住まい探しに大事な要素のひとつとなる「駅から徒歩●分」の表記。ルートや歩く速度によって左右されますが、住みはじめてから実際の徒歩分数との違いに気づいてモヤモヤしたことはありませんか? そもそもどこからどこまでが計るポイントになるのか。モヤモヤの正体を突き止めるべく、実際に歩いてみました。
開始地点は建物の入口? 着点は駅のホーム!?
今回は、SUUMOジャーナル編集部メンバーのSさんの自宅マンションの入口をスタート地点にして、最寄駅まで歩きます。不動産チラシには「徒歩9分」と記載されていますが、Sさんは「乗りたい電車の出発時刻の15分ぐらい前に家をでますね」とのこと。失われた6分間を探しましょう。
なお、徒歩1分が80mであることは過去の検証で分かっているため(参考記事/徒歩1分=80mって本当?実際に試してみた)、今回は計測をはじめる「起点」と、終了場所となる「着点」に絞って考察します。筆者は少し歩くのが遅い自覚があるので、意識して少し早めに歩きます。
【画像1】観測スタート地となる自宅マンションに向かうSさんの背中。駅までの道のりをこのあと何往復かすると思うと不思議な気持ちになります(写真撮影/柏木ゆか)
「住んでいる階数や部屋の位置によって時間が異なるので、さすがに玄関ドアを開けたところが起点にはならないでしょう」とまず予想し、マンション1階の集合玄関からiPhoneのストップウォッチで計測を開始。検証時は平日の夕方だったため、どんどん日が暮れていきます。
いくつかの信号を渡り、ランニングをする運動部の学生群とすれ違い、「こんな時間に家の近くを歩いているなんて不思議ですね」とSさんと談笑していると、早くも駅前に到着。自分があまり知らない街で路面店などを観察していると、驚くほど時間がたつのが早い。そのまま駅に入り、改札を通ってホームに到着。ここまで「12:49」かかりました。
【画像2】着点がホームだとこれぐらい(写真撮影/柏木ゆか)
Sさんが家を出る時間が15分前なので「玄関からエレベーターを降りてマンションの入口に向かう時間が2分と考えると計15分でつじつまがあいますね」と確認。やはりスタート地点と終了地点が定まらないと正確な検証が難しい……。その後も別ルートで何度か試したのですが、12分台はなかなか切れませんでした。
起着点は物件のタイプや、駅の形状に左右される
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検証の結果、不動産広告と4分近くズレがあることが分かりました。私の足が遅いことを考慮しても、モヤモヤは埋められない時間差です。素人がいくら考えても憶測の域を出ないので、不動産に関して高度な知識をもつ不動産鑑定士の中村喜久夫さんにお話を伺いました。
【画像3】不動産鑑定士の中村喜久夫さん(写真撮影/柏木ゆか)
―― 不動産広告の「駅から●分」の起着点はいったいどこなのでしょうか。また、不動産会社がその表記を守る義務はあるのでしょうか?
まず駅から物件までの徒歩分数の計測箇所は改札ではなく、「駅舎の出入口」です。駅舎に複数出口がある場合は、自宅に一番近い出口から測ればいいんです。これは広告表示に関する業界ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約」できちんと定められています。
【画像4】駅舎の入口が複数ある場合は一番近い出口が起点に(作成/SUUMOジャーナル編集部)
―― 駅のホームが起着点にならないのは正直ちょっと予想していましたが、改札でもなく、駅舎の最寄出口でいいんですね! 今回計ったのは地上駅だったので駅舎の入口はすぐに分かりましたが、地下鉄では明確な入口が判断しにくいこともありそうです。その場合はどうしたらいいのでしょうか?
地下鉄では「A1番出口」のような出入口を起点にすればいいことになっています。都心の大きい駅だと使用する出口によって徒歩分数が大きく変わることもありますね。
―― さきほど歩いてみた際、念のため途中の時間も計測していたのですが、マンションから最寄りの駅舎出口までの到着時間は「10:11」でした。何度か信号に引っかかったことを考慮すると、不動産チラシにあった「徒歩9分」にかなり近い結果になりそうです。
【画像5】マンション入口から駅舎の出入口までは「10:11」。改札の到着時間は「11:38」でした。
今回計測したのは1棟単体のマンションだったので起点は1階の集合玄関からで問題ないですが、実は分譲宅地や大きな団地などは、着点が敷地内の「駅から最も近い場所」になることがあります。棟数が多く、敷地出口から離れた棟に住んでいる場合は、不動産広告の表記から思ったより時間がかかることも少なくありません。それが記載時間より時間がかかるモヤモヤの原因のひとつかもしれないですね。
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【画像6】分譲マンションなどの起着点の例(作成/SUUMOジャーナル編集部)
【画像7】分譲宅地(第2期販売対象の起着点)などでの起着点の例(作成/SUUMOジャーナル編集部)
―― 建物の利用方法ごとに異なる起着点の定義があるんですね。なお、地上駅の駅前広場と横断歩道として機能している「ペデストリアンデッキ」は、駅舎に含まれないため起着点にはならないそう。
【画像8】八王子駅のペデストリアンデッキ(写真/PIXTA)
引越しシーズンの到来 不動産広告を見るときに気をつけておくべきことは?
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―― これから新生活などに向けた引越しシーズンがやってきます。徒歩での時間以外で不動産広告を見る際に気をつけておきたいポイントなどはありますか?
新生活で一人暮らしをはじめる場合、ロフト付き物件を選ばれるかたも多いですよね。住宅を選ぶ際に床面積も選ぶ基準になると思いますが、床面積を表す平米数にロフトの面積は含めないのがルールになっています。
―― なるほど、ロフトの面積が床面積に含まれていると思っている人も多そうなので知っておきたいルールですね。
そのほか、「和室6畳」のように広さを畳数で表示している場合もありますが、畳にはいろいろなサイズがあります。広告表示では「1畳と表示する場合には、1.62m2以上の広さがなければならない」というのがルールですが、間違った表示がないとは言い切れません。ご自身で広さを測ってみるのもいいかと思います。
昨年から不動産公正取引協議会と不動産ポータルサイトが協力しておとり広告の排除に取り組んでいますが(参考記事/おとり広告は改善された? 違反の143社、抜き打ち調査の結果は)、相場よりも明らかに安すぎる家賃の物件は要注意ですね。
徒歩分数の計測起点は駅舎の出入り口で、地下鉄駅の場合は地上出口。着点は物件の出入り口か、駅から最も近い敷地の地点になります。物件を見に行く際にホームから駅出口までの時間を計っておくと、生活のイメージがつきやすいかもしれませんね。
引用元:http://news.livedoor.com/article/detail/14234171/