【涙腺崩壊】妻子もかえりみず好き勝手遊びまわっていた俺。ある日突然「お母さんが子供を迎えに来ないから、お父さんに迎えに来てほしい」と保育園から連絡があって…
凧揚げをした。
ハルは一生懸命走って凧を揚げる。
ハル
「パパーw たかいでしょーw」
俺
「うん 上手い上手いw」
朝早起きをして
ハルの好きなものばかり入れた弁当を作った。
俺
「ハルの好きなウインナーも肉巻きもあるぞ。
パパ頑張って作ったからいっぱい食べてくれる?」
ハル
「おいしーよ。
おにくもーたまごやきもーウインナーもー。
ぼくのすきなのばかりでうれしー」
俺
「ハル。 ママ好きか?」
ハル
「うんw じゅぎーw」
口一杯におにぎりを詰め込み返事するハル。
俺
「ジュン君(サリナの彼氏)はどうだ?
ハルに優しくしてくれたか?」
ハル「…」
少し暗い表情をするハル。
俺
「どうした? パパに遠慮しなくてもいいんだよ」
ハル
「やさしいよ。
おじさんカメンライダーのショーに
つれていってくれるの」
俺「そっかw」
俺は一生懸命に笑顔を作る。
ハル
「パパもいく?」
俺
「うんw つれていってくれるの?」
ハル
「うん! ママにおねがいするねw」
ハルの笑顔が無償に愛らしくて
ギュッと抱きしめてしまった。
俺
「ママと一緒に住みたいか?」
ハル
「うんwパパも?」
俺
「パパは一緒に住めないよ。」
ハル「いやーーー」
急に怒って大声を出すハル。
俺
「ハル。 パパとママはもう一緒に住めないんだよ。
だからハルはママと一緒にいてあげてくれないか?」
ハル
「パパもいっしょがいいー。 ギギギギ」
歯を食いしばり泣きながら怒るハル。
暴れるハルを力強く抱き締めた。
今日ハルと会うまで、
絶対にハルを渡さないと決めていた。
けど昨日サリナの彼氏のジュンが
俺に会いにきたんだ。
ジュン
「ハル君を引き取らせて下さい。
僕は十分な収入もあります。
だからハル君にはもっと環境のいい学校に
通わせたいと思ってるんです。
お願いです。 必ず幸せにしますから」
俺
「サリナに頼まれたのか?
サリナのためだけなら無理だよ」
ジュン
「いや、 勝手に来ました。
サリナの笑顔をずっと見ていたいし、
悲しい顔は見たくないんです。
サリナのためって言うのは事実です。
でもハル君に会って、
この子の父親になりたいって思ったんです。」
帰り際サリナには内緒にしてくれと頼まれた。
よくできた男だと純粋に思った。
サリナが選んだ男なんだ。
嫉妬する自分が恥ずかしくなるくらいに、
ジュンに好感をもてた。
そしてサリナとの別れ際の顔を見て、
今日ハルとしたたわいもない会話に
サリナへの愛情を強く感じた。
そしてハルをサリナに引き取らせる方が
いいのかもしれないと強く思った。
今の俺にとってハルは全てだった。
それでもハルの幸せを願うなら、
ハルはサリナといるべきなのかもしれない。
ハル
「パパぼくとずっといっしょて
やきそくしたでしょー… グエーン(泣)」
俺「ハル。パパの話しをよく聞いてくれるか?」
ハル
「うぞづぎーうぞづぎー」
泣いて暴れるハル。
俺
「ハルは男の子だろ?
だからパパに変わって
ママを守ってあげてほしいんだ」
ハルを抑えつけるように腕に力が入る。
俺
「パパとは住めなくなっても、
パパはいつもハルに会いにいくよ。
ハルが悲しい時、辛い時は
すぐにハルのところに行くよ。」
俺の中でハルとの思い出が蘇り、
それを吐き出すかのように涙が溢れ出す。
ハル
「パパぼくのこときらいなになったの?」
俺はもっと強い力でハルを抱きしめた。
俺「大好きだよ。 世界で一番だ…」
ハル
「ぼくもパパだいすきだよ
きらいっていってごめんなさい」
俺
「パパと約束してくれるか。
ママをちゃんと助けるって。」
ハル
「やきそく。 パパもぼくにあいにきてね…えぐっ」
俺「約束するよ」
一生の別れじゃないんだ。
ハルにどちらか選べなんて言える訳がない。
全員が幸せになる方法なんてないんだ。
俺が犠牲になれば済む話だ。
これでいい。
ハルにとって幸せを考えれば。
こんな半端者の俺が、
ハルを本当に幸せに出来るわけがない。
日も暮れ、
ハルはいつの間にか俺の背中で眠っていた。
サリナに会い眠るハルを預ける。
サリナ
「俺君。本当にありがとう…
ハルはわたしにまかせて。」
俺
「うん、頼む。 荷物は後で送るよ。
また手続きとかあったら連絡して。」
サリナ「うん。」
俺はサリナの顔もハルの顔も見ずに振り返った。
俺
「幸せになってほしい。
ハルも… 幸せにしてやってくれ…」
俺は背中を向け、涙を見せないようにした。
いくら強がっても、
ハルを手放す辛さを我慢出来なかった。
サリナ
「本当にありがとう…」
俺
「俺こそ…」
その日を境に俺は一人になった。
家に帰ってもハルはいない。
無償に淋しくなる。
今まで子育てに一生懸命だった。
それは俺の人生の一部であり
生きがいでもあったんだ。
今は何もなくなった。
俺にはただ孤独と虚無感だけが残った。
「松井さん? お久しぶりです」
俺「久しぶりです。佐々木先生」
去年佐々木先生の誘いで、
ハルと一緒にイチゴ狩りに行った。それ以来だ。
俺「どうしました?」
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