Twitterへのある投稿が話題になっている。それは、“弁当”が生んだ母から息子、そして息子から母への感謝の気持ちだ──。お弁当包みに入っていた1枚の手紙。便せんや一筆箋に改めて書かれたものではない。小さなメモ用紙にまるで走り書きのように書かれていたのは、母から息子への感謝の気持ちだった。
そこには「勇貴へ とうとう高校最後の弁当になってしまいました」から始まる母の愛情がふんだんに盛り込まれていた。
息子は母からのメッセージをTwitterに投稿。瞬く間に拡散し、「感動した」「母想い」「泣きそうになった」と大反響を呼んでいる。
Twitterに投稿したのは、宮崎県小林市に住む内村勇貴くん(18才)で、3月1日、宮崎市の高校を卒業したばかり。両親と妹2人の5人家族だが、4月からは就職のため東京で1人暮らしが始まる。
卒業を数日後に控えた“最後のお弁当”の日、お弁当の包みを取り出した勇貴くんは、手紙が同封されていることにすぐ気づいた。でも、まずはお弁当を食べたという。
「手紙を読んだらきっとヤバいなって、泣くかもしれないって思った。そういう手紙なんだろうなって。だから先にお弁当を食べて、食べ終わってから読んで、友達にも見せました」(勇貴くん)
手紙を読んでちょっとウルッときたけれど、泣くのは我慢した。もし学校じゃなかったら、周りに友達がいなかったら、泣いていたかもしれない。
「友達から、写真撮っておけよ、って言われて、記念だから撮った。Twitterにアップしたのは、感謝してもしきれないっていう気持ちがあったからです」(勇貴くん)
このTwitterは、約2万3000のリツイート、約4万3000の「いいね!」がつき、日本中に感動が広がっている。親にとっても、子にとっても、“お弁当”には温かい思い出があるからだろう。
そしてこの話には続きがあった。家に帰ってきた勇貴くんは、何も言わず、いつものように母・文子さん(46才)に空のお弁当を渡した。文子さんは、手紙について何も言ってこない息子にちょっとがっかり。18才の息子なんて、こんなものよね、と自分に言い聞かせた。でも、その翌日、息子からの“無器用な返信”があったことに気づく。
「お弁当を包んでいた風呂敷に、私が書いた手紙が入っているのを見て、なんで自分で持っていないのよ、いらないってこと? とショックを受けたんです。でも、手紙をふと裏返してみたら…“お母さんへ”って書いてあって…読んだらもう、バーッと涙が止まらなくて…読んでくれていたんだなと思って。台所でワーッと泣きました」(文子さん)
手紙には「3年間弁当ありがとう」に始まり、「今日で高校最後の弁当だけど、またいつか作ってください。本当に3年間ありがとう。」で終わる。文子さんはお弁当を通じて3年間、勇貴くんの体調の変化を感じたり、おかずの好みについて話すなど楽しい時間が過ごせたと話す。
いつもは、肉のおかずを1種類しか入れないのに、この日のお弁当には、唐揚げとハンバーグ、2種類を入れた。作った本人よりも、勇貴くんのほうが、そのメニューをスラスラ口にしたところを見ると、思い出深いお弁当だったのだろう。
「豪華でおいしかった。朝は7時前のバスに乗って学校に行くので、母はかなり早起きしてお弁当を作ってくれた。たまに寝坊したりするとパンを買うけど、やっぱりお弁当のほうがおいしいから、“パンかぁ”って感じでした。本当に感謝してるんだけど、面と向かってなかなか言えないから、手紙でちゃんと伝えられてよかったです」(勇貴くん)
いつかお母さんにご飯を作ってあげたい――勇貴くんはそう思っている。メニューはバイト先で覚えた得意のチキン南蛮だ。
「手紙は大切な宝物なので、これからもずっと大切に持っておきます」
文子さんは、小さなメモ用紙をそっと握りしめた。