ち構える新幹線まで選択肢を迫られ、追い詰められてしまった…

 

そして現在…

 

考えてみればこの町の状況も

 

のび太を誘い出す故である……

 

のび太〈相手が先に動いている以上……このまま敵の思惑通り動けば僕は

 

間違いなく後手に回る事になる……〉

 

のび太は新たな出方を考える為

 

長考にふける……

 

敵の手に対し

 

何とか奇策を打って出る事は出来ないだろうか……

 

これまでの経験をもとに

 

敵が持つ自分の情報を冷静に分析した…

 

のび太〈中将は恐らく……僕の事を『石橋を叩いて渡るタイプ』だと認識

 

しているだろう……〉

 

ここに至るまで数々の一撃必殺の采配を凌いできたのだ

 

 

 

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あらゆるリスクに警戒し、安全でなければ余計な手段は一切選択しない…

 

…そう思われているに違いない

 

これは自惚れでも何でも無く

 

相手が抱く正当な評価であろうとのび太は自負していた

 

その先入観を利用して

 

のび太はあえて大胆な行動に出る……!

 

『重力調節機』を奪うべく

 

取り寄せバッグに手を突っ込んだのだ…!

 

のび太〈まさかこのタイミングで道具を直接奪ってくるとは思うまい……

 

!〉

 

敵の姿を一度も目視せず

 

あえて対策されているであろう手段を選ぶのび太

 

のび太〈たとえ失敗したとしても……この手段は試しておいて損は無い…

 

…!〉

 

のび太「――――やっぱり取れないな……手を伸ばそうにも何か強い力で

 

押し戻されてしまう………」

 

相手も深読みしていたのか……

 

無難な防衛策を施していただけなのかはともかく

 

これでまた一つの指針が出来た

 

のび太「つまりこの街が逆さまになった原因は『重力調節機』によるもの

 

 

 

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であり、敵にとって『重要』な道具という事……!」

 

片腕を切り離す覚悟で道具の奪取を試みたのび太にとって

 

何の被害も無く、敵の攻撃の要が判明しただけでも充分であった

 

取り寄せバッグから腕を引っ込めるのび太…

 

その腕の先…

 

バッグの中から数十ともあろう小さな眼が

 

のび太を見つめていた……

 

忘れもしない裏山での出来事…

 

のび太の片腕をすり潰していった道具……

 

のび太「『玩具の兵隊』――――――ッ!?」

 

『重力調節機』を守っていた玩具の兵隊が腕を伝い

 

こちらへやってきたのだ……!

 

のび太「体ごと引きずり込むのでは無く、僕の元へと送り込む作戦に出た

 

か……ッ!」

 

しがみついた玩具の兵隊達は

 

徐々にのび太の腕を上っていく……!

 

のび太「だけどこれは良い手じゃあないな……」

 

玩具の兵隊達が肩までよじ登ってくる中

 

のび太はあくまで落ち着いていた

 

のび太「今は僕以外の重力が逆に働いているんだ。必死にしがみ付いてい

 

 

 

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る兵隊等が僕の腕を攻撃することはまず無い……」

 

のび太「タテヨコバッジを付けている僕とは違い、『空』に落っこちてし

 

まう可能性があるからね。」

 

のび太はよじ登る玩具の兵隊を

 

指でつまみブチブチと捻り潰していった

 

のび太「一体一体がこのスピードなら僕のスーパー手袋の力で処理できる

 

。」

 

安心していたのび太に

 

またしても予期していない出来事が襲う……!

 

逆立ちするように腕にぶら下がっていた無数の兵隊達が

 

うつ伏せに倒れこんだ……!

 

のび太「……逆に働いていた重力が……元に戻ったのか!?」

 

脅威再び……

 

兵隊達が一斉に体勢を立て直し、整列する

 

のび太「この絶妙なタイミングでの重力方向転換!!これは……!!」

 

のび太〈敵はどこかで僕の様子を伺っている――――――ッ!?〉

 

襲いかかる兵隊の群…!

 

丁度その中の一体が飛びかかり、のび太の頬を蹴り飛ばした!

 

のび太「おうふッ!?」ブシュウウウウ……

 

あまりの脚力に頬の一部が削り取られ

 

 

 

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肉片が飛び散る…!

 

のび太〈『がん錠』で鉄の硬度を保っているのに……ロボットってのは加

 

減を知らないらしい………!〉

 

のび太はふと周囲の異変に気付く…

 

自身の周りを大きな影が覆っていた…

 

のび太「うおォォォォォォーーーーッ!!?」

 

見上げるとコンテナ搭載のトラックが

 

のび太の目の前まで迫っていた…!

 

のび太〈『玩具の兵隊』はブラフ……本命はこっち――――――ッ!?〉

 

重力の方向が元に戻った事により

 

空高く上げられていた車が次々と地上に落下していたのだ…!

 

のび太「 」ゴシャアアッ!!

 

コンテナは玩具の兵隊ごとのび太を押し潰した……!

 

のび太「……我ながら『石橋を叩いて渡る』って自己分析は間違っちゃい

 

ないな………」

 

落下物が押し潰そうとする直前……!

 

のび太は例の如く『液体』となって難を逃れていた……!

 

もしもの時を想定し

 

のび太はバッグに手を突っ込む際、サンタインを口に一粒含んでいたのだ

 

のび太「恐ろしい敵だ……貴重な玩具の兵隊達を犠牲にしてまでこのよう

 

 

 

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な手段に出るとは…………」

 

のび太「『サンタイン』はこの二粒で最後、か………」

 

度重なる戦闘で使い続けたサンタインもとうとう底をついてしまう……

 

今後、危機に陥ってもこの道具に頼る事は出来ない……

 

のび太は最後の二粒を頬張り実体に戻った

 

?「成程、判断が良い……部下が全滅させられる訳だ…」

 

のび太「誰だ………!?」

 

のび太が振り返ると一人の女性が佇んでおり

 

その頬には『中将』のワッペンが貼られていた……

 

のび太「お前が………『中将』……!!」

 

中将「始めまして……と言っても、お互い自己紹介はいらないわね……」

 

カタカタ……カタカタ……

 

のび太〈何の音だ………!?〉

 

足元に目をやると

 

コンテナに潰されてもなお身体を引きずりながら

 

のび太へ攻撃を仕掛けようとする無残な兵隊達の姿があった……

 

中将「大した執念ね……まるでゾンビの兵隊……」

 

のび太〈くっ………!〉

 

のび太は『通り抜けフープ』を使い

 

自身を押し潰そうとしたコンテナの内部に入り込んだ

 

 

 

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中将「………?」

 

ーコンテナ内部ー

 

のび太「今の兵隊達が僕を脅かす事は無いだろう……」

 

のび太「しかし『中将』相手にこのまま放って置いたんじゃ何をしでかす

 

かわからないぞ………だからその前に…!」ゴソゴソ…

 

のび太「これで良し……!」

 

のび太はバッグから

 

ガソリンの入ったポリタンクを取り寄せ、中身をブチ撒けた

 

のび太「そしてこのタケコプターを装着して準備完了……!」

 

のび太「残りの兵隊にとどめ&中将へ奇襲だ……!」

 

のび太はガソリンを垂らしながら

 

通り抜けフープでコンテナの上へ抜け出した

 

のび太「これでもくらえ!!」

 

中将「!!」

 

のび太はバッグから取り出したニトログリセリンの入った瓶を

 

上空からコンテナへ落とす……

 

トラックは瞬く間に燃え上がり

 

大爆発を起こした!

 

ゴオオオオオオオ・・・・・・

 

のび太「目の前でこれだけの大爆発が起きたんだ……ただでは済まない筈

 

 

 

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…!」

 

中将「それはあなたにも同じ事が言えるわ。」

 

のび太「―――ッ!?」

 

声のする方へ振り向いたその時

 

爆風で吹き飛ばされた残骸のいくつかが

 

のび太に命中した!

 

のび太「ーー~~ッ!!」

 

中将「打撲程度で済むなんて……どうやらかなりの防御力を持っているよ

 

うね……」

 

中将〈それにこの男、『重力調節機』の影響を受けていない……何か重力

 

の方向を操る道具で中和している……〉

 

のび太「……何だこいつは?……宙に浮いてる………!?」

 

のび太「そうか!この辺りを無重力にしたんだな!?通りでここまで破片

 

が勢い良く飛んでくる訳だ………!」

 

中将「そういう事……!」ヒュッ!

 

のび太「うわっ……!!」バシャッ!!

 

のび太に液体が投げつけられた!

 

のび太「クソッ!!目潰しか……!!」ゴシゴシ…

 

中将「お気に召さないなら……この『重力調節機』を奪ってみる?」

 

中将は空高く『重力調節機』を放り投げて

 

 

 

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そのままどこかへ飛んで行ってしまった…

 

のび太〈迂闊な奴め………!!〉

 

のび太は視力を取り戻すと

 

取り寄せバッグで『重力調節機』を取り寄せた

 

のび太「このまま壊してしまってもいいけれど……上空に飛んでいってし

 

まった人達はどうなったんだ?……まさか全員墜ちてしまって……」

 

しずか「のび太さ~~ん!!」

 

下を見下ろすと

 

しずかとスネ夫の二人が手を振っていた

 

のび太「二人とも!無事で何よりだよ!」

 

スネ夫「凄い爆発音がしたから急いでこっちに来て見たけど…やっぱ誰か

 

と交戦中だったみたいだね」

 

のび太〈そうだ!玩具の兵隊は壊れたんだ……今、ドラえもんの『苦手つ

 

くり機』を破壊すれば………!〉

 

のび太はバッグに手を突っ込むが

 

『苦手つくり機』を取り寄せる事は出来なかった……

 

のび太〈『しずめ玉』だな。やはり、二度と弄れない様に沈めている……

 

この分だと『なくし物取り寄せ機』も恐らく……〉

 

スネ夫「ところでのび太、その手に持っている体重計みたいなのは何だい

 

?」

 

 

 

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のび太「ん?ああ……これは『重力調節機』といって……そうだ。二人と

 

もお願いしていいかい?」

 

のび太はこれまでの経緯と

 

これからの目的を簡潔に述べた

 

しずか「……つまり住民を救助するまで、この『重力調節機』のスイッチ

 

を切らないほうがいいわけね?」

 

のび太「中将を不利にさせる為にも本当は今すぐスイッチを止めたいけど

 

……まだ助かっていない人もいるからね。じゃあ二人とも頼んだよ!」

 

『重力調節機』を二人に託し

 

のび太は先程飛んで行った中将の後を追った

 

のび太「追いついた……!」

 

中将「『重力調節機』より私を優先した様ね……フフッ……嬉しいわ……

 

!」

 

のび太「…あいにく無重力だろうと僕には何のデメリットも無いんでね…

 

…!」

 

中将「へぇ……腕に覚えがあるみたいだけど……!」

 

中将は『空手ドリンク』を飲み干した……!

 

※空手ドリンク

 

飲むと体が鉄のように頑丈になる

 

また、素手で空き地の土管を粉々に砕く程の力を得る

 

 

 

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中将「これでお互い攻撃力も防御力も互角ね……勝負ッ!」

 

中将は飛びかかりざまに放たれたのび太の拳をかわし

 

その姿勢から脇腹目掛けて回し蹴りを放つ…!

 

のび太「ぐッ……!」

 

思わぬ動きに翻弄され

 

体勢を崩すのび太…

 

続いて中将は深く身を屈め、のび太の懐に潜り込むと

 

顔面に強烈なハイキックを繰り出した…!

 

中将「あら、女だからって加減しなくても結構よ!!」

 

のび太「何を……おうッ!?」

 

無防備となった胸部に間髪を入れず肘打ちの突進攻撃…!

 

そのままのび太を壁まで打ち付け、突込絞で首を締め上げる…!

 

のび太〈い……息が……苦しいッ!!〉グググ…

 

のび太はもがきながらも拳を振るい

 

背後の壁を全力で打ちつける……!

 

中将〈ヒビを入れて逃げるつもりね。だけど……!〉

 

暴打の衝撃により壁の一部が崩れた瞬間……!

 

中将はのび太の顔面を即座に掴み上げ

 

壁を抉るようにゴリゴリと押し付けながら移動した……!

 

のび太〈だ……だめだ……このままでは………!〉

 

 

 

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獅子奮迅の如く……

 

中将の猛追は終わらない

 

ぐったりしているのび太の体勢を無理矢理起こすと

 

無重力に身を任せ、空高く飛び上がった……!

 

高い位置まで来たところで

 

中将はのび太に関節技<サブミッション>を仕掛ける…!!

 

中将「あなたは無重力の影響を受けていない……このまま行けば普段通り

 

地面に叩きつけられる事になるわ……!」

 

のび太〈この高さはまずいな……落ちるわけにはいかない……!〉

 

中将「な……何!?」

 

のび太の片腕が

 

車ほどの大きさに変化する…!

 

のび太「手を出せず暇だったんでね……『からだポンプ』を取り付けてい

 

たのさッ!!」

 

中将「足掻くなッ!」

 

中将がすかさず『からだポンプ』の吸盤を弾き

 

のび太の腕は徐々に元に戻っていく……!

 

しかしこれで関節技から解放され、片腕が自由に動かせる様になったのび

 

太は

 

胸についた『タテヨコバッジ』の針をでたらめに動かした!!

 

 

 

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右から左へ……左から右へ……

 

舵取りの利かない死のジェットコースターが徐々に高度を落とす……!

 

中将「こんな脅しが私に通じるとでも……!」

 

のび太「脅してなんかないさ…自分の背後をよく見てみろ!!」

 

中将「!?」

 

勢いのついた両者の身体は

 

ビルの側面に向かって突き進んでいた……!

 

中将〈しまった……ここは離脱を……!!〉

 

のび太「させるか!お前が後ろだ!!」ガシッ!

 

掴まれた腕を振り解こうと中将が懸命に手刀を繰り出すも

 

のび太はその手を緩める事はない……!

 

両者激しい攻防の末

 

中将を壁にしてビルの側面と激突!

 

しかし、それでもなおジェットコースターは続く…!

 

そのまま削られるように下へ下へと叩きつけながら両者は落ちていった…

 

 

地表に辿り着く頃……

 

のび太は中将の束縛からとうとう解放された

 

のび太「ハァ……ハァ……今のはかなりダメージがあった筈だ!!」

 

中将「お……お互い様よ……!」

 

 

 

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終始戦局を圧倒していた中将が地に伏せている……!

 

チャンスがあるとすれば今しか無い……!!

 

のび太は身体を休める事なく

 

中将に渾身の一打を繰り出した……!

 

のび太「うおォォォォォーーーーーッ!!」

 

中将「―――――――――……ッ!!」

 

ゴキィッ!!

 

のび太「…………痛ッ!!」ビキビキビキ…

 

中将「フフッ……拳の砕ける音がしたわ……!」

 

中将は即座に身を立て直し

 

のび太の拳を膝蹴りで迎撃して見せた……!

 

のび太〈何て重たい攻撃だ……体格は僕と殆ど変わらないのに……それに

 

この反応速度は……!!〉

 

中将「女だからって嘗めていた様ね……こんな身体だけどインナーマッス

 

ルだけなら私はボディービルダー級よ………!」

 

のび太「インナーマッスル…………!?」

 

インナーマッスル

 

体の内側の筋肉の事を指す

 

体の外側の筋肉(アウターマッスル)が大きな力や持久力をつかさどるのに

 

対し

 

 

 

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インナーマッスルは反射神経等をつかさどる

 

また筋肉の動きや関節の働きを補助する役割がある

 

のび太〈聞いた事あるぞ……確か鍛えるのが難しいと言われる筋肉……!

 

 

のび太「無重力化での変則的な戦法は……その筋肉が可能にしているとい

 

う事か……!?」

 

中将「絶望的な身体能力の差を実感できた?」

 

のび太「くっ……!!」

 

中将「あなたがこの場にいるという事は、いくつもの道具を看破してきた

 

事になるわけだけど……」

 

中将「この劣勢な状況……私に対してはどんなミラクルで凌ぎ切るつもり

 

なのかしら……?」

 

のび太は取り寄せバッグから

 

バイオリンを取り寄せた…!

 

中将「肉弾戦の望みは捨てて今度は自棄……?」

 

のび太「情けないが……戦闘技術<マーシャルアーツ>に関しては君の方

 

が遥かに上だ……!!」

 

のび太「……だから君の戦闘技術に対し……僕は『知恵』で挑む………!

 

!」

 

中将「知恵、ね………で、そのバイオリンでどうやって戦うというのかし

 

 

 

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ら……?」

 

のび太は自分のタテヨコバッジを外し

 

バイオリン本体ではなく弓にそれを取り付ける…

 

のび太「こんな物でも……何が出来るか考えるのが『知恵』ってもんだよ

 

……!」

 

中将の真上に

 

バイオリンの弓を放り投げた!

