【恐怖】決まった時間に鳴る着信音・・・しかし誰も取らないのには理由があった!!!

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【震災怪談3 視点】

宮城県の沿岸にある道路での話である。

地元に暮らす男性が真夜中、この道路を車で走行していたのだという。と、突然、目の前に道路を横断する人の姿が浮かび上がった。このままでは轢(ひ)いてしまう、慌てて男性はブレーキを踏んだ。

車はすんでのところで止まったようで、車体に衝撃はない。ほっとしたところで、今度は怒りが込み上げてきた。ヘッドライトは見えていたはずなのに、どうしてあんな危ないタイミングで渡ろうとしたのか。文句のひとつでも言ってやろうと憤りつつ車から降りた途端、男性はその場に立ち尽くした。

誰もいない。人の気配さえない。ふいに男性は気がつく。あの人影は、海岸から町へ道路を渡ろうとしていた。こんな真夜中に泳ぐ人間などいるはずがないではないか。「帰ってきたんだな」。そう呟くと、男性はその場でしばらく合掌したそうだ。

こんな話もある。

関西から来た建設作業員が、作業を終えて滞在先の民宿まで徒歩で帰っていた。と、数メートル先を歩く人影が目に入った。同僚かと思い「おおい」と声をかけたが、人影は応えることなく道路を横断し、半壊した建物が並ぶ路地へと消えていった。その姿を見送りながら、人影は海から上がってきたことに建設作業員は気づく。遊泳の季節ではない。第一、津波でやられてから遊泳は禁止されているはずだ。

「帰ってきたんだな」。彼はにわかに寒けを覚え、慌てて逃げ帰ったという。

さて、このふたつの話の舞台は、まったく同じ場所である。海から町へと道路を渡る人影という現象も一致している。しかし前者は畏(おそ)れ、後者は恐れているのだ。この話にこそ、震災怪談の特性が如実に表れていると思うのだが、いかがだろうか。

 

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