【幻の最終回】クレヨンしんちゃん作者事故死から7年…誰も知らない22年後の物語に涙が止まらない
256 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)21:56:07 ID:gI5zhOZj9
「……しんのすけ、黙っていたのは悪かったと思う。いつか言おうと思っていたんだ」
「……」
「でも僕は、真剣なんだ!真剣に、ひまちゃんを幸せにしたいんだ!だから――」
「――だから……なんなのさ……!」
「――!」
思わずオラは、風間くんに詰め寄る。そして気が付けば、彼の胸ぐらを掴んでいた。
「……オラが言いたいのは、そんなことじゃない!」
「――ッ!」
「どうしてひまわりを、一人で帰らせたんだよ!
どうして、最後まで見送らなかったんだよ!
その帰りに――アンタと会った帰りに、ひまわりは事故に遭ったんだぞ!?
アンタが一緒なら、違ってたかもしれない!
――一生重荷を、背負うこともなかったかもしれないだぞ!?」
「……しんのすけ……」
……分かってる。
彼に、非はない。こんなのは、ただの八つ当たりだ。
それでもオラは、オラの心は、行き場のない怒りを、彼にぶつけるしかなかった。
そうしないと、頭がどうかなりそうだった。
「……ごめん、しんのすけ……」
風間くんは、静かにそう呟いた。
そしてオラは、投げ捨てるように彼の体を解放する。
風間くんは、力なく硬いアスファルトに座り込んでいた。
「……しんのすけ……」
「――止めてくれよ!」
「……!」
「……今は、何も聞きたくない……!」
そう言い捨てたオラは、そのまま公園を立ち去る。
振り返ることなく、風間くんを振り払うように……
259 :◆YAe/qNQv0cvW:2014/08/17(日)22:12:05 ID:gI5zhOZj9
家に帰る足取りは、とても重かった。
歩き慣れたはずの道は、とても遠く感じた。
その日は、月明かりが出ていて、道路にオラの影を作っていた。
……でも、その夜は、どこまでも深い闇色に染まっている気がした。
「……」
家には、ひまわりが待っている。
オラの帰りを、待っている。
……それが、途方もなく足を重くしていた。
「……ただいま……」
家に帰りついてしまったオラは、静かに呟く。
すると家の奥から、車椅子の音が聞こえてきた。
……そして、いつもと変わらない様子のひまわりが、玄関にやって来た。
「お兄ちゃん、おかえり」
「あ、ああ……ただいま……」
「今日ね、ご飯作ってみたんだ。車椅子で作るのって大変だったよ」
「そ、そうか……ごめん、先にお風呂入るから……」
「……?う、うん……」
不思議そうな顔をする彼女を尻目に、オラは風呂に入った。
お湯に浸かりながら、ぼんやりと風間くんの言葉を思い出す。
目の前に立ち込める湯気と同じだった。
浮かんでは消え、消えては浮かび……
壊れたレコードのように、ただ彼の言葉を繰り返していた。
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