 

中将「――!?」

 

のび太「今だッ!!」

 

のび太はバイオリンの弓に『もどりライト』を照射…!

 

バイオリンの弓は徐々に『原料』へと姿を変える……!

 

中将「これはッ!?」

 

のび太「『ヒゲクジラ』まで戻ったッ!!潰れてしまえッ!!」

 

体長30メートルともあろうクジラが

 

中将に圧し掛かった!

 

ズシーーーーーン・・・

 

のび太「やった……!!」

 

のび太「……厄介な相手だった……!」

 

緊張の糸が切れたように

 

尻餅を着くのび太…

 

 

 

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空を見上げると

 

そこには軽トラックを持った中将が目の前まで迫っていた…!

 

のび太「ゲェェーーーーッ!?」

 

中将「今度はあなたが避ける番よッ!!」

 

ゴシャアアアアッ!!

 

のび太「ハァー……ハァー………!」

 

中将「無重力下のおかげでとっさに身体が動かせた様ね……!」

 

のび太〈さ……さっきのクジラは決定打だった筈だ……あの攻撃を回避で

 

きる方法はひとつ……!〉

 

中将の頭の上には先程まで無かった

 

『エスパー帽子』が被せてあった!

 

のび太〈やはり……ッ!!『瞬間移動』でかわしたんだッ!!〉

 

※エスパー帽子

 

被ることで透視、瞬間移動、念力の3つの超能力が使えるようになる

 

のび太〈無重力下なら『エスパー帽子』に全神経を集中させる事で……町

 

の人達や車を『念力』で空へ飛ばす事も可能という訳か……〉

 

のび太「こんな物………!」

 

のび太は取り寄せバッグで『エスパー帽子』を奪い取り

 

紙クズの様に丸めて押しつぶした…!

 

中将「やけに焦っている様だけど大丈夫……?」

 

 

 

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のび太〈そりゃあ焦りもするさ……!〉

 

中将の戦闘技術に圧倒されるばかりで

 

まだ道具を三つ程しか使わせていないのだ……!

 

のび太〈今までの目安から推測すると……中将はあと二つか三つ道具を持

 

っている……!〉

 

今度は取り寄せバッグで

 

『車』を取り寄せるのび太…

 

のび太〈やはり……無重力空間が功を奏した……スーパー手袋さえあれば

 

片腕でも『車』を取り寄せられる……!〉

 

中将「まるで帽子から鳩を出すマジシャンね……」

 

のび太「そして『ゾウ印口紅』……これを唇に塗れば上唇がゾウの鼻のよ

 

うに扱える……!」

 

のび太は『ゾウ印口紅』で生えた鼻で建物の柱を掴み

 

車を投げる体勢に入った……!

 

のび太「この柱を軸足にして、遠心力を加え……車を放つッ!!」ブンッ

 

 

中将〈速い…!〉

 

のび太〈この一撃で……残りの道具を炙り出してやる……ッ!!〉

 

のび太「……!!」

 

中将「あなたがマジシャンなら……私は本物の魔法使いってところかしら

 

 

 

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……?」

 

のび太の投げつけた車は

 

中将の手前でピタリと静止していた……!

 

のび太「まいったな……『エスパー帽子』を壊したにもかかわらず……手

 

も使わずに車を止めてしまうなんてね………」

 

中将「……その割にはあまり驚いていない様だけど……!」

 

のび太〈………手を使わずに物体を止めるとすれば……やはり念力(テレ

 

キネシス)以外にないだろう………〉

 

のび太〈そしてこの中将は……『玩具の兵隊』を囮にしてコンテナで押し

 

潰す様な戦法を得意とする……つまり………〉

 

のび太「『エスパー帽子』をあえて破壊させて油断した所を……事前にさ

 

していた『念力目薬』の力を使って奇襲ってのが僕の見解だけど………!

 

 

中将「へえー、当たり…ッ!」

 

中将はそのまま車を念力で操り

 

のび太に向けて放り返した!

 

のび太はゾウの鼻を駆使し

 

車をかわす……!

 

のび太「君の道具の秘密が段々と解けてきたぞ……!」

 

中将「あら、そうかしら?」

 

 

 

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のび太「……?」

 

中将「渇ッ!!」

 

中将が大きく息を吐いた瞬間!

 

避けたはずの車がバラバラに分解した!!

 

のび太「うわッ!?」

 

飛散した車の部品が

 

のび太を容赦なく襲う……!

 

のび太「………ッ!!」

 

中将「一方向に物体を移動させる念力(テレキネシス)も……多方向に力

 

を分散させれば爆弾の様に物を扱う事だって出来るわ……!」

 

テレキネシスの一種

 

いわゆる念分裂〈サイコクラッシュ〉と言われる物である

 

中将は車を放った後、急激に息を吐く事によって横隔膜を収縮…

 

瞬間的に血圧を上げる事で念力を分散させ、念分裂〈サイコクラッシュ〉

 

を発生させたのだ……!

 

のび太「だけど肝心の威力は疎か……これじゃあただの出来の悪い花火だ

 

…………」

 

のび太の言う通り

 

飛散した部品のダメージは

 

致命傷には遠く及ばないものであった

 

 

 

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中将「……どうやらあなたの事を少々買いかぶり過ぎていた様ね……」

 

のび太「………?」

 

中将「自分の身体をよく見てみなさいッ!!」

 

のび太「………えッ!?」

 

飛散したボルトやネジ等の細かい部品……

 

それだけでは無く

 

細かい金属の欠片やコンクリートの岩片……

 

本来なら動いている内に落ちる程度の物から

 

明らかに許容量をオーバーした握りこぶし程の石までもが

 

のび太の衣服に付着していたのだ……

 

中将「戦いに気取られて全く意識していなかった様ね……」

 

のび太「何だ……これ……一体どうなって………?」

 

中将「私が『重力調節機』を放り投げる前から既に……戦いは始まってい

 

たのよ……!」

 

のび太〈『重力調節機』を投げる前……?確か僕は目潰しを喰らって……

 

『目潰し』………?〉

 

のび太「ま……まさかあの液体は………」

 

中将「そう……『重力ペンキ』よ……!!」

 

※重力ペンキ

 

これを塗った部分に重力が働く様になる。壁などに塗ればそこを歩く事も

 

 

 

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可能。

 

中将「衣服や身体に付着した『重力ペンキ』は……あなたが動いている間

 

、この無重力に浮かぶ様々な破片〈デブリ〉を吸い寄せた……!」

 

のび太「………!!」

 

中将「そして……これが私の奥の手……ッ!」

 

中将は『おもかる灯』を取り出し

 

のび太に向けて照射した!

 

のび太「何を………ッ!?」

 

中将「あなたに付着した破片〈デブリ〉は『おもかる灯』によって徐々に

 

質量を大きくするッ!」

 

のび太「うッ!?」ミシミシミシ…!

 

付着した破片は重量を増し

 

のび太の肉体に深くめり込んでいく……!!

 

中将「……まるで人間の重みに耐えられなくなった地球ね………そのまま

 

ミンチになるといいわッ!」

 

のび太「……ふふ……くっくっく……!」ズブズブズブ…

 

中将「……ッ!?」

 

のび太「あっはっはっはっは……!」ブシュウウウ……!

 

中将「き、気でも狂ったの……!?」

 

のび太「計画通り……!!」

 

 

 

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中将「なんですって……ッ!?」

 

のび太「しぶとく喰らい付いて君の切り札を搾り出すのに専念していたの

 

さ!」

 

のび太はバッグからメガホンを取り出し

 

口に当てて叫んだ…!

 

のび太「『無生物催眠メガホン』ッ!!僕に食い込んだ破片は全て……僕

 

の細胞になるッ!!」

 

のび太に食い込んだ破片の傷が

 

徐々に治癒していく…!

 

中将「な……なんて奴なの……ッ!!」

 

のび太「それより気付いたかい……周囲の異変に……!」

 

中将「異変……ハッ!?」

 

あらゆる方位から

 

何か大きな物が落下したような轟音が響く……!

 

のび太「『重力調節機』が止まったんだ……重力が元に戻ったッ!」

 

のび太「君が僕に足止めされている間に、僕の仲間が上空に飛んで行った

 

市民の救助をしてくれた……それが今、終わったんだ!」

 

中将「まさか……時間稼ぎをしていたとでも言うの……っ!?」

 

のび太「そう、時間を稼ぎながら………万が一逆転される事の無い様に君

 

の切り札を先に見せてもらった……!」

 

 

 

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中将「へぇ……まるで何時でも私を倒せたかの様な口ぶりじゃない……!

 

 

のび太「ああ、いつでも倒せたさ……!」

 

中将「……っ!?」

 

のび太「だけどこの手段は君の事を思うとあまりに不憫でね。他の方法で

 

君を倒せないか幾つか考えた………!」」

 

のび太「しかし君の戦闘技術だけは正直、計算外だ……だから、やはり当

 

初の方法で君を裁く……ッ!」

 

のび太が指差す先……

 

中将の肩に『玩具の兵隊』がぽつりと乗っかっていた……!

 

中将「これはっ!?何時の間に!?」

 

のび太「その『玩具の兵隊』……壊れた内の一体だけ回収して『魂ふき込

 

み銃』で操った物だ……ッ!」

 

※魂ふき込み銃

 

自分の魂の半分を対象に吹き込むことで、もう1つの体のように対象を意

 

のままに動かすことができる

 

のび太「戦いは……終わりだ……!!」

 

中将「!!」

 

玩具の兵隊は手に持っている武器を

 

中将の首筋に突き刺した!

 

 

 

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中将「あ……ああ……………!」

 

のび太「勝負あった……!!」

 

中将が『重力ペンキ』を投げつけるより前……

 

のび太は既に戦いを仕掛けていた!

 

コンテナ内部に逃げ込んだ際

 

壊れた『玩具の兵隊』の一体を取り寄せバッグで回収し『魂ふき込み銃』

 

を撃つ……

 

その後、接近戦に乗じて

 

武器を持たせた『玩具の兵隊』を中将の衣服に忍ばせていたのである……

 

 

中将〈そ……そんな………!〉 ドクン… ドクン…

 

のび太〈君の『今後の事』を思うと可哀想だが……これしか手はなかった

 

………〉

 

中将「『玩具の兵隊』は………私に何を刺したの……?」モジモジ…

 

のび太〈……戸惑っているな。無理もない……何故なら今の君は『玩具の

 

兵隊』に―――…〉

 

中将「一体何を刺したの!?あ、こらッ!?待ちなさい!!」がしっ!

 

のび太「は……離せッ!いでで…ぐるじい……」

 

中将「さぁ!『玩具の兵隊』が私に刺した物は何だったの!?言いなさい

 

!!」

 

 

 

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のび太「きゅ……『キューピッドの矢』……だよ……!!」

 

中将「………え?」 ズキュウウゥゥ―――z___ン!

 

のび太「『キューピッドの矢』!テレビでも恋のキューピッドが云々って

 

言うだろ!あれと一緒だよ!」

 

中将「な……ッ!?///」カァァ…

 

中将「何て事するのよッ!?信じられないッ!!」

 

のび太「だから言っただろう!?僕は必死に悩んだ!!だけど君を止める

 

方法が思いつかなかったんだよ!!」

 

中将「さっきの……ゾウの鼻を出す道具とか使えば、私を絞め殺す事ぐら

 

い出来たでしょう!?」

 

のび太「いや……その……君だって苦しいのは嫌だろ………?」

 

中将「……ッ///」ボッ

 

のび太〈何にしても…これで彼女は『玩具の兵隊』にメロメロの筈だ。こ

 

れ以上暴れる事は無いだろう………〉

 

のび太は『魂ふきこみ銃』から息を吸い込み

 

『玩具の兵隊』に宿った魂を回収した

 

のび太〈……これからは野蛮な命令を受ける事無く、その玩具の兵隊と共

 

に自由に生きていくがいい……!!」

 

中将「ま、待ちなさいよ!」グイッ!

 

のび太「!?」

 

 

 

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中将「こんな場所に……か弱い女の子一人を置いてどこへ行く気!?」

 

のび太〈……な……何言ってんだコイツ……?ちゃんと兵隊はここに置い

 

て……〉

 

中将「っ!」ゲシッ!

 

のび太「おぅふ!」

 

中将「せ……責任……とってよね……!///」

 

のび太「責任………!?」

 

のび太〈まさか……玩具の兵隊が壊れた事を根に持っているのか……!?

 

 

のび太〈大体コンテナを落としてきたのはそっちだろ!?……女ってのは

 

みんなこういう生き物なのか……!?〉

 

のび太〈……しかし『キューピッドの矢』さえなければ彼女は人形にこん

 

な想いを抱く事も無かったのか……う~ん……〉

 

のび太「そりゃあ…お互い悪かったけどさ……どうしようもなかったじゃ

 

ないか……」

 

中将「だ、だから責任とってって言ってるじゃない……!」

 

のび太〈まいったな~……壊れた未来デパートの道具は『復元光線』や『

 

タイム風呂敷』でも直せないというのに……〉

 

のび太「……君はどうしたら許してくれるんだい?」

 

中将「……え?ちょ……ちょっと何よいきなり!それを私に言わせるわけ

 

 

 

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!?」

 

のび太「だって責任とらなきゃ」

 

中将「あ……うぅ……///」ドキドキドキ…

 

中将〈あああ……なんでこんな奴にドキドキしちゃってるのよ……!〉

 

中将〈そうよ!所詮道具の力……!この男は私を誑かそうとしているんだ

 

わ……!〉

 

中将「そ……そうね……じゃあ証明してみせてよ………!」

 

のび太「証明?」

 

中将「私達の仲が…本物かどうか……」

 

のび太〈だから一人になれる様に気を使ってるのに……もしかして人形遊

 

びしてる所を覗かれるのが嫌で僕に釘をさしているのか?〉

 

のび太「……君の言いたい事はよーくわかったよ。」

 

中将「えっ?〈ど……どどどどうしよう……まだ心の準備が……!///〉カ

 

ァァ…

 

のび太「それじゃ、僕はこのへんで御暇させてもらうよ。」スタスタスタスタ……

 

中将「…………へ?」

 

のび太〈ふう……やっと開放された……〉

 

中将「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」がしっ!

 

のび太「!?」

 

中将「やましい気持ちが無いのはわかったけど普通そこまでする!?」

 

 

 

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のび太「だって証明しろって……!」

 

中将「証明しろって言ったけど、もっと他にも色々方法があるじゃない!

 

?」

 

のび太「ー~ッッッ!???」

 

のび太〈馬鹿なッ!?僕は離れる、彼女は人形と一緒、今のはお互い最良

 

の選択だったはずだ……!〉

 

のび太〈先程から奴は僕が射程圏外に出るのを異常に恐れている……!〉

 

のび太〈考えられる理由は恐らく……まだドラえもんによる『洗脳』が解

 

けていないという事……ッ!!〉

 

のび太〈考えてみればこの中将が得意とする戦法は『何かを囮にして油断

 

した所を一気に叩く』……いわば陽動戦術!!〉

 

のび太「先程のコンテナの一撃や『念力目薬』での攻撃から推測すると…

 

……つまり……!」

 

のび太〈人形を好きだと思わせておいて、その一連の所作は『フェイク』

 

!!実際は僕の隙を伺っている……ッ!?〉

 

のび太〈『桃太郎印のきび団子』と『階級ワッペン』の効力が『キューピ

 

ッドの矢』の効果を打ち消してしまった、という事なのか……!?〉

 

のび太は嘘発見器を取り出し

 

中将に向けた……!

 

のび太「君は今もドラえもんに忠誠を誓っているのかッ!?」

 

 

 

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中将〈と、突然何よこいつ!私にあんな矢を刺しておいて……そこまで自

 

分の事をどう思ってるか言わせたい訳!?///〉

 

中将〈それとも……はは~ん、さては嫉妬してるのね?〉

 

中将「そ、そうね…!私にとってボスの命令は絶対よ!!」 ブブー!

 

のび太〈嘘発見器が反応した!…という事は『洗脳』は解け、『キューピ

 

ッドの矢』の効果を受けている……思い過ごしか……?〉

 

のび太〈とすれば……やはりどうあっても兵隊を壊した責任を僕にとらせ

 

たいらしいな……困ったぞ………〉

 

中将〈ふふん、ショックを受けている様ね……さっきのお返しよ…!〉

 

中将〈………でもちょっと言い過ぎたかしら……だ、だめじゃない…これ

 

じゃあせっかく近づいた二人の距離が……〉

 

中将〈でも……でも……!ああああああああどうしよどうしよーーー!〉

 

のび太「わかった……責任は取るよ。だから少しの間待っててくれないか

 

い?」

 

中将「…ひぇ?」

 

のび太「今すぐには無理なんだ……だから……」

 

中将〈そ……それってつまり……それってつまり………!〉

 

のび太「時期がくるまで我慢出来るかい?」

 

中将〈そ……そうよね……考えたら私達まだ10代前半よ………!〉

 

中将「わかったわ…!その代わり……忘れたら許さないんだから……っ!

