【幻の最終回】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…誰も知らない22年後の物語に涙が止まらない
44 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/15(金)10:51:44 ID:h320rltdt
「な、何を言ってるんだ野原!」
「誰か辞めないといけないなら、オラが辞めます。オラは、まだ結婚していませんし」
「し、しかし!妹さんがいるだろう!?」
「妹は働いていますし、何とかなりますよ。
それに、オラまだ若いので、次の仕事も見つけやすいですよ」
「……だ、だが……!!」
「――課長、ここは、オラにカッコつけさせてくださいよ」
「……」
「……」
課長は一度オラの顔を見て、もう一度項垂れた。そして……
「……すまない、野原……すまない……」
課長の声は、震えていた。
オラは分かってる。一番辛いのは、
誰かを選ばなければならない課長自身であることを……
だからオラは、あえて笑顔で答えた。
「……いいんですよ、課長。これまで、お世話になりました―――」
課長は、何も答えなかった。
誰もいない廊下には、課長の涙をこらえる声が聞こえていた。
そしてオラは、無職になった――――
46 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/15(金)11:00:36 ID:h320rltdt
「――あれ?」
仕事を出る前のひまわりが、オラの様子を見て疑問符を投げかける。
「お兄ちゃん、今日はかなりゆっくりだね。まだスーツじゃないなんて……」
「え?あ、ああ……すぐ着替えるよ。――それより、急がないとまた遅刻するぞ?」
「――あ!うん!」
ひまわりは食パンを片手に、玄関を飛び出していった。
彼女を見送った後で、オラは仏壇の前に座る。
「……父ちゃん、母ちゃん。
オラ、会社辞めちゃったよ。
小さい頃、父ちゃんにリストラリストラって冗談で言ってたけど、
実際そうなると笑えないね」
仏壇に向け、苦笑いが零れた。
「……でも、今日からでも仕事を探してみるよ。
……分かってる。ひまわりには気付かれないようにするから。
あいつ、ああ見えて心配性だし……」
そして立ち上がり、いつもよりもゆっくりとスーツを着る。
とにかく、片っ端から面接を受けるしかない。
そのどれかが当たれば、それに越したことはない。
大丈夫。きっと、大丈夫だ……
オラは、自分にそう言い聞かせながら、家を出た。
47 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/15(金)11:09:55 ID:h320rltdt
午前中から、色んな企業を周った。
求人案内が出てるところをはじめ、とにかく、直談判した。
会社、工場……場所を問わず、とにかく足を運んだ。
……だが、現実は甘くない。
そもそも春先でもない今の時期に、求人があること自体が稀であった。
そしてどこも、簡単にはいかない。
どこも同じなんだろう。余裕がないのだ。
それに、オラも27歳。うまくいくことの方が、難しかった。
(やっぱり、どこも難しいな。でも、まだ始めたばかりだ……)
そして、オラは街を歩く。仕事を求めるため、
乾いた風が吹くビルの隙間を、縫うように歩いて行った。
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