バラエティー番組からニュース番組のコメンテーター、エッセイストと幅広く活躍中の麻木久仁子さん(55)。お酒といえば、この人とのエピソードが忘れられない。
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「お酌はしなくていいから」
もう16年ほど前になるかしら。ある懇親会の席で、タモリさんにこう言われました。ピシッと。
その頃、私は「笑っていいとも!」(フジテレビ系)の木曜日レギュラーをしてまして、音頭をとったプロデューサーさんに誘われたんですね。メンバーはタモリさんはじめ、おもだったレギュラー陣、スタッフ。私はレギュラーになって間もなくで、そんな席は初めてでしたから、タモリさんの前にお邪魔して改めてご挨拶がてらお酌をしようとしたんです。
そうしたら!!
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そうしたら「しなくていい」と。ご本人はそれ以上おっしゃいませんでしたが、表情からは「大人なんだから、自分のペースで飲もうよ」と感じました。今でこそ、セクハラ、アルハラって言葉が一般的になってお酌を強要する風潮は減ってきましたが、当時、お酒の席では“女性がお酒をついで回るもの”って無言のプレッシャーがまだ横行していました。
しかも、ついで回るのも「肩書の高い人から順に」とか「ビールのラベルは上に」「両手で」って暗黙の決まりごとがたくさんあって、その上「お酌されたら拒んじゃダメ」とか「飲みたくなくても少し口をつける」といった、お酒が苦手だったり、体質に合わない人にはちょっと酷な雰囲気がある時代。
それだけに、他の人にも一切お酌をさせないでマイペースで飲んでいるタモリさんに、スタジオで見せるのとはまた違う別の顔を垣間見たようで本当に「カッコいい!」って思ったんです。
やっぱり、お酒はこうじゃなくっちゃ。よくいるじゃないですか。オーバーペースで飲んじゃって若い女の子をつかまえてセクハラもどきをしてるオヤジって。ホント、みっともないですよ。
それほど強くない私が見たって飲んでるお酒に失礼だなって思っちゃうし、「おまえなんか実験用のアルコールでも飲んでろ!」って言いたくなります(笑い)。もちろん好意で「これ、すっごくおいしいから、一口飲んでみない?」みたいなすすめ方なら問題ありません。それは善意でおっしゃってくれてるわけですし、コミュニケーションのひとつですからね。お酒を上手にすすめるのも、やはりそこにはお酒へのリスペクトやおもてなしの心が必要だと思うのです。
■「目からウロコ」で飲めるようになったビール
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■「目からウロコ」で飲めるようになったビール
お酒へのリスペクトでいえば、この方をおいて他にはいないんじゃないか? というのが三重の地ビールメーカー・伊勢角屋麦酒の鈴木成宗社長です。ビールをあまり好まなかった私が飲むようになった、そのきっかけをつくってくださった“張本人”ですからね。
本業は、室町時代から伊勢神宮のそばで続く老舗中の老舗、二軒茶屋餅角屋本店。ビール醸造に取り組みだしたのは1997年だったそうです。
社長は東北大学で微生物学を専攻しただけに、すごく研究熱心で学者肌なんですね。
時間を惜しまず取り組んだ甲斐があって、これまでに国内外の権威のある賞をたくさん受賞されているのですが、社長はことビールとなると冗舌も冗舌。お尻を切らなかったら、丸一日でもビールのことを話し続けてるんじゃないかぐらいの勢いなんです。
その熱い熱い口調にほだされ、「私、ビールってダメなのよ」と言いながら飲んでみたら、「目からウロコが落ちる」ってまさにこのこと。とんでもなくおいしかったんです。
社長にはビールへの情熱もさることながら、伊勢から世界へ! という大きな夢もお持ちで、おいしいだけの地ビールじゃないんですね。そんなお話をお伺いしてるうちに、飲めない私が試したくなったのですから、やはり人柄なんですよ。
つくづくお酒って出会いなのねって思います。
引用元:https://www.excite.co.jp/News/entertainment_g/20180625/Gendai_470556.html?_p=3