 

 

 

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のび太「ありがとう……!」

 

中将〈………っ!///〉ボッ

 

のび太〈こればかりはタイムマシンがないと修理も出来ないからなー……

 

 

のび太〈とにかく一件落着だ……みんなと合流しないと……!〉

 

中将「……」ジーッ…

 

のび太「ん?」

 

中将〈っ!///〉ジーッ…

 

のび太〈な……なんだ!?まだ何かあるのか……!?〉

 

中将「き、気付きなさいよ……」ボソ…

 

のび太「へ?」

 

のび太〈そういえばさっきから『玩具の兵隊』を拾おうとしないな……〉

 

のび太〈『玩具の兵隊』にトラップが張ってあると警戒しているのか……

 

?〉

 

のび太は壊れた玩具の兵隊を拾い上げ

 

中将に差し出した……

 

中将「……何よ」

 

のび太「ほら、何ともないだろ?あげるよ」

 

中将「あ、アンタってデリカシーの欠片も無いのね!普通渡す!?」

 

 

 

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のび太「あ、ああゴメン……〈じ……自分で拾うつもりだったのか……?

 

〉」

 

中将〈……ったく、こんな薄気味悪い人形拾って渡すなんてどういう神経

 

してるのかしら……〉

 

中将〈でも……さっそく貰っちゃった……プレゼント………〉

 

中将〈考えてみれば……この人形があったから………今の私達があるのよ

 

ね………〉

 

中将「………///」ギュッ・・・・

 

のび太〈やはり……『玩具の兵隊』にただならぬ愛着を示している様だ…

 

……〉

 

のび太「………」スタスタ…

 

中将「………」テクテク…

 

のび太「………!?」クルッ!

 

中将「………」ジーッ…

 

のび太〈ま……まだ着いてくる!?どうなってんだッ!?〉

 

のび太〈………これ以上僕に付きまとう理由があるとすれば…………!!

 

 

中将〈な……何よ~人の顔ジロジロ見て……今更私のサインに気付いたっ

 

て……///〉ドキドキドキ…

 

のび太〈こいつ……僕の『取り寄せバッグ』を奪うつもりだッ!!〉

 

 

 

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のび太〈僕が遠くから『玩具の兵隊』を奪う可能性を潰そうとしているん

 

だ………それしか考えられない!!〉

 

のび太〈何という人形への執着心だ…!!完全にイッちまってる……ッ!

 

!〉

 

「おお~い!のび太~~!!」

 

遠くから呼びかけるジャイアンの声

 

救助に出ていた四人が戻って来たのだ

 

のび太「みんな!!無事だったか!!」

 

中将「……?」

 

しずか「こっちは何とか区切りがついたわ。」

 

ジャイアン「それより敵はやっつけたか!?」

 

のび太「そ…その事なんだけど………」

 

スネ夫「……ところでそっちの女の子は誰だい?」

 

中将「え……ええと私は……」

 

出木杉「え……!?」

 

全員がほぼ同時に

 

中将の頬に貼られているワッペンに気付いた……!

 

のび太〈しまった!!剥がすのを忘れてた!!〉

 

しずか「これって……!!」

 

ジャイアン「おい!どういう事だよのび太!!」

 

 

 

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しずか「のび太さん……何か複雑な事情があるんでしょう?」

 

のび太「彼女は……さっきまで中将だった。だけどもう洗脳が解けたから

 

……」

 

ジャイアン「洗脳が解けたから何だ!?こんだけ町に被害を出しておきな

 

がら……沢山の人を殺しておきながら関係ねぇことあるかよ!!」

 

スネ夫「そうだぞ!救助だってどれだけ大変だったことか!」

 

中将「被害……人殺し……………?」

 

出木杉「ちょっと二人とも落ち着いて!……大体僕等だってワッペンを貼

 

られてたじゃないか。」

 

スネ夫「まだこの女にはワッペンが貼ってあるじゃあないか!それに『中

 

将』だぞ!?わかったもんじゃない!!」

 

中将「違う……私……違うもの…………」

 

ジャイアン「おい!とりあえず取り押さえとかないと……!」

 

中将「……いや…………やめて……!」

 

スネ夫「のび太。もしかしてお前……洗脳されたんじゃあ………!」

 

のび太「な……何を……何をバカな事言ってるんだ!?どうしたんだ二人

 

とも!?」

 

出木杉「無理もない……町であんな転落死体の山を見たんだ……元凶と会

 

った事で二人とも恐慌状態に陥っている……!」

 

ジャイアン「悪いけどよ……しばらくの間拘束させて貰うぜ………!」

 

 

 

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中将「やめて……いやあああああああああ!!」

 

パァン!!

 

ジャイアン「 」ピューピューッ…

 

スネ夫「へっ?」

 

ジャイアン「」ドサっ・・・

 

スネ夫「ジャ……ジャイアン?」

 

のび太「え…………!?」

 

その場にいた誰一人もが

 

現状を飲み込めずにいた……

 

ジャイアンの頭部が突然

 

無残にも弾け飛んでしまったのだ……!

 

出木杉「あ……ああ…………!!」

 

しずか「うそよ……たけしさん……?」

 

のび太〈まさか……念分裂!?彼女が……!?〉

 

スネ夫「ま……魔女だ!お前がやったんだ!!」

 

中将「違う!……私じゃない!……私じゃない!」

 

横たわったジャイアンの体が

 

次々に弾け飛んでいく………!!

 

しずか「もう嫌よ……やめてええええ!」

 

のび太「う……うう………!?」

 

 

 

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出木杉「のび太君……い……今の見たかい………!?」

 

のび太「……え?」

 

出木杉「この中でかろうじて平常を保っているとすれば君だけだ……落ち

 

着いて……よく落ち着いて聞いてほしい……!」

 

出木杉「ジャイアンに……『小型のミサイル』が着弾したんだ……!!」

 

のび太「小型……ミサイルだって………!?」

 

出木杉「『小型のミサイル』が高速で飛来してきた……心当たりは!?」

 

のび太「………!!」

 

出木杉「僕の恐慌状態による幻覚じゃなければ早急な対策が必要になる!

 

!このままじゃ全滅だぞのび太君!!」

 

小型ミサイルを有し

 

残っている敵……

 

該当する者は一名しかいない……!

 

のび太「まさか………!?」

 

ドラえもん「のび太くんご苦労様。」

 

スネ夫「うわああああああああああああああああ!!!」

 

最初に大声を上げたのはスネ夫だった

 

中将やのび太に半信半疑を抱いている状況の中

 

この戦いの元凶となる者が現れたのだ……

 

彼の頭の中の欠けたピースが埋め合わされ

 

 

 

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のび太達とは別の解が導き出される……!

 

ドラえもん「のび太君。僕らの計画通りだね^^」

 

のび太「は………!?」

 

スネ夫「やっぱり!!やっぱりだ!!!」

 

出木杉「スネ夫君……!?」

 

スネ夫「お前達……!グルだったんだな!?」

 

のび太「スネ夫……!?」

 

スネ夫「だ、だっておかしいじゃあないか!?何でのび太と中将とドラえ

 

もんが平然とそこにいるんだ!!」

 

ドラえもん「バレちゃあしょうがない。」

 

のび太「ドラえもん何を言って……!?おいスネ夫!!耳をかしちゃ駄目

 

だ!!」

 

ドラえもん「いつも君とジャイアンがのび太君を虐めるからね。僕等でじ

 

っくり懲らしめてやろうと思ったんだ」

 

スネ夫「うわああああああああ!!」ダッ!

 

しずか「スネ夫さん!!」

 

のび太「スネ夫!!」

 

ドラえもん「逃がさないよ……!」 パァン!

 

無敵砲台のミサイルが飛来し

 

スネ夫の足に直撃した…!

 

 

 

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スネ夫「ぎゃあああああ!!痛いよ!!ママーーーーーーーーーッ!!!

 

 

ドラえもん「ウフフフフ。」

 

ドラえもん「『らくらくシャベル』~!」てってれっててってってーー

 

※らくらくシャベル

 

どんな硬い岩や地面でも、豆腐のように簡単に掘ることのできる道具

 

スネ夫「助」スパァン!!

 

ドラえもん「ウフ、ウフフフフフ。」ザクッ!ザクッ!ザクッ!

 

頭を刎ね、崩れるようにして倒れたスネ夫の肉体を

 

ただひたすらにシャベルで削り取っていくドラえもん……

 

その腕に貼られた『大将』の階級ワッペンが返り血を浴び

 

みるみる内に赤く染まっていった……

 

中将「あ………」

 

出木杉「は……はは…………」

 

しずか「いやあああああああああああ!!」

 

のび太「スネ夫ーーーーーーーッ!!」

 

ドラえもん「さて……」クルッ!

 

のび太「ッ!!」ゾクッ…

 

のび太達の方へ振り返るドラえもん…

 

その表情に情けの二文字は無く

 

 

 

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全てを破壊し尽くさんと言わんばかりの殺気に満ち溢れていた…!

 

ドラえもん「次は裏切り者の番だ……出木杉か……中将か………!」

 

出木杉「……!」

 

ドラえもん「ターゲット補足……!」

 

しずか「中将さん……貴方の名前を教えて……」

 

中将「私の……名前…………?」

 

ドラえもん「無敵砲台発射ッ!!」

 

ドゴオオオオオオン・・・・・・

 

しずか「残念だったわね………!」

 

ドラえもん「ミサイルが全て迎撃された……いや、何かにぶつかったよう

 

な感じがしたな……!」

 

しずか「そう……この『バリヤーポイント』は全ての攻撃を拒絶する……

 

…!」

 

ドラえもん「ほう……半径2メートル内にみんなを入れる事で守ったわけ

 

か……くふふふふ……!」

 

のび太〈何が可笑しいんだ……ドラえもんのやつ………!〉

 

ドラえもん「それにしても中将。この町でこれだけの被害を出しておきな

 

がらノコノコ生き長らえるなんて虫が良すぎるんじゃないかい?」

 

中将「ひっ…………!!」

 

のび太「ドラえもんッ!訂正しろッ!」

 

 

 

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のび太「君が『桃太郎印のきび団子』で洗脳して『殺戮マシーン』に仕立

 

て上げたんじゃあないか!!」

 

中将「…………」

 

ドラえもん「『殺戮マシーン』に仕立て上げた、か……クックック…!」

 

のび太「何が可笑しい……!?」

 

ドラえもん「僕は『階級ワッペン』以外に『洗脳』なんか施した覚えはな

 

いよ。」

 

のび太「……なんだって………!?」

 

ドラえもん「僕は『のび太を殺せ』としか命令していない。」

 

ドラえもん「一般人に危害を加えたのは彼等の独断だよ。」

 

のび太「馬鹿な……ッ!?『階級ワッペン』だけであれほどの統率がとれ

 

るわけがない!!」

 

ドラえもん「中将、どうやらのび太君は君たちの事を『殺戮マシーン』だ

 

と思ってるみたいだよ。」

 

のび太「な……ッ!?」

 

中将「ううっ……………!」

 

のび太「ドラえもん!嘘をつくんじゃあ無い!!ジャイアンやスネ夫に比

 

べて他の部下の統率は異常だったんだ!!」

 

ドラえもん「人聞きの悪い事を言うねぇ。それは君の思い込みだろう?と

 

にかく『桃太郎印のきび団子』なんてものは僕は一切使っていないよ。」

 

 

 

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のび太「嘘だっ!!連続殺人犯だった『少佐』を除けば……君の部下の殆

 

どが普通の生活を送っていた人間じゃあないか!それを君が洗脳して悪人

 

に仕立て……!」

 

ドラえもん「『復讐の為なら殺人すら厭わない孤児』、『小動物を殺生し

 

て喜ぶ高校生』、『影で過度の暴力を振るう教師』『完全犯罪で罪を逃れ

 

た殺人犯』etc………」

 

のび太「……?」

 

ドラえもん「彼らの殆どは『怒りエネルギー観測チャート』で探し当て吟

 

味、選出した……元々クレイジーな人材なのさ……!」

 

のび太「……そ……そんな……!」

 

ドラえもん「ほら……取り乱した彼女を見てごらんよ……!」

 

中将「あ………あ…………」

 

のび太「!?」

 

ドラえもん「彼女は私生活で色々と問題があったみたいだねぇ。冤罪で殺

 

人犯に仕立て上げられてしまうなんて……」

 

中将「いや!……やめてママ!!」

 

しずか「離れてはダメよ!落ち着いて!!」

 

出木杉「駄目だ…フラッシュバックに陥ってしまっている!しずちゃん!

 

無理やりにでも取り押さえて!!」

 

中将「やめて!離してママ!いや!!」

 

 

 

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のび太「くっ………!」

 

ドラえもん「おいおいのび太君。見かけで判断されるのを人一倍嫌ってい

 

た君が……まさか同じものの見方で人を判断していたというのかい?」

 

ドラえもん「それじゃあ君が見た目で判断されようが自業自得ってもんだ

 

よ!くひゃひゃひゃひゃひゃ!」

 

ドラえもん「何よりのび太君。そんなクレイジーな人材を葬ってきた君こ

 

そ本物の『殺戮マシーン』だよ………!」

 

のび太「僕が……『殺戮マシーン』だって……!?」

 

出木杉「のび太君!耳をかしたら駄目だ!!」

 

ドラえもん「出木杉君。僕は事実を述べているまでだよ。」

 

のび太「僕は……『殺戮マシーン』なんかじゃない………!」

 

ドラえもん「ほう……じゃあ君は今まで僕の部下をどうやって退けてきた

 

んだい………!?」

 

のび太「それは………!」

 

ドラえもん「そういえば動物園を襲撃した大佐の死体がニュースで取り上

 

げられてたけど……彼は頭部を撃ち抜かれていたそうだ………!」

 

のび太「う………!」

 

ドラえもん「ジャイアンに虐められ、帰ってきた時にいつも喉元で押し殺

 

していた言葉を思い出してごらん?」

 

ドラえもん「私利私欲で弱い者を虐げているクズどもはいなくなればいい

 

 

 

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!……そしてその願望を君は叶えた!清々したろう…?」

 

のび太「ち……違う……僕は…ッ!」

 

ドラえもん「まさか僕の部下達を倒したときも、自分の都合の良い様に言

 

い訳をして責任から逃れていたというのかい?」

 

のび太「う……うう……ッ!」

 

ドラえもん「綺麗事を吐いておきながら我が身がかわいくてしょうがない

 

んだねぇ」

 

ドラえもん「君は立ちはだかる反対派を抹殺する事で己の身を守った……

 

 

のび太「ち……違うッ!あれは……正当防衛で………!」

 

ドラえもん「いいや、それでも君は殺したんだよ。」

 

のび太「警察じゃどうにもならなかった……それに彼等は無関係の人を…

 

…!」

 

ドラえもん「暴力に対し同じ暴力でねじ伏せたんじゃないか。清々したろ

 

う?」

 

のび太「違う……ッ!」

 

ドラえもん「何が違うんだい?やっている事は同じだろう?」

 

ドラえもん「やっぱり君は……クズだよ。」ニタァ…

 

のび太「うう………僕は……僕は………ッ!」

 

しずか「……口車に乗せられてはダメよ!」

 

 

 

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のび太「しず……ちゃん……」

 

しずか「のび太さんも……中将も……二人ともしっかりしなさい!!」

 

しずか「特にのび太さんの方よ!こんな事になってしまった元々の原因は

 

何!?」

 

のび太「……?」

 

しずか「相手の過去だとか貴方が人を殺してしまっただとか……そんな事

 

は今、関係無いでしょう!?」

 

しずか「あなたが今、悩んでいるのも……これだけの被害が出てしまって

 

いるのも……全てドラちゃんがバラ撒いた道具がもたらしたものよ!」

 

のび太「………!」

 

しずか「ドラちゃんもよ!自分の非を認めないあなたに……のび太さんの

 

事を悪く言う資格なんてないわ!!」

 

ドラえもん「心外だなぁ。君の言う通りだとしても、のび太君が人を殺し

 

た事実は消えないだろう?」

 

のび太「そうだ……僕は人を……人を………!」

 

しずか「事実は変えられない……だけど私達には幸いにも、全てをやり直

 

す事が出来る道具があるでしょう……?」

 

のび太「全てを……やり直す………」

 

しずか「全て変えてしまえばいいのよ……ドラちゃんを倒して……タイム

 

マシンで過去を変えるの!!」

 

 

 

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ドラえもん「おや、しずちゃん。そんな簡単に人の過去を変えてしまって

 

もいいのかい?」

 

ドラえもん「どんな過去であれ……そういう過ちがあったからこそ今の君

 

達が築かれているわけだよ?」

 

ドラえもん「君は自分の積み重ねた努力や過去の過ちを平気で否定するよ

 

うな人なんだねぇ」

 

しずか「ドラちゃん……あなたの戯言にはうんざりだわ……!」

 

しずか「努力や過ちで築かれてきた今の私たちが『過去を変える』という

 

事を決めたのなら……」

 

しずか「私達にとっては何も間違ってはいないし、決して無意味なんかじ

 

ゃないわ……!」

 

しずか「それに私達は過去を否定するんじゃない……受け入れた上で、先

 

へ進む為に……過去を変えるのよ……!」

 

虚ろだったのび太の目に光が宿る……

 

それは希望にも似た一筋の輝きであった…!

