ことわざとはふしぎなもので、翻訳すると、まったく意味が分からないものになることがあります。日本で日常的に使われている「猿も木から落ちる」「猫をかぶる」のようなことわざも、文字通り読んでみると、なかなか面白い言葉です。国によって、独自のことわざがあるように、それぞれの表現からは、まったく新しい視点が感じられます。
そんな、海外のことわざや言い回しが一冊になった、エラ・フランシス・サンダースさんの著書『誰も知らない世界のことわざ』。その中から、予想外の意味をもつことわざや言い回しをご紹介します。
01.
「誰かをその人のスイカからひっぱり出す。」
(ルーマニア語)
世界のことわざには、直訳するとおかしな意味になるものがほとんどですが、なかでも、ルーマニア語は、桁外れの面白さ。こちらは、誰かを「怒らせて、狂ったようにさせる」という意味の言い回し。驚いたとき、ルーマニア人は「顔が落っこちます」し、嘘をついたときは「ドーナツを売っている」。ほっと、ひと息つくときは「魂をひっぱっている」。こんなふうに、面白い言葉たちが、いくらでも続いていくのです。
02.
「エビサンドにのってすべっていく。」
(スウェーデン語)
エビサンドにのってなめらかにすべっていく人は、これまでの人生を楽しく快適に過ごしていて、今の境遇を得るために懸命に働く必要のなかった人です。この言い回しには、裕福であることに対して、皮肉な意味合いを含んでいます。
03.
「ある日はハチミツ、ある日はタマネギ」
(アラビア語)
You win some,you lose some.(勝つときもあれば、負けるときもある)ということわざを知っていますか?このことわざをアラビア語版は、ハチミツとタマネギでたとえたもの。あるときはとてもうまくいき、またあるときは悪いほうへいく。おそらく幸せは、その2つの間にあるのです。だから、ある日がもしタマネギのように辛い一日であったとしても、だいじょうぶ。
04.
「私の頭にアイロンをかけないで」
(アルメニア語)
「イライラさせないで!」という意味。誰かが、イライラするような質問をやめないときや、あなたの気持ちを逆なでしようとしているときに、冗談っぽく使います。目をギラつかせて、からかうような視線を投げかけてくる人には気をつけましょう。そんな人は決まって、頭が痛くなるような理屈をふりかざし、あなたの頭にアイロンをかけてきます。
05.
「神の祝福がありますように。
そしてあなたの口ひげが
ふさふさの柴のようにのびますように。」
(モンゴル語)
これは誰かがくしゃみをしたときの、ていねいで紳士的な祈りの言葉。外国では、誰かがくしゃみをするとまわりの人が「祝福を!」と言ってあげる国があります。英語ではBless you!、ドイツ語ではGesundheit!が決まり文句。しかし、モンゴルではそれでは短すぎる!というわけで、「くしゃみをした人の口ひげがよくのびるように」という心からの願いをつけ加えたとか。
06.
「あなたのレバーをいただきます。」
(ペルシア語)
ちょっと怖いことばに聞こえますが、実は深い愛着と愛情とを表現する言い回し。家族やごく親しい友人など、愛し合っている人たち同士の間で使われ、「あなたのためなら、何でもする」「心から愛している」、もしくは「食べてしまいたいくらい、あなたを愛している」という意味なのです。
07.
「郵便配達員のくつ下のように
飲み込まれる。」
(コロンビア・スペイン語)
この表現は信じられないかもしれませんが「猛烈に愛している」という意味。考えてみましょう。郵便配達員は、毎日長い距離を歩きます。あちこち歩き回る間にくつ下はもたつき、くしゃくしゃになってブーツの中に飲み込まれてしまいます。そんなふうに、愛情におぼれ、支配され、飲みこまれていってしまう。そんな感じを表しているのでしょう。たぶん。