給与や個人事業で得た収入には、額面と手取りでかなりの差があります。たとえば額面で年収1000万円を稼いでいる人は、200万円を超える税金と社会保険料が引かれています。
ところで、世帯年収が1000万円の家庭があるとします。ひとりで年収1000万円を稼いでいる家庭と、夫婦が500万円ずつ稼いでいる家庭では、どちらのほうが手取り額は多くなるのでしょうか。今回はシミュレーション結果を見ながら、手取り額の差を説明していきます。
年収1000万円では給与の4分の1以上を差し引かれる
▼シミュレーションの条件
上記のシミュレーションは、配偶者控除が受けられる妻(夫)と、高校生と中学生の子どもが2人いる設定で試算しています。
医療費控除や生命保険料控除、住宅ローン控除、妻(もしくは夫)と子ども以外の親族を扶養している場合の人的控除など、個人の事情による控除は考慮していません。そのため現実的には、各種の控除が適用されることにより、税金の負担は試算よりも軽減される家庭も多くなります。ただし今回は、手取り額の目減り割合を比較するために、あえて配偶者控除と高校生のお子さんの扶養控除のみを適用して試算しました。
▼年収が高くなるにつれ「目減り割合」増える
シミュレーションをご覧いただくと、額面の年収(以下、年収)が高くなるにつれ、手取り額の目減り割合が増えていくことがお分かりいただけると思います。
たとえば、年収300万円の人の目減り割合は約17%ですが、年収が500万円になると20%を少し超え、年収が1000万円になると、税金と社会保険料で約27%も差し引かれます。
金額に直してみると、年収300万円の人の税金と社会保険料は約51万円ですが、年収が1000万円になると270万円も引かれてしまいます。年収1000万円の人は、額面の4分の1以上を税金と社会保険料として負担している計算になるわけです。
また今回のシミュレーショでは、労働組合費や会社ごとに必要な積立などは考慮していません。税金と社会保険料以外にも差し引かれる項目がある場合は、シミュレーション結果よりも手取り額は減ります。
年収1000万円はゼロ? 子どもに関する公的支援にも格差
税金と社会保険料の負担のほかにも、気を付けるべき点があります。それは、児童手当や高等学校修学支援金のような子どもに関する公的支援にも、収入が影響する点です。
▼年収850万円と年収1000万円の間にも大きな差
今回試算したケースの中から、例を挙げてご紹介してみます。たとえば年収850万円の人は、児童手当がひと月1万円もらえますが、年収1000万円の人は「特例給付」の対象となり、ひと月の支給額は5000円に減額されます。年間でいえば、6万円の差が出る計算です。
また、年収850万円の人は高等学校修学支援金の基本支給額となる11万8800円がもらえますが、年収1000万円の人は高等学校修学支援金の支給対象外になってしまいます。このような手当まで考慮すると、年収1000万円の人の「実際の目減り率」は、表にある数字以上のインパクトがあるといえるでしょう。
年収1000万円では給与の4分の1以上を差し引かれる
▼シミュレーションの条件
上記のシミュレーションは、配偶者控除が受けられる妻(夫)と、高校生と中学生の子どもが2人いる設定で試算しています。
医療費控除や生命保険料控除、住宅ローン控除、妻(もしくは夫)と子ども以外の親族を扶養している場合の人的控除など、個人の事情による控除は考慮していません。そのため現実的には、各種の控除が適用されることにより、税金の負担は試算よりも軽減される家庭も多くなります。ただし今回は、手取り額の目減り割合を比較するために、あえて配偶者控除と高校生のお子さんの扶養控除のみを適用して試算しました。
年齢が高くなるにつれ○○○○増える!?↓
▼年収が高くなるにつれ「目減り割合」増える
シミュレーションをご覧いただくと、額面の年収(以下、年収)が高くなるにつれ、手取り額の目減り割合が増えていくことがお分かりいただけると思います。
たとえば、年収300万円の人の目減り割合は約17%ですが、年収が500万円になると20%を少し超え、年収が1000万円になると、税金と社会保険料で約27%も差し引かれます。
金額に直してみると、年収300万円の人の税金と社会保険料は約51万円ですが、年収が1000万円になると270万円も引かれてしまいます。年収1000万円の人は、額面の4分の1以上を税金と社会保険料として負担している計算になるわけです。
また今回のシミュレーショでは、労働組合費や会社ごとに必要な積立などは考慮していません。税金と社会保険料以外にも差し引かれる項目がある場合は、シミュレーション結果よりも手取り額は減ります。