 

のび太「ドラえもん…僕は過去も、これからも変えてみせる……僕の過ち

 

も……君の過ちもだ!」

 

ドラえもん「ちっ……!あともう少しで自滅を促せたものを……!」

 

しずか「当然よ…!元凶であるあなたの言葉には何の重みも感じないもの

 

……!!」

 

 

 

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ドラえもん「くふふ……ふふふふふふ……!」

 

ドラえもん「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

 

のび太「……!?」

 

ドラえもん「こんな単純なマインドコントロールに揺さぶられてしまうな

 

んて!君は本当に脆いなぁ。」

 

のび太「ドラえもん……君は………!」

 

しずか「!」

 

のび太「どこまで人をバカにすれば気が済むんだァーーッ!!」

 

出木杉「ダメだ!!飛び掛っては敵の思うツボ…!」

 

ドラえもん「出たな……?」

 

ドラえもんの挑発により

 

のび太はバリヤーポイントの結界から飛び出してしまった……!

 

のび太「……!!」

 

ドラえもん「かかったなアホが!!」

 

めっちゃ面白いな

 

>>1応援してる

 

ドラえもん「『ひらりマント』ッ!!これを全身に纏えば……僕が体を逸

 

らすだけで君の攻撃は全て外れるッ!」

 

のび太「くっ……!!」ブンッ!

 

ドラえもん〈そして……しずかのバリヤーポイントはのび太を受け入れた

 

 

 

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、という事はつまり……!〉

 

ドラえもんは先端に手の付いた

 

長い棒の様な物を取り出し、静香達の方へと向ける…!!

 

ドラえもん〈頭文字はのび太と同じ『の』ッ!!よって『ノビールハンド

 

』はバリヤーポイントを貫通するッ!!〉

 

のび太「マズい!!『ノビールハンド』だ!!しずちゃん!!!」

 

ガキィンッ!!

 

しずか「のび太さん……!」

 

ドラえもん「拒絶したか……だけどこれでのび太はバリヤーポイントから

 

離れた!!!」

 

のび太「これが狙いだったのか……!!」

 

ドラえもん「うふふふふ……楽しいバトルの始まりだッ!」

 

のび太〈……………〉

 

のび太「しずちゃん……さっきはありがとう…」

 

しずか「え…ええ………」

 

のび太「おかげで大分気持ちが楽になったよ……」

 

しずか「のび太さん……?」

 

のび太「出木杉も……この戦いに着いて来てくれた事……本当に感謝して

 

る……!」

 

出木杉「の……のび太君……突然何を……!?」

 

 

 

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のび太「それと……お願いがあるんだ……」

 

中将「………」

 

のび太「中将……」

 

のび太「僕がやられてしまったら……しずちゃんのバリヤーポイントしか

 

身を守る術が無い……」

 

のび太「だから……その時は中将……君の持っている道具の力で二人を助

 

けて欲しい……」

 

中将「私が………?」

 

のび太「そうだ……!」

 

中将「私………」

 

のび太「じゃあ……頼んだよ……!」

 

のび太はタケコプターで空へ飛び上がり

 

しずか達から離れて行った…!

 

ドラえもん「あッ!!逃がすかッ!!」

 

出木杉「行ってしまった……!」

 

しずか「のび太さんは……私達を戦いから遠ざけようと……自分から遠く

 

へ行ったんだわ……!!」

 

出木杉「僕らには……のび太君の帰りを祈る事しか出来ないというのか…

 

…!?」

 

しずか「そんな……祈っている暇なんてないわ!!私達にも何か出来る事

 

 

 

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が……きっと出来る事があるはずよ……!」

 

中将「私達に…出来ること……」

 

しずか「どうしたの……?」

 

中将「二人とも……しっかりつかまってて……!」――――――――…

 

ドラえもん「どこへ逃げても無駄だぞ!!」

 

ドゴオオオン・・・・!ドゴオオオン・・・・!

 

のび太「くっ………!」

 

ドラえもん「残念だけど『ひらりマント』と『無敵砲台』を確保している

 

時点で僕の勝利は約束されたようなものだ!諦めて死ねっ!」

 

のび太「それはどうかな………!」

 

ドラえもん「………!?」

 

のび太は『空気ピストルの元』を手に垂らし

 

ドラえもんの方へ振り返った

 

のび太「ドラえもん………無敵の道具って何だと思う…?」

 

ドラえもん「無敵の道具?そりゃ今の僕が使っている………」

 

のび太「例えば君が使った『ウソ8OO』や『タイムベルト』……これらも

 

効果だけを見ると無敵そうに見える……』

 

のび太「けどね……君が失敗した様に、道具ってのは必ず弱点があるもの

 

なんだ……!!」

 

ドラえもん「……何が言いたい………?」

 

 

 

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のび太「君の『ひらりマント』だって『無敵砲台』だって無敵じゃない…

 

…決して無敵じゃないんだ……!」

 

ドラえもん「僕の道具が……無敵じゃないだって……!?」

 

のび太「例えばその『ひらりマント』は『電磁波の反発』を利用する事で

 

攻撃を逸らしてしまうらしいね……!」

 

ドラえもん「な……なんだ!?」

 

ドラえもんの纏う『ひらりマント』の周りに

 

気流のようなものが浮かび上がる……!

 

のび太「それが『電磁波の反発』だ……実際目で見る事は出来ないが『具

 

象化鏡』で映してやれば視覚で見る事が出来る……!」

 

※具象化鏡

 

『時の流れ』等、言葉の表現を具象化させる

 

のび太「そして……視覚化させた後は簡単だ……その『電磁波の反発』を

 

『実体化』させる!」

 

※イメージベレー帽

 

目で見る事が出来ないイメージを実体化させる。

 

ドラえもん「う……!?」

 

のび太「全身を取り巻いていた気流……『電磁波』が実体化したことによ

 

って君は身動きがとれない!!」

 

ドラえもん「くっ……だからどうした!?僕を殴ろうとしても全身のマン

 

 

 

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トが反動でぶれる事によって攻撃は逸れる!!」

 

のび太「何も殴ろうってわけじゃあない……!」

 

のび太はバッグから

 

『NSワッペン』を取り出した

 

のび太「実体化した『電磁波』……マントの周囲で反発し合っている電磁

 

波の部分に『NSワッペン』を貼り付ければッ!その間、電磁波の反発は行

 

われなくなるッ!!」

 

ドラえもん「!?」

 

のび太は空気ピストルで『NSワッペン』を弾き

 

実体化した『電磁波』に命中させた!!

 

のび太「これで君の『ひらりマント』はただの布切れと化した………!!

 

 

ドラえもん「だ……だったら何だというんだ!?『ひらりマント』は保険

 

!!攻撃も防御も『無敵砲台』で補えるんだッ!!」

 

のび太「そうだろうね……君に近づけばミサイルが僕を迎撃しにかかるだ

 

ろう……」

 

ドラえもん「……それなのに……君はなんで平然と僕に近づいて来れるん

 

だァァーーーッ!?」

 

のび太はドラえもんと腕ひとつ分の距離まで迫っていた……!

 

ドラえもん「何故だッ!?何故ミサイルは迎撃しないッ!?」

 

 

 

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のび太「……仲間を捨てゴマ同然の様に扱ってきた君にはわかるまい……

 

!!」

 

ドラえもん「仲間!?仲間だと!?」

 

のび太「さっき別れた三人さ……!!」

 

ドラえもん「何処だ!?何処にいるッ!?」キョロキョロ…

 

のび太「ここにはいない……恐らく君が設置した『無敵砲台』の本体の所

 

だろう……!」

 

ドラえもん「………何だって!?」

 

のび太「しずちゃんには『バリヤーポイント』があるからね……それに中

 

将の『念力目薬』があれば浮遊する事だって出来る……」

 

ドラえもん「まさか………先程の会話だけで……のび太の為に『無敵砲台

 

』を止めに行ったと言うのかッ!?」

 

のび太「僕はさっき彼等の目を見て確信した…………同じ立場なら………

 

僕だってそうする…………!!」

 

ドラえもん「バカな!?くだらない友情ごっこに命をかけたと……ッ!?

 

 

のび太「これでも……追い詰められたこの状況でも……くだらないと思え

 

るのかい……!?」

 

ドラえもん「……ッ!?」

 

のび太「ドラえもん……君は一体………どうしたんだ……!?」

 

 

 

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ドラえもん「寄るな……僕のそばに寄るなァーーーーーッ!!」

 

ドラえもんは懐から束になったダイナマイトの様な物を取り出し

 

自身の口に含んだ!!

 

のび太「!?」

 

ドラえもん「我……ピピ………ッ!!」

 

のび太〈まさか……『自爆』――――――!?〉

 

――――――………

 

―――夕暮れ時……

 

のび太は窓の外を眺めながら

 

ドラえもんとのこれまでの日々を思い返していた……

 

しずか「のび太さん……目が覚めたのね……」

 

のび太「………二人は……?」

 

しずか「出木杉さんは帰ったわ……中将さんもよほど疲れたんでしょうね

 

……寝室でぐっすり眠ってる………」

 

のび太「そう………」

 

しずか「…………」

 

戦いはあっけなく幕を閉じた…

 

ドラえもんの突然の自爆……

 

タイム風呂敷など、あらゆる処置を施すも

 

ドラえもんが再び目を覚ます事は無く……

 

 

 

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暴走した真意もわからぬまま

 

それぞれに癒える事の無い深い傷跡だけを残す結果となった

 

しずか「――…お墓を……?」

 

のび太「うん。」

 

のび太「僕らがタイムマシンで歴史を変えればこの時間軸は劇的に変化す

 

るだろう……」

 

のび太「僕等も……もしかしたら今と全く異なる僕等になるのかも知れな

 

い……」

 

のび太「今の僕があるのはドラえもんのおかげだ……だから………」

 

しずか「……そうね………」

 

新たなる時代へのけじめ……

 

それと同時にドラえもんに対する

 

のび太の感謝に他ならない……

 

その日の夜

 

二人はドラえもんの墓を立てる為

 

公園へと足を運んだ……

 

時刻は0時を過ぎ

 

次の日付を回っていた

 

――8月6日、深夜――――――…

 

ー公園ー

 

 

 

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のび太「この辺がいいかな………」

 

しずか「ええ、ここだと人目につく事も無いでしょう」

 

のび太「さて……まず穴を掘らなきゃ……」

 

しずか「……ええ。」

 

のび太「ドラえもんの事だ……タイムマシンを修理に出してるだろう……

 

…」サクッサクッ

 

しずか「…………」

 

のび太「………はやくタイムマシンを見つけて……こんな歴史………!」

 

しずか「のび太さん……」

 

のび太「な、なんでもないよ……はねた土が目に入っただけ……」ゴシゴシ

 

 

しずか「無理しないで………」

 

のび太「……うん……………」

 

のび太「……早くお墓を作ってやらなきゃ……野ざらしじゃ…落ち着かな

 

いもんね……」

 

しずか「ええ………」

 

のび太「……」サクッサクッ

 

ガンッ!

 

しずか「……あら?今地面に……」

 

のび太「シャベルに何か当たったね……なんだろう…?」

 

 

 

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のび太達は

 

地面に埋まってた球状の物体を掘り起こした…

 

しずか「……何かしら……?」

 

のび太「丸い、ね……公園の設備に関するものじゃあないみたいだ……」

 

しずか「……誰かが埋めたのかしら…?」

 

のび太「う~ん……玩具かな…………」

 

しずか「あら?このボール、上半分が蓋みたいだわ?」

 

のび太「何かの入れ物なのかな……?」

 

しずかが球状の物体の上部分を捻り

 

蓋を開いてみると

 

中には 一冊のノートと一枚のシール、それに時計がひとつ

 

ひっそりと置かれていた…

 

しずか「……誰かが記念品を埋めてたみたいね。」

 

のび太「タイムカプセルってやつかぁ………何だか悪い事をしたなぁ……

 

……」

 

しずか「誰かのしまった思い出はむやみに覗くものじゃないわ…元に戻し

 

ておきましょう」

 

のび太「うん……それにしても変な形の入れ物だね。」

 

しずか「うふふ、まるでドラちゃんの道具みたい……」

 

――――――――――――ドラえもんの道具……

 

 

 

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のび太「……待ってしずちゃん!」

 

しずか「え…!?」

 

のび太はボールを両手に取り

 

見開いた目で中身を覗く…!

 

のび太「……ま、間違いない!じっくり見るまで何の道具か全く思い出せ

 

なかった……!」

 

のび太「これは…………!」

 

のび太「このボールは……『タイムカプセル』だ……!」

 

しずか「……?」

 

のび太は中にあった一冊のノートを手に取り

 

ページをめくる…!

 

のび太「……………!?」

 

しずか「……どうしたの?のび太さん……?」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・

 

のび太「……こ……これ……これはどうなって……!」

 

7月07日――――――

 

のび太は死なない

 

7月08日――――――

 

のび太は死なない

 

7月09日――――――

 

 

 

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のび太は死なない

 

…次々とページをめくるも

 

どのページも同じ事柄で埋め尽くされていた

 

のび太〈―――――――何だ……ッ!?これは……ッ!?〉

 

のび太「どのページも…どのページもッ!!」

 

しずか「のび太さん…!?ちょっと落ち着いて…!」

 

のび太「お墓を作る為に…ここの地面を選んだのは……僕だ…!」

 

のび太「……だけどこれは?……誰が……誰が書いた?……これは僕の字

 

じゃあ無いッ!」

 

のび太「これを埋めた奴は……どうして僕がここを掘る事を知っていたん

 

だ!?」

 

のび太「………!」

 

8月6日――――――

 

日記を付けたのは良いものの

 

のび太が好き勝手していないだろうか心配だ

 

8月6日に一度僕らで日記を掘り起こそうと思う

 

そこで話し合って、どうするか決めよう

 

それまでこの日記やタイムカプセルは誰にも見つかる事なく

 

ひっそりと地中に埋まる事

 

のび太「これは……?ドラえもんが書いたのか……!?」

 

 

 

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しずか「そういえば、ドラちゃんがおかしくなったのはいつ頃からなの…

 

…?」

 

のび太「ドラえもんがおかしくなったのは……7月13日………」

 

しずか「……?」

 

のび太「無い……13日以前の記憶が……全く思い出せない……!!」

 

のび太はバッグから

 

『いつでも日記』を取り寄せた

 

のび太「『いつでも日記』、これは記憶にないような過去の出来事を正確

 

に書くことができる……!!」サラサラサラ…

 

のび太〈書いた通りになる『あらかじめ日記』に何故、僕が死なないと書

 

かれていたのか……『いつでも日記』で僕の抜け落ちた記憶を探れば何か

 

わかるかも……!〉

 

7月07日――――――

 

もっと刺激のあるスリルに満ちた日々を送りたい

 

ドラえもんに『もしもボックス』を出してもらおう

 

のび太〈――――――っ!!〉ズキッ!

 

のび太〈……頭が……痛い……………!〉

 

しずか「何か思い出せた……?」

 

のび太「……見当はついたよ……後は『記憶とり出しレンズ』で念じて…

 

…曖昧な記憶を脳内で鮮明に映像化させる……!!」

 

 

 

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――7月07日――――――…

 

のび太「ドラえも~~~~~~~~~~ん!!」ドタドタドタドタ…!

 

ドラえもん「お帰りのび太くん。期末テストの結果が返ってきたんだろ?

