【恐怖】決まった時間に鳴る着信音・・・しかし誰も取らないのには理由があった!!!

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【震災怪談4 整頓】

震災翌年の3月11日、K子さんは菩提寺主催の合同慰霊祭へ出席するため、出かける支度を進めていた。津波で命を落とした母親の、一周忌法要にあたる慰霊祭だったそうだ。

ところが仮設住宅を出る直前、東京の知人から電話がかかってきたため、彼女は出発が大幅に遅れてしまった。知人の電話はたわいないもので、今日が震災の日で、この後、慰霊祭に行くのだと伝えても「ああ、あの頃は私も大変だったのよ」などと、のんきな返事しか返ってこない。あまりに腹が立って、彼女は会話の途中で電話を切った。

被災地以外の人にとっては、すっかり過去の話なのかな。虚しさに駆られながら、玄関であたふたと靴を履いて飛び出す。結局、式典には15分遅れで到着した。

帰り道、彼女の足取りは重かった。ようやく迎えた1年目の法要に、最初から参加できなかったことが悔やまれてならなかったのだという。

こんなんじゃお母さんに申し訳ない。もしかしたら、向こうで怒っているかもしれないな。沈んだ気持ちのまま仮設住宅に戻ってきた彼女は、玄関の扉を開けるなり息をのんだ。

出がけの騒ぎで乱暴に脱ぎ捨てたままの衣服が、きれいに畳まれて部屋の隅に置かれている。ひっくり返っていたはずの靴も、きっちりとそろえられていた。

ああ、そうだよね。お母さん、整理整頓にうるさかったものね。

来てくれたんだ。

K子さんはその場に立ち尽くしてしばらく泣いた後、市内にある花屋へ向かうと母親が大好きだったカスミソウを買い求め、部屋に飾ったそうである。

「あんまり心配かけても悪いでしょ、だから毎年の震災の日の朝には衣類を整頓しているんです」

K子さんは最後にそう言って、静かに笑った。

 

 

 

引用元:http://wpb.shueisha.co.jp/2015/03/05/44492/、http://news.livedoor.com/article/detail/9852370/