「ブサかわ犬」(不細工だけどかわいい犬)と人気を呼び、映画にもなった青森県鯵ケ沢(あじがさわ)町の秋田犬「わさお」(推定10歳)の飼い主、菊谷節子(きくや・せつこ)さんが先月30日、間質性肺炎のため、同県弘前市内の病院で亡くなった。73歳だった。“わさおの母さん”として親しまれた菊谷さんにとって、わさおは生きがいだった。一方、主を失ったわさおは、いつもと変わらない様子で過ごしているというが、菊谷さんはきっと天国でわさおをずっと見守っているに違いない。菊谷さんとわさおはいつまでも固い絆で結ばれている。
同町内でイカ焼き店を経営していた菊谷さんが平成19年秋、迷い犬だった長毛の秋田犬を保護した。生後5~6カ月だったという。翌年、個人ブログに不細工だけどかわいい犬「ブサかわ犬」として掲載され一躍、脚光を浴びるようになった。テレビのバラエティー番組で紹介され、全国区の人気犬となった。
わさおは菊谷さんとともに町内外の催しや東日本大震災のイベント、ボランティア活動に積極的に参加し、多くの人たちに親しまれた。23年には女優の薬師丸ひろ子さんが菊谷さん役を務めた映画「わさお」が上映された。菊谷さんのイカ焼き店は連日、わさおを見に来る人が訪れるようになり、わさおと朗らかな人柄の菊谷さんは全国から人気を博した。わさおと菊谷さんはまさに母と息子のような関係だった。
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そんな、わさおと菊谷さんだが、25年1月に菊谷さんが肺炎で入院すると、自慢の毛が抜ける事態に。わさおの活動を支援する「わさおプロジェクト」代表で同町観光協会副会長の工藤健さん(50)は「捨てられたという思いと菊谷さんが逃げたという思いからストレスになったのでは。私たちは毛が抜けたわさおを見たことがないので、まるで仙人のようにあごひげだけになってしまったわさおを見てびっくりしました」。確かに、当時の写真を見ると毛が抜け落ち、フサフサのわさおとは“別人”になっていた。
2カ月ほどで菊谷さんが退院すると、わさおは主の帰りを待っていたかのように元気を取り戻した。菊谷さんの体調を考え、従業員が交代でわさおの面倒を見るようになった。
その頃から菊谷さんは、あるプランを描いていた。「わさおにも家族が必要だ」。26年4月にテレビでわさおの嫁を公募。4匹と見合いをした結果、わさおは晴れて秋田犬「つばき」(5歳)と“結婚”。工藤さんによると、「わさおは意外とツンデレ。つばきがわさおにベタ惚れでしたよ」とアツアツぶりを語った。そして、わさお、つばきの娘として、里親探しでつばきの実家から預かった「ちょめ」(2歳)を迎え入れ、晴れて3人家族に。
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菊谷さんのわさおの家族のモデルは、わさおが一家の大黒柱で結婚して子供が生まれる-だった。つばきが常にわさおに寄り添っている姿は、まさに菊谷さんが理想としていた「わさお家」そのものだった。
「菊谷さんはちょめを見た瞬間『わさおの子だ』と感じたそうです。それほど似ていたんでしょう。今でもちょめが悪さをすると、わさおは叱ったりしますよ」と工藤さん。すっかり、父親としての役目を果たしているわさお。
菊谷さんとわさお家族、そして従業員の強い絆で結ばれる楽しい日々。そんな最中、菊谷さんは27年ごろから再び、体調を崩し、今年に入って入退院を繰り返しながら先月30日、帰らぬ人となってしまった。
今月8日、同町内で執り行われた通夜に当たる告別前夜祭(神式のため)を前に、わさおに会いに行った。
昼過ぎ、わさおはつばきの傍らで昼寝をしていた。従業員が日課の散歩に連れて行ったが時々、腑に落ちないような表情を浮かべていた。「わさおがどこまで事態を把握しているか分からないが、賢い犬なのできっとお母さんである菊谷さんが亡くなったことを感じているのでは。わさおはどこかで母さんに会えると思っているかもしれません」。工藤さんはわさおの心境を推量した。