 

どうだった?」

 

のび太「聞かなくてもわかるだろっ!!」

 

ドラえもん「やっぱりね…」

 

のび太「もうこんなテストに追われる生活は嫌だーーーーーっ!!」

 

ドラえもん「仕方ないよ。みんな嫌々ながらやってる事なんだ。」

 

のび太「こんな紙切れの上から僕が判断されてたまるかっ!!人間は統計

 

じゃない!!」

 

ドラえもん「逆に5分10分の面接で人間の全てが把握できる訳でもなく…

 

…ある程度の指針になっちゃうのはしょうがないよ。」

 

のび太「あーやだやだっ!こんな退屈な学校生活っ!もっと刺激のあるス

 

リルな毎日を送りたーーいっ!」

 

ドラえもん「起業でもすれば」

 

のび太「……それだ!僕は独立する!!そして独立するにはやっぱり経験

 

が必要だな……」ジーッ

 

ドラえもん「……何だいその目は」

 

のび太「その…ドラえも~ん……『もしもボックス』をかしてくれないか

 

な~」

 

 

 

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ドラえもん「君はまず僕から独立する方が先なんじゃないかな……」

 

のび太「何だかんだ言いながらも道具を出してくれるドラえもんってやっ

 

さし~」ガチャ

 

ドラえもん「はぁ…」

 

のび太「何だよ」

 

ドラえもん「君が好き勝手しないか心配だ。僕もついて行く」

 

のび太「えぇー…」

 

ドラえもん「やっぱり遊ぶ目的だったんだな!?だいたい君はいつも…」

 

のび太「『もしも僕がスリルに満ちた戦いの日々を送る事が出来たら』!

 

!」

 

ドラえもん「あ、こらっ!!」

 

パァァァァ・・・・・・

 

ドラえもん「呆れたっ!やってる事はバーチャルのゲームと同じじゃない

 

か!!」プンスカ!

 

のび太「それは違う。この野比のび太が独立へと踏み出す為の夢の第一歩

 

だよ。」

 

ドラえもん「何がさ」

 

のび太「これから僕は『スペアポケット』を落としにいく。それを見ず知

 

らずの誰かが拾う事によって、これから幾多の戦いが展開される事になる

 

だろう…」

 

 

 

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のび太「そういった困難に対し僕は適材適所で道具を使い分けて潜り抜け

 

る!それによって僕は状況判断能力が磨かれると言うわけさ!」

 

ドラえもん「全然理に適ってないよ」

 

のび太「それじゃさっそく」

 

ドラえもん「ちょっと待て」グィッ

 

のび太「何だよドラえもん。止めたって無駄だよ。僕は何度でも『もしも

 

ボックス』を使ってここへ戻って来るからね」

 

ドラえもん「わかってるよ。どうせ止めても聞きやしないんだ……これで

 

良し、と。」サラサラサラ…

 

のび太「そのノートは?」

 

ドラえもん「これは『あらかじめ日記』。この日記帳に書いた通りになる

 

。僕の持ってる道具の中で一番凶悪な道具だね。」

 

ドラえもん「君が死なない様に書いておいた。」

 

のび太「!?」

 

ドラえもん「考えても見ろ……『ウソ8OO』とかを使われてしまえば僕ら

 

は一発であの世行き。元の世界へ戻る事も出来なくなるぞ。」

 

のび太「そ、そうか……確かに!……でもドラえもんは?」

 

ドラえもん「僕の身に何かあれば君に助けてもらうとしよう。これも修行

 

の一環である。」

 

のび太「えぇ~めんどくさい事するなぁ……」

 

 

 

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のび太「それじゃあこうしよう」

 

のび太はドラえもんのポケットから

 

『ワスレンボー』を取り出した

 

ドラえもん「?」

 

のび太「いくつかの無敵の道具の存在を一旦忘れるんだ。どうせ僕は死な

 

ないし、それくらいのハンデが無いとスリルな日常は送れない」

 

ドラえもん「なるほどね。すると誰かに悪用されても困るな……本当に危

 

ない道具は『タイムカプセル』に入れて僕等にしか掘り起こせない様に隠

 

しておこう。」

 

のび太「いいね!あとは……これと、『タンマウォッチ』は使ってみたい

 

から……こっちを入れて……これだけでいいかな。」

 

ドラえもん「道中、スペアポケットを落とすのも忘れずにね。」

 

のび太「それじゃあさっさとむさ苦しい『もしもボックス』から出て、公

 

園へしゅっぱーつ!」ガチャ!

 

ー公園ー

 

ドラえもん「『ジェットモグラ』を使えばあっという間だったね!」

 

のび太「あとは『タイムカプセル』を埋めて、と……」

 

ドラえもん「そういえば『魔法事典』も中々危ない道具だけれど……入れ

 

なくていいのかい?」

 

のび太「魔法と逆の名前を言うだけで対処できるし、入れなくてもいいだ

 

 

 

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ろ。」

 

ドラえもん「そっか……道具を忘れるといっても、見たり聞いたりする内

 

に思い出せるから悪用されても心配ないね。」

 

ドラえもん「それじゃあ『ワスレンボー』でお互いの頭を叩くよ」

 

のび太「よしきた」

 

ポコッ☆

 

ポコンッ☆

 

―――――…

 

のび太「……!!!」

 

しずか「のび太さん、何かわかった……?」

 

のび太「え……いや……確信部分についてはまだ何にも……!」

 

のび太〈い……言えやしないよ……この世界が僕のワガママによって作ら

 

れた『もしもボックス』の世界だなんて……!〉

 

のび太〈それより……ドラえもんはどうしてああいう風になってしまった

 

んだ……!?〉

 

のび太は再び『いつでも日記』に

 

筆を走らせる…

 

のび太「……!?」

 

7月07日――――――

 

夜に珍しい客が訪ねてきた

 

 

 

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どうやら僕らが故意に落とした『スペアポケット』を返しに来てくれたら

 

しい

 

僕らは油断していた

 

この世界はスリルある日常を求めて作られた世界……

 

彼は『敵』として僕らの前にやって来たのだ

 

『メモリーディスク』の不意打ちを喰らって僕等は倒れてしまう……

 

ディスクとして取り出される今日一日分の『記憶』

 

でも日記の力は僕を守ってくれている

 

それに記憶を覗いた所で『タイムカプセル』は僕等でしか掘り起こせやし

 

ないんだ

 

ドラえもんの記憶を覗き見ている隙に再び起き上がる僕

 

奴は記憶のディスクにあわてて何かを書き込んだ後、ドラえもんの頭にそ

 

れを放り戻す

 

僕は我を忘れて飛び掛ったが、奴も何か道具を使ったのだろう

 

一瞬の内に『ワスレンボー』で殴られてしまった

 

ここで逃がす訳にはいかない……

 

何度も起き上がろうとする僕に恐れをなしたのか、奴があわてて逃げてい

 

く……

 

追いたくても……追えない……今日一日分の記憶が剥がれ落ちていく……

 

明日になっても……僕はこの事を覚えているのだろうか……

 

 

 

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奴は……出木杉は今日の記憶を見て何を思ったのだろうか……

 

のび太「こ……これは……!?」

 

しずか「ねぇ、のび太さん……」

 

のび太「な、何だい!?」

 

しずか「私……普段はマッチなんて持ち歩かないし……今だって暑いから

 

擦りたいとも思わないのよ……?」

 

のび太「……?」

 

突然、静香は取り出したマッチを擦り

 

『あらかじめ日記』に火をつけた!!

 

のび太「しずちゃんッ!?一体何をッ!?」

 

しずか「私だってわからないわッ!身体が勝手に動いて……!」

 

のび太〈マズいぞ……『あらかじめ日記』は燃えてしまえば効力を失う…

 

…火がついた今、もう手遅れだ……!!〉

 

のび太「『もしもボックス』もバッグから取り出す事が出来ない……とす

 

れば残る手は一つ…!」

 

のび太は『タイムカプセル』の中にあった

 

時計を手に取り、叫んだ!

 

のび太「『ウルトラストップウォッチ』ッ!!時間よ止まれッ!!」

 

バァ――z___ン!!

 

のび太〈全てのカギを握るのは出木杉だ……奴に直接会わないと……!〉

 

 

 

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のび太は出木杉の家へ向かい

 

駆け出した…!!

 

のび太「……見つけた!」

 

出木杉はちょうど家の門から出た所であった

 

しかし、それよりものび太が驚いたのは出木杉の手に握られていた物……

 

 

のび太「あれは『ビッグライト』!?……やはり出木杉が………!」

 

のび太「……………」

 

のび太「『ウルトラストップウォッチ』は……止まっている生物に関わる

 

ことで時間停止が解除されてしまう……」

 

のび太「だから一撃で仕留める。このスーパー手袋の拳で……!頭蓋骨を

 

叩き割るッ!」

 

ゴシャァッ!!

 

のび太〈……出木杉……さようなら……〉

 

出木杉「――…それが君の答えか」

 

のび太「!?」

 

のび太の拳は出木杉の頭部を捉えていた……!

 

しかし、額から多少の血が流れた程度で

 

当の本人は至って平静であった

 

出木杉「数発、撃たれてたらどうなっていたかわからないな……」

 

 

 

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のび太〈硬い……!!なんて体の強度だ……!!〉

 

出木杉「あらかじめ日記で保険をかけるような君だ……時を止めて襲って

 

くる事も予想していたよ」

 

出木杉「だがしかし……止まった時間の中では他の物体の時も止まる…君

 

は直接攻撃しか術が無い様だな。」

 

のび太「……まさかこれまでの戦いが……全て君が仕組んだものだったな

 

んて……!!」

 

出木杉「日記の効果で君を倒す事が出来なかったからな。『メモリーディ

 

スク』も例外では無かった…」

 

出木杉「だから君に対しては記憶を弄るのではなく、一部の記憶を消し去

 

る事にした……」

 

出木杉「翌日に襲えば記憶が戻る恐れがある……だから『メモリーディス

 

ク』で洗脳しておいたドラえもんに数日間『ワスレンボー』を使用させた

 

後、戦わせるように仕向け……」

 

出木杉「8月6日『タイムカプセル』を掘り起こした後、日記を焼き払うよ

 

う静香の記憶も改ざん……」

 

出木杉「ドラえもんの記憶によると今日、君がタイムカプセルを掘り起こ

 

す事は『あらかじめ日記』によって決定された事だったからな……」

 

のび太「……まさか……ドラえもんが自爆したのは…ッ!!」

 

出木杉「君と協力されても困るので、今日に備えて離脱してもらった……

 

 

 

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…あの青ダヌキは良くやってくれたよ。」

 

のび太「君は協力するフリをしながら……平気で僕らを欺いていたのか…

 

…!!」

 

出木杉「いくら僕でもそこまで演技は上手くない。君達と協力した出来杉

 

は言わば片割れ、あれは僕であって僕ではない…」

 

のび太「……?」

 

出木杉「君の記憶を消したとは言え……万が一、僕の計画に気付かれたら

 

厄介だ」

 

出木杉「日記を燃やすまで僕が無害だと刷り込ませる必要があったわけだ

 

……そこで『分身ハンマー』を使った」

 

のび太「……!!」

 

出木杉「『分身ハンマー』でこの出木杉の肉体を『善』と『悪』に完全に

 

分断」

 

出木杉「悪意の記憶を一切持たない『善』の肉体を君の味方として溶け込

 

ませ……」

 

出木杉「後は『悪』である肉体を『タイムピストル』を自身に撃つことで

 

未来に飛ばした。7月7日から……この8月6日にね……」

 

出木杉「今しがたちょうど融合して元の僕に戻ったばかりだよ……くくく

 

……!」

 

出木杉は『ビッグライト』を床に捨て

 

 

 

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踏み潰した……!

 

出木杉「面倒だった事といえば……分裂した事で身体のサイズまで半分に

 

なった事だな。毎日サイズを調整する様に記憶を埋め込んでおいたが……

 

 

出木杉「昨日、『ビッグライト』のバッテリーが尽きたところだ。タイミ

 

ング的にもちょうど良かった……」ギロ…

 

のび太「……っ!」

 

出木杉「『宇宙完全大百科』を少しかじった程度だが……中々道具の併用

 

が上手いだろう僕は?」

 

出木杉「しかし、それでも僕は屈辱的な敗走を強いられる事になった……

 

!」

 

出木杉「あの時の君ほど……憎たらしく感じたものは無い……!」

 

出木杉「自ら生み出した世界で、結果の見えた勝負を挑ませる、反吐が出

 

る程に臆病な君に、な……!」

 

のび太は目の前の青年に打ちのめされかけていた……

 

戦い続けていたのは自分だけでは無い……

 

この男も『あらかじめ日記』という地上最強の道具を打破せんが為に

 

全頭脳を駆使し、勝負をしかけていたのだ……!

 

そして今、自分の前に立ち憚っている…!

 

出木杉「のび太君。いや、のび太。勝負だ……!」

 

 

 

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のび太「……!」

 

以前の出木杉からは想像もつかない気迫が

 

のび太の身体を震わせた

 

出木杉「始めて直面する苦難に君がどう立ち向かうのか…見極めさせても

 

らおうか!!」

 

言い終えた直後、出木杉がすかさずナイフを放つ!

 

瞬間、その切っ先がのび太の喉元に達しようとしていた!

 

のび太「……こ…これは……!」

 

出木杉「避ける暇も無かったろ―――…」

 

バァ――z___ン!!

 

のび太〈なんてね、こっちだってウルトラストップウォッチがあるんだ…

 

…時を止めた!〉

 

のび太「……僕だけは…この止まった時間の中で動く事ができる…!」

 

のび太は首に刺さる寸前だったナイフを払いのけた

 

のび太「しかし……出木杉のやつ……今、何をしたんだ…?」

 

出木杉の手を見ても、道具らしきものは見当たらない

 

しかし彼の放ったナイフが、一瞬で喉を貫こうとしていたのは確かなのだ

 

のび太「……この世界を作った責任は僕にあるとはいえ……!」

 

のび太「ドラえもんを侮辱したのは……絶対に許せないッ!!」

 

のび太は出木杉の顔面に

 

 

 

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強烈な一撃を浴びせた!!

 

ドゴオオン!!

 

のび太「……二発目を受けても平気だなんて……まるでサイボーグだ…!

 

 

出木杉「『機械化機』……という道具がある……」ガラガラ・・・

 

※機械化機

 

さまざまな機械の機能を人間の体にうつす。最大9つまで記憶出来る

 

出木杉「『宇宙完全大百科』と『お医者さんカバン』の技術力をもってす

 

れば……」

 

出木杉「未来デパートの道具でさえも『機械化機』に登録し、肉体に組み

 

込む事が可能だ……!」

 

のび太「じ、自分の肉体を!?道具で改造したというのか!?」

 

のび太〈……つまり……任意で道具の効果を発動させる術を持っている、

 

という事か!!〉

 

出木杉「僕に失敗があるとすれば早とちりしすぎた事だな……」

 

出木杉「まさか君たちが『故意』でスペアポケットを落としたなんて思い

 

もよらなかった……」

 

出木杉「奪われる心配が無いなら、もう少し『宇宙完全大百科』を読んで

 

色々道具を把握しておきたかったが……まァいいか……」

 

出木杉「結果的にドラえもんは死に、『あらかじめ日記』は無くなった…

 

 

 

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…!!」

 

のび太〈……以前の出木杉だとは思えない……このドス黒さ……これが僕

 

が作ってしまった世界の出木杉なのか!?〉

 

のび太「な――――――――――――…」

 

出木杉の殺気に身構えようとしたのび太であったが

 

突如、体が停止してしまう…!

 

出木杉「フハハハハハ!この世界の創造者だと言うのに……惨めだね!」

 

出木杉の肉体に組み込んだ道具の真骨頂

 

『狂時機〈マッドウォッチ〉』

 

この道具は特定の範囲〈エリア〉だけ時を加速させたり減速させたり出来

 

 

ただし時を完全に停止させたり、巻き戻したりという事は出来ない※原作

 

に発言や描写が無い為

 

出木杉「この地球上を流れる時の速さを1億分の1程度にした……!」

 

出木杉「今の君にナイフを突き刺せば…単純に1億倍の時間君の歪んだ表

 

情が見れるというわけだ…!!」

 

のび太「―――――――――――――――」

 

出木杉「んん?今の君は必死に聴覚の信号を脳に送っているという感じか

 

な?」

 

出木杉「実に愉快だ……笑いが止まらないよ………!!」

 

 

 

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出木杉「本来なら今、君の持っている全ての道具を奪ってやりたいところ

 

だ…今後の為にもね」

 

出木杉「しかし君達の事だ、仲間割れの時点で『道具を奪う道具』の対処

 

はしているのだろう?」

 

出木杉「だから無駄な作業はしない…!今すぐ楽にしてやる…!」

 

出木杉はのび太の心臓部分にナイフを付き立てた

 

出木杉「『あらかじめ日記』の無い今なら…このナイフでとどめを刺せる

 

…!」

 

出木杉「……終わりだよ、のび太…」

 

ザクッ

 

無情にも―――――

 

出木杉の持ったナイフは

 

のび太の心臓部を貫いた

 

出木杉「……届いた…とうとう奴の心臓に……!」

 

出木杉「……この一撃の為に……!」

 

出木杉「……あらゆる計画を練った……!」

 

出木杉「……長い……戦いだった…!!」

 

出木杉「……それなのに…貴様という男は…!」

 

出木杉「この抜け目の無さ…癇に障る…!虫唾が走る…ッ!」

 

出木杉のナイフはのび太を貫いた…

 

 

 

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しかし血しぶきを上げるわけでもなく

 

その腕はのび太の体をすり抜けていたのだ!