年収1000万円はゼロ? 子どもに関する公的支援にも格差
税金と社会保険料の負担のほかにも、気を付けるべき点があります。それは、児童手当や高等学校修学支援金のような子どもに関する公的支援にも、収入が影響する点です。
▼年収850万円と年収1000万円の間にも大きな差
今回試算したケースの中から、例を挙げてご紹介してみます。たとえば年収850万円の人は、児童手当がひと月1万円もらえますが、年収1000万円の人は「特例給付」の対象となり、ひと月の支給額は5000円に減額されます。年間でいえば、6万円の差が出る計算です。
また、年収850万円の人は高等学校修学支援金の基本支給額となる11万8800円がもらえますが、年収1000万円の人は高等学校修学支援金の支給対象外になってしまいます。このような手当まで考慮すると、年収1000万円の人の「実際の目減り率」は、表にある数字以上のインパクトがあるといえるでしょう。
夫婦で1000万円のほうが手取りは多くなる
次は、ひとりで年収1000万円を稼いだ場合と、夫婦で年収500万円ずつを稼いだ場合では、どちらのほうが手取り額は多くなるかを見ていきます。
▼730万円vs780万円
ひとりで年収1000万円を稼いだ場合の手取り額は約730万円。これに対して、夫婦で500万円ずつ稼いだ場合の手取り額は、合計で約780万円になります。妻(夫)は配偶者控除を使えなくなるものの、それでも夫婦で500万円ずつ稼いだほうが、手取り額で約50万円も多く受け取れる結果になりました。
児童手当についても、夫婦で500万円ずつ稼いだ場合はひと月1万円がもらえますし、高等学校修学支援金も基本支給額が受け取れます。今回は、配偶者控除と子どもの扶養控除しか適用していませんが、他にも所得控除が使える場合、夫婦で500万円ずつ稼ぐ家庭は、高等学校修学支援金が私学の上乗せ分を含めて39万6000円がもらえる可能性もあります。
老後の年金額にも影響がある
さらに、夫婦で働くことにより、妻(夫)名義の老齢厚生年金が増えるメリットもあります。
▼1000万円以上は厚生年金を増やしにくい
厚生年金の保険料は、標準報酬月額65万円(32等級)が、保険料の上限額(最高額)になります。年収が1000万円の人も2000万円の人も3000万円の人も、「65万円の月収だとみなして」厚生年金保険料を支払っているわけです。ちなみに標準報酬月額65万円の人の厚生年金保険料は、月額5万9475円になります。
これに対して年収500万円の人の厚生年金保険料は、年収を12か月で割った金額を標準報酬月額だと仮定すると、ひと月3万7515円、2人分で7万5030円になります。夫婦2人分の厚生年金保険料のほうが、ひとりで1000万円を稼ぐ人の厚生年金保険料よりも多くなる計算です。保険料は天引きなので、そのぶん手取り収入額は減りますが、老後に受け取れると考えましょう。
▼片働きなら配偶者の国民年金保険料は免除
一方で、年収1000万円のケースは、妻(夫)が国民年金において、年収が130万円未満の人などが該当する第3号被保険者になるため、国民年金保険料が免除されます。
妻(夫)の国民年金保険料なども考慮すると、単純に両者の損/得を比較するのは無理があるものの、老齢年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)の支給額は、夫婦で500万円ずつ稼ぐ家庭のほうが多くなる可能性もあります。
実際には、夫婦で同額の年収を得るご家庭は少ないと思いますので、今回の結果は、シミュレーションのひとつの結果と捉えるのが適切です。
とはいえ、夫婦で働ければ、どちらかが闘病するなど、万が一のことが起こった場合の「リスクにも強い」といえるのではないでしょうか。まだまだ「配偶者控除を受けられる範囲で働きたい」という方は多いですが、夫婦とも厚生年金に加入できれば、老後の年金の合計額を増やせるなどのメリットにも目を向けたいところです。
税金と社会保険料のほかに差し引かれるお金にも注目を
いずれにしても会社員の方は、会社で源泉徴収や年末調整をしてくれることもあり、「たくさん引かれているな」と感じても、どのくらい引かれているのかを、個人で計算する機会はほとんどないでしょう。ですが、今回ご紹介したように、税金と社会保険料だけではなく、児童手当や高等学校修学支援金、老後の公的年金のように、他の制度にも年収が影響する現実は理解しておきましょう。
引用元:https://www.sankeibiz.jp/article/20220422-55C6MKCULRDK7NG4UBUBJH4ATQ/