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「わさおは告別前夜祭に連れて行くんですか」。記者の問いかけに工藤さんは首を横に振った。「未来永劫(えいごう)、母さんと会えないということを伝える必要もないし、ことさら悲劇の物語である必要がありません」(工藤さん)と関係者の取り計らいがあったためだ。そこには菊谷さんが生前、「わさおにはわさおらしく生きてほしい」と願っていたからだ。そして、もう一つの理由が。菊谷さんが「わさおを見に来る人をがっかりさせないためにも自分に何があっても店を休むな」と遺言を残していたため、この日も店は通常通り営業し、わさおも店にいた。だが、わさお自身、きっと会場に行きたかったのではないかと思うと、胸が熱くなった。
午後6時からの告別前夜祭には約200人が参列した。笑顔でわさおに寄り添っている菊谷さんの遺影に参列者が静かに手を合わせていた。次女の春田千枝美さん(48)=岡山県在住=は追悼の言葉で「テレビでお母さんとわさお君の元気な姿を拝見し、元気付けられました。わさお君はみんなでお世話をするので安心して下さい」と遺影に語りかけた。喪主で長男の菊谷忠光さん(53)も「母はわさおで町を元気にしたいと言っていた。わさおも母のことを好きだった。しばらくはそっとしておいて、今までと変わらないように接していきます」と気丈に話した。
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映画を見てわさおに惚れ込み、約2年前からボランティアとして東京からやって来たドッグシッターの稲村智美さん(58)は「普通の犬とは違って理解が早い。すごい子ですよ」と目を丸くした。
菊谷さんが亡くなる直前、「わさお、つばき、ちょめのことを頼むと目で話していました。わさおを見ていると菊谷さんがいるような感じです」。工藤さんは遺影を眺めながら目頭を押さえた。
飼い主がいなくなってわさおはこれからどうなるのだろうか、大丈夫か-という声もある。だが、わさおにとっての飼い主は菊谷さん以外にいない。わさおもそう思っているに違いない。だからこそ、周囲の人たちが菊谷さんが亡くなった雰囲気を出さず、日常と変わりなく過ごすことが必要なのかもしれない。それを何よりわさおが望んでいるとしたらなおさらだ。
わさおとつばき、ちょめは、今後も、イカ焼き店の従業員4人と工藤さんらが、店とともに面倒を見ていくという。
わさおはこれからもみんなに元気を届け続ける。「母さん、僕のことは心配しないで天国でゆっくり休んで」。わさおがそう言っているような気がした。
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ブサかわ犬(不細工でかわいい犬)として人気を集める青森県鰺ケ沢町の秋田犬「わさお」の飼い主、菊谷節子さん(当時73)が亡くなって1カ月あまり。
飼われているイカ焼き店では、11日も心配した観光客らがわさおの様子をうかがったり写真を撮ったりしていた。
この日、わさおは妻のつばきとじゃれあうなどして、元気な様子をみせていた。わさおの活動を支援する工藤健さん(50)によると、菊谷さんが亡くなった直後は道路を見続けていたが、今ではしなくなったという。「姿が見えなくてもいつか会えると思っているのではないか」と、わさおの気持ちをおもんばかる。
2013年に菊谷さんが長期入院した際、わさおは毛が抜け落ちた。菊谷さんは「この犬は1匹にしてしまうと死んでしまう」と話し、わさおに妻を迎えた。また、菊谷さんにしか懐かなかったわさおの世話を、店のスタッフやボランティアらに手伝ってもらうことで、自分の身に何かあっても、わさおの世話ができるようにしていたという。
工藤さんは「菊谷さんの思いをみんな受け継ぎ、これまで通り、わさおに会いに来てくれる人に楽しんで欲しい」と話した。
引用元:http://news.livedoor.com/article/detail/14147748/ http://www.sankei.com/premium/news/171214/prm1712140005-n1.html