 

出木杉「こいつのこの腐った性根…!あくまで自分の優位な土俵にしか上

 

がらないアンフェアな精神ッ!」

 

出木杉「全くもって腹立たしい…!」

 

出木杉はのび太の脇腹に貼られてある印を見た

 

出木杉「『四次元若葉マーク』…つまり肉体だけこいつは別の空間に逃げ

 

ていたというわけだ…」

 

※四次元若葉マーク

 

この若葉マークを貼ったものは肉体だけ四次元空間に入った状態となり

 

壁でも建物でも何でもすり抜けることができる。

 

出木杉「時を止めて実体による攻撃、次の時間停止まで『四次元若葉マー

 

ク』による完全防御…!」

 

出木杉「スリルを求めてこの世界を創造しておきながら、汚い浅知恵を使

 

うものだ…!」

 

出木杉「しかし、窮地を脱し、この出木杉をうろたえさせているのも事実

 

。賢しいとも言える…!」

 

出木杉「『マッドウォッチ』解除!」

 

のび太「―――んて奴だ……」

 

のび太〈出木杉の能力の大体の想像は付く……ここは若葉マークで身を守

 

 

 

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るのが得策だ…〉

 

出木杉「くくく…ッ!望む所だ…!必ずこのナイフで君を貫いてやる…!

 

 

のび太がウルトラストップウォッチを押す寸前…!

 

出木杉は再び体内の道具を発動させた

 

――――――――――――……

 

のび太「あっちから感じるぞ…!この異様な感じは……間違いない!」

 

のび太は街の本道を抜け、住宅街へと駆け出す

 

道行く人の影が落ち 町が徐々に色を付け始める頃

 

街角から流れるラジオが時刻を告げた…

 

「ピッ…ピッ…ピッ…ポーン……」

 

「―――さぁ17時を回りましたミュージックチャンネル。7月23日現在の

 

ヒットチャートをお送り致します…」

 

ドシャ―――z___ン!!

 

出木杉「僕は時間を逆行させる事ができるんだよ……!!」

 

※フリダシニモドル

 

出たサイコロの目の数だけ日付や時間を戻せる

 

出木杉「さて、僕の予想が正しければ、ここは先程から数日前。ドラえも

 

んと奴が戦いを繰り広げている時間軸の筈だ」

 

出木杉「なるべく今日中に見つけたいものだ……『ドラえもん』の方をな

 

 

 

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……」

 

出木杉はデパート5階の駐車場まで飛び上がり

 

街を見下ろした

 

出木杉「見慣れた景色だ……何の面白みの無い景観………あれは……!?

 

 

出木杉の見ている先

 

のび太が全速力で住宅街の袋小路へ向かって駆けていた

 

出木杉「向こうは奴の住んでいる家の方向と真逆…一体何を企んでいる…

 

…?」

 

出木杉「ふむ……ドラえもんの消息が掴めない今、奴が唯一の手がかり…

 

…ならば追跡するまで……!」

 

出木杉〈この先は行き止まりだがどうするつもりだ…?〉

 

のび太は慌てふためいた後

 

タケコプターを取り出した

 

出木杉「空路を利用するのか。僕も後を追わなければ…」

 

出木杉「『逆重力ベルト』作動ッ!!」フワッ

 

出木杉「奴はあの脚で陸路を行くのでは無く、わざわざ敵に見つかりやす

 

い空路を選んだ…!」

 

出木杉「袋小路に真っ直ぐ向かった事から恐らく、この住宅街をよく知ら

 

ないのだろう。」

 

 

 

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出木杉「にも関わらずこの住宅街に入り込むという事は…!」

 

出木杉「奴にとって避けられない『何か』…すなわち『ドラえもん』に関

 

わる事があるに違いないッ!」

 

出木杉「どれ、一応検証しておこうか……奴があの屋根に近い場所まで来

 

たところで…」

 

出木杉「『マッドウォッチ』作動ッ!」 ドギュウゥ―――z___ン!

 

 

のび太「――――――――――――」

 

出木杉「この住宅街だけ時の流れを限りなく停止状態に近い速度にした…

 

…!」

 

出木杉は忍ばせたナイフを取り出す…!

 

出木杉「今、この時点で奴の心臓を貫いたら果たしてどうなるのか…?」

 

出木杉「大きな時間改変が起き、僕は戦わなくて済むのか…タイムパトロ

 

ールが阻止しに来るのか…」

 

出木杉「様々な可能性を模索する上で……試してみるとしようッ!」

 

出木杉は手に持ったナイフを

 

のび太に突き刺した!

 

出木杉「……答えはどちらでも無く、心臓を捉えたはずのナイフは『何故

 

か致命傷にならない箇所へと逸れる』…か。」

 

出木杉「このまま…!」ザクッ

 

 

 

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出木杉「奴を…!」ズバッ

 

出木杉「蜂の巣のように刺し傷を加えようとしても…!」ブンっ!

 

出木杉「……攻撃するたびにどんどん逸れていく。もうこれ以上傷をつけ

 

る事が出来ない……」

 

出木杉「まぁ想定の範囲だ。この時点の奴には『あらかじめ日記』が味方

 

をしている」

 

出木杉「やはり未来の……日記を燃やした後の奴を直接下さなければなら

 

ないようだな…!」

 

出木杉「『マッドウォッチ』解除!」

 

のび太「うわっ!!こ、この攻撃はッ!!?」

 

出木杉〈くくく……〉

 

飛行機の漏れたエンジンが引火していく様に

 

のび太から赤々しい血液が飛散し目の前で墜落していく

 

?「んん?まだ上に仲間がいたのかァ?」

 

出木杉〈何ッ!?敵がいたのかッ!?〉

 

男は地上から目に見えぬ攻撃を繰り出す…!

 

出木杉は思わぬ不意打ちに屋根から滑り落ちてしまった

 

出木杉〈ちっ…中々思い通りに事は運ばないものだな…!〉

 

准士官「……そろそろのび太が来る頃だと思ってたぞ」

 

准士官「お前が今にボスの居場所を把握しようとしてるって『中将』が言

 

 

 

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うんでな」

 

のび太「ドラえもんのやつ…自分の位置が割れている事に気がついてない

 

のか…」

 

准士官「そぉいう事よ。上がボスに連絡を取ろうと躍起になってる間、俺

 

達下っ端は道中見つけ次第足止め役ってわけだ」

 

のび太「…大した統率力だよ…君達のボスはワッペン以外にも何か道具を

 

使って従えてさせているようだね…」

 

准士官「さぁ…どうだったかな…」

 

出木杉〈……確かこの男、『准士官』だったな。道具の支給、編成を任さ

 

れていた筈……〉

 

准士官「お前は中々の策士だと聞いてるが……まさか仲間を連れてくると

 

は…」

 

のび太「仲間?」

 

のび太は後ろに振り返った

 

のび太「お前は……出木杉!?どういう事だ?確かお前は……!!」

 

出木杉〈まずいな……気付かれたか……〉

 

出木杉「『フリダシニモドル』発動…!」

 

ドシャ―――z___ン!!

 

出木杉〈むやみに過去を弄って厄介事を増やすわけにはいかない…慎重に

 

事を進めなければ……〉

 

 

 

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―――この時点でのび太の前に姿を現すのは、出木杉自身に相当なリスク

 

を伴う行為である

 

もし自身が黒幕であることがバレたなら

 

のび太の目的は『ドラえもんを止める』のではなく、『正気に戻す』こと

 

に変わる

 

つまり元の時間軸に戻った時

 

ドラえもんと結託したのび太達と戦わなければならない可能性を産む事に

 

なるのだ

 

それだけは何としても避けたい出木杉であった

 

ーデパート5階の駐車場ー

 

少し前の出木杉「ふむ……ドラえもんの消息が掴めない今、奴が唯一の手

 

がかり……ならば追跡するまで……!」

 

出木杉「待て」

 

少し前の出木杉「何者だッ!?……なんだ『僕』か、どうしてここに?」

 

出木杉「『僕』なら少し頭を働かせればわかるだろう……?」

 

少し前の出木杉「……今から僕がやろうとしている事が失敗すると?」

 

出木杉「そういう事だ。奴から距離を取れ。興味半分で近づくのは止めて

 

おく事だ。」

 

少し前の出木杉「了解した。過去の僕にも同じように伝えよう。武運を祈

 

る。」

 

 

 

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少し前の出木杉「『フリダシニモドル』、発動しろッ!」

 

出木杉「うう……っ!」ギュオオオオオオオオ・・・・・・・

 

過去を変えた事で

 

出木杉の記憶が改変される……!

 

出木杉「…ふむ、未来の僕は『遠くから様子を伺え』と言っていたな……

 

今、奴は袋小路へと向かっているが…」

 

出木杉「目的はあくまでドラえもん…必要な時まで手を出さず、あくまで

 

傍観に徹しよう……」

 

のび太「『爆発コショウ』だ!!『自分自身の』クシャミで宇宙まで飛ん

 

でいけッ!!」

 

准士官「ウォォォォォォッ!!」

 

――――――――――――…

 

のび太「ハァ…ハァ……」

 

出木杉〈あの男も倒し、だいぶ距離を進めた……そろそろ何らかの手がか

 

りを示しても………!〉

 

のび太「な…なんだ…ドラえもんの奴…」

 

のび太「さっきまでこっちの方角…『西側』にいた筈だぞ!?」

 

出木杉〈何だ……?何をキョロキョロと見回している…?〉

 

のび太「真逆だ…今は『東』にいる……!」

 

のび太「今度は北ッ!!」

 

 

 

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出木杉〈『東』…『北』……?〉

 

その時である

 

背筋に氷塊が滑るが如く……

 

張り詰めた異様な空気が出木杉を慄然とさせた……!

 

出木杉〈…な……何だこの感じは……!?〉

 

出木杉〈奴の見ている方角……確かに遠くから何か大きな『存在』を感じ

 

る…!!〉

 

出木杉〈な、何だ……この威圧感にも似た圧倒的な『存在感』は……!!

 

 

のび太「くそ~…ここまで頻繁に移動されちゃ…!」

 

出木杉〈奴がこの『存在感』を頼りにしている事は明白……ならば!!〉

 

出木杉「『マッドウォッチ』ッ!時を減速させろッ!!」

 

ドギュウゥ―――z___ン!!

 

出木杉「ドラえもんの位置はわかった…が、用があるのは僕一人だ、君に

 

は一旦退場願おう」

 

出木杉はのび太の両足のアキレス腱に

 

ナイフを突き刺した!

 

出木杉「ふん…あくまで『足止め』として相手をしてやろう…この『存在

 

感』が消えて君がドラえもんを見失うまでの、な」

 

出木杉「この『存在感』が消えた後、『フリダシニモドル』で再びこの時

 

 

 

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間軸に訪れれば…!」

 

出木杉「君が『今の僕』に足止めを食らっている間に用件が済ませられる

 

というわけだ…ッ!」

 

『マッドウォッチ』を駆使し、のび太を足止めしながら

 

ドラえもんの『存在感』が消えた事を確認すると

 

出木杉は再び時を遡った

 

――――――――――――…

 

出木杉「さて、この『存在感』のする方へ向かうか……」

 

出木杉「頻繁に位置を変化させている様だが…『マッドウォッチ』を持っ

 

てすればこの程度の瞬間移動…」

 

出木杉「捉えられないものではないッ!」 ドギュウゥ―――z___ン!

 

 

ードラえもんのアジトー

 

ドラえもん「くそーのび太のやつ!『石ころ帽子』に細工をしていたとは

 

…!」

 

※石ころ帽子

 

この帽子を被ると道端の石ころのように、周りから一切認識されなくなる

 

ドラえもん「石ころ帽子に『あべこべクリーム』が塗ってあったおかげで

 

僕が巨大な存在感を出す様になってしまった!」

 

ドラえもん「脱ごうにも接着剤らしき道具が塗ってあってしばらく脱げな

 

 

 

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い!」

 

出木杉「……それで『ひっこし地図』を使い、この家の位置を頻繁に移動

 

させていたというわけか…くくく…!」

 

ドラえもん「むっ、誰だッ!」

 

出木杉「やぁドラえもん…『石ころ帽子』で買い物、もとい食料調達に行

 

く所を狙った緻密な作戦に引っかかったのかな…?」

 

ドラえもん「…出木杉か?たかが『上等兵』の君がここで何をしている?

 

 

出木杉〈たかが『上等兵』か、ふん……『善』の肉体は良いカモフラージ

 

ュになったな………!〉

 

出木杉「実は今、のび太君の足止めをしていてね…」

 

ドラえもん「何ッ!?本当か!?」

 

出木杉「ああ、だけど少し困っているんだ…『准士官』殿が退けられたん

 

だ…その、わかるだろう?」

 

ドラえもん「まぁ准士官の事だ…君のような低階級にはあまり良い道具を

 

渡していないだろうからね…」

 

出木杉「そういう事なんだ。このままだとあっけなくここへ辿り着いてし

 

まう」

 

出木杉「早急に新たな道具を支援していただきたい」

 

ドラえもん「出木杉君」

 

 

 

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出木杉「何でしょう」

 

ドラえもん「それは出来ない相談だ…」

 

出木杉「…と、申されますと?」

 

ドラえもん「君はとても頭が良い…万が一、寝首をかかれると厄介だ」

 

出木杉「滅相も御座いません…恐れ入ります」

 

ドラえもん〈急にかしこまっちゃって…あざとい奴だ〉

 

出木杉「ところでさっき准士官殿が吹き飛ばされたのですが…」

 

出木杉「その際、落ちたジャケットにワッペンが貼られていましてね…」

 

ドラえもん「…ちっ、そういえば具体的にどこへワッペンを貼れば良いの

 

か指示をしてなかったな……」

 

出木杉「じゃあこのジャケットを羽織れば僕は『准士官』という事でよろ

 

しいのでしょうか?」

 

ドラえもん「…まぁそうなるけど…昇格がそんなに嬉しいのかい?」

 

出木杉「五階級特進ですよ?冬戦争の英雄シモ・ヘイヘ以来の快挙だ」

 

出木杉「それに…」

 

ドラえもん「何をするッ!?」

 

出木杉は『二等兵』の階級ワッペンを

 

ドラえもんの背中へと貼り付けた

 

出木杉「このジャケットに入ってました…これで君は『大将』でもありた

 

だの『二等兵』…」

 

 

 

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ドラえもん「!?」

 

出木杉「なに…この事実を知っているのはこの場にいる二人だけだ。君は

 

普段通り『大将』として振舞えばいい…」

 

出木杉「心配しなくてもわざわざ上司に命令しようとする部下はいない」

 

出木杉「この僕を除けば、ね…」

 

ドラえもん「くっ…!」

 

出木杉はジャケットの袖に手を通した

 

出木杉「『准士官』の僕が命令する。『入りこみミラー2』と『道路光線

 

』をこちらに渡せ」

 

ドラえもんは渋々命令に従った

 

出木杉「最初から素直に言う事を聞いていればよいのだ…」

 

出木杉はドラえもんの石ころ帽子にナイフで傷をつけた

 

ドラえもん「痛っ!」

 

出木杉「もうこの時代に用は無い…さらばだ!」

 

ドラえもん「あっこら!待ていっ!」

 

ドギュウゥ―――z___ン!!

 

ドラえもん「……逃げ足の速い奴め……まぁいいや…石ころ帽子を傷つけ

 

てくれたおかげで僕が助かったのも事実だ…」

 

ドラえもん「あんな道具じゃ寝首をかかれる事も無いだろう…」

 

出木杉「『機械化機』を使ってこの道具を肉体に登録し…任意で使えるよ

 

 

 

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うになれば…!」

 

――――――――――――…

 

出木杉「最強だ…これで奴を……のび太を倒せる…ッ!!」

 

出木杉「ふはははははァ…ッ!!待っていろのび太ァ!!」

 

出木杉「『マッドウォッチ』ッ!元の時間まで加速しろッ!」―――――

 

―――――――…

 

――8月6日――――――…

 

出木杉「………やぁ、お待たせ」

 

のび太〈急にいなくなったと思ったら…何をしていたんだ……?〉

 

出木杉〈『入りこみミラー2』発動ッ!〉 瞬ッ!

 

のび太「また消えた…!?」

 

――――――…

 

出木杉「ふははは!着いたぞ『鏡面の世界』ッ!」

 

出木杉「奴が『四次元若葉マーク』で肉体だけ異次元の空間に逃げようが

 

関係ない!」

 

出木杉「回避不可能の攻撃というのを見せてやろう…!」

 

ー現実世界ー

 

のび太「奴は何をしているんだ……!?」

 

透明になる道具は全て処理してあるにもかかわらず

 

出木杉は目の前で消えた…

 

 

 

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つまり出木杉は消えたのでは無くどこかへ『移動』している事になる……

 

のび太「とりあえず『ウルトラストップウォッチ』で時を止めるッ!!」

 

バァ――z___ン!!

