なぜフランス人が一人で食事をしない理由知ってますか??
パリの朝は一杯のカフェとともに
大人になった私は、この精神を抱いたまま、パリのおいしいものが集まるマルティール通りへと向かいました。ここで食品を売る人たちと仲良くなることは、昨今の政治がもたらした憎しみや亀裂を忘れさせてくれ、単純に「夕飯は何にしよう?」、というような日常生活の根本的な考えごとに集中する場所を私に与えてくれたのです。
ときどき私は朝いちばんにラリエ通り沿いの「Le Dream Café」の軒先に並べられた、小さなフォーマイカ製のテーブルに席をとります。テレビはいつもつけっぱなしで、ニュース番組が流れていて、常連客はカウンターバーの前で、朝のビールやハウスワインを楽しんでいます。これが昔からの労働者たちの習慣。朝の10時にもなると、お肉屋さんが最初の休憩をしにハムをはさんだハーフバケットを抱えながら道を渡ってやってきます。そのなかに、私のお気に入りの肉屋「セバスチャン・ドミニク」がいようものなら、彼はバケットを飲み込み、口についたパンくずを拭って、私の両ほほにキスをするはずです。
そんなことをしているうちに、朝担当のカフェ・マネージャーでもあるモモが、Cafés Richardのカップに入った、最高のカフェ・クレムを持ってきてくれます (ただ、彼がいれるホットチョコレートのほうが、はるかに絶品だけど)。クロワッサンとバケットは、お隣のレビン家のファミリーベーカリーで、今朝早くに焼き上げたものだってことも、もう私の情報のなかにインプットされています。
おいしいカマンベールチーズの見分け方にも
パルタージュが生かされる
通りの向こうのチーズ屋さんの店主イブ・シャテニーが、エスプレッソを4杯買いに訪れ、それらをトレーに乗せて彼の店まで運んでいきます。2つは彼のもの、残りはアニック夫人のためのもの。
以前、彼は私にフレンチ・チーズの基礎的な講義をしてくれたことがあります。その際、私が最初に選んだのはカマンベールチーズでした。イブはホールのままのカマンベールを棚から取り出し、白いプラスチックの包装をはがしてこう言いました。
「まずはカマンベールの見た目から始めよう。これみたいに中心が白いものは、若すぎるということさ。次は感触だ。カマンベールは必ず触れないとダメだよ。最初に外側の硬い部分を両端からキュッと握ってみて。これで、チーズの真ん中の感触を親指で確かめることができるんだ。もし反発されるようならば、それはカマンベールに心がないことを意味しているんだ。心を持たせるにはデリケートなやわらかさを感じてあげられる親指が必要だね。“パルタージュ”がなきゃいけないんだ」。
ここでもまた、パルタージュが登場しました。これは、生き物のようにカマンベールと心を通わせているときに、「あなたが一人ではなくなること」を示唆しているようです。
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