【涙腺崩壊】妻子もかえりみず好き勝手遊びまわっていた俺。ある日突然「お母さんが子供を迎えに来ないから、お父さんに迎えに来てほしい」と保育園から連絡があって…
いつの間にかあの時の公園に来ていた。
辺りは暗がり始めてる。
ハルは公園に入るなりハシャいで滑り台を滑り始めた。
その姿を目で追いながら茫然として立ち尽くしていた。
針でチクチク刺さるように胸が痛くて苦しくなった。
病気とかじゃなくてな。
何でかって?
それはハルを少しでも疑ったからだ。
すぐに信じてやらなかった。
本当はヨシノおばさんが悪いとかじゃないんだ。
文句垂れられながらも住まわせてくれていたんだし。
ただの八つ当たりじゃないか。
何よりも悪いのは、
父親である俺がハルを信じなかったことだ。
俺はハルを怒りのまま怒鳴ってしまった。
ハルは怒ってたけど、
あの時ハルは本当に俺に怒っていたのかもしれない。
何で信じてくれないのって。
俺は本当にグズだよな。ハルごめん。本当にごめん。
自分の不甲斐なさに嫌気がさす。
砂場で遊ぶハルに詰め寄り強く抱きしめた。
今にも涙がこぼれ落ちそうだったけど、
グッと我慢してこらえた。
ハル
「パッパーもうイタいー?」
俺
「痛くないよ。 悲しいだけ」
ハル
「いたくないにょー?」
俺
「うんうん」
ハルはまた嬉しそうに滑り台によじ登った。
携帯の振動で
仕事を途中で抜け出していたのを思い出した。
しまった。
やはり社長からだ。
俺
「すいません。連絡せずサボっちゃいました。」
クビになることは間違いない。社会人失格だよな。
社長
「おい俺! 心配したぞ。 何やってたんだ?」
俺は社長に今日の出来事を全て話した。
社長に今すぐ会社に来るよう言われた。
会社にはもう社長以外誰もいない。
当然なんだが。
ソファーに恐い顔で座る社長。
俺
「本当にすいません。 申し訳ありませんでした」
怒られても仕方ない状況。
謝るしかない。
せっかく雇ってもらったのに、
いい加減な自分を呪った。
社長
「おい俺? 飯食ったか?」
俺
「いやまだ。」
社長
「よし。 なら飯行くぞ」
何も言ってこなかったが、
この状況と社長の太い声がマッチして妙に凄みを感じた。
そして俺とハルは社長に連れられ定食屋に入った。
最近は不景気だとか、
奥さんがうるさくてかなわないって話を
社長は淡々としてきた。
まるで何もなかったように、
仕事をサボった事には何もふれてこなかった。
その時は変に緊張したよ。
俺
「すいません。 やっぱり俺クビですよね?」
社長
「ん? バカか。 クビにはしねーよ。
さっさと食って行くぞ。」
俺
「はい…」
クビにならないと聞いて少し安心した。
ハルにご飯を食べさせて店を出た。
社長に車に乗るよう言われたので車に乗った。
社長は何も話さない。
車内は無音で、
シーシーと社長が口に入れた爪楊枝の音だけが聞こえた。
ハルはウトウトしている。
俺
「あの…どこ行くんすか?」
口を開かない社長に、黙ってついていくことにした。
車が来たことないアパートの前に停まると、
付いて来るように言われた。
そのアパートの一室を開けると、
社長「ここ使え」
と社長が言ったんだ。
俺
「どう言うことっすか?」
社長
「ここは俺が嫁と喧嘩した時に使う別宅だ。
お前に貸してやる。」
最初は社長の言葉を理解出来ず、
いまいち状況が掴めなかった。
でもそう言うことなんだ。
俺は社長の親切に思わず泣いてしまった。
俺
「クッ… 本当にいいんすか…?」
社長
「あーいいよ。 家具も使っていい。
その代わり家賃はもらうぞ。」
俺
「すいません…エグッ
本当に…ありがとうございます…エグッ」
本当に嬉しかったんだ。
やっと住む家が出来たってこともなんだけど、
何より社長の優しさが痛い程伝わった。
社長
「バカ野郎。大の男が泣くな。
そんな泣き虫で子供なんて育てられねーぞ」
俺
「はい…エグッ」
俺
「何で他人の俺なんかに…ここまでしてくれるんすか…?」
だってそうだろ?
まだ一月も働いてないバイトなんだぞ俺は。
信じられなかった。
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