 

のび太「時を止め、尚且つ若葉マークを貼っておけば襲われずにじっくり

 

次の手を予想する事が出来る……奴はどこに移動した…?」

 

のび太「例えば、『タイムピストル』で未来に移動してから攻撃を行うと

 

したら……?」

 

未来に移動して攻撃……

 

この手段は言い換えれば『目隠しをしながら瞬間移動で攻撃』するのと何

 

ら変わりない

 

時を止める道具を持っている相手に対し、出木杉はこれほどリスクの高い

 

方法を選ぶだろうか…?

 

のび太「逆に過去に移動したところで『あらかじめ日記』が存在している

 

。僕の命を奪うことは不可能……」

 

では、日記を『燃やした』時点まで時を戻したとすれば

 

出木杉はどうするだろうか…

 

のび太「もしあの時、僕に何らかの攻撃を仕掛けていれば……僕の『四次

 

元若葉マーク』の存在に気付くだろう。」

 

『四次元若葉マーク』で攻撃が通らないと知れば

 

出木杉なら…のび太ならどうする……?

 

 

 

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のび太「『四次元若葉マーク』に対抗する術は………無い、不可能だ。僕

 

の考えすぎか…?」

 

ー入りこみミラー2の鏡面世界ー

 

※入り込み鏡

 

この道具は『現実世界』と『鏡面世界』を行き来する事が出来る

 

『鏡面世界』は左右が逆なだけで現実の世界とまったく同じように出来て

 

いる。

 

『鏡面世界』には人が誰もいない上、何をしようと現実世界には一切影響

 

がない

 

出木杉「『四次元若葉マーク』と『入りこみミラー2』……一見別の道具

 

だが、この二つには共通点がある……」

 

出木杉「ひとつは『現実世界』と『別の世界』を行き来できるという能力

 

…」

 

出木杉「そしてふたつめ、これが最大のポイントだ……」

 

出木杉「これだけは他の道具じゃあ代用できない…この二つの道具のみが

 

持つ特有の物といえる…」

 

『入りこみミラー2』の鏡面世界は

 

上記で説明した『入り込み鏡』の鏡面世界とは少し異なる…

 

それは『入りこみミラー2の鏡面世界』で壊した物体や家などは『現実世

 

界でも壊れる』という点である

 

 

 

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出木杉「『四次元若葉マーク』は肉体だけ『別の世界』に移動するが…」

 

出木杉「使用者は『現実世界』で見聞きができ、姿も目視することができ

 

る。時間の干渉も受けていた…」

 

出木杉「『入り込みミラー2の鏡面世界』で壊した物体や建物は『現実世

 

界でも壊れる』……」

 

出木杉「つまり…双方とも『現実世界』と『別世界』の間を『常に』リン

 

クさせている『道』のようなものが存在するという事だ……」

 

出木杉「もし、その『道』に…干渉する術があるとしたら…!」

 

出木杉「……どうやら奴は『現実世界』の時を停止させている様だな……

 

 

出木杉〈しかしこちら側の世界とリンクしているのは『現実世界』に存在

 

する『物体や建物』……僕は時間の干渉を受けない……!〉

 

出木杉「まずは『入りこみミラー2』を覗き、『現実世界』にいるのび太

 

の現在地を把握ッ!」

 

出木杉「続いて、僕とのび太の位置を結ぶ直線上に、現実世界と鏡面世界

 

を繋ぐ出入り口を作成ッ!!」

 

出木杉「そしてその出入り口に……『道路光線』を照射するッ!!」

 

カッ――――――…

 

のび太〈何だ!?眩しい……!!〉

 

のび太〈時は停止している筈だ……何故、急にライトが……!?〉

 

 

 

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その時……!

 

光を遮る様に

 

一つの人影がのび太の視界に飛び込んで来た…!

 

のび太「誰か……来る!」

 

出木杉「これで終わりだッ!のび太ッ!」

 

のび太がその目を凝らすと

 

出木杉がナイフを握り、眼前まで迫っていた……!

 

のび太「出木杉!?」

 

身の危険を察し

 

咄嗟に突進攻撃をかわすのび太…!

 

出木杉「ふん、かわされたか……!!」

 

のび太「何故……時の止まった中を動けるんだ……ッ!?」

 

出木杉「次の一撃はタダでは済まさん……!」

 

のび太〈しかも『四次元若葉マーク』を付けている僕に迷わず攻撃してき

 

た………!!〉

 

出木杉〈『フリダシニモドル』発動ッ!!時を『数分』巻き戻すッ!!〉

 

ドシャ―――z___ン!!

 

ー数分前ー

 

出木杉B「………やぁ、お待たせ」 …瞬ッ!

 

のび太「また消えた…!?」

 

 

 

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出木杉A〈『僕』が鏡面世界へ移動したようだな……『入りこみミラー2

 

』発動ッ!〉 瞬ッ!

 

――――――…

 

出木杉B「ふははは!着いたぞ『鏡面の世界』ッ!」

 

出木杉A「どうやら上手くいった様だな……」

 

出木杉B「君は……未来の僕か……良く来てくれた………!!」

 

カッ――――――…

 

のび太〈何だ!?眩しい……!!〉

 

のび太〈時は停止している筈だ……何故、急にライトが……!?〉

 

その時……!

 

光を遮る様に

 

一つの人影がのび太の視界に飛び込んで来た…!

 

のび太「誰か……来る!」

 

出木杉B「これで終わりだッ!のび太ッ!」

 

のび太がその目を凝らすと

 

出木杉がナイフを握り、眼前まで迫っていた……!

 

のび太「出木杉!?」

 

身の危険を察し

 

咄嗟に突進攻撃をかわすのび太…!

 

出木杉「ふん、かわされたか……!!」

 

 

 

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のび太「何故……時の止まった中を動けるんだ……ッ!?」

 

のび太が疑念を抱いたと同時…

 

上空から再び光の道筋が現れ、のび太を照らし出す!

 

のび太〈何だ!?また光が……!!〉

 

出木杉A「逃げられると思うなッ!」ズァァ!!

 

のび太「!?」

 

出木杉A「――――…中々の身のこなしじゃあないか………ッ!」

 

上からの突進攻撃……!

 

ナイフは頬をかすめたものの致命傷には至らなかった…!

 

のび太「で、出木杉が……どうして二人もいるんだッ!?」

 

出木杉A「だがあともう少し………!」

 

出木杉B「楽しみだよ……君に一撃が加えられると思うと……!」

 

のび太〈『四次元若葉マーク』を付けている僕に迷わず攻撃してきた……

 

それより、『二人』いる……これは……!?〉

 

出木杉A、B〈『フリダシニモドル』発動ッ!!時を『数分』巻き戻すッ

 

!!〉

 

ドシャ―――z___ン!!

 

ー数分前ー

 

出木杉D「………やぁ、お待たせ」 …瞬ッ!

 

のび太「また消えた…!?」

 

 

 

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出木杉C〈『僕』が鏡面世界へ行ったようだな……『入りこみミラー2』

 

発動ッ!〉 瞬ッ!

 

出木杉A、B〈『入りこみミラー2』発動ッ!〉 瞬ッ!

 

――――――…

 

出木杉D「おや、先客が居る様だが……未来から加勢に来てくれた様だな

 

。」

 

出木杉C「のび太は仕留められそうか……?」

 

出木杉A、B「あと3巡ほど遡れば奴の退路は完全に塞がるだろう……」

 

出木杉D「ハッハッハッ!これはいい!最強の攻撃だッ!!」 ――――

 

――…

 

カッ――――――…

 

のび太〈何だ!?眩しい……!!〉

 

のび太〈時は停止している筈だ……何故、急にライトが……!?〉

 

のび太「そ……それよりも……!!」

 

のび太は周囲を見渡しながら吃驚する……!

 

止まった時の中、四方八方からライトを照射されていたからだ…!!

 

のび太「……何じゃこりゃああああァーーーーーーーーッ!?」

 

出木杉「これで終わりだッ!のび太ッ!」

 

光の軌跡を辿り

 

無数の出木杉が一斉に襲い掛かってきた……!

 

 

 

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出木杉の群れが

 

のび太の居た場所をあっと言う間に覆いつくす…!

 

のび太「ハァー……ハァー……!!」

 

出木杉「小さい穴を掘って地中へ逃げたか……だが…!」

 

出木杉の群れの中の一人が握るナイフから

 

真新しい血が滴る…

 

出木杉「このダメージ……摩擦などによる『かすり傷』ではない、僕の攻

 

撃が完全に触れたッ!!」

 

のび太「!?」

 

出木杉「君の時間停止は『ウルトラストップウォッチ』によるものだ……

 

よって僕が君に触れた今、時は動きだす……ッ!!」

 

のび太〈『四次元若葉マーク』を付けているのに……ダメージを受けてし

 

まった……!?〉

 

出木杉「『マッドウォッチ』ッ!のび太の周囲を減速させろッ!!」ドギ

 

ュウゥ―――z___ン!!

 

のび太「――――――――――――」

 

出木杉「チェックメイト……!!」

 

『四次元若葉マーク』に対する出木杉の攻撃……

 

それは秘密道具の製作者にも想定されていない

 

道具の併用による『バグ』を利用したものであった

 

 

 

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『道路光線』で作り出した異次元の道筋に『入り込みミラー2の出入り口

 

』を噛ませることで

 

現実世界と異世界を繋ぐ隙間に干渉出来る異次元空間を作り出したのであ

 

る……!

 

出木杉「お別れだ……!!」ジャキン!

 

出木杉達はのび太のいる穴に向かい

 

一斉にナイフを放つ!!

 

出木杉「『マッドウォッチ』……ナイフの周囲を加速させろッ!!」ドギ

 

ュウゥ―――z___ン!!

 

加速した数十本のナイフが

 

のび太の体に突き刺さる……!

 

出木杉「『マッドウォッチ』……解除ッ!!」

 

のび太「が…ハ………!?」ブシュウウ…!

 

出木杉「自ら墓穴を掘ってくれるなんてね……手間が省けた……」

 

のび太「あ……」

 

出木杉「さよならのび太……」

 

のび太「」

 

出木杉A「さて……ここに至るまで増えてしまった僕等をどうするか……

 

 

出木杉J「簡単な事だ……一番古い君がここに残り、後は全員過去へ戻っ

 

 

 

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て同じ事を繰り返す……」

 

出木杉X〈僕が抜けるのは当分先か、まぁしかたない。Aのおかげで我々

 

の勝利が約束された様なものだ……〉

 

出木杉C「」

 

出木杉K「三番目……さっきからうずくまってどうした?」

 

出木杉F「ぐ………ぁ………」ブシュウウ…!

 

出来杉L「!?」

 

違和感に気付いた時には既に何人かが

 

体中から血を流し倒れていた後であった……!

 

出木杉C´「な……何だァァーーーッ!?何がどうなっているッ!?」

 

出木杉Z「喚くなッ!僕なら平静を保t……っ………」ブシュウウ…!

 

ドサッ・・・

 

出木杉A´「こ……これは一体……!?」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・

 

32名の出木杉の誰もが

 

現状を把握できずに次々と倒れていく……!

 

出木杉B´「う………ッ!!」ブシュウウ…!

 

出木杉F´「こ……このままでは……ッ!」

 

出木杉D´「き、君……この時間軸の僕か……!?」

 

出木杉F´「何なんだこの状況はッ!?何かわかったのかッ!?」

 

 

 

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出木杉D´「あくまで予測にすぎないが……奴は……のび太は『ダメージ

 

を跳ね返した』のだと思われる……ッ!!」

 

出木杉F´「何……だと……!?」

 

出木杉D´「その証拠に……一番最近である僕……つまり君の……ダメー

 

ジの進行が遅い……」グシュ……ブシュ…!

 

出木杉F´「おいッ!?しっかり……!!」

 

出木杉E´「このままでは全滅だ……このダメージの進行を食い止める手

 

段はひとつ……!」

 

出木杉F´「……過去に戻って……今までの僕の攻撃を一旦止めるという

 

訳か……!!」

 

出木杉E´「『マッドウォッチ』ッ!!……出木杉F´の開いた傷口を『

 

減速』させろッ!!」ドギュウゥ―――z___ン!!

 

出木杉F´「……ッ!」

 

出木杉E´「僕はもうすぐ死に……減速が解除されるのも時間の問題だ…

 

…焼け石に水だが……後は……ッ!!」ブシュウウ…!

 

出木杉F´「くっ……『フリダシニモドル』発動しろッ!!」

 

ドシャ―――z___ン!!

 

ー数分前ー

 

出木杉A「………やぁ、お待たせ」 …瞬ッ!

 

のび太「また消えた…!?」

 

 

 

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出木杉F´〈喰い止めなければ……『入りこみミラー2』発動ッ!〉 瞬

 

ッ!

 

――――――…

 

出木杉A「ふははは!着いたぞ『鏡面の世界』ッ!」

 

出木杉F´〈いちいち……説明している暇は無い……〉グシュ……ブシュ…!

 

出木杉F´は自身から取り出した『メモリーディスク』を

 

もう一人の出木杉へと放り投げた!

 

出木杉A「うう……!?」ギュオオオオオオオ・・・・・・

 

出木杉F´〈僕の……肉体の『存在』が消える……これで最悪の事態は…

 

…免れ……た……〉シュウウ…

 

出木杉「この記憶は……未来から来た……僕の……!?」

 

出木杉「こ……このまま奴に攻撃を仕掛ければ全滅は必至、という事か…

 

…!」

 

出木杉は『メモリーディスク』の記憶を頼りに

 

新たな攻撃方法を模索していた……

 

出木杉〈ダメージを跳ね返す道具だと…!?しかし、奴の手には『ウルト

 

ラストップウォッチ』しか握られていなかった……!!〉

 

攻撃は一旦中止しなければならない……

 

しかし、あの時点でのび太から目を離すわけにもいかない

 

何故ならのび太を見失い、もしタイムマシンを使われる様な事があれば

 

 

 

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歴史が所々で改変され、出木杉に勝機が無くなるからだ

 

出木杉「奴の使用した道具の正体は掴めないが……僕には悠久とも言える

 

時間がある……過去だ、『日記』の効果が発動する前まで遡って奴を葬る

 

チャンスを窺う……!!」

 

――7月07日――――――…

 

ドシャ―――z___ン!!

 

出木杉「くっ……ダメか!!………この世界は『作られた並行世界』!」

 

出木杉の嫌な予感が的中してしまう……

 

『もしもボックス』はどこかにある『パラレルワールド』へ移動する他

 

新たな『パラレルワールド』を構築する事もできる

 

出木杉「『作られた並行世界』……つまりこの世界が作られるより以前の

 

時へ遡る事が出来ない……時間軸が存在しない………!」

 

出木杉〈ならのび太だ……日記を書く前に……奴を仕留めるッ!!〉

 

ーのび太の部屋ー

 

のび太「公園に『タイムカプセル』を埋めるとして……どうやって穴掘ろ

 

うか?」

 

ドラえもん「モグラジェットがいい、あれならすぐだよ」

 

出木杉「い……いた……二人だ……あの二人さえやれば……!」

 

――――――――ガチャ

 

出木杉「今だッ!!『マッドウォッチ』作動――――!!」

 

 

 

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出木杉「…………!?」

 

出木杉は困惑していた……

 

今、のび太達が『もしもボックス』から出たのを見届け

 

マッドウォッチを発動させた瞬間……

 

自身がのび太の机に

 

叩きつけられていたのである……

 

バァ――z___ン!!

 

のび太「本当によくやるよ君は………」

 

出木杉「き……君は……何故ここにいるッ!?」

 

のび太「『いただき小判』で一緒に時を遡り、ついて来たのさ。」

 

出木杉「僕についてきただと!?……バカな!!君は地中へ逃げた筈じゃ

 

あ……ッ!?」

 

のび太「『四次元若葉マーク』に対抗する術は無い……」

 

出木杉「………?」

 

のび太「だけどもし君が対抗手段を持っていたら……それはもう僕の頭を

 

持ってしても敵わない相手だ……」

 

のび太「だから僕は戦うのをやめた……君が二度目にいなくなった後で時

 

間停止を解除し、ドラえもんが以前に確保していた『コピーロボット』を

 

取り寄せた後、僕の分身を作らせ……君と戦わせたんだ……」

 

出木杉「何……だと……!?」

 

 

 

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出木杉「では……ダメージが跳ね返ったのは……ッ!?」

 

のび太「『コピーロボット』に『痛みはねかえりミラー』を忍ばせておい

 

て……僕は『いただき小判』で君に付着しながら隙を伺っていた……」

 

のび太「まさか君が時間を逆行する能力を使い、『もしもボックス』の前

 

に来るなんて思いもよらなかったけどね……」

 

出木杉「き、君は……!!」

 

のび太の拳が

 

ゆっくりと出木杉の頭に沈み込む……

 

出木杉「『マッドウォッチ』!!作動を…ッ!!」

 

のび太「無駄だよ、今は『ウルトラストップウォッチ』で時を止めてある

 

……」

 

のび太「近くにいる君にもこの止まった時の中に入って来てもらった……

 

僕と同様に『他の道具』を使用する事が出来ないこの静止空間にね……!

 

 

出木杉「だ……だが僕の肉体の強度の前では君の拳も無力……ッ!!」

 

のび太「だから『いただき小判』でくっつきながら『力電池』で今の今ま

 

でチャージしておいた……時が止まった今、フルパワーが維持された状態

 

だ……」

 

出木杉「ま……待ってくれ……やり直そうじゃあないか……!!」

 

のび太「やっと元の世界へ帰れる……!!」

 

 

 

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出木杉「や……やめろォーーーーーーーーーーッ!!」

 

ゴシャアア!!

 

のび太「時は動きだす……!!」

 

出木杉「ふ……ふふ……ふふ……!!」

 

『力電池』によるフルパワーで頭部を殴られたにもかかわらず

 

出木杉は狂った様に笑いだす……!

 

のび太「な……何がおかしい……!?」

 

出木杉「僕を叩きつけた先に……何があるか見るかい……!」

 

のび太「!?」

 

出木杉の頭の下には

 

のび太の勉強机では無く、『もしもボックス』が置かれていた…!!

 

出木杉「時が動き出した瞬間ッ!!『物体変換クロス』の能力で『机』と

 

『もしもボックス』を交換したッ!」

 

出木杉「この世界によって作られた僕は『もしもボックス』に干渉できな

 

いが……君なら別だ……ッ!」

 

のび太「もしもボックスが……潰れてしまった……!!」

 

出木杉「ククク……僕は負けたが……どうせ負けるなら……君………も…

 

…一緒に……ッ!」

 

ドラえもん&過去のび太「な……なんだ突然!?この二人は一体……!?

 

 

 

 

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のび太「『もしもボックス』が………爆発する――――――ッ!!」

 

――――――………

 

――――――………

 

のび太「―――――………」

 

のび太が目を覚ますと

 

見覚えのある娘がのび太の顔をまじまじと見つめていた…

 

娘「あ…///」

 

のび太「………ここは!?」

 

娘「べ、別に何でもないわよっ!?タオルを交換しようとしただけで……

 

///」

 

のび太「ここは…?僕は一体どうしてここに……?」

 

娘「へ…?アンタ何も覚えてないの?この外で倒れてたのよ。」

 

のび太〈そうか……僕は爆発で吹き飛ばされて………〉

 

?「あら、気が付いたのね」

 

娘「あ、ママ!」

 

ママ、と呼ばれた女性が部屋にやってくるなり

 

のび太に顔を近づけ額を押し当てる

 

のび太「え……えっと……///」

 

ママ「うーん、熱は無いようね……」

 

娘「ちょ……ちょっとママ!?見ず知らずの人になんて事……!」

 

 

 

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ママ「いいじゃない別に。見たとこ娘ちゃんと同じくらいの年齢よ?それ

 

とも……」ジーッ

 

娘「そ……そんなんじゃないわよ!もうっ!」

 

ママ「ふふ、冗談よ。そんなに怒らなくても……」

 

娘「わかったからご飯!!」

 

ママ「はいはい」

 

のび太「それにしても……君の母さんって随分若いんだね。」

 

娘「へ?ああ……違うわよ。彼女はこの児童養護施設の『ママ』よ。」

 

のび太「児童養護施設?」

 

娘「そ、私も小さい頃はママと遊んでもらったわ。ママもこの施設出身な

 

のよ。」

 

のび太「へぇ~」

 

園児「おにぃちゃん一緒にあそぼー」

 

園児「あそぼー」

 

娘「あら、気に入られちゃったみたいね。お昼ご飯の準備手伝ってくるか

 

らこの子達の遊び相手頼むわね。」

 

のび太「え?……うん、わかったよ……」

 

のび太〈それにしてもびっくりしたなぁ………目を覚ましたら、中将にそ

 

っくりの娘がいるんだもの……〉

 

―――――…

 

 

 

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娘「ごはんの用意できたわよ~!!」

 

園児「あ!おねぇちゃん!」

 

園児「このおにぃちゃん凄いんだよ!!絵本の中の絵がね……それに数字

 

当てゲームも……」

 

娘「へぇ~。この子達、人見知りでなかなか懐こうとしないのに……やる

 

わね。」

 

のび太「へへへ、それ程でも……〈あやとり超絶テクニックで子供心を掴

 

もうとしてすごい引かれたけどね……〉」

 

キャ――――z___ッ!!

 

のび太「な……何だ!?下の階から悲鳴が……!!」

 

娘「ママッ!?」

 

悲鳴のする部屋の方へ向かうと

 

不審な男が先ほどの女性にナイフが突きつけていた……!

 

娘「強盗!?」

 

のび太「!!」

 

強盗の顔を見るなりのび太に戦慄が走る……!

 

それは、その男の顔が以前に戦った『少佐』の顔と瓜二つであったからに

 

他ならない……!

 

強盗「動くなよッ!動いたらこの女の命は無いッ!」

 

娘「いや!やめて!ママを離して!!」

 

 

 

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強盗「おい、そこの男……前へ出ろ……!」

 

のび太「………?」

 

のび太〈『ウルトラストップウォッチ』はさっきの爆発で故障してしまっ

 

た………隙を見て、とりよせバッグから何か道具を……!〉

 

強盗「おっと、手を動かすなよ……『野比のび太』ッ!」

 

のび太「………!?」

 

のび太〈この時間軸はまだ戦いが始まる前だ……この男はどうして僕の名

 

を――――――!?〉

 

強盗「……これで終わりだ……ッ!」

 

のび太「何ッ!?」

 

強盗の掌が不気味に光り出し

 

のび太を包み込む―――――……

 

娘「……アイツが……『写真』になっちゃった……」

 

強盗「………計画通りッ!」

 

児童養護施設を突然襲ったこの強盗……

 

外見こそ違うものの、中身は出木杉であった……!

 

のび太の渾身の一撃により頭部が半壊し、絶命する寸前……!

 

出木杉は『メモリーディスク』と『機械化機』の能力を併用し

 

精製した『フラッシュメモリー』を通りすがりの男に挿し込む事で、意識

 

を一日だけ乗っ取ったのである……!

 

 

 

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強盗〈容量の都合で『チッポケット二次元カメラ』1発分の能力しか引き

 

継ぐ事は出来なかったが……これでいい……!!〉

 

※チッポケット二次元カメラ

 

撮影した対象を写真にしてしまう

 

※冒頭〈7月13日〉に破壊した秘密道具の一つだが

 

7月7日の時点で『機械化機』に能力は登録済みであったので出木杉は使用

 

可能

 

強盗〈後は写真を身分証拠としてこの時間軸の僕とコンタクトを取り、よ

 

り確実な勝利を掴む様に作戦を練り直し、歴史を改変させるだけ!!〉

 

強盗〈これで僕の……完全勝利だッ!!〉

 

強盗「そして成り行きとはいえ残念だが……目撃者は全員始末しておかな

 

きゃな……!」

 

ママ「……!!」

 

強盗「いや、良い事を思いついたよ……そこの娘、君に罪を擦りつけてや

 

ろう……!」

 

娘「何ですって!?」

 

強盗〈この身体が元々持っている殺人と証拠隠滅の知識は相当なものだ…

 

…どうやら運命はつくづく僕を味方してくれているらしい……!!〉

 

娘「ママにも……子供達にも……手は出させないわ……!!」

 

園児「おねぇちゃん、大丈夫だよ……パーマンが守ってくれるもん……!

 

 

 

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園児「そうだよ、あんな奴パーマンがやっつけてくれるさ!」

 

強盗「パーマン……?ぷっ、はははははははは!!」

 

強盗「それは正義のヒーローか何かの名前かな?全く笑いが止まらないよ

 

!現実にはいないんだよ!そんな者は!」

 

園児「いるもん……パーマンは……さっきみせてくれたもん……!」

 

園児達はスプレー缶を拾い

 

落ちているのび太の写真に吹きかけた……!

 

強盗「……何をしている……?」

 

園児「さっきおにぃちゃんが……やってたんだ……!」

 

園児「そうだぞ……絵本のパーマンが……動き出したんだ……!」

 

強盗「…………?」

 

┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・

 

のび太「まったくしぶといね君は……!」

 

強盗「ッ!!?」

 

強盗「……バカなッ!?どうやって『チッポケット二次元カメラ』から逃

 

れたッ!?」

 

のび太「『アニメスプレー』……園児達が吹きかけてくれたおかげで僕は

 

写真の中で動く事が出来る様になった…!」

 

のび太「そして『磁石式四次元通過方式採用瞬間移動ベルト』を使う事で

 

 

 

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ここへ戻って来たという訳さ……!」

 

強盗「そんな……ここまで来て……あのガキ共が道具を……そんな偶然が

 

…ッ!?」

 

のび太「そう、偶然………園児とアニメスプレーで遊んでいなければ……

 

マグネットで数字遊びをしていなければ僕はここへ戻って来る事も出来な

 

かっただろう……」

 

強盗「な……ならば何故……どうやってその偶然を引き寄せたッ!?」

 

のび太「それは君が今回一番身に染みてわかった事じゃあないか…?」

 

強盗「……?」

 

のび太「『運命』からは……決して逃れられないって事さ!!」

 

―――――――――…

 

強盗「は、離せド畜生がァーーーッ!!」

 

刑事「ご協力ありがとうございました。奴は指名手配中の『連続殺人犯』

 

でして……」

 

警部「お二人には申し訳ないが……引き続き当時の現場の状況を詳しくお

 

聞かせ願えませんかな?」

 

のび太「ええ、結構ですよ……」

 

女「妹……妹はどこ!?」

 

ママ「姉さん、兄さん!ここよ!」

 

男「妹……良かった!……無事で!」

 

 

 

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ママ「ちょ……ちょっと恥ずかしいじゃない男……みんなの前で……」

 

娘「あはは……」

 

兄「君が妹を助けてくれたみたいだな……」

 

男「ありがとう……本当に感謝してる……!」

 

のび太「そんな……うっ……!」

 

のび太は答え終えない内に

 

その場に崩れ落ちてしまった……

 

警部「おい!君!?」

 

娘「ちょ……ちょっと!?どうしたのよいきなり!?」

 

のび太〈そ……そうか……彼等を助けたから………歴史が変わるのか……

 

…〉

 

のび太〈僕の記憶は新たに改変され、以前の記憶は無くなってしまうけど

 

……これで良かった………本当に……―――――……

 

のび太「―――――…」

 

ドラえもん「気が付いたかい?」

 

のび太「……ドラえもん!?……そうか……僕は出木杉と時を遡って……

 

…」

 

ドラえもん「おめでとうのび太君。」

 

のび太「へ……?」

 

―――――パァン!

 

 

 

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のび太「…………!!」

 

のび太がおそるおそる目を開くと…

 

クラッカーを持った四人がいた……!

 

しずか「おめでとうのび太さん」

 

スネ夫「おめでとうのび太!!」

 

ジャイアン「のび太!おめでとう!じゃあ、下で待ってるぜ!!」

 

のび太「…………これは!?」

 

ドラえもん「のび太君……どこから説明すればいいのか………」

 

のび太「……『タイムテレビ』?」

 

ドラえもん「そう。あれから『タイムテレビ』を見て、君が面白半分にス

 

ペアポケットを落とすなんて事も無くなって歴史が変わったのさ。」

 

のび太「……じゃあ、あの児童養護施設の人たちは……?」

 

ドラえもん「ちゃんとそこも微修正しておいたよ。君が助けたように、事

 

件を未然に防ぎ、犯人を警察につきだしておいた……」

 

のび太「そうか……でも何で僕は『改変後』の歴史を歩んだ記憶が無いん

 

だ?……それに以前の記憶も残ったまま……」

 

ドラえもん「ええと……今のは……あくまで免罪符のようなもので……」

 

のび太「………?」

 

のび太「……………」

 

ドラえもん「……………」

 

 

 

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のび太「………夢だって?」

 

ドラえもん「………うむ」

 

のび太「仲間達と危険を潜り抜けてきた日々も……新たな出会いも……し

 

ずちゃんとの日々も……全て道具で君が見せた夢の中の世界だったと……

 

?」

 

ドラえもん「………すまないと思ってる……」

 

のび太「よくも………」

 

ドラえもん「……………え?」

 

のび太「よくも………だましたね……!?」

 

ドラえもん「!?」

 

のび太「『!?』じゃあねーんだよオオォォッ!!偉大な教師のつもりか

 

オメーはよォォォォッ!!」

 

のび太「よくも騙したァァァァッ!!騙してくれたなァァァァァッ!!」

 

ドラえもん「や……やめないかッッ!!」ビシャッ!!

 

のび太の頬を思い切り引っぱたくドラえもん

 

のび太「…ッ!?」

 

ドラえもん「確かに……僕は睡眠中だった君の夢の内容を勝手に変えた…

 

…だがしかしッ!!僕が手を加えたのは夢の中の設定だけだッ!!」

 

ドラえもん「酷い様子ならすぐに起こしてやるつもりだった……だが君は

 

立ちはだかる困難に対し自分で考え、そして見事勝利を掴み取ったんだッ

 

 

 

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!!」

 

のび太「……!!」

 

ドラえもん「今まで道具に振り回され、己の身を滅ぼすだけだった君がッ

 

!!工夫して道具を使いッッ!!見事困難を乗り越えたのだッ!!」

 

ドラえもん「妄想であって妄想ではないッ!!これは経験だッ!!経験は

 

血となり肉となり……やがて君の財産となるッ!!」

 

自分を仇にしてまで戦った日々…

 

それはのび太の自立を促す為に仕組まれた

 

ロボットの不器用な『愛』であった…

 

ドラえもん「それに………今日は8月7日……何の日か知っているだろう

 

……?」

 

のび太「……あ!」

 

ドラえもん「さぁ、一階に降りてバースデーケーキを美味しくいただこう

 

か……みんなも誕生パーティを祝ってくれるみたいだよ。」

 

のび太「ドラえもん……みんな……」

 

スネ・ジャイ「へへへへへ……」

 

しず「うふふふふ……」

 

ドラえもん「僕はロボットだけど……中々器用なもんだろう?」

 

ドラえもんがニヤリと笑ってみせた

 

夏休みも終わり、九月

 

 

 

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いつもと同じ平穏な日常が再び幕を明ける……

 

一つ変わった事と言えば……

 

ドラえもんが未来へ帰った事

 

どうやら僕の面倒を見る必要もなくなったと言って

 

安心して帰った様だ……

 

ドラえもんは安心していたけれど

 

果たして僕は本当に強い人間になれただろうか

 

これから先、人生を歩む上で

 

幾多の困難が待ち受けているだろう……

 

僕は道具の力に頼らず

 

自分の力で乗り越えていけるだろうか……

 

――――でも心配しないで、ドラえもん

 

あの角を曲がれば

 

僕を頼りにしてくれる友達が背中を押してくれる

 

いつもの街路樹の下で

 

あの娘が僕を待っていてくれている……

 

野比のび太の青春は今、始まったばかり―――――――

 

ドラえもん「――――――気が付いたかい……?」

 

のび太「ドラえもん……あれから『何秒』経った……?」

 

ドラえもん「5秒だ……」

 

のび太「!?」

 

ドラえもん「そう……君が「道具を使って本気で戦いたい」と僕に訊ねて

 

からたった5秒の間に……

 

君は小学校生活を終え中学二年生まで進学し

 

順風満帆ながらもどこか満たされない日々に不満を感じること約半年

 

『退屈な生活に刺激が欲しいーー!!』と僕に駄々をこね始め

 

『もしもボックス』の作った世界で何の哲学も持たない相手と能力バトル

 

に明け暮れたと思ったら

 

実は夢の中の世界で、現実では皆で誕生日を祝う事になり

 

無事、夏休みも明け……僕が帰った後も華やかな学園生活を送る事が出来

 

るであろうという

 

予感をさせた所で君にかけた『催眠術』を解いた……!」

 

ドラえもん「恐ろしいだろう?『さいみんグラス』の力は……?」

 

のび太「……ッ!!」

 

ドラえもん「道具を使って本気で戦いたい……なんてくだらない事を言っ

 

てないで勉強しろォッッ!!」

